概要
2003年4月に販売開始。
欧州では排ガス規制により2010年5月に、日本およびアメリカでは2012年6月に販売終了。
この車種はマツダお得意のロータリーエンジン搭載・後輪駆動のスポーツカーであり、なおかつ新規に設計された車種である。
通常この手の車は2ドアであるが、当時傘下であったフォードからの絶対条件として4ドア観音開きとなり、ファミリーカー仕様のスポーツカーともいえる。
パッケージング
使用されたプラットフォームはRX-7後期型に使用されたFプラットフォームの流れをくむ「マツダ・FEプラットフォーム」であり、後継車ではなく完全な新規設計車種である。
4ドアであることが提携先であるフォード・モーター側からの絶対条件であったため、4ドアでいかに軽く作るかが問題となった。それを解決させたのが非対称の観音開きに開く「フリースタイルドア」である(ただし前部ドアを開けない限り後部ドアの開閉は不可)。
これによりロータリーエンジン車特有の軽快なハンドリングは健在であり、RX-7よりもエンジンマウント位置をより内側に低くマウントしたことに加え、高い剛性により旋回性やハンドリングは抜群に良くなっている。
4ドア4シーターとしての利便性や高いボディ剛性、また向上した燃費がそれを裏付けるとされる。
ちなみにリアシートはワンマイルシート(補助座席に近く1.5㎞の乗車が限度のような座席)ではなく、きちんと大人が乗れるものが装備されている。
RX-7の前後重量比50:50の重量バランスは受け継いでいるが、車種のキャラクターそのものがRX-7とは異なり、いわゆるファミリー向けのものとなっている。
しかしながらこの車種は発売当初から仮想対抗車とされたS2000ではなく自社のRX-7と比較されることが多く、増した重量、失ったターボパワー、高くなってしまった車高などからスポーツカーユーザーからの評価は決して良いものだけではなかった。
エンジン
新規設計により燃費が大きく改善された「RENESIS」(13B-MSP)を搭載。
燃費向上のため過給機(ターボチャージャー)を装備せず自然吸気となっているがレブリミットは9000rpmとなり、レーシングカー787Bに搭載されていた26Bエンジンと同クラスの高回転ユニットとなっている。
安全性能
フリースタイルドアであることにより必然的にBピラー(前部座席と後部座席の間に存在する柱)が無いのが特徴だが、ドア内部にピラーに相当する骨格を組み込んだ「ビルトインピラー」により高い剛性を得ており、国土交通省衝突安全基準において運転席・助手席共に6つ星を獲得した。
後部ドアは開閉を容易にする意味も含め、パネルをアルミ化し軽量化している。
ブレーキ性能試験においては100km/hからの停止距離が38.6m(湿潤時44.4m)となっており、これは2011年現在、試験が行われた全車両中トップの成績を誇る。
ボンネットにショックコーンアルミボンネットを装備するものの、位置そのものが低いということもあり、歩行者頭部保護性能試験ではレベル1に留まっている。
軽量化の為、全グレードに渡ってスペアタイヤは搭載されず、パンク修理キットで代用している。(オプションで用意されていたが、搭載の為にトランクスペースを犠牲にする必要がある)
ボディカラー
- スノーフレイクホワイトパールマイカ→クリスタルホワイトパールマイカ
一般的な名称パールホワイト。例によって塗装賃が少し上乗せされる。クリスタルホワイトパールは後期型の後継色。SPIRIT Rでも選択できる。
- ウイニングブルーマイカ
明るい青。中期型まで存在。
- ストーミーブルーマイカ
深い青。後期型で最終的に選べる青はこの色のみとなった。
- チタニウムグレーメタリックⅡ
FD3SのSPIRIT Rのイメージカラーの後継色。深みのあるメタリック。
- メトロポリタングレーマイカ
後期型専用色。メタリックよりもよりフラットなグレー。
- ライトニングイエロー
モーターショー等で展示されていたコンセプトモデルの色をモチーフにしている。前期型のみ存在。
- ベロシティレッドマイカ
前期型のイメージカラー。メタリック系ではない赤としては劣化しにくいとの事。後期型でも同色で存続。
- サンライトシルバーメタリック→アルミニウムメタリック
明るい銀。後期型になりアルミニウムメタリックが後継色となった。夜は鏡のように反射する。アルミニウムメタリックはSPIRIT Rでも選択できる。
- ブリリアントブラック
フラットな黒。後期型まで存続。
- スパークリングブラックマイカ
ブリリアントブラックよりもクリスタル調な煌きのある黒。SPIRIT Rでも選択できる。
- ノルディックグリーンマイカ
ライトニングイエローよりも珍しい深緑色。前期型のみ存在。
- ファントムブルーマイカ
ライトニングイエローやノルディックグリーンマイカよりも珍しい青緑(浅葱)色。中期型のみ存在。
グレード
この車種には初期型では3つのグレードが存在し、後期型ではさらに2つのグレードが追加された。
メーカー純正の追加パーツも存在する。
Type-G
- 馬力:前期 210PS/7200rpm、後期 215PS/7450rpm
- トルク:前期 22.6kgf・m/5000rpm、後期 22.0kgf・m/5500rpm
- ホイール:前期 16インチアルミホイール(225/55R16)、後期 17インチアルミホイール(225/50R17)
- トランスミッション:前期 5MT/4AT、後期 6AT
- AM/FMチューナー&4スピーカー
最初期のカタログではベースグレードとされ、Type-Gの名は冠していなかった。
5速MT・4速ATが選択でき、馬力が低い代わりに実用トルクが増していて扱いやすい仕様。
豪華装備もオプションで装着可能だった。後期になってからはMTが選択できなくなった上にトルクも下がり、事実上最低グレードとなってしまったが、最後まで終了限定盤であるSPIRIT Rと共に販売された。
トルセンLSDはMT車のみの設定である。
当グレードは後期になってもDSCが装備されず、安全面でも最低限のものだった。
Type-E
- 馬力:MC前 210PS/7200rpm、MC後 215PS/7450rpm
- トルク:MC前 22.6kgf・m/5000rpm、MC後 22.0kgf・m/5500rpm
- ホイール:MC前 16インチアルミホイール(225/55R16)、MC後 17インチアルミホイール(225/50R17)
- トランスミッション:MC前 4AT、MC後 6AT
- 本皮シート
- 電動パワーシート
- BOSEサウンドシステム
- クルーズコントロール
4速AT限定のいわゆる実用グレード。豪華装備をこれでもかと満載し、後にSPIRIT RのATグレードのベースとなる。
なお、Type-G、E共にATであってもレブリミットは8000で設定されており、AT車としてはかなりの高回転エンジンである。そのため燃費はMT以上に悪かった。
後期型ではなぜか馬力を上げてトルクを落とすという実用グレードとは思えない措置が取らた。これはエンジン規格をある程度統一する目的があった為と思われる。
Type-S
- 馬力:前期 250PS/8500rpm、後期235PS/8200rpm
- トルク:22.0kgf・m/5500rpm
- トランスミッション:6MT
- ホイール:18インチアルミホイール(225/45R18)
- フロントフォグ
- BOSEサウンドシステム
- アルミペダル
前期型の最高グレード。6MTのみの設定であり事実上のスポーツグレードだが、豪華装備も多数搭載した。
前期にはMAZDASPEEDの車両もあったので、そちらのほうがよりスポーツ志向だった。
後期型においてはブレーキローターの大型化やサスペンションの変更などによりスポーツ志向は高められていたが、新グレードRSを設定したこともあり、前・後期での差は少ないグレードである。
MAZDASPEED
- フロントノーズ
- サイドスカート
- リアアンダースカート
- リアウィング
- エアロサイドミラー
- Bピラーガーニッシュ
- マグネシウムホイール
- スポーツサウンドマフラー
- スポーツシート
- コンソールキット
- ルームミラーカバー
- サスペンションキット
- スタビライザー
- ストラットバー
- ドアスイッチパネル
- インナーハンドルベゼル
グレードというよりはオプション扱いであり、単品装着が可能であった。
後期型になるとエアロパーツ等は全滅。マフラー・ストラットバー・ホイールもなくなり、導入しても外見上わかりづらいパーツのみとなってしまった。
マイナーチェンジ
2008年3月10日にマイナーチェンジを実施。以降のものは一般的に「後期型」と呼ばれる。
主な変更点
エンジン・出力系
- ギア比の変更により低回転時のトルクを向上。エンジンもそれにあわせてチューニングが施され、馬力は235馬力と15馬力ほど低下しているが、加速性能が向上した。
- ノックセンサー(エンジンの異常燃焼を感知するためのセンサー)が1基から2基へと増設され、燃料マップの変更によりレギュラーガソリンへの対応が拡大している。
エンジン内部へのメタリングポンプによるオイル供給のインジェクターが2本から3本に増設され、より細かく制御されるようになった。メタリングポンプ自体も機械式から電磁式に変更されている。
- 全てのエンジンが高出力型と同じ6ポート吸気(6PI)となり、4ポート吸気のエンジンは消滅した(ただし4ポート吸気の出力とほぼ変わらないようにチューニングされた)。
- 触媒とマフラーが変更された。
インテリア・エクステリア
- 前後バンパー形状をよりアグレッシブなデザインへと変更。
フロントフェンダーのデザインも変更され、フェンダーダクトが無くなっている。テールランプも変更された。
- タコメーターには可変レッドゾーンシステムが採用された(水温が低い段階でレッドゾーンが低くなる)。
- 前期型には存在したセンターコンソール上部のカーナビが選択できなくなり、純正で装備できるのはインダッシュタイプかBOSEサウンドシステムのどちらか一方のみとなった。
- タワーバーでフロント回り、助手席インパネメンバー接合強化でステアリングマウント部の剛性感を向上。
さらにドア開口部の接合強化によって車体の剛性をアップ。
足回り
- サスペンションジオメトリーの変更。
リアサスペンションアームの取り付け位置が変更され、フロントはタワーバーの採用でねじり剛性をアップ。スプリングレートも向上させた。
- 電動パワーステアリングもソフトウェアのパラメータを変更し、以前より優れた操舵感を手に入れた。
ソフトウェアは欧州と日米で異なり、欧州のものはセンターフィール(車が中央に戻る感覚)重視、日米のものはクイック感を重視という違いが存在する。
- 6速ミッションがアイシン精機製から自社製となり、耐久性が向上。カーボン製シンクロの採用。
その他
- オイルフィルターの位置がバルクヘッド近くのエンジン上面から下面に移動。
- オイルパンの形状やデフケースの冷却フィンの追加。オイルパンのアンダーカバーの形状を変更。
後期型追加グレード
Type-RS
- 馬力:235PS/8200rpm
- トルク:22.0kgf・m/5500rpm
- トランスミッション:6MT
- 大型エアロバンパー(フロント)
- サイドアンダースポイラー
- リアスポイラー
- RECARO社製シート
- ビルシュタイン社製ダンパー&ハードサスペンション
- 発砲ウレタン充填フロントクロスメンバー
- 19インチアルミホイール(タイヤサイズ225/40R19)
- フロントフォグ
基本装備はType-Sと同様。MAZDASPEEDが撤退した分スポーツ志向の装備を追加している。
19インチのホイールはチェーンが装着できないなど実用面での難点はあるが、それにあわせたサスペンションセッティングがなされており、スポーツ走行での安定感から町乗りでの乗り心地までトータルで高い次元に仕上がっている。
SPIRIT R
2012年6月の生産終了に際し、最終限定型として設定された限定車種。
生産終了までType-Gと合わせて限定1000台で販売される(この台数は元々雑誌等が推察したもので、最終的に想像以上にオーダーが入った為2000台に増産した)。
基本装備はType-RSに準拠する(MT車)が、インテリアカラー、ホイールカラー(19インチのみ)、ブレーキキャリパーカラーが変更された。
Cピラー(後部座席の後ろにあるピラー)に「SPIRIT R RX-8」と描かれたオーナメントが装着される。
走りの性能面では表立った変化はないが、エンジンは熟練工による手組みとなっている。
ヘッドランプやテールランプもブラックベゼル化したことに加え、耐水性能も向上。
その他にも、通常の後期型が前期型のパーツを改修して使っていた部品がワンオフ化していたりと、細かな改善点が多数存在する。
このタイプはフルノーマルのナビやエアバック等も装備した状態で筑波サーキットで1分9秒284をマークしており、前期型がノーマルでは1分11秒台程度だったことを考えると、9年間の熟成が感じられる。
水素自動車仕様
水素を燃料として走るタイプも存在した。
ロータリーエンジンはその構造上、水素燃料と極めて相性がよく、わずかな改造だけで水素仕様にできたのである。
新たなエコカーとして定着するかと期待されたが、ごく少数がリース車両として供給されるにとどまり、市販には至らなかった。
炭化水素化合物であるガソリンと比べて燃焼で得られるエネルギーが少ない水素をエネルギー密度の低いガス状で使用したことからガソリン仕様に比べて極めて非力であったこと、スポーツカー由来のタイトで低いボディー形状の制約から充分な量の水素を積載できず水素で走行できる距離が短かかったこと、当時(2006年)は水素ステーションがほとんど存在せず 前記の積載量の少なさと相まって ガソリン車として走らなければならない機会が多くエコカーとしてのメリットがほとんど生かせなかったこと、そして高額なリース費用(1ヶ月で40万円!)が原因であったとされる。
車なごコレクションにおけるRX-8
2014年12月から2017年1月31まで配信されていたスマートフォン用ゲームアプリ「車なごコレクション」にも登場。
関連イラスト
関連動画
ビデオカタログ
エンジン取り扱い説明動画
関連項目
笹本先生(GA芸術科アートデザインクラス):第4巻61ページの内装描写から彼女の愛車と思われる。
X-MEN(実写映画2作目でオリジナルのエアロが装着されて登場している)