概要
『マジンガーZ』を永井豪自身がリメイクした漫画。講談社のマガジンスペシャルで連載された。全5巻。
ギリシア神話の要素を多く含んでおり、設定は後の『真マジンガー 衝撃!Z編』にも大きな影響を与えている。
キャラクターなどは現代風にリ・デザインされており、甲児も茶髪のイケメンに変更されている。
単行本第1巻のあとがきによれば、
『マジンガーZ』が漫画作品としては完結していないことを踏まえて企画された作品であり、『マジンガーZ』の完成版を目指した。
とのこと。
当時は『マジンガーZ』以外にも連載を複数持っており、なおかつ『デビルマン』にも力を入れ過ぎてしまっていた。そのため本人は、漫画としての『マジンガーZ』には、不満があったという。
連載から26年後。設定を大きく見直し、光子力・超合金Zといった要素は省き、新たな世界観を模索。かつての敵であるミケーネ帝国は、ギリシア神話をモチーフとした『超次元宇宙オリンポス』に変更。ギリシャ神話における登場人物や設定を、マジンガーの世界観に組み込む形で処理された。
しかし、オリンポスとの戦いは決着を見ないまま、「第一部完」で終了してしまった。連載当初はテレビアニメ化も予定され、パイロットフィルムも制作されたが、こちらも企画は頓挫している。
当初の予定通りにはいかなかったものの、ゼウス神など、後のマジンガー関連作品に与えた影響は大きく、それらの設定は後続の作品へと組み込まれている。
あらすじ
数千年前のギリシア。高次元宇宙オリンポスに住まう金属生命体たちは地球人から「神」と呼ばれていた。その中のゼウスは、地球人を守るためオリンポスの神々に戦いを挑み、その体を賭して地球を守り抜いた。
時は流れて現代。日本某所の高校の考古学クラブ所属の兜甲児は友人の弓さやかと共に「ギリシア風の遺跡が見つかった」という山に向かうが、そこで地震に巻き込まれて地割れに飲み込まれてしまう。そこで目にした物は、巨大なロボットの姿だった!
一方、オリンポスの神々の帝国「ゴッズ・エンパイア」と手を組んだマッドサイエンティスト・Dr.ヘルは、地球を征服するため日本に侵攻する。目覚めた甲児はロボットに乗り込み、これを動かす。ロボットの正体は、神々の攻撃を受けて表皮の剥げ落ちたゼウスだったのだ…。
登場人物
兜甲児
他の媒体と比べて茶髪が特徴。サッカー部に所属している。ゼウスからそのボディを託され、地球人として唯一操縦できるために、Zマジンガーのパイロットとなる。そのため、日本政府から三年間十億円の契約金と引き換えに雇用される事に(ただし契約金は母と姉に取られ、本人の手元には残らなかったりする)。
弓さやか
甲児の幼馴染。甲児とは交際しており、周囲も認める仲。後にゼウス神に共鳴した女神・アフロディアのボディを託され、操縦者となる。
弓シロー
本作ではさやかの弟として登場。
弓博士
さやかとシローの父。ロボット工学の権威で、超科学財団「H-S-F」の代表。ゼウス神のボディを改造し、Zマジンガーとして再生させた。
棒田進(ボス)
甲児の友人で柔道部キャプテン。
ムチャ
野球部所属。甲児の友人でボスとはバイク仲間。
抜田博士(ヌケ)
弓博士の友人である科学者。
棒田刑事
ボスの兄で警視庁特捜課の警部。機械獣関連の事件を追う。
剣鉄也
元自衛隊の隊員。MR-ⅡことZスクランダーのパイロットとして甲児と戦う。
炎ジュン
甲児のトレーナー。後にAウイングのパイロットとなる。鉄也とは恋人同士。
兜刀子
甲児の母。父親が行方不明になり、女手一つで兜家を支えてきた。古武道・兜流格闘術および剣術の継承者で、さやかにその技を伝授させる。
兜鉄子
甲児の姉。ちゃっかりした性格で、甲児がZマジンガーのパイロットになった事で、契約金をあてにしてスポーツカーをねだっている。
兜はがね
甲児の妹。母の刀子とともにあしゅら男爵に襲われ、アフロディアに助けられる。
本作のヘルは、地球征服のため、人類を裏切りオリンポスの機械神たちに仕えている。既にその身体は多くが機械化されており、『ヘル・ギガンテス』と名乗り、機械獣と接続されている。
あしゅら男爵
本作のあしゅら男爵は、男女の半身が合体したものではなく、生身の肉体に近い男女と、機械体の男女の、計四体のボディを持ち、それぞれ左右に分離し、自在に合体する。
そのため、組み合わせ次第で、元祖のように生身の男女体が半身ずつ合体する他、機械の男女体が半身ずつ生身の男女体に合体する形体も取れる。そのため、あしゅらは都合四体が存在し、四体で行動する事が可能になる。
ヘルの配下として、機械獣軍団を統率し暗躍する。
ロボットとしてのZマジンガー
Zマジンガー
後述するゼウス神の、精神体を無くしたボディを素体にして再利用・改造する事で完成した巨大ロボット。
その表面装甲は、ゼウス神が着ていた鎧を用いている。顔部分は、ゼウス神の顔部分の表皮を損失したため、歴代マジンガーと同様の顔になっている。
改造を行ったのは、弓博士および「H-S-F」スタッフ。コックピットは頭部の、元はゼウス神の精神体が内蔵されていた部分に存在していたが、後に(パイルダーに相当する)『ブレーン・ホーク』と呼称される小型飛行体が合体し、コックピットとなるように改造されている。
ゼウス神の時から有していた、微弱な重力軽減機能を用い、ブースターなどを用いずに大きくジャンプしたり、水上を沈むことなく浮かんで歩行したりする事が可能。
目からはZビーム(光子力ビームに相当)、口からルストサイクロン(ルストハリケーン同様、金属を溶かす風を出す)を放つ。両腕はロケットパンチ同様に飛ばして攻撃する。
胸部装甲は分離し「Zバード」という分身に変形。誘導攻撃を行う。ただしブレストファイヤーに相当する武装は出てこなかった。
また、ゼウス神が発掘された背臼山地下遺跡から発見された、20mほどの長さを有するゼウス神専用の大剣「ゼウスブレード」を武器として用いる。
元祖マジンガーZ同様に、単体での飛行能力を備えていないが、ジェットスクランダーに相当する「Zスクランダー」と合体し、飛行能力を有するように。
MR-ⅡことZスクランダーは有人式で、剣鉄也が搭乗し操縦。Zマジンガーの重力軽減機能を用いて合体時の負荷を軽減する(そのため、グレンダイザーのダブルスペイザーに近い)。機体にはゼウスブレードを内蔵。更に後方からの攻撃に備えて、六門の機関砲を装備している。
ゼウス神
Zマジンガーの素体となった機械神。
オリンポスのゴッズ・エンパイアにおいて、最強の戦闘能力を有した、神の中の神。アフロディア曰く、様々な武術に精通。剣はもちろん、槍や金剛杖なども使いこなしていた。
四千年以上前に、オリンポスが地球を蹂躙しようとした際、地球を守るために神々に反旗を翻した。その結果、地球を守り抜いてゴッズエンパイアを退けたものの、深手を負い地中に埋もれていた。
歴代マジンガー同様の巨体を有するが、その額には本体である等身大のロボットが存在、「精神体」として接続されていた。
また、顔面部は人間同様の表皮が張られており、人間同様に表情を出す事も可能。その眼には瞳が描かれている。また、体表面には鎧を装着している。
発掘された際、甲児と遭遇。精神体が頭部から出て、直接相対する。
精神体はかろうじて稼働しており、経年劣化と過去の戦闘によるダメージを負っていた。その顔の表皮も多くがはがれ、ロボット然とした姿を見せている。そして起動直後に、甲児に事情と思いのたけを伝えた後、後を任せて機能停止する。
微弱であるが、その体内には重力を軽減する機能があり、「二足歩行する巨大ロボは、自重を支えられないために実現不可能」という理屈に対する説明になっている。
真マジンガーのアニメ劇中で、一部が映像化されている。