概要
『魔法使いの夜』に登場する人狼の少年。蒼崎橙子と契約を結んだ使い魔。
通称「ベオ」。もしくは「ベオくん」。
ステータス
スペル | Lugh Beowulf |
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誕生日 | 1月1日 |
身長 | 134cm(人間形態時) |
体重 | 35㎏(人間形態時) |
好きなもの | 自分を最初に負かしたひと |
嫌いなもの | うるさいもの |
魔術系統 | 特になし |
神代回帰・質 | A |
神代回帰・量 | C |
神代回帰・編成 | 十八世紀までの系統樹 |
決戦の日 | 特になし |
CV | 種﨑敦美 |
略歴
純血の最後の人狼。生粋の原種。金狼。十八世紀頃、北欧の森に隠れ潜む人狼の里に現れ出でる。ただし発生そのものは大昔で、身に蓄えた神秘は三千年以上。同じ人狼の母親から生れ落ちたのではなく、自然発生した精霊種に近い存在。星の雫。
人狼の里では神子として扱われ、太陽を意味する「ルゥ」の名で敬われていたが、退屈を持て余していた。二年程前、そこに蒼崎橙子が現れ、橙子の髪を代償にした契約によって使い魔となり、人里へと降りていった。「ベオウルフ」は橙子がつけた名前。
最初の一年はロンドンの時計塔で基礎的な学習をし、以後の一年は世界のあちこちを巡って自分以外の様々な神秘たちと渡り合ってきた。北欧の森を走る魔眼収集列車(レールツェッペリン)、北海にまだなお生き続ける巨大古代種(ムールクラーケ)、三角形に開く異界に通じる帰らず(バミューダ)の海、西欧諸国に潜む神代連盟(エルダータイトル)を名乗る魔術師のなれの果て。それらをことごとく下してきたらしい。
橙子の最終目的である最新の魔法使いという神秘と戦うため、共に三咲市へとやってくる。
人物
基本的には明るく無邪気な子供。天衣無縫。酷く気分屋。人間としての善悪はもちろん、狼としての良し悪しも計らない。あらゆる弱さを知らず、自分が最強の存在であることを自覚しており、王者として、自分以外の生き物を見下している。ただし、植物などの自然は基本的に傷つけない。
狼の姿をとっているときの姿はあまりに美しい黄金の獣であり、粗野な臭いは微塵もなく、この金狼の前では人間の方が己が獣性に恥じ入るだろうとされる。ただし子供のような言動はそのままなので、外見に伴う覇気がそれで台無しになっている。
不老不滅の存在で、生まれた時から今の形で完成していた。赤子という未成熟な立場も、老衰という劣化もない。逆に言えば「成長」という要素を持っていなかった。そのため自分自身を持て余しており、このままでは生きている意味がないと退屈していた。「生命とは何かを知りたい」「欠落とは何かを知りたい」「万能であるのなら、万能であるが故の未知を知りたい」と、橙子の契約に応じる。
人間は見下す対象だが、橙子個人のことは好んでいる。ベオの価値基準は「格好良い」か「格好悪い」か、生き方に筋が通っているかどうかであり、それを「匂い」で判別する。橙子は良い匂いで合格らしい。「人間社会で気ままにやっていくには便利な人間」という認識でもある。なお、契約による縛りはベオにとっては些細なもので、いつでも噛み千切れるらしい。
静希草十郎との戦いを経て、人の不可解さを学ぶ。自分は絶対者だと思っていたが、今まで蚊帳の外だと思っていた原初の報復のルールは自分にも適用されること、やればやりかえされる、殺せば殺されるということを初めて恐怖と共に実感し、草十郎に心を折られて敗北する。
能力
幻想種。人狼は本来魔獣のカテゴリだが、その中でも上位に位置する「銀狼」はランクが上の幻獣クラスとされる。そしてベオは、さらにそれを越える「金狼」。
「神秘はより上位の神秘に敗北する」というルールによって、魔術の天敵とされる。「森の人」とも呼ばれる人狼は吸血鬼より歴史が古く(むしろ吸血鬼の方が人狼をモデルとしている)、人間程度が扱う神秘では太刀打ちできない。千年クラスの神秘・久遠寺有珠のプロイキッシャーである「橋の巨人(テムズトロル)」すら、正面から食い破る。
久遠寺有珠の童話の怪物が人の手によって作られた究極の神秘だとすれば、金狼は星の手によって産み落とされた神秘であり、生命(ほし)が何千年何万年と活動した末、希にこぼれ落ちる奇跡のような一滴。
作中の表現を借りると『魔でもなく幻でもなく、聖なるものにも留まらない。それは絶滅した神代の生命(いのち)。人智による神秘。積み重ねられた秘儀伝承。地に遍く在る奇跡の再現───その一切をかみ砕く、本当の魔術の天敵』であり、現在の魔術基盤に生きる魔術師であるかぎり、ルゥ=ベオウルフを倒せる魔術は、理論上編み出せない。
アストラル体であり、魔術的に言うのならば魂が物質化した高次生命にあたるため、大気中の魔力をとりこむことで様々な姿に変身する事が可能。形状次第では速射砲の直撃にも耐える。基本は狼の姿だが、人間形態、人間の体に狼の頭部と爪を備えた人狼形態、大猿、小型犬などにもなれる(地球上の生物なら何にでもなれて、なおかつそれらのいいとこどりができる。質量には限界があってせいぜい二メートル大。ということで勘弁してほしい、と蒼崎青子は希望的に予想している)。
人間形態時は金髪にグリーンの瞳の少年の姿をとる。理屈の上ではこれに限らず自由自在に容姿を変えられる(例えば髪を黒くするなど)はずだが、ベオにとって人間の姿をとるのは意味のないことであり、ストレスを覚えるもの。変身は特別な力も必要なく、リスクがあるわけでもないが、面倒なものは面倒。金髪の少年の姿は「せめて気持ちの良い姿でいたい」という妥協点の結果なので、頑なにそれ以外の姿は拒む。人間形態時でも体毛は金狼のソレであり、うぶ毛であろうと生半可な攻撃は跳ね返す。
移動速度も速く、静希草十郎との戦いでは、10mの距離を『突進(はし)って0.5秒、上から下、顔から足首まで、その爪で三枚に下ろすのにさらに0.5秒』とされるなど、30mを3秒とかからず詰めるHeaven's_Feelのバーサーカーに匹敵するどころかそれ以上の速度を出せる。
加えて回復力も高く、心臓を破壊されても即死しないどころか一瞬で復元する。毒も当たった瞬間に感知し、対応できるだけの伝達速度がある神経を持つ。さらに彼の身体は痛覚すら制御してきたため痛みも悪寒も感じたことがない。
総じて普通の生命のあり方をしておらず、脳を破壊されなければ死ぬことはない。
しかし、“窮地に陥る”経験をしたことがないため、地に臥した後にすぐさま立ち上がって反撃を加えることができず、自問する中で「こんなのはウソだ」と言い聞かせてようやく立ち上がろうとするなど精神的に脆い。
現在は少年のパーソナリティで活動しているが、(まずありえないが)番いを見つける事ができれば相手に合わせて性別を選ぶことができる。
関連人物
雇い主。生きている意味を知りたいと思い、彼女についていくことにした。本編終了後の時系列では「魔法の相手をさせてやる」という約束を違えたからと契約を断たれ自由の身となるが、ベオ自身は「敗北は自分の落ち度だ」として橙子の使い魔を名乗り続けている。
標的となる最新の魔法使い。戦いの中で彼女が魔法を使うことはなく、結果として全身のどこにも傷のない場所がないといえるほどに痛めつける。
敵対した魔術師。橋の巨人(テムズトロル)を真正面から破壊し、彼女の脇腹と内臓をえぐる重傷を負わせた。
ベオを打ち負かした一般人(山育ち)。野生の熊と遭遇するような生活をしていた彼にとって自分より大きな動物は珍しくなく、人間が狼になることは驚きこそすれ、恐れるようなことではなかった。ベオをわずか3秒で瀕死になるまで叩きのめすが、これは青子と有珠が瀕死になるまで傷つけられたから同じ状態になるまで傷つけたのであり、どちらか一人でも手にかけていたらこの結果は違っていた。
重傷を負いながら苦痛も憎悪も歓喜も殺意もなく、まるで昆虫のように無機質な眼をした、動物らしい本能がないのに人間らしい分別で動く彼に恐怖を覚える。そして本編後は彼になついている。
月姫のメインヒロインのひとり。受肉した精霊である吸血種、真祖の王族。
ベオは彼女の親戚みたいな生き物にあたるらしく、それを反映してなんとなくアルクに近い雰囲気にデザインされているという。
余談
「Fate/strangeFake』においてフランチェスカ・プレラーティの口から、「神代連盟(エルダータイトル)と最後の金狼が潰しあった時は国が一つ滅ぶかどうかの瀬戸際だった」ということが語られている。
また、魔眼収集列車は彼に襲撃を受けて以降、北欧のみならずヨーロッパ全域に出現するようになっている。
異界に通じる帰らず(バミューダ)の海はロード・エルメロイⅡ世の事件簿で蒼崎橙子が霊墓アルビオンの性質を説明する際に彷徨海と並んで登場する。これらはそれぞれ原理こそ違うものの結果的には酷似しており、存在する座標が現在の人理版図(テクスチャ)から厳密には決定されていない点が共通するようである。
TYPE-MOONエースvol.15内収録のFate:Lost Einherjar 極光のアスラウグ書き下ろし短編小説「狼の肖像」では、ある人物の回想の中でヘイミル老が金狼について言及している。
彼によると金狼は森の支配者・古き種・尊き神秘・人の手の届かぬ力であり、神々が生きていた時代のガルム、或いは真の狼の戦士(ウルフへドナー)かもしれないが、今となっては知る手立てすらないという神代の北欧世界においてすら恐れられる存在である。
さらに、かつてシンフィヨトリは呪われた貴人の持ち物である金狼の毛皮を盗んで纏い、人怪のごとき存在に変じて暴虐を尽くしたが、金狼を畏れず、数多の命を噛み殺したその罪は大神の血を引く彼でも許される事はなく、その魂は罰を受け続けており、如何なる奇跡をもってしても二度とまともな人の姿で世に顕れる事はないとされる程の影響を受けた事が語られている。
また、ヘイミル老の語りでは巨大古代種(ムールクラーケ)も大海の偉大として金狼と同列に扱われており、「彼らは森の、海の、天然自然の息吹であり、何処までも、何処までも、人の手の届かぬもの」とされている。
関連タグ
オフェリア・ファムルソローネ:型月中の人繋がり