PlutoKiss
めいおうのくちづけ
「PlutoKissはやばかったよ。人類滅亡まであと一歩?って感じで...」
「.hack」シリーズの世界観に強い影響を及ぼす歴史的なサイバーテロ事件。
一人のハッカーがネットに流したウィルス災害としては史上最大規模の被害を出したとされる。それまでにも「Hellow,WNC」や「Deadry Flash」といったウィルスの事例はあったが、今事件はそれまでとは比較にならない程のものであり、その被害の凄惨さと一瞬にして世界ネットワークをダウンさせた様相から「Pluto Kiss(冥王の口づけ)」と呼ばれている。
これにより作中世界のネットワーク体系は大きな変貌を遂げ、世界最大のMMO「The_World」が誕生した遠因にもなった。
2005年12月24日のクリスマスイブ。あるハッカーが撒いたウィルスにより全世界のネットワーク電子機能が77分の間、すべて使えなくなる事件が発生。これは個人の保有する携帯電話やパソコンのみならず金融、交通、医療機関、果ては政府中枢のホストコンピュータにまで及んだ。
その主な被害状況は以下の通り
- ネット間通信が不能となったため、あらゆる商業がストップ、世界経済が大打撃を受ける。
- 各国大学院のメインコンピュータが機能停止。手術に支障を来たしたり、生命維持装置の異常が頻発する。
- 行政機関の記録が消失し、業務に多大な支障が出る。
- 金融機関のホストコンピュータの異常により顧客管理が不可能になる。
- 都市部の信号、鉄道運行システムなど交通管理装置が制御不可能になり、事故が多発する。
その他にもネットワークに繋がっていた家電製品も被害を被り、個人レベルで見れば家庭生活にすらも影響が広がっていた。極端な話この77分の間、先進国の人間は食事をすることも水を飲むことすらままならなくなってしまったのである。
株取引のトラブルによる経済損失。自動車・電車・飛行機の追突と墜落、そして医療機器の不具合による死亡事故。それらが"世界規模"で勃発し、世界中が未曾有の大混乱に見舞われた。
まだそこまでなら収拾が付いていたのだが事態は更に悪化する。アメリカのホワイトハウスのネットワークが沈黙したことにより国防総省のコンピュータが「仮想敵国によるミサイル攻撃を受けて大統領府が壊滅した。」と判断し、最終防衛手段・自動報復ミサイルが作動してしまったのである。この緊急事態に第44代目大統領 ジム・ストーンコールドは「仮想敵国(中東や東アジアの数カ国)」へ向け弁明を発信。
「システムの停止に全力を傾けているが、万が一発射された場合もアメリカの貴国に対する敵意、宣戦布告を意味するものではない」との内容を述べた。
だが相手国は当然ながらこれに応じず「攻撃を受けた場合、報復攻撃を行う」と発表。キューバ危機以来の開戦手前、一触即発の事態となる。
最終的にはネットワーク機能が回復したことで報復システムへの信号発信も復活。間一髪の所で回避され、事態も自動的に沈静化した。
だが世界のネット構造の脆弱性を晒すことになり、その後の2年間は「ネットワーク規制法」によりネットワークのアクセス制限を敷かざるを得なくなった。
のちにアメリカのロサンゼルスにおいて犯人が発見されるが、そのウィルス製作者の正体は10歳そこらの小学生だったという...。
一歩間違えれば世界大戦に発展していた大事件であったため、すぐさま既存のネットワーク構造が見直される形となった。そしてこの日を境にこれまでの主力OS(おそらくWindowsやMac OS Xなど)は死を迎え、このサイバーテロを耐え切った唯一の企業である「ALTIMIT社」のOSに全面的に移行。世界シェア率は7割近く占める形となり、これに伴い頻発していた電子犯罪もまた沈静化していった。
だが、上記の「ネットワーク規制法」期間中には一部の商業・研究活動を除いてアクセスを厳しく制限されてしまい、大多数の人間がネットワークを利用することが極度に厳しくなってしまっていた。特に不特定多数を利用を前提とする(即ち、悪意を持つ者の利用を防ぎにくい)コンテンツーーチャット、BBS、ネットゲームなどー-は「ALTIMIT OS」への移行が済むまでの間、厳重に制限されていた。
規制法によりネットエンターテイメント市場は重いダメージを受け、その中でもゲーム業界は壊滅的な影響を及ぼされてしまった。しかし、そこに目をつけたALTIMIT社を母体とするソフトウェアメーカー「CC社」は規制法解禁を視野に入れ、「ネット娯楽に飢えた世界中の大衆に向けた、向こう数十年の覇権を握る高利益の商品」として"世界規模のMMO"の開発を模索する。
そして2007年。「The World」が生み出され、目論見通りの大ヒットを記録することとなった。
それから3年後の2010年。原因不明の電子災害によりほぼ同様の事件「Pluto Again(冥王の再臨)」が発生。Pluto kissの反省を活かしていた筈の「ALTIMIT社」を含めたネットワークの全OSはこれに対して全くの無力であり、世界は再び多くの犠牲を被ることになった。
そのため2010年以降、Plutokissは最初のネット危機として「第一次ネットワーククライシス」の別名でも呼ばれている。