僕、この事件が分かってしまったかもしれません
概要
魔術協会の三部門の一つである時計塔のロードの一人。考古学科の学科長。集めた秘宝を行使しうる魔術師版インディ・ジョーンズ。
容姿は40前ぐらいの年齢、ブラウンの長髪に痩せた体の冴えない男。
短編小説『2015年の時計塔』の舞台となった街であるロクスロートは、彼が運営している。
助手であるティカからは、好奇心だけで首を突っ込んではあちこち掻き回して問題になって逃亡するような人物で、それ故に友達が少ないという散々な評価をされている。
時計塔の重鎮であるロードではあるが発言力はあまり高くなく、権力という点でもバルトメロイやトランベリオには及ばないが、三大派閥のひとつである中立派のトップを務めている。
アレクサンドリアの海底遺跡の調査の為、エジプトに来ていた。
人物像
彼の特徴は、一言で言い表すなら全く凄そうには見えないことである。
他のロード達が方向性の違いはあれど放っていた魔術師を導く者だという存在感が薄く、纏う魔力の気配すら微弱である。
着ているスーツもかなり上質の生地を使ったオーダーメイド品であるが、本人の雰囲気のせいであまり高級そうには見えず、そのあまりの冴えなさから、グレイからも魔術師という印象すらも薄く、むしろ平凡なビジネスマンと言われた方がよほど信じられると評されてしまった。
かつてエルメロイが学科長を務めていた鉱石科を考古学科と兼任しているが、この理由の半分はケイネスが亡くなった余波で貴族主義派と民主主義派が激突し、結果的にどちらでもない中立主義派が受け持つことになったためであるらしい。
陰で囁かれていた渾名は、最弱の十一科、時計塔一のゆるふわ君主(ロード)など。
中立派のトップを務める人物ではあるが、先祖からの相続である自分達とは違いひとりから始めてエルメロイを盛り返し、時計塔の勢力図を塗り替えたⅡ世を心から賞賛しており、「彼のファンのようなもの」と自称している。
その影響か彼の推理の方法もⅡ世に近いものであり、『錬金術師の遺産』編では事件の真相にⅡ世よりも早い段階で気づき、その過程でエルゴが喰らった神の一柱の名もさらりと言い当てるなど、もう一人の探偵役に近い役割を担う。
一人称は「僕」。名前は業のカルマと神聖文字ヒエログリフのもじりである。
…なお、先述の通り鉱石科がメルアステアの手に渡った理由の半分は貴族主義派と民主主義派の衝突だが、もう半分は彼の裏工作の結果である。
メルアステアは彼がロードになって以降着実に勢いを増してきており、未だに『最弱の十一科』などと呼んでいるのは、もはや時計塔に滅多に立ち寄らない外部の者のみという状況になっている。
また、彼個人の信念として考古学は手段として蒐集を行うし、可能な限り未来にも送るが、それは未来の魔術師の方がより価値を発揮できると信じてのことであり、そうでないと確信できるなら保存や蒐集自体にはこだわらなくていい、というものがある。
その根底にあるのは如何なる学問も研究も魔術側に基準があり、その理念と運用に役立たないのなら一切の価値を認めないという魔術師らしい傲慢さである。
そしてその基準は自らが定めるものであるという一つの勢力の頂点に立つ者の価値観を自然と体現しているからこそ、彼は紛れもなく君主(ロード)足り得るのである。
能力
属性は地と空の二重属性。
ある種の高等魔術である『変化』のプロフェッショナルであり、彼が触れたものは金属ならゴム、炎なら氷、コンクリートならば泥にと、容易く『変化』させてしまう。
この魔術に短弓型の礼装である『双銀瞬弧(シュート・ザ・ムーン)』を組み合わせることで千変万化する魔術の矢を放つ。魔術の矢が変化するのではなく、接触した対象を『変化』させる強烈な弱体化。
この礼装の弦は第五架空要素によって構成されており、同じ時計塔の魔術師が見れば、カルマグリフと礼装の弓とをつなぐ魔力の美しさに舌を巻いたであろうとされる。
指を動かすだけで放たれる数十発の魔矢は、その一発ずつが千年クラスの神秘を内包する武装化したアッドの強度をも凌ぐ必殺であるという現代の魔術師が呪文もなしの一工程で成しているとは到底考えがたい程の威力を持ちながら、グレイが全力で回避しても一瞬で軌道を変えてホーミングするなど、非常に優れた性能を持つ。
さらにこの魔弓は数々の用途に応じた撃ち分けができ、発掘作業にも使用可能。そして弓にとどまらず、ワイヤーや非常用のクレーンにも変化する。
作中ではこれにより、神代のアトラス院の遺した番人である金属の怪物達を凍らせる、腐食する、稲妻を放つなどの効果で縫い止めた他、ミクロン単位の厚さしかないシオンのエーテライトを的確に狙撃し、グレイが回避できたかのように見せかけた矢で死角となる位置に魔法円を描き、無数の魔弾を後方にいるⅡ世へ向けて放つなどの芸当を披露した。
これらの能力に加えて、メルアステアのトップとして集めさせた各種秘宝を身体に隠しており、能力と礼装の応用性だけならば時計塔でも五指に入る実力を持つ。
一方で彼は戦闘向きの魔術師ではなく、むしろロードの中では戦闘力の劣る部類に入るとされる。
その戦闘能力も護身の域を超えないもののはずだが、それでもその実力はグレイを難なく足止めし、遠坂凛をして出し惜しみをせず手持ちの全てをぶつけたところで、正面からでは敵わないと言わしめ、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトとの二人掛りでようやく互角に近い戦闘が成立するほどである。
さらに考古学科と同時に鉱石科のロードも兼任する彼は宝石魔術の使い手でもあり、その技量は凛やルヴィアでも到達していない、異常とさえ言える域にある。
彼の持つ属性の一つである空属性は五大元素の中で最も希少かつ最も熟達が困難な属性であり、色を持たないために宝石への染色を本質的に拒む、宝石魔術との連携が非常に難しい属性である。
そんな中で彼は凛にすら不可能な、空属性で宝石を染色し第五架空要素(エーテル)自体を操作することで他人の魔術へ直接干渉し解体する作業を、いとも簡単にやってのける。
作中ではこれにより、凛とルヴィアの宝石魔術を解体し彼に届く寸前で悉くを消滅させたことで、同じ宝石魔術の使い手として自分達の師がどれほどの高みにいるのかを二人に自然と悟らせ、戦慄させた。
そして先述の通り彼の属性は地と空の2つであり、五属性すべてを持つアベレージ・ワンではない。
そのため得意とするのはその2つに関する魔術に限定されるはずなのだが、彼の場合は地属性の一環として必要な属性を宝石から汲み出して魔術に適応することで、結果的にはどんな属性の魔術でも使えてしまうという、生まれ持った属性とは一体なんだったのかと言いたくなるような技術まで有している。
流石に属性として持っていない魔術を使用する場合は、あまり強力なものにはならない……などという事は特にないらしく、作中で実際に行使された氷の矢も空中で七本に分裂し、バラバラの軌道を描いて殺到する上、例え凛がとっておきの宝石を使ったとしても相殺しきれない階位の魔術であるという、かなり高度なものであった。
考古学科のロードでありながら鉱石科のロードも兼任しているのは、この技術を有するがためである。
また、もうひとつのアレクサンドリア大図書館に現れた古代マケドニアの騎兵と親衛歩兵が施設の記録媒体による情報攻撃であると即座に看破し本体を破壊する、凛の擬似宝石による攻撃(巡る五つ星)を初見でありながら防ぎ軽症で済ますなど、窮地における咄嗟の観察力や対応力も優れている。
ファンタズム・オーバーロード
本編内では描写されることのなかった、カルマグリフの隠し持つ真の能力。端的に言えば、秘宝の過剰駆動である。
極めて繊細に、本人の魔力さえも『変化』させてしまうカルマグリフは、秘宝に対しても“本来の能力以上”のことをやらせてしまう。
この過剰駆動の際、大抵の場合は秘宝が焼け付いてしまうのだが、その束の間、彼によって駆動した秘宝は現代より遥かに優れていた神秘―――ことによれば、神代以上の『力』を発揮するのである。
それこそ聖柩(アーク)に匹敵する遺物をいくつも抱えている考古学科との相性はまさに最悪だが、考古学を愛する彼がこの能力を発揮しようとすることは滅多にない。
高貴なる回路(ロイヤルサーキット)
カルマグリフ自身が使用する魔術ではなく、彼が鉱石科の生徒である凛とルヴィア用に作り上げた融合術式。6つの宝石を介することで、2人の間に擬似的な魔術回路を形成する。
理論上、2人で1つの魔術を修得することや共有することは可能である。が、儀式魔術で複数の術者が協力し合う程度ならばともかく、戦場でそれを行うには息が合うどころの話ではない、相手の脳と魔術回路を丸ごと掌握してしまうような暴力的な理解が必要となる。
エーデルフェルト家の当主やペンテル姉妹はそれを可能としているものの、それもあくまで“双子”という前提あってのもの。凛とルヴィアでは双子ほどの相互理解はないため、当然ながら成立しない。
ロイヤルサーキットはこの問題を、ほぼ同じ魔力を宿すように調整した宝石を使用することで解決した術式である。
外付けの魔術回路は本来魔眼でもなければ術者に適応しないものだが、日々の体調次第で微妙に変化する魔術回路を本人と他者双方の視点から解析することで、それぞれに上乗せしうる魔術式を調整・構築している。
その影響は術者本人が行使する魔術はおろか、あらかじめ礼装や宝石に込められていた魔術すら圧倒的な性能向上を果たすという絶大なものであり、作中ではフェムの船宴に出現したヒュドラの再現体が纏う呪的防御を増幅した宝石魔術で突破し、7本の首を破壊する力を振るった。
なお、再現体とはいえ神代の幻想種を一時的に翻弄できる程強力な術式でこそあるものの、考案者であるカルマグリフを相手に使用しても容易く反撃されてしまうため、彼との戦闘時には使用されていない。
そして何より、『同じ魔力を宿すように調整した宝石で魔術回路を形成する』術式の構築は理屈の上では可能なものの、実際に行うのは『巡る五つ星』や『個人用魔眼大投射』を編み出したロード・エルメロイⅡ世をして発想までは行き着きながら形にすることは出来なかった程に、非常に難易度が高い。
遠坂家とエーデルフェルト家の魔術は酷似しているものの同じではなく、この2つを融合させるには宝石魔術という体系への総合的な知見が必要となるためである。
それを『本来の実力そのものを大きく底上げする』という王道の形で構築してのけたこの術式の存在は、Ⅱ世に魔術師としてではなく教師として失意を覚えさせるという滅多にない形で衝撃を与えることとなった。
考古学科
アステア。第十一科。ロード・メルアステアが学科長を務め、衛星都市ロクスロートを本拠地とする。
中立主義派の筆頭であり、(院長肝入りである伝承科を除けば)時計塔の外の神秘に対して最も詳しい学科でもある。
その内実は考古学しかやらない純粋な研究者たちの集まりとされ、彼らの都市は権力闘争からは外れた区画となっている。
好戦的でないが故の平穏さも特徴的であり、『2015年の時計塔』では封印指定を受けたことによりイギリス国内へ足を運ぶことさえ命に関わる蒼崎橙子と、討ち取ることで名を挙げようとする魔術師の襲撃を受けることが少なくない蒼崎青子が(雑な変装で)訪れているが、それでも特に何の騒動も起こらないほどである。
時計塔においてもあまり意識されることはなく、万年貧乏とさえ称される程に金欠気味の学科であるが、一方でそれでも中立主義派のトップをずっと続けられるほどに権威は筋金入りであり、伝統に裏打ちされた根は深く、時計塔の隅々まで人材が行きわたっている。
また、全学科の中でも彼らの秘蔵した礼装の質と量は群を抜くとされ、仮にアトラス院と考古学科の知識や秘宝が組み合わさった場合、聖杯戦争のような大規模な魔術儀式を経験した遠坂凛をしてどれほどの奇跡が起こせるか想像がつかないという。
余談として、人類外の遺物を保持している伝承科とは常に互いを監視し合う間柄であるとされる。
伝承科は自分のカテゴリの遺物を考古学科が隠し持っていないかと疑い、考古学科はそもそも伝承科が一定範囲の遺物を独占していることを快く思っていない。それでいてフィールドワークなどから互いに協力せずにはいられない、といった関係である。
至上礼装・否定無二
否定無二(ジェミニ)。メルアステアの誇る至上礼装。複数のレンズやガラス管、歯車といくつものチューブの組み合わさった、まるで奇妙な生き物のような旧式機械の外見をしている。
普段はアタッシュケースに仕舞われており、カルマグリフ自身の血液を取り込むことによって稼働する。
その内容は触媒とモデルを用意することで、非生物のあらゆるものを、もう一つ作り上げるというもの。
至上礼装の名に相応しく、神代の秘宝の複製さえ可能としてしまうなど恐るべき性能を持つが、無から有を生み出すわけではない以上、神代の秘宝ほどの代物をコピーする場合は最低でも同等かつ同系統の貴重な材料が必要となる。
模造した品は即座に生成しなくてはならないというわけではなく、上限こそあるものの何体かはストックしておくことも可能。また、物によっては素材の投入から生成まで時間がかかる場合もあるとされる。
なお、この礼装によって複製された品は新しいのではなく複製元と全く同じであるらしく、複製元からの劣化・ランクダウンが起こっていない可能性が極めて高い。
後にFate/GrandOrderのイベント内で判明した事として、魔術世界において「まったく同じものを、完璧に再現するのはとんでもなく難しい」という。これは神秘の性質によるものであり、作中では「最初の火、最初の息吹、最初の土、最初の雪——だからこそ価値があり意味があり、神秘がこもる」と表現されている。
このため、仮に同じ物を作り直したとしてもそれは本当の意味での“同じ物”とはならない。『冒険』の作中において否定無二の複製が『魔術世界の秩序をひっくり返したと言っても良い、ある種の奇跡』と称されたのは、こういった背景があるためと思われる。
また、複製時に元となった触媒を解析することも可能であり、その性質等の大部分を把握することができる。
その解析能力は時計塔の魔術とは全く異なる神代のアトラス院の技術体系が相手でも例外なく猛威を振るうほどに強力なものであり、これがクルドリス家当主代行であるログ・クルドリス・ハイラムがリスクを負ってでも外部の人間であるカルマグリフを調査団の一員に迎え入れる価値があると判断し、通常ならあり得ない時計塔とアトラス院の合同発掘調査団を結成することとなった理由でもある。
ロード・エルメロイⅡ世の冒険では神代の錬金術師達が通信機代わりに使っていた時空泡(現代科学のそれとは似て非なる、空間を泡の形に歪曲させて繋いだもの)を書棚の破片で複製し、通信記録を閲覧した。
さらに、この通信履歴の閲覧時に入手したアレクサンドリア大図書館・第四層管理部の位置情報を基に座標を指定し、時空泡を擬似的なゲートとして利用することで海底遺跡の中心部まで空間転移を行うという応用も見せている。
Fate/GrandOrderのイベントである聖杯戦線 ~白天の城、黒夜の城~において、プトレマイオスがカルデアに回線を繋げる事ができた理由がカルデアの通信規格が自身の宝具化した大図書館と同じアトラス院準拠であったためであるのに対し、否定無二は全く異なる技術体系で作られた大図書館の通信機を複製し、その機能の大部分を解析したと言えば、いかに恐ろしい解析能力を有しているかが分かりやすいだろう。
当然ながら、属人的な能力ではなく魔術礼装であるため世代を跨いでの継承も可能である。
なお、この礼装は研究には非常に有用だが戦闘に転用している描写は特になく、稼働させる際には使い手に対し相当量の血液を要求する。
凛とルヴィアの二人を同時に相手取り、五分以上に渡り合った彼だが、それでもこの礼装を使った直後の戦闘であったため本調子ではなかったらしく、ロード・エルメロイⅡ世からはカルマグリフの魔術が精彩を欠いていたことを根拠として戦闘直前に否定無二を使ったことを見抜かれていた。
関連人物
ティカ・メルアステア・トルマク
考古学科で事務を務める20代後半の女性。率直すぎる物言いが特徴であり、あまり見ないタイプ故にⅡ世を面食らわせ、グレイからもエルメロイ教室にいたとしてもまず埋もれない逸材という印象を受けている。
海底遺跡の第二層に閉じ込められていたところを救出された際には、危険はないと言っていたカルマグリフに泣きついて寿司を奢る約束を取り付けたり、度々容赦のないツッコミを入れるなど、助手としての役割を果たしながら彼をタジタジにする人物。
名前にメルアステアが入ってることから分家筋の人間と思われる。
クォート・イシュタリオ・アズバン
イシュタリオ家に属する、アトラス院の錬金術師。
現代芸術家でもある彼とは個展を開く仲であり、友人とも言える間柄である。
サイファ・クルドリス・ハイラム
ラティオ・クルドリス・ハイラムの弟であり、クルドリス家の秀才。故人。
組織を越えての交流があり、彼をこっそり後援する代わりに発掘の出土品や本人の術式を提供してもらっていた。合同調査団に名を連ねたのもサイファの足跡を見届けるためなのだが、彼の無念を晴らしたいといった想いは特にない。
エルメロイから鉱石科を引き継いだことで根にもたれていないか心配していた。なお、二人とも共通の話題で話が熱くなるなど険悪な雰囲気ではない様子。
『TYPE-MOON BOOKS material』内収録の冒険用語集によると、カルマグリフが彼に興味を持っているのはどちらも本質的にはロードの地位に興味がなく、自分の目的を魔術とは別に持っており、自分とよく似た立場だと思っているからであるという。
ロード・エルメロイⅡ世の内弟子。
カルマグリフの推理を聞く中で彼の推理はⅡ世と似ているのではなく似せている、即ち本質の相似ではなく意図による相似である事に気づくも、同時に"なぜ”そのような事を行うのかは見当がつかず、彼に対して恐怖心を抱く。
逆にカルマグリフの方は神秘的事象の本質を突いた感想を漏らす彼女に興味を持ち、一度彼女を考古学科でみっちり鍛えてみたいとⅡ世に打診するなど、全体的に好意的である。
鉱石科の学生でもある凛とルヴィアにとって、カルマグリフは所属学科の先生にあたる。
Ⅱ世と敵対した時には、鉱石科の生徒でもあるのだから味方とまでは行かずともせめて中立の立場をとってくれないかなー、と期待していた。
なお、凛の「……さっすがカルマグリフ先生。地力じゃどうしようもないわね、これ」という発言に対して「いやいや十分ですよ?正直僕も厳しいので」と返しているが、凛どころかルヴィアも同時に相手取りながら息を切らしもせず、普段の授業でもそう言いながら論文にひたすら細かく要修正(リビジョン)をつけているため、その返答も全く信用されていない。
鉱石科の生徒のひとり。最終的に隙を突いて懐に潜り込み、宝石×2に禁呪である相乗まで重ねて行った『強化』によるフライングニールキックをカルマグリフの喉元に炸裂させ、ノックアウトさせた。
……はずなのだが、この後の展開に備えて否定無二を待機させていることを指摘したⅡ世の呼びかけに対して「おや、バレましたか」と言いながらひょっこりと立ち上がったり、一件落着後の会話でルヴィアから痛い所を突かれた際に「おっと誰かのニールキックにやられた喉が焼け付くようだ」と言いながらわざとらしく喉元をなでるなど、本当に効いていたのかと疑いたくなるような言動を繰り返している。
海底遺跡で遭遇した、アトラス院の錬金術師の少女。
10歳にも満たない年齢でありながらエーテライトを十全に扱い、わずか数年で時計塔のロードの耳に入る程の卓越した業績を上げる彼女の内面が輪郭だけがあって中身がない自我、 空っぽなのに見えない境界だけがあるような人格とでも言うべき、奪うという方向性を持ちながら他人の記憶を拒絶するほどの自我を確立させない異常なものであることを指摘し、賞賛した。
精神力の基礎が記憶である以上、そこを揺るがす記憶の過剰流入はどれほどの精神力を以てしても耐えられない。無制限に記憶の蒐集を可能とする者がいるとすれば、それはアトラス院においてさえ例外と呼べる存在である。
シオン自身はこの事に無自覚であったため初めて目の当たりにする自分の異常性に茫然自失となるが、これはとある事実の確認の為に必要な作業でもあった。
トランベリオの分家筋の調律師。
彼とは直接の関係はないが、彼の母親(ウェインズのビッグマム)に多額の借金をしている。
貴族主義派のトップ。
金欠だからという理由でかつてエルメロイから鉱石科を奪い取ったはいいものの、貴族主義の席のひとつを奪った結果、彼女たちバルトメロイから目を付けられるようになってしまった。
メルアステアは中立主義のトップだが、それは伝統などを加味した立場上のものでしかなく、勢力としては最弱に近い。そしてそのことをカルマグリフはよく知っているため、今のうちに立場を確立することに余念がない状態となっている。
直接的な関係はないが、カルマグリフの弓を使った攻撃が『一流の楽師が曲を奏でるかのよう』と評され、美しい旋律の代わりに魔矢が乱れ飛ぶのに対し、あちらは弦楽器を弓として扱い、その旋律で真空の刃を作って飛ばすなど、両者は類似した描写をされながらも正反対と言うべき戦闘スタイルとなっている。
扱う武器の弦も双銀瞬弧(シュート・ザ・ムーン)は第五架空要素、痛哭の幻奏(フェイルノート)は妖精の糸と、希少性はともかくとしてどちらも普通の物ではない。
考古学科における教え子。「ビックリするほど才能がない」らしい。
余談
考古学科やカルマグリフが保有している秘宝がどのような物なのかは、現状ではほとんど不明。その一方で型月作品では過去にも、秘宝と称されてきた物がいくつか存在している。
いずれも英霊にまつわる聖遺物や宝具などであるという共通点が存在する。
また、考古学科が抱えている遺物に匹敵するとされるアークは、Fate/GrandOrderで登場している。
モーセが神から授かった十戒を封じた箱であり、歴史的な側面から考えた場合は真性の聖杯に匹敵する聖遺物。ダビデがサーヴァントとして召喚された際に現界する宝具でもあり、封鎖終局四海オケアノスでは箱に触れたヘラクレスを10回分の蘇生ストックごと殺し尽くした。
そして考古学科は、このアークに匹敵する遺物をいくつも抱えているという。
それらを加味すると、メルアステアのトップとして集めさせたという秘宝も英霊の持つ宝具に類する物であったとしてもおかしくはない。
裏を返せば、作中での彼は手ぶらであるかのように見えつつ、実は(その力を行使しなかっただけで)宝具級の神秘を複数身に纏ったフル武装状態だった.......という事なのかもしれない。
実際はどうであるにせよ、そんなカルマグリフでさえロードの中では(権力、戦闘力共に)弱い方であるというのだから、恐ろしいものである。