概要
実情にそぐわないことを上辺だけで言ったり、体裁だけを気にして表面を取り繕う耳触りの良いだけの発言のことである。
綺麗事の問題点としては、現実の汚さから目を逸らす事で短絡的な発想に繋がる事が多く、苦しい状況にある者を余計に追い詰めるなど、事態を悪化させる方向に働く事がある点、そしてそれにもかかわらず、見た目が綺麗であるため持てはやされ易い点が挙げられる。
例えば「人間同士なら絶対に仲良くなれる」といった言葉を幾ら信じても、現実には絶対に仲良くなれない相手や、仲良くしようとするだけ苦しむ事になるような相手、距離を置いた方が良い相手というのも居るものである。そういった人に苦しめられてる人達に対してそんな事を言うのは、既に全力で頑張って疲れ果てている人に対して「サボるな、もっと頑張れ」と言うほど理不尽なもので、ある意味「死ね」と罵っているに等しい。
この手の綺麗事は特に、家族関係に対して他人が上から目線で口を出す形でトラブルになるケースが目立つ。人間も人間関係も十人十色である事や、当事者にしかわからない事も山のようにあるという事は忘れるべきではないだろう。「憎悪」「嫉妬」「自虐」などのネガティブな感情を持つ事を非難する論についても同様である。この辺、綺麗事には「強者の論理」の側面もある。犯罪者に対して過剰に甘くする、という形で問題となる事もあり、加害者を擁護して被害者を攻撃する形となる事もある。
綺麗事は、相手を弱らせるために悪用する事もできる。例えば「武器は争いを呼ぶし争いは何も生まないから武器を捨てましょう」と言った類の言葉があるが、人間の歴史は個人単位の場合も含めて明らかにそれに反して来た。侵略したいと思ってる者がこの言葉を侵略対象の間にだけ広めれば、その目的が達成し易くなるであろう。
ただこれらの話は、理想を捨て汚く生きる事や、些細な事で他人を敵だと決めつけて拒否する事を推奨するものでは無い。綺麗事の否定も、勢いが余ると差別、虐待、犯罪などを正当化する論となって来たり、他人のやる気に水を差すだけになる場合もあるので注意が要る。
正式な対義語は意外と存在しないが、綺麗事=理想論とするならば現実論が当てはまる。
確かに現実世界は、現実逃避に満ちた綺麗事だけでは生きれないのは事実である。ただ、だからといって理想も持たない現実主義では、何の希望も持てないというのもまた事実である。だから現実にしたいじゃないか。要するに、思いだけでも力だけでも駄目なのである。そして綺麗ごとでも信念を伝えるのは大人の責務である。
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偽善者:綺麗事を口にしたり、それに当てはまる行動をとったりする人種。