考えろ・・・考えろ・・・マクガイバー
概要
2007年~2009年に週刊少年サンデーで連載されていた大須賀めぐみのマンガ作品。
正式名称は『魔王 JUVENILE REMIX』。
Pixivでは魔王JRの略称でタグがつけられることが多い。
伊坂幸太郎の小説「魔王」を原作としており、他の伊坂作品からも多くの人物が登場する。
現代日本を舞台にとり「思考をやめ、天才的な指導者に全てを任せる」事がはたして正しいのか、というテーマで描かれる。
登場人物の一人蝉を主人公にしたスピンオフ作品『Waltz』がゲッサンにて連載。
Waltz最終回にて魔王JR&WaltzのドラマCD化が発表された。連載終了後にメディアミックスなどの動きを持たずドラマCD化されるのは、近年の少年サンデーでは極めて異例である。
2015年2月に演劇ユニット*pnish*によって舞台化されることが決定した。東京では同年4月18日から26日にかけて、兵庫県・神戸では5月1・2日に上演された。
連載終了後、本編では描かれなかった番外的な日常エピソードが、同作家次回作『Waltz』『VANILLAFICTION』のキャラクターと共に作者のtwitter(#大須賀のやつ)にて公開されている。(モーメント)
あらすじ
バブル崩壊で疲弊した街、猫田市。
住民の意思を押し切って進められる都市開発計画や、人口流出により悪化する治安に、自警団「グラスホッパー」が対抗していた。
高校生の安藤は、幼い頃自分にあると信じていた「他人に自分の思っていることを話させる力」が、単に偶然ではないことに気付く。
グラスホッパーを束ねる青年・犬養の行動に興味を持った安藤だが、動向を追っているうちに彼が暴力で邪魔者を排除している現場を目撃してしまう。犬養は正義の味方ではなく、魔王 なのかもしれないという懸念をたった一人抱くことになる。
民衆の心を惹き付け扇動し「洪水」を起こそうとする犬養。その大きな力に、安藤は自身の小さな能力・腹話術で対決することを決意する。
登場人物
※CVはドラマCD、演は舞台のキャスト。
主人公
安藤
CV:浪川大輔 演:影山達也
第一章の主人公。猫田東高校の2年生。下の名前は原作ともども不明。
口癖は「考えろ」で、本作を一貫するテーマでもある。
幼い頃に事故で両親を失っており、弟の潤也と二人暮らし。周囲の出来事を感じなくなるほど物事を深く考え込む考察癖があり、一人言が多い。
目的を達するためには手段を選ばないという犬養の裏の顔を知ってしまい、犬養は人々を救済し導く救世主ではなく、「魔王」ではないかと疑問を持つようになる。変わり始める日常の中で迷い続けるが、とあるファミレスで漫然と生きているだけの老人に遭遇し、その老人や考えることをやめた市民たちのようになりたくないという思いを痛感し、平穏や今までの自分を全部捨て「対決」していくことを決意する。
所有する能力は、自分の考えていることを他人に話させる「腹話術」。有効範囲は30歩。一見あまり役に立たない能力に見られがちだが、集団の熱気の中心人物にその熱気を狂わせる(場を白けさせる)ことを一言でも言わせられれば、その集団を瓦解させることも可能である。そのため大衆演説を得意とする犬養にとっては、天敵ともなる能力である。
また、この能力の対象者は、しゃべったことを知らない、意識をそらされる等、能力の作用中は意識がないように描写されている。しかし使いすぎると呼吸困難や眩暈を引き起こすなどの副作用に陥る。
原作では20代後半の会社員。
安藤潤也
第二章の主人公で、安藤の弟。猫田東高校の1年生。
楽観的だが曲がったことが嫌いな行動派でもあり、どんな場面でも周りに流されることはない。
詩織という彼女がいる。
兄が自分を置いて自分の知らないどこかへ行ってしまうのではないかと心配しており、英会話教室が放火された事件の際に兄が危険なことに関わっていることを確信し、その日の帰り道に、お互いどこにも行かないことを約束する。
兄に危機が迫っていたのに何もできなかった自分を悔み、安藤の「対決」の真相について疑問を持ち調べ、犬養との「対決」を決意する。当初は明るい性格だったが、真相について関わっていくうちにだんだんと狂気を帯びていく。そのため、兄の意思を継ぐことと周囲の人々を守るためなら、殺し屋を大量に動員するなど「魔王」のような手段を選ばない行動をとるまでに至った。
また安藤の写真を大量に所持していることが判明しており、ともすれば盗撮かと疑われるようなものも存在する。
所有する能力は、どんな物事でも十分の一の確率までなら確実に当てられる「1/10=1」。第一章の時点では「運がいい」とほのめかされている程度であり、本格的にその能力を発揮するのは第二章になってからになる。
原作では高校卒業後アルバイトを転々とするフリーターだったが、のちに環境調査の会社に就職する。
グラスホッパー
犬養率いる自警団。取り締まられる側からは「バッタ」とも呼ばれる。表で活躍するジャケットを着た部隊と、裏で活動するパーカーに覆面を被った部隊が存在する。
犬養舜二
演:土屋裕一
自警団「グラスホッパー」の代表取締役。年齢は不明だが、被選挙権は持っている。
型破りかつ強い意志を感じさせる言動で大衆からはカリスマ的人気を持つが、裏では自身の望む街の改革に邪魔な存在を暴力で排除するという残忍な一面を持つ。
「未来は神様のレシピで決まる」という理念を持ち、自分は世界を変える役目をもっていると考え、運命をあるがままに受け入れようとしている。なお、犬養自身はマスターや安藤のように不思議な能力は持っていることは示唆されていない。
自分のやっていることをより強固なものにするため、改革を止める役割を持つと思われる安藤に対し宣戦布告をする。
第二章では「未来党」を結成し国政にも乗り出している。10年後、三度目の総選挙で勝利し、未来党が政権をとり、首相となる。
原作では国会議員であり、後に首相になっている。原作続編の『モダンタイムス』にて初めてフルネームが明かされる。
マスター
演:鷲尾昇
喫茶店・ドゥーチェのマスター。喫茶店に似合わぬ人相の悪い男。本名は不明。裏世界のプロとも繋がりがある謎の人物。
犬養の理想とする世界に希望を見出し、彼に協力している。
寡黙な印象とは裏腹に激情家な一面があり、安藤の能力を危険視し、抹殺を進言している。グラスホッパーの決起集会前に安藤を自ら始末しようと追い詰めるも敗れる。
しかし決起集会の会場に現れ、犬養を守るためにスズメバチと戦うが、スズメバチの毒と安藤の腹話術により倒れ、毒の後遺症により車椅子に乗ることとなる。
第2章で潤也を始末しようとするも、辰美の依頼を受けた槿の手にかかりトラックにはねられ即死する。
所有する能力は、50歩以内の距離に存在する空気を固形化し、触手のように自由自在に操る「空気の手」、およびそれを応用したテレパシー能力。普段その動きは目に見えないため、人や物を操っているように見えるが、砂煙や雨の中でははっきりと「手」が見えてしまう。
単行本カバー裏ではいじられキャラとして定着している。
原作では喫茶店ではなく、バーのマスター。漫画版では安藤と敵対する立場にあるのに対し、原作ではやや友好的である。
辰美将至
演:ラサール石井
政治家であり、グラスホッパーの最高幹部でもある。
市長の自殺後に新市長として立候補する。事実上犬養の傀儡。
2部より猫田市の新市長となる。
多数の政治家を鯨に殺させたり、高校生の潤也にも手をかけようとするマスターの思想を危険視し、槿に依頼し彼を殺害。
その後はマスターに代わり令嬢との契約を続けるも、寺原ジュニアにより薬物中毒にさせられ利用されることとなってしまう。
その後潤也からの情報で裏切りを知ったスズメバチに殺された。
殺し屋
蝉
ナイフ使いの殺し屋。明確な年齢は判明していないが、21歳ぐらいだとWaltzにて触れられている。
今時の若者で精神的に幼い部分もあるが、殺人の仕事ぶりはプロで死に関してはドライな考えを持つ。ベラベラとうるさくしゃべる様子が本当に「蝉」のようだと言われている。殺し屋を斡旋している岩西の下で仕事をしており、自分が岩西の操り人形なのではないかという強迫観念にも近い不安を抱えている。特徴的なうさぎのパーカーを好んで着る。
本作スピンオフ『Waltz』では主人公を務める。
伊坂幸太郎の別作品『グラスホッパー』の主人公の一人。
岩西
蝉に仕事を斡旋する上司。歌手ジャック・クリスピンの熱狂的ファンで、いつもその言葉の一部を引用する。
伊坂幸太郎の別作品『グラスホッパー』の登場人物。
鯨
左目に眼帯をしている殺し屋。眼帯を外して両目を見せると、相手は自分の中に抱えている罪悪感や無力感が増幅し生きることに苦痛を感じ自殺してしまうので、「自殺屋」と呼ばれている。
マスターの依頼で犬養の障害となる人間を始末している。
伊坂幸太郎の別作品『グラスホッパー』の主人公の一人。
スズメバチ
ゴスロリファッションを着た少女。足技と靴に仕込んだ毒針を駆使する殺し屋。太腿の内側に「スズメバチ」のタトゥーをしている。
狂気的・性的な言動をすることが多いうえ、はいてない。にも拘らずWaltzでは開脚攻撃までしている。
元々はアンダーソングループの依頼で犬養の命を狙っていたが失敗し、全てを許した犬養に絶対の忠誠を誓うようになる。
伊坂幸太郎の別作品『グラスホッパー』の登場人物だが、本来は男女の2人組であり、毒は使うものの格闘は行っていない。
槿
演:森山栄治
「押し屋」と呼ばれる殺し屋。「槿」と書いて「あさがお」と読む。
気配を消し、相手を押して車に轢かせ事故死させる手段をとる。裏世界においても情報は少なく、岩西は押し屋が「業界最高峰の殺し屋」ではないかと推測していた。
伊坂幸太郎の別作品『グラスホッパー』およびその続編『マリアビートル』の登場人物。
猫田東高校
詩織
潤也の彼女。名字は不明。明るくマイペース。
第二章にて姿を消した潤也を、心配しながらも信じて待ち続けている。潤也の関係者として命を狙われてしまう。
原作では「魔王」の5年後の物語「呼吸」の語り手を務める。
満智子
安藤兄弟が所属する新聞部の副部長で先輩。学校のアイドル的存在でもある。
犬養の思想を快く思わない数少ない人物でもある。新聞の取材中にスズメバチに襲われ学校を休むことになる。
第2章では大学生として登場。新聞部の部員として、副部長の赤堀ととも「令嬢」が販売しているビタミン剤(薬物)のことを調べようとしていたため、命を狙われてしまう。
原作では安藤の同僚。
島
安藤のクラスメート。安藤が学校内で孤立してからも友達として接した数少ない人物。
下ネタが大好きで、安藤の「対決」の際、犬養に言わせたい言葉として大きく影響する。
グラスホッパーに憧れ入団していたが、「令嬢」に「マスターを潤也と共に殺害した」と誤解され拉致、潤也の居場所を割らせるために爪をはがされる等の拷問を受け殺害された。
原作では安藤の大学時代の友人で、未来党を後援している。
要
安藤のクラスメート。オタクであり、「メイドリーナ」というキャラクターをこよなく愛し、ヘッドホンをつけている。
学校でのイジメや両親の不仲により自殺を試みるも犬養に止められる。そして犬養の思想に深く感銘を受け、グラスホッパーに入団。
入団後は学校の不良の粛清などを行うも、無抵抗のアンダーソンにリンチを行うなど行動はエスカレート。最期はアンダーソングランドホテルの料理人の息子を粛清しようとして、返り討ちに遭い死亡する。
名前の由来は原作『魔王』に登場するサッカー日本代表の中盤の「要」の田中選手。アメリカ人に刺されて死亡し、人々の反米意識を高めた。
アンダーソン
演:味方良介
安藤のクラスに転入してきた、グラスホッパーと対立するアンダーソングループの息子。
フルネームは不明。
父親の仕事をさほど快く思ってはおらず、グループの後継者の地位を継ぎたがっていない。
グラスホッパーとアンダーソングループの争いが原因で、学校でリンチを受けた。さらには、反アンダーソングループの人間に、自身がアルバイトをしていた老夫婦の英会話教室を放火され、自分がいると周りの人間にも危害が及ぶと判断し、街を去る。
第二章では安藤の死の真相を探るために、アンダーソングループのネットワークを使って独自の調査を行い、潤也に協力をしている。しかし、裏の世界に踏み入ろうとする潤也に対して忠告をするなど、自身の行動に葛藤する面も見られる。
原作では日本に帰化したアメリカ人。安藤の近所に住んでいて英会話教室を開いている。
令嬢
寺原
犯罪組織「令嬢」の頭目。外道だが親バカ。最後に槿に突き飛ばされて死亡する。
伊坂幸太郎の別作品『グラスホッパー』の登場人物。
寺原ジュニア
寺原の息子で「令嬢」の幹部。快楽殺人が趣味という絵にかいたような人間のクズだが、比与子の(ババ臭い)パンツをめくるなどある意味お茶目な一面も。鯨の術にはまり、自分が殺していった者たちの亡霊に取り巻かれ強迫観念に取りつかれ首吊り自殺をする。
伊坂幸太郎の別作品『グラスホッパー』の登場人物。
比与子
「令嬢」の幹部。本作においては短髪に和服という姿。最後は槿に突き飛ばされた寺原を轢き殺してしまう。
伊坂幸太郎の別作品『グラスホッパー』の登場人物。
その他
桃
CV:大原さやか
普段は「ポルノ」ショップを経営している、様々な情報を提供する情報屋。体格は肥満体形だが『Waltz』ではグラマラスな美人だった。
伊坂幸太郎の別作品『グラスホッパー』およびその続編『マリアビートル』の登場人物。
千葉
原作『魔王』にも登場する、死ぬ予定の対象人物の身辺調査をする死神。彼が仕事をするときは雨が降る。
伊坂幸太郎の別作品『死神の精度』の主人公。
表記揺れ
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