饕餮(十二国記)
とうてつ
饕餮とは、『十二国記』に登場するその姿は幾通りにも変化し、稀少さから伝説とさえ言われている妖魔。
戴極国の麒麟・泰麒は胎果のまま蓬莱(日本)に流され、11年もの間、普通の人間として「高里要」を名乗り、家族と過ごしていたが、冬の日に蓬山に迎えが来、蓬山候となった。
麒麟という王を選ぶ天命がありながら、異世界から舞い戻った海客でもある泰麒は、当然、十二国の理を知らないうえ、麒麟に仕える使令もいないありさまだった。
十二国の理については、蓬山に仕える女仙たちが教え、景王に仕える景麒も教えたが、麒麟を守る使令を従えるには自力で妖魔を折伏せざるをえず、女仙も景麒も教えることができない。
泰麒は自分を守るために山に籠るが、そこには最強・最悪の妖魔・饕餮が待ち受けていた。
隙も見せずに対峙する泰麒と饕餮、激しい対決のすえ、泰麒は饕餮を折伏し唯一の使令とした。
このとき、饕餮はみずからを「傲濫」と名乗り、泰麒の求めに応じて小さな赤い犬の姿で彼に仕えるようになった。
しばらくして、泰麒は戴国左将軍・乍驍宗を新たな王に選び戴国に下ったが、丈阿選の謀反が起こり、驍宗は行方不明、泰麒も阿選に角を斬られ、無意識のうちに蓬莱に逃げもどった。
それから6年、記憶と麒麟としての力を失った泰麒は、蓬莱の実家で「高里要」を名乗り、普通の人間として生きていた。
が、要のまわりでは、彼に悪意をもつ人間が次々に不自然な死を遂げる怪事件が起こっていた。
戴国の女将軍・李斎の依頼により、泰麒の行方を捜していた各国の王や麒麟たちは、泰麒が角を斬られて麒麟の力を失っていること、禁じられているはずの「肉」を食して穢れの病を発症していること、使令の饕餮が暴走して「要」のまわりの人間を殺害していることを知る。
これらの事実により、泰麒(要)のもとを訪れた雁王・尚隆は彼を十二国につれ帰り、泰麒と饕餮の治療を女仙の長・西王母にゆだねた。
治療を終えた泰麒は、李斎ただ一人をつれ、荒れ果てた故国・戴国へと帰っていった。