M6重戦車
えむしっくすへびーたんく
M6重戦車(M6 Heavy Tank)は、第二次世界大戦期の1942年にアメリカで実用化した6人乗りの重戦車。
開発中の呼称は『T1』だった。
アメリカ陸軍史上初の重戦車で、その性能はドイツのティーガーIにも匹敵するも、車重は既存のM4中戦車(30トン)と比較して倍以上の63トンに到達。
遠く離れた北アフリカ戦線や欧州での実戦投入に必須となる船舶輸送量の効率に悪影響を及ぼすことから、実用化にこそ至るも量産されることは無かった。
M6の搭載する主砲の76mm砲は100mm厚の装甲を射距離1,000mで射貫可能で、ティーガーIやパンターなどの強力なドイツ戦車の正面防御を撃ち破れる威力を有した。
また、主砲の隣に配置された副砲の37mm砲は射距離1,000mで50mm程度しか貫通できないものの、砲弾の搭載数が多く装填も容易なことから手数に優れた。
加えて、車体正面の12.7mm重機関銃×2挺は20mm程度の軽装甲や簡易な防御陣地なら余裕で射貫できる高威力を有し、主砲・副砲以上よりも軽装目標の排除に役立つ可能性が高かった。
M6の装甲配置は垂直主体で傾斜部が少なく、命中した砲弾の威力が逸れるような設計とはいえなかった。
しかし、装甲厚そのものは最大101mmが確保されており、IV号戦車やIII号突撃砲、PaK40対戦車砲などの火力であれば1,000m以遠でほぼ無力化し得た。
M6の車重は当時の戦車としてトップクラスに重い60トンだが、搭載エンジンは当時としては非常に強力な約1,000馬力の大出力を発揮、最高速度は37km/hに達したが、当時の戦車としては非常に重いため(63トン)、軽量なM4中戦車と比べると機動力の劣位は明確だった。
また、泥濘や砂地などの緩い地面を走行すると履帯が十分に重量分散できず、地面が掘られて車体が埋没する危険性があった。
なお、M6の試作車の一部ではドイツのポルシェティーガーと似た電気式トランスミッションが採用されており、米独が重戦車開発において試みた駆動系の信頼性確保に関する類似性が見て取れる。
魔改造・頭でっかちのM6A2E1
1944年、独仏国境に敷かれているとされたドイツの強固な防御陣地『ジークフリート線』を突破すべく、米陸軍は強力な105mm砲を搭載する次世代型重戦車T29の開発を開始。その武装試験にM6重戦車が選定された。
こうして、新型砲塔と105mm砲を搭載、車体正面装甲が構成変更とともに大幅強化された『M6A2E1』が完成。
この戦車のノウハウはT29の開発に活かされた。