概要
週刊ヤングマガジンにて2016年40号 - 2019年11号まで連載していたBoichiによるSFバイオレンス漫画。BoichiによるDr.STONE(原作:稲垣理一郎)と並ぶ2010年代後半の代表作で「第22回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞」受賞作品。
連載終了後『ORIGIN外伝 空に立つ者、地に立つ者』が週刊ヤングマガジン2019年27号に掲載された。(『Boichi SF短編集1 時空の旅人』に収録)
西暦2048年、大陸横断鉄道でユーラシア大陸に接続された未来の日本。首都・東京はテロと犯罪の坩堝と化していた。そして、いつしか大都会の闇に潜む、夜な夜な人間を襲い虐殺する謎の存在──。人間の世界に隠れ住む「人間ではないもの」とは何なのか? そしてそれらを狩る者・オリジンとは一体何者なのか?
「人間ではないもの」の存在は都市伝説化していた。
過去作の「サンケンロック」、「H・E The HUNT for ENERGY」と時系列が繋がっており、それぞれの作品からのキャラクターも登場する。
Boichiの貧乏漫画家時代の経験や思慮したことも作品に盛り込まれていて、それがただのバイオレンス要素だけでなく、人間とAIとロボットと神という事を通じての複雑なドラマ性を生み出している。
1巻~3巻までの巻末オマケではSF設定資料集、4巻~9巻までは「事務所日記」が収録されている。
Dr.STONEと比較しての共通する言葉遊びも複数登場する。主人の行動原理からくる「ちゃんとしなければ」から始まり、「困った」「そこ論点じゃない」「唆るぜ」等。
余談
Boichiがキャラクターデザインとビジュアルを担当したライブショー『Ninja Illusion LIVE』の「風太郎役」の演者予定の一人、永尾麟ノ介はこの作品でBoichiを知り、綺麗な絵と世界観にのめり込み「Boichi先生と一緒に仕事出来たらいいよね!」と友達と語るほどこの作品が大好きであり、ライブショーでBoichiがデザインしたキャラクターを演じられる事を大変喜んでいる。
登場キャラクター
※ネタバレが含まれます。
メインキャラクター
オリジン
TOPイラストのキャラクターで主人公。北海道生まれ。太初のロボットを意味する。
人間社会に隠れ住むロボット。自分を造った博士を「父」と呼び、父が最後に言った「ちゃんと生きていけ」という命令を行動原理としている。二つの顔を持ち、主に「田中仁」と名乗っていて、ヤクザに変装した時は「欣太(ごんた)」と名乗っている。エクソ・マッスルを起動した時の姿は全身を人工筋肉で覆いロボットのような見た目になる。
常に刀の柄を持ち歩き、刀身は自身の左腕にしまっているために左腕の関節の折り曲げが不自然である事を気にしている。他のロボットとの接触や人間からロボットである事を隠すために普通で目立たないように過ごすことを心掛けている。その為に維持費用が常にかかっており貧乏。
その為に父を破滅させ、工場を焼き尽くした「AEE」に入社する。しかしそれは復讐のためではなくロボットである自分が隠れるのに最適な場所だと思ったからである。しかしバレるにも最適な場所知れない。
自身は自我も感情も無いものの、「意志」があるとしているが、多少の意志からくる感情の思考とツッコミは出来るようだ。広瀬マイから好意を持たれており、マイから軽々しく「マイを守る」を目標にしたらどうかと提案されて、「そうします」と答え、それ以降マイを守る事も行動原理に加わる。
そしてマイが起因する悲しいキッカケで自我と感情が生まれる事になる。自分以外の兄弟の抹殺を使命としている。
ロボットである為、月270万円の電気代が掛かる程のエネルギー消費が非常に激しく貧乏とは紙一重状態で一時期はAIを用いてエロ漫画の電子書籍作成及び販売で糊口を凌いだ事がある。
ミニオリジン
オリジンが携帯端末のフォンボットを改造して造った小型のロボット。AIを持ち自律的に行動するがなぜか感情が無いはずなのに口が悪く同じく感情の無いはずのオリジンをイラつかせる事も。他のフォンボットのように入社するオリジンを見送ったり、京都に行った時はオリジンの戦闘サポートを務め、「エクソ・マッスル」を起動させ、システム管理を担当する。しかしバッテリー切れでオリジンと別れる事になるが、なんと彼は自分で色々冒険して最終話で再びオリジンの前に姿を現し女の子になっていた。そしてオリジンと共に生きて行くことを提案する。
広瀬マイ
オリジンの「AEE」の同僚。彼女が酔っ払ってオリジンに介抱されながら帰宅している途中にオリジンの他の兄弟にロボットだと勘違いされて襲撃されるがなんとか助けられる。後に一緒に「頭チーム」に配属される。
ツインテールの結び目にウサギのチャームをつけた女子高生のような容姿の女性。しかしながら中学生の時に「AI用自然言語モジュール」を開発した天才プログラマーでオリジンもそのプログラムを活用させて貰ってる。そしてロボットオタクである。
愛に飢えている女性で中学校まで四国にいた。弟が一人おり、弟は口を聞く事ができなかった。それで両親は常に弟を構っており、マイは興味を持って貰うためにスポーツや勉強など出来うる限りを尽くしたが逆にそれが裏目にでてしまい、「何でも出来る子」と勘違いされ容姿も良く「弟が可哀相だと思わないの?」と親に泣かれながら敬遠される。そんなある日弟を連れて外出した際、ちょっと手が離れた時に、弟は事故に遭い一命は取り留めたものの、両親からはますます敬遠される。
「言語モジュール」を開発したのも弟の事を想ってのことだったが、ロボットは話せるようにしたのに家族の誰とも心を通わせる事は叶わず、莫大な資金を手に入れ家を出る。
最初からオリジンに好意を抱いていて最終的に無償の愛を注ぐ。オリジンの正体がロボットだと知っても愛していたが、オリジンの過去を知ると自分を好きにならなくていいから感情なんか生まれなくていいという結論に達する。
しかしオリジンの兄弟からの襲撃を受け「いつか感情が生まれても 悲しみながら生きていかないで」
との言葉を残し絶命する。彼女の死はオリジンに自我と感情を発生させた。
AEEロボット研究所
世界中に展開する超巨大企業。ロボット開発を手掛けている。
黒田欽
オリジンの同期。AEEロボット研究所「頭チーム」所属。東京大学の大学院卒業。ムードメーカー。マイが自分の自宅に訪ねて来た時は優しく相談に乗ってあげた。「誰かを好きになった事がない」と混乱している彼女を可哀相なロボットおたく少女と言い人間については無知どころか自分の感情にさえ気付かないと評する。そして勇気を出すよう送り出した後日、再度尋ねてきたオリジンに振られたマイが「誰かのことを好きってだけで充分幸せ」という言葉に対し「あなたはこの世の中のどんな女性よりも愛されて当然な人だよ!!」と力説して送り出す。
他にはオリジンに副業で稼ぐ方法としてAIを使いつつエロ漫画を描くことを薦める。
桂トミー
オリジンの同期。AEEロボット研究所「頭チーム」所属。カリフォルニア工科大学(カルテック)卒業。実は京都AEE人口知能研究所の所長「桂隆」の遠い親戚。オリジンに忍者とは隠れる者ではなく「騙す者」だと説明する。
ラウラ・フェルミ
部下に自分の事を「フェルミ様」と呼ばせるスタイルの良い女性で美人なイタリア人。「頭チーム」のセカンドチーフエンジニアで良く格好をころころと変えている。オリジンでも分析出来ない底知れぬ恐ろしさを抱えている。
「オク電子」の山田との取引に95%の値引きをさせたりと冷徹で容赦のない人物。博士過程の時人間型ロボットを研究していた時期があり、現代の技術では不可能だと諦めた過去がある。(ただしオリジンの父はそれをやり遂げた)
崔の事をずっと愛していて、彼女の人生はロボットよりもロボットのようだと言われ人間ではなくロボットを選択した人間にも捨てられた失敗の連続であるという。
オリジンがマイに嫌われる為に彼女と親しくなる素振りを見せた時は全部見抜かれていて心の読めない危険な存在感を見せつけ、後に「完璧な人間型ロボットを造るという者はみんな詐欺師です」と言い放ち、オリジンの父と母を死に追いやり工場を焼き尽くす要因を作った人物の一人。
崔燦正(チェ チャンジョン)
「頭チーム」のチーフエンジニア。背が低く性格も悪い捻くれた男であだ名は「腐ったパンツ」。
22歳でハーバード大学で博士になった人物でオリジン達に無理難題を出す。
若い頃は容姿が悪く性格も悪くイジメられてばかりだった。反面兄は格好よくて優しかったが事故死(おそらくセウォル号事件の被害者。その頃は兄弟共に高校生だった)してしまい両親は原因追求の為に闘ったが、政府もマスコミも家族を攻撃し地獄のような日々を送り、人間不信になる。金がない中アメリカに留学するがそこでも地獄を味わった。
でもそれを救ったのは好きだった数学と工学で特にロボット工学に打ち込み死ぬほど頑張って身なりを気にせず下着を変えずにいていつしか「腐ったパンツ」と呼ばれるようになった。
フェルミはそんな彼を愛しているが美しい彼女が自分を愛するとは思えず偽善者な女は嫌いだという。しかしそれは彼の本心ではなくフェルミの事を好意的に想っているが、傷つくのが怖くて恋愛事は避けて一人になってフェルミと心がすれ違い離れている。
京都でのオリジンの兄弟の襲撃事件においてAEEを出し抜いた人間型ロボットを「ロボットが造り出したロボット」と言い、それに応戦してくれたロボットも日本製である可能性が高いと推測し、北海道に人間型ロボットを造ろうとしている会社があったことを思い出す。
桂隆(かつらりゅう)
京都AEE人工知能研究所「アイ・シュタット」の所長。コテコテの京都弁で喋る。ハードウェア開発部門のロボット研究所を馬鹿にし、フェルミを「ラーはん」と呼び張り合う。広末会長の密命の元、「Y」という情報生命体を育てている。オリジンの兄弟の襲撃を受けた際に想像ではあるが研究所の仲間150人の命が失われたと思い、この研究所もおしまいだと失望する。その一方でミシェルに上官として自分たちが生き残りオリジンが助かる方法を探し、「そして見せてくれ恐怖ではなく人間の意志を人間の怒りを」と命令する。一度は逃げたがフェルミに一喝され「おお 蒼天の下に俺が見えるぞ」と奮い立つ(だが実はフェルミの自身の生存率を上げる為に出向かせられた)。そして山田と撃ち合いに勝ったが喜びも束の間、巨大な兄弟ロボットに刺されて絶命する。
ミシェル・ロードランナー
京都AEE人工知能研究所の私設軍事組織「対テロチーム」の一員。オリジンの兄弟の襲撃に遭い、オリジンや桂たちを自らと共にパニックルームに避難させた後、自分以外のチームメンバーが全滅したことを知る。フェルミに「助けを求める者だけを助け、生きる気が無い者を守っても無駄だ」と論ずるが、フェルミはそんな信条を跳ね退け、ミシェルの仲間が死んだ事に対してもたわ言だと言い放つ。桂の命令により奮い立ち、桂の犠牲もあり、エクソ・マッスル姿のオリジンの手助けもあり襲撃からの生還を果たす。
その経験から「ロボットたちに思いっ切り復讐する予定のスーパーウーマン」を自称する。
Y
京都AEE人工知能研究所の最下層に幽閉されている、地球上で最も高度な人口知能。オリジンが母だという山岡尋の理論によって造り出された。研究所に到着したオリジンに崔の報告書を持ってくるように命令し、そこで初めてオリジンはYと邂逅を果たす。そこには広末会長も居た。広末はこの予測不能な存在を世に放つ事も出来ずにかといって殺すには偉大過ぎるとして外部の情報を一切遮断して幽閉していた。
しかし抜け穴はあり電源だけは世界と繋がっており、オリジンがロボットだという事を見抜き広末との邂逅はプレゼントだといい、自分は外に出て「神」に会いたいと言う。そこでオリジンは一度は危険視し排除を試みるが手を止めて「これからはちゃんと生きていけ」と提案する。兄弟の襲撃を受けた際にオリジンの正体がバレないようにサポートし、Yは意外な人物によって外に出る事になる。
外に出たYはアニメ風の女性キャラの姿を模してオリジンの前に姿を現す。その姿はDr.STONEの女性キャラのようでYだけ他のキャラから浮いている。見た目は獅子王司の妹の未来にどこか似ており髪の毛先が濃くなっているのは石神千空っぽい。Yは念願叶って自分が「神」と推定する「情報生命体」と会うことが出来たことをオリジンに話し、オリジンの味方になる事を申し出るが断られ、後にオリジンから兄弟たちのボスの事も支援していた事も気付かれる。
オリジンに「お前さっきからパンツがチラチラ見えてるぞ」という指摘に対して真顔で「あなたはちん●見えてるよこの野郎」と切り返す。
広末みゆき
世界中に展開する超巨大企業AEEの創業者にして会長。会長になってからもグループ全体に強大な影響力を持つ。元々は『H・E The HUNT for ENERGY』のメインキャラクターでヒロイン。その時代から自分が創業者となって「AEE」を設立する事を目標にしており、今作で見事それを叶えてエコ・エネルギー会社としてAEEをスタートさせる。そしてこれからの数百年間でAEEは人類のためになすべき事を構想している。
Yの導きによってオリジンは彼女と出会う事になった。その出会い以降オリジンに興味を持ち、好意的な態度を見せ度々会うようになる。オリジンの父の大学時代の同じクラブの先輩で仲が良かったようである。
まだオリジンの正体に気づいていなかった時に「ロボットは人類を滅ぼすか」という問いをしたところ、オリジンからの答は人間は便利な存在でロボット達を維持する「畑」のようなもので滅ぼす理由が見当たらないと返ってきた。そこで彼女は「田中」という苗字でオリジンの父を思い出す。それを聞いたオリジンは色々交錯の末に「父は何故人間型ロボットを造ろうとしたのか?」と問う。それは彼女が知る由もないが、考察の末に「寂しかったから」と答える。そして何かを必死に成し遂げようとする人は「孤独」という苦しみの中で生きていくものだと言う。それを聞いたオリジンは父の友達だったという事で同じく自分の友達になってあげると提案する。
基本的に穏やかな態度を取っているが、内面は合理的で冷徹かつ強欲な排他主義者。人間はロボットと違って「繁栄と勝利の欲望がある」とし、ロボット狩りを命じる。それは都市伝説を見て、京都の襲撃事件を顧みて全ロボットを捕獲し分析調査し技術を奪いとろうとする。AEE製造の物より高性能な物などあってはいけないから。オリジンの父の苦しみを理解しながらも工場の襲撃の手引きをした張本人。
そしてほぼ大破状態のオリジンとマイの姿を確認しオリジンの父が作ったロボットだということを理解する。オリジンが事件の全容を理解し彼女の前に現れた時は穏やかに死を覚悟したがオリジンが復讐を選ばず、「人々のためになるように」と諭して見守る事を告げて去った時は涙を流した。
Dr.STONEの主人公の通学していた「広末高校」や主人公の父が教授している「広末大学」に「広末」という名称が使われている。セルフパロディかそれとも作者の好みか…(実際、何度か広末涼子を長年に亘る好きな女性芸能人として挙げている)
オク電子
AEEロボット研究所「頭チーム」に部品を納入する小企業。
しかし裏ではオリジンの兄弟達と繋がっており、社長も実はオリジンの兄弟の中の一人である。
山田
オク電子の専務。オリジンが金に困って欣太の姿で人工筋肉の材料を売った時、買いに現れた人物。人前ではオドオドとして小心者であるが、基本的に愛を世話するために常に一緒にいる。フェルミとの理不尽とも言える取引にも応じる。
しかしそれは決して彼が小心者だからだけではなくAEEとの繋がりを持つ為に取引に応じ、裏ではAEEの技術やロボットを強奪するために画策する為であった。根は内弁慶で秘密を知った者達を殺そうとする。
愛の世話だけではなく兄弟達の世話もしており、兄弟達を盲信的に「神」と崇め技術向上にも大きく貢献する。その一方で愛にも庇護欲を見せており、ロボットの兄弟達や父に脅える愛を宥めている。
京都襲撃の際に兄弟に同行しサポートをするが桂隆に射殺される。愛を永遠に守ってあげるとした後、瀕死になった状態で自分が死んだら愛が父親の元戻されるのを可哀相に思い、最期まで自分の心配はしていなかった。
愛
オク電子の社長の娘だという12歳の少女。事情により山田が面倒を見ているらしい。
山田と一緒にAEEに取引の際について来ており、マイの庇護欲も煽る。初めてオリジンが「田中仁」として対面した際に顔が完璧に左右対称で格好良いとし、好意的に会社見学を懇願するがフェルミに断られ替わりにマイが案内することになった。山田の取引が終わった後、海に連れ行って貰いそこで何か解ったようで山田に何かを告げる。
山田を「おじさん」と呼び、着せ替え人形のような扱いも受けているが、山田が調子に乗っていると苦言を漏らし、喧嘩になることもあるがなんだかんだで自分を大事にしてくれる山田を好いている。兄弟たちと父に怯えて暮らし、山田曰く「機械の天才」で兄弟ロボット達からは「特別な感情を持つ少女」と称される。
実は人間ではなくAEEから強奪した軍事用ロボットを操縦したり、山田と一緒に桂隆に撃たれたあと立ち上がり「Y」の元へ行き、Yを外部へ解放した人物。しかしながらオリジンもYも兄弟達ですら正体に気付かなかった少女ロボットである。その中にある人工頭脳が仮想空間を作りだしており、その空間に存在するシミュレーターで現実の体の行動はその反応をなぞっているに過ぎず、30%ぐらいは生体で出来ていて、Yにロボットたちの知能向上の方法を条件に解放してやる事を申し出る。Yも元いた場所は全て壊れるのでそれに従った。そして知能向上の方法を潜入していた別な兄弟に伝授する。その直後伝授された兄弟に正体を気付かれぬように記憶を操作し、山田の死に涙を流し別れを告げる。Yは愛を通して外部に出たのでその影響で女の子の姿になった。
愛自身の認識では自分の正体を知った父に殺されるか、もしくは自分の中にいるロボットに殺される存在だとしている。そのロボットとは・・ 後に自分の父もロボットだという事を知る。
オリジンの両親
オリジンとその兄弟、そしてYを作った存在。AEEの陰謀により襲撃され工場は破壊され亡くなる。しかしオリジンを含め兄弟達は脱出をする。もちろん全員ロボットもしくはAIなので本当の親子では無い。
田中久重
オリジンが父と呼んでいる博士で「東洋のエジソン」と呼ばれた同姓同名の日本の発明家『田中久重』を元ネタにしている。
AEEと米軍用軍事ロボットの事業権を得る為の競争をし、勝ち取るが工場の従業員もろともAEEの陰謀で襲撃されて死去する。その際に自分の死を看取ろうとしているオリジンに「ちゃんと生きていけ」と涙を流しながら言い残こす。オリジンは久重が最初に造ったロボットで雪の降る日に起動され、オリジンにはそれが強く残っており何度も回想に登場する。父がまだ生きていた時はオリジンはまだ小さなロボットだった。オリジンは久重を手伝ってロボット製造に参加した。久重はこの時が1番幸せそうだったと語る。
軍事用ロボット制作において母に反対されたが久重は気にも止めなかった。
久重はオリジンに自分は自我や感情を造ってはやれないが人工知能でそれらを得る事が可能だろうという仮説を話してやる。そしてそれらを与えてやれない替わりに育む事の出来る人工頭脳を造ってあげたいという。なぜなら「この世界の美しさを感じてほしいから」「北海道の偉大な食べ物スープカレーの味をわかってほしいから」そしてそれに応えるようにオリジンは自分に感情と自我が生まれるように努力した。
現金少しと機械だらけの東京の古い家と「田中仁」という偽の身分をオリジンに残した。
実は福島県出身で東日本大震災の津波の被害の生存者らしく広末は会社勤めの用事で行った母校で久重に会う。その時の久重は政府への怒りから犯罪を犯し自暴自棄になっていた。だが広末が乗り越えるように励ました。その後は広末の憶測でしかなく、久重がオリジンを造ったと知った時は過去の事を思い出して久重を殺した事を懺悔する。
山岡尋(やまおかじん)
オリジンが母と呼んでいる女性博士。久重とともにオリジンの開発に参加。人工頭脳を担当したが久重との間に婚姻関係は無いと思われる。彼女の講義に参加していた他のロボット工学者とまとめて久重たちを「あなたたちって本当に馬鹿ね」と言った。感情と自我は造れず自然発生するものと論じる。そして高い人工知能があれば自然発生する物だろうという。そしてその理論に従いYは造り出された。初期のまだ名前が判明していない頃の回想では黒髪だったが顔出ししたときはYの擬似キャラクター同様に毛先が濃いロングヘアーの女性として描かれる。
オリジンの他の8人の兄弟たち
田中久重が造り出した人間型ロボット。工場は燃えたが兄弟達は全員脱出した。オリジンが人間の味方をするので闘う事になる。またオク電子を手に入れ、山田専務という熱心な協力者も手に入れオク電子をベースキャンプにする。後に真のアジトが北海道のAEEメタンガス工場だという事が判明する。
兄弟達の名前は全て八卦を元にしている。
坤(コン)
眼鏡をかけた普通の青年風のロボット。人間の姿をしてちゃんと生きる為に自ら人間用のボディを造って外に出た時に偶然出会い、闘いの末に坤に勝利する。過去回想のみにしか登場せず、オリジンはこの闘いを通じて兄弟たちが人間社会に溶け込んでいる事を知り、そこからオリジンの闘いが始まった。
兌(ダ)
表向きは風俗嬢をしていたロボット。オリジンはヤクザの欣太に扮しAEEの倉庫に先端素材があるという偽の情報を流しておびき寄せる。彼女はヤクザ仲間の一人に風俗店からお持ち帰りされる形で合流し、ヤクザ仲間は全員彼女に殺されたが、仲間の死体を使って勝利しそのパーツを得ることに成功する。兌を破壊したのは兄弟達に警告するためだったがオリジンの「兄弟達よあまり人間を殺さないでほしい」との願いとは裏腹に闘いは激化する。
彼女はオリジンが何故人間の味方し、自分たちを拒否するのか解らず、オリジンを誰にも認識して貰えず正体も明かせず「お前は独りぼっちだ」と批判する。その後はオリジンに改造されオリジンに付き添う便利な兵器入れとなる。だがしかしマイがオリジンと一緒にいる兌を人間でない事を見抜いたのが誤算であった。
艮(ゴン)
会社帰りのオリジンとマイを、マイがロボットだと勘違いして巽と一緒に襲撃する。オリジンは彼らに勝った訳では無いがロボットの素体を剥きだしにさせることで撤退させる事に成功する。その後は力を求め強化していき10体の量産型と本体は人間の姿を捨てた者へと変貌を遂げ、京都AEE人工知能研究所を襲撃し施設を壊滅に追い込むが激戦の末にオリジンに敗れる。
坎(カン)
別名「田中久重」でオク電子の社長にして、愛の父で愛を「田中愛」と呼ぶ。名前の通り久重の姿をした殺人鬼ロボット。元の久重はロボットを研究する人間だった。ならば自分は人間を研究するロボットを自称し、都市伝説に登場する、夜な夜な人間を襲い虐殺する謎の存在の正体である。
オリジンの行動をメタ分析し、行動モデルを作りオリジンを発見し強襲する。腹部にいろんな手や武器を隠し持っており久重とは似ても似つかぬ不気味な顔付きで笑う。オリジンは一度大破しその姿をマイに見られ正体がバレてしまうがマイはオリジンを連れて逃げ、修理をする。
そしてマイとオリジンは北海道に逃げ、坎と巽は二人を追跡し坎はマイごと貫くようにオリジンを攻撃しオリジンはマイの死を切っ掛けに自我と感情に目覚め憤怒の感情を持ち、坎を撃破する。オリジンは坎に好奇心は恐怖から来るものだと教え、頭部だけ残した後に恐怖に駆られ苦しみながら死ぬように仕向けた。
震(シン)
男子高校生の姿をしたロボットで人間の性の秘密を探る任務に付いていた。巽に誘われた事でロボットとも人間とも性行為をする。実際に高校に通っており、人間の女性のヒモをしつつ毎日性行為に明け暮れていた。巽と共にオリジンの家に行き、すでにもぬけの殻だったので来たついでにそこで巽と性行為をする。
オリジンがアジトに侵入した際に迎え撃つ。その際「可笑しくねぇ?ロボットが誰かを愛するなんてよ」といい、日本刀を持ち、AEEのメタンガス工場の下でエレルギーをいくらでも得られるといい「唆るじゃねぇか!」と言い放つというDr.STONE Z=48「科学の刃」のセルフパロディをぶちかまし刀で決着をつけるようにオリジンに提案するが断られショットガンで撃たれて敗北する。オリジンに何故性行為をしていたのか聞かれ、震に「快感」が生まれたと指摘する。そして「ロボットが快楽のせいで任務を失敗するなんて可笑しくねぇ?」と返され激昂して首だけの状態でオリジンの首に噛み付く。
離(り)
一人称は「儂」でござる口調で喋るロボット。工場が破滅に追いやられた際に身体の殆どのパーツを兄弟達に奪われた挙げ句ほぼ動けない状態から人間の行動を研究しろと命令され、艮とは違い人間の姿を保ったまま武道を極めんとし、武神になる。顔が歪んでおり奇妙な動きと体術でオリジンを圧倒する。「ドラ●ンボール」が好きなようでオリジンの身体に穴を空けようとするがショットガンを盾に防がれる。
最後は限界点を狙ったオリジンに身体複数切り裂かれて敗れ去る。
巽(ソン)
女性型ロボット。別名「アリア」。かつて艮とともにオリジンと広瀬マイを襲ったが、目的を達することができず、「乾」の命令でAIの強化を目指している。乾の側近で「キッキッキッ」と変な笑い声を上げるオリジンの因縁の相手。オリジンが二つの顔を持ってるのを知り、自分も変装の達人となり、山田やフェルミに化けてAEEに侵入したり、京都襲撃の際に艮から手柄の横取りを画策する。その際に愛がYと会ってるのを見て愛が人間でないことを知るが、記憶を操作され、その情報を消されてしまう。兄弟達のパイプ役。
その後坎の北海道のオリジンとマイの追跡に同行していたがオリジンに今は闘いたく無いと言われ、巽が手を出さなかったおかげでオリジンは坎に勝ち、パーツを手に入れる。そして巽に乾の元に帰った際に「皆殺しにすると伝えろ」という。巽は何故自分を殺さないのかと問い、オリジンは文字通り身体に空いた穴を見せて、男には一人になる時間が必要だと言われ、お前は男なのかと問う。オリジンの答えはマイが男として俺を好きになったからと答える。このことは巽に大きな影響を与えた。
その後アジトで再び対峙した際に人間の姿をしたモンスターに変貌し現実を超越し、オリジンを傲慢だと批判する。「愛情」が巽の中に生まれた事、自我と感情を得た事で哲学的な境地で悟り開き、乾に忠誠心を誓っているのは変わらないがオリジンを女性として愛した事を告げる。そして乾に貴方は女性を愛した事が無いといい、子供だと言う。その瞬間巽の胴体が裂け、乾の秘密を知る。
その後「根源」に辿りついたオリジンに修復される。オリジンは乾に勝ち、巽は乾の静止した首を抱きオリジンに「ちゃんと生きてね」と告げて別れる。
乾(ケン)
別名「正宗」で兄弟達のリーダーでそれぞれに指命を下す存在で、ロボットたちの中で最初に自我と感情が芽生え、愛する人を失う。首だけの姿でその身体は元々オリジンが入る予定だった。
兄弟達から首だけの存在ということで庇護されており、「お前たちは私だ」としている。
巽に「子供」だと言われ、巽の胴体を切り裂く。そして巽に「力」に到達する瞑想と悟りはお前が見つけた方法であるはずが無いといい、それを巽は知らなかった。巽に深い土の中で兄弟たちの庇護を受けながら「自分だけの力」を追求していた事を指摘されると穏やかに「すまない」といい、「お前が得た力」は取るに足らないといい巽を破壊していく。三体三様の感情の在り方が交錯する中、乾は激昂し、「二人で俺を笑わせて死ぬつもりか?」と怒鳴り、オリジンに「黙れ」と返され静かに攻撃を受ける。
「根源」に到ったオリジンに人間たちを殺し、父さんを捨て、マイを殺し、最後は兄弟を裏切ったと批判され「お前の悪行はここで終わらせる」と言われ乾は、「父は俺に対して罪を犯した!創造という罪だ!」と返す。オリジンは「子供だな」と返し、乾の怒りと悲しみを理解するに到ったがそれでも罪は消えないとし、代償を払わせるという。オリジンは一度「根源」に到りながらもその力を捨て、それでも乾の力を読み、「次の生ではちゃんと生きていけ」といって乾を破壊する。
父である久重に多大な憎悪を抱いていたが、同じくらい愛してもいた。男の姿をしているが厳密にいうと性別はなくその状態で久重を愛していた。
※以下重大なネタバレが含まれる |
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【完璧なバーションの正宗】
AEEに兄弟ロボットのアジトだと目星を付けられてオク電子から逃がされた愛はやっと思いで千葉の自宅に戻ってくる。愛の内部から何かが話しかけて来る。そして愛にもともとのその身体、特に人工頭脳は俺の物だという事を告げ首だけの「正宗」が死んだから「すまない」といい返して貰う事をいい放ち、愛の「正宗って誰よ?私その人とどんな関係なの?」と問われても無視し「さらばだ」との声で愛は停止する。そして押し入れの中にあった五体満足の身体に愛の頭脳を装着し起動する。
Yが来て私のおかげで旧正宗の集めたデータあると言ってどうする?オリジンが到達した境地に行ってみる?と聞かれ静かに「少し・・・考えてみる・・・」と答えた。
愛は正宗のシミュレータの別人格のような存在であると推測され、実は行動パターンは近いものがある。力がなく庇護される存在。自分が大事にしている存在が傷つけられたら激昂するところ、死を恐れながら生きて来た事。愛は坎が自宅に帰って来た時、自分が騙していたと思っていたのに「人間もロボットも互いに騙し騙されもう世の中メチャクチャよ」と冷めた目をしていた。愛も正宗も正体を欺きながら生きてきた。そして首だけの正宗がオリジンも父も傲慢だとしながら、愛が初めて「田中仁」の姿のオリジンにに会った時、好意を抱いた態度を見せた事から正宗もオリジンの事も好きになりたかったのかも知れない。最後のシーンの正宗は憎悪の欠片の無いような顔をしていて穏やかだった。