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概要

カルダン駆動方式とは、主電動機を台車枠あるいは車体、つまりバネ上に装荷し、継手を介して台車の歯車装置に接続する方式のこと。

構造は単純だが、バネ下重量が大きくなりがちで車両の高速化に向かない吊り掛け駆動方式の欠点を解消するべく登場した。継手が車軸からの衝撃や変位を吸収するため、電動機にかかる衝撃を考慮しなくても良くなり、結果として動力系の軽量化・さらなる大出力化を図ることができる。

呼称について

「カルダン」とは自在継手、すなわちカルダンジョイントを指す。電動機の装架の仕方を少し工夫しただけの吊り掛け駆動に対し、高性能で複雑な構造の継手を用いることから対比として「カルダン駆動」の呼称が広まったと思われる。

中空軸平行カルダン駆動・中実軸TD平行カルダン駆動は、バネ上に主電動機を装架し、継手を介して歯車装置と接続する点では同様だが、継手にはたわみ板が用いられ、カルダンジョイントとは構造・性質共に大きく異なるため、実は純粋なカルダン駆動方式として分類することはできない。しかし、登場した頃は既に高性能な駆動装置の形態=カルダン駆動という認識が広まっていた為か、これらも一貫してカルダン駆動方式の一種として扱われ、現在に至る。

また、歯車継手を用いるWN駆動方式も、バネ上に主電動機を装架し、高性能な継手を用いることと、吊り掛け駆動に代わる駆動方式として考案されたという点では同一であるため、車両諸元などでカルダン駆動として扱われることが多い。ただし、たわみ板継手の存在もあってか、こちらはより明確な区別をされる傾向にあり、WN駆動をカルダン駆動に当て嵌めない論評もよく見られる。

形態

直角カルダン駆動方式

台車枠に、車軸と直角になるように主電動機が装架され、継手を介して小歯車と接続される方式。小歯車には傘歯歯車が用いられ、これが車軸に対する直角の元となる。継手はカルダンジョイント+プロペラシャフトが主流だが、WN継手やTD継手を用いることもある。

電動機のスペースを大きく取ることができ、容積に比して大出力化が容易だが、駆動装置全体が大きく、重量も大きいのが欠点。

日本においては、多くの鉄道事業者が初期のカルダン駆動車に採用したが、主に前述したデメリットの都合から、平行カルダンやWN駆動の採用が進み、2000年代まで相模鉄道が採用していた程度である。

構造上あまり歯車を大きくできないため、歯数が少ないことによる低音基調の走行音が特徴。


また、主電動機を台車枠ではなく車体に装架した車体装架カルダン駆動方式も、広義の直角カルダンに含まれる。此方は超低床車での採用が多い。


中空軸平行カルダン駆動方式

車軸と平行に主電動機が装架され、たわみ板継手とねじり軸を介して歯車装置に接続する方式。たわみ板継手+ねじれ軸継手式とも言える。たわみ板は特殊鋼でできており、正方形状の枠のような板が上下左右に変形して変位を吸収する。開発元は東洋電機製造。

平行装架は電動機の前後を台車枠に挟まれるので、スペースの制約が厳しく、特に狭軌の鉄道においては車軸方向のスペースを食うWN駆動方式は採用しにくかった。

そのため、主電動機の軸を太めの中空軸とし、その軸を電動機後方にある1枚目のたわみ板に接続、1枚目のたわみ板を中空軸内部を通したねじり軸と接続し、さらにねじり軸と小歯車を、前方にある2枚目のたわみ板を介して接続するという、やや複雑な構造となっている。薄型のたわみ板継手を主電動機の前後に配置することで、スペースの増大を抑制している。

また、登場当時はたわみ板の許容変位が小さかったため、中空軸内部の空間で変位量を稼ぐ狙いもあった。

動力は中空軸→後方たわみ板→ねじり軸→前方たわみ板→小歯車の順に伝達する。


前述の通り、日本においては狭軌が多くを占めるので、電動機の直径は大きくなるものの狭軌でも大出力化に向く本方式が、国鉄101系を始め多くの鉄道事業者に採用された。しかし、たわみ板の性能向上とVVVFインバータによる主電動機の小型化・大出力化もあってTD継手やWN継手が普及することとなり、現在では新規に採用されることはほぼない。

後述するTD継手と同様、速度が上がるにつれて低い唸り音が鳴るのが特徴。


TD平行カルダン駆動方式

主電動機は中実軸で、たわみ板継手を2つ重ね合わせた構造の継手(TD継手)を介して小歯車と接続する方式である。TDとはTwin Disc(2枚の円盤)や開発元のToyo Denki(東洋電機)の略称であるという説がある。

たわみ板を電動機の前後に配置していた中空軸方式とは異なり、たわみ板継手が2セット並んだだけのシンプルな構造。主電動機・小歯車と接続する外側フレーム、モータ側・歯車装置側2つの継手を連結する中間フレーム(中間継手)、フレーム同士を接続し変位を吸収するたわみ板で構成され、線路からの飛石による破損対策として主電動機に継手を囲い込むカバーが設けられるか、フレームでたわみ板を覆ってしまうかの2つの形態を採る。後者は継手全体が丸いのが特徴。

たわみ板の素材には特殊鋼(しなやかな合金)が用いられていたが、近年はより柔軟性があり、強度の高い炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が用いられる。また、たわみ板は同じものを2枚重ねで使用されるのが主流だが、単枚のものや騒音対策のため特殊鋼とCFRPを併用したものも存在する。


WN駆動方式とは継手の違いを除けば完全に同一で、現在の新車採用ではWN駆動とTD駆動に大別される。

定期的に注油が必要なWN継手と異なり、注油が必要ないため保守が容易で、劣化があればそのまま処分されるので管理がしやすく、スケールメリットが得やすい。そのため、JR西日本を除くJR各社の在来線車両にはほぼ全てにこの継手が採用されている。

構造上、WN継手よりも単純な強度は劣るため、新幹線車両は営業車両では700系の一部およびN700系のグリーン車のみで採用例がある程度であり、700系およびN700系を含め現在もWN駆動が主流である。


WN継手と違って高速回転時や惰性走行時の床振動や騒音(「ガー」「ゴロゴロ」と形容される鈍い音)が発生せず、WN継手より低騒音であるというのが通説である。しかし、WN継手と比較すると、主に中速域から高速域にかけて低い唸り音(「ヴゥーン」「ブーン」という低音)が発生し、車両によっては力行・制動時に「ギィィィィーン」という金属音を思わせる騒音が発生する。主な原因はたわみ板の変形収縮・歯車装置との共振と継手本体の風切り音であり、うち後者はカバー&フレーム一体化構造を用いることで解消できる。

これらの音は比較的聞こえやすく、音質も耳障りなので、一概にWN継手より騒音が少ないとは言えない。


垂直カルダン駆動方式

垂直方向に回転軸のあるモータ(つまり縦置き)を備え、モータ軸のギア、被駆動用のギア、その軸に接続された傘歯歯車、車軸と一体の大歯車の順で動力を伝達する。モータと車軸の変位は線路と垂直方向の動きに収束するという考えから、被駆動用ギア-傘歯歯車を繋ぐ軸をドライブシャフトにして変位を吸収している。これによりカルダンジョイントなどの撓み軸継手が必要ないのが強み。

日本の神鋼電機(神戸製鋼グループ、現:シンフォニアテクノロジー)が開発した日本独自の装架方式で軽便鉄道などに導入されたが、メンテナンスが複雑なため試作採用で終わった。


車体装架カルダン駆動方式

車体に装架したモータから継手などを介し車軸を回す方式。基本的に車軸と直角配置のため、直角カルダン方式の派生と言える。

日本では戦後すぐに気動車を改造した電車や名古屋市電800形などに採用例があった他、1990年代以降のMAN→ボンバルディア設計の超低床電車やアルナ工機→アルナ車両設計のリトルダンサータイプU・Ua・C2で実績がある。

海外ではイタリアのペンドリーノが、強制車体傾斜機構付き故に台車に装架できないことから採用しているのが代表的。


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鉄道車両 WN駆動方式 歯車比

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