「後方の惑星ごと吹っ飛ばせ。ミサイル発射!」
CV:寺田誠
概要
『宇宙戦艦ヤマトIII』にて登場したガルマン・ガミラス帝国の軍人。本作でヤマトが最初に交戦した敵であると同時に、本作における地球滅亡の危機の元凶である。
地球とガミラスの関係を知らなかったためガミラス人ではなくガルマン人であると思われ、2024年11月刊行の小説『宇宙戦艦ヤマト黎明篇』にて公式でも明言された。
人物像
東部方面軍総司令ガイデル提督の部下であり、第18機甲師団艦隊を率いる猛将。
茶髪を9:1分けにした髪型と割れ顎が特徴。
その性格は一言で言えば目的のために手段を選ばない男。敵艦隊を殲滅するために惑星破壊ミサイルを使って敵艦隊近くの惑星を破壊することは序の口で、第三国の領空を侵犯することや、目標を誘き出すために非戦闘艦を攻撃することも平然と行うほか、戦況が不利になれば味方を見捨てることも辞さない。一方で流れ弾となった惑星破壊ミサイル(立派な戦略兵器)を放置するなど、戦闘の事後処理は杜撰。
しかし、この強引な姿勢が東部方面軍の破竹の勢いにも繋がっており、進撃の一点に限ればかなり優秀な軍人である。上官であるガイデルからの信頼も厚い。
乗艦は当初中型戦闘艦を使用していたが、ヤマトとの最終決戦では円盤形白色旗艦に乗っている。
経歴
太陽系も位置する銀河系東部方面の星々に侵攻を続けており、物語冒頭ではボラー連邦の保護国であるバース星の艦隊と交戦。その際に使用した3発の惑星破壊プロトンミサイルの内の1発が流れ弾となり、太陽系まで到達してそのまま太陽へと命中。これによって太陽の核融合異常増進が発生し、地球滅亡の危機が訪れるが、ダゴンはそんなこと知る由も無かった。
猛進撃を続けるダゴン艦隊はバース星へと到達し、ラム艦長率いるバース星の主力艦隊と数度交戦して、これを壊滅させる。しかし、旗艦であるラジェンドラ号が逃走したため、太陽系まで追撃を行い、そこで遭遇したヤマトに対して修理中のラジェンドラ号の引き渡しを要求する。
ラム艦長との直接交渉により、修理が終えて出てきたラジェンドラ号とともに地球連邦の領域外まで出て戦うことになったが、ダゴンは端から地球も侵略の対象に含めていたため、ラジェンドラ号が太陽系から出る前に攻撃を開始し、領空侵犯を抗議するヤマトに対しても攻撃を加える。
戦闘の末ラジェンドラ号の撃沈には成功するが、ヤマトの反撃に遭って艦隊が壊滅。他の艦を囮にし、自艦を含めた4隻だけで撤退する。格下と思っていた国のわずか1隻の艦により艦隊を失うという大失態によりガイデルからは強く叱責され、汚名返上のためにダゴンはバース星攻略を中断し、ヤマトを執拗に狙うようになる。
バーナード星系第1惑星の前線基地に戻ったダゴンは、ヤマトを惑星までおびき寄せ、新反射衛星砲により撃沈しようと目論むが、攻撃の要を担う反射板搭載機を全機撃墜されたうえ、基地も発見されてしまい、最終的に波動砲で基地は消滅する。
辛うじて基地からの脱出に成功し、ガイデルのいる東部方面軍前線司令本部まで戻ったダゴンだったが、二度にわたる敗北でいよいよ崖っぷりに立たされることになる。ダゴンは航空戦力の不足が敗北の原因だったと考察(実際どちらの戦闘もコスモタイガーⅡやコスモハウンドが大きく活躍している)。それを聞いたガイデルは最後のチャンスとして本星から到着したばかりの第17空母艦隊を与え、ダゴンはヤマトとの最終決戦に臨む。
白鳥座星域において地球連邦の気象観測船を攻撃することでヤマトを誘き出すと、二連三段空母による絶え間ない航空戦力の投入によってコスモタイガー隊の補給の隙を突き、ヤマトの機関部へダメージを与え、白色座の宇宙気流へと誘い込んだ。間一髪で宇宙気流を脱出したヤマトを、今度は瞬間物質移送機で波状攻撃を仕掛けることで近くの小惑星へと追い込み、艦隊で包囲する。
しかし、自身を何度も追い詰めたヤマトの性能を高く評価したダゴンは、鹵獲しようと欲を出し、ヤマトに降伏の猶予時間を与えてしまう。その時間が命取りとなり、ヤマトの反撃が開始され、空母艦隊はダゴン艦を残して全滅することになった。
艦隊を失ったダゴンは最後の手段として、白鳥座のブラックホールまで逃走し、追撃してきたヤマトを牽引ビームで捕らえ、ブラックホールへと引きずり込もうとする。しかし、ヤマトが起死回生で放った波動砲がブラックホールに吸い込まれる岩石に命中し、その衝撃波によってダゴン艦は大きくバランスを崩し、牽引ビームは消失。ダゴンは断末魔を上げながらブラックホールへと吸い込まれて戦死した。
『宇宙戦艦ヤマト黎明篇』第2部「マリグナント・メモリー」では、回想シーンでガルマンがボラーに支配されていた時代のダゴンが登場する。「ガルマン解放軍」という組織の一員であり、ガイデルとはこの頃から上司と部下の間柄。当時から勝利のためには味方の犠牲を厭わない危うい面があったという。
余談
- 初期設定名は「グドン」。また、「ダゴン」は元々バース星の初期設定名であり、敵として直接戦う相手の名前が本編では自分の名前になるという奇妙な光景となった。
- 彼の声を演じた寺田誠(現・麦人)は前作『ヤマトよ永遠に』でも敵役であるカザンの声を演じているほか、「宇宙戦艦ヤマト2199」シリーズではヤマト初代機関長である徳川彦左衛門を演じている。
- 「ロマンアルバムデラックス43」のキャラクター紹介ページでの声優インタビューによると、寺田氏がアニメの仕事で初めてファンレターを貰ったのがダゴンの役であるとのこと。
- 髪型が当時の西崎義展とそっくりなため、彼をモデルにしたんじゃないかとシリーズファンの間では度々囁かれている。
- 第7話では、撮影ミスにより酒場でのヤマト乗組員の喧嘩シーンでダゴンの絵が重なってしまっており(しかもちょうど窓が大きく映るカットで、その窓が割れると同時にダゴンも消えるため、まるで酒場の窓をモニターにして映っているようにも見える)、「酒場に現れたダゴン」「喧嘩を眺めてるダゴン」などと一部ファンの間にネタにされている。
関連タグ
宇宙戦艦ヤマトIII ガルマン・ガミラス帝国 二連三段空母 惑星破壊ミサイル
この先、シリーズに関する大きなネタバレが含まれます。
『宇宙戦艦ヤマト黎明篇』第2部「マリグナント・メモリー」にて、なんと物語の中心に立つ敵として再登場する。ただし、生き返ったわけでは無く、本作の黒幕〈重力思考体〉(※リンク先ネタバレ注意)の手によって彼の意識データから再生された、有体に言えば亡霊のようなものである。
〈重力思考体〉はとある国家を傀儡として勢力を強めていたが、銀河交叉の被害から立ち直りつつあるボラー連邦が障害となる可能性があり、時間稼ぎのためボラーの目を自国以外に向けさせる必要があった。
〈重力思考体〉はブラックホールに吸い込まれた物質の情報を知覚・利用することができ、ブラックホールに墜ちて死んだダゴンのデータも有していた。そして、ヤマトに対する強い憎悪と怨念を持っていたため、その矛先をヤマトからボラーに改変したうえで蘇らせ、彼にボラーを攻撃させ、ボラーとガルマン・ガミラスの戦争を再開させようとしたのだった。
本作のダゴンは、生物の脳のように電気信号などで思考しているのではなく、〈重力思考体〉と同様に重力の波動を電気信号などの代わりにして思考する存在となっている(真田曰く「意識を持つ重力場」)。一応生前と同じ姿の肉体のようなものも持っているが、これは重力を媒体とした“ダゴンという人物の情報”を核に形成された未知の素粒子の集合体であり、地球の機器では重力センサーで辛うじて靄のようなものが認識できるだけで、中盤までは肉眼でしか姿を確認できなかった。
生身の存在ではないため、宇宙服無しでも活動できるほか、銃器なども全く効かない。さらには衝撃波を出して相手を吹き飛ばしたり、念じるだけで兵器を操れるなど、傍から見たら超能力みたいなことができる(ダゴン自身は何故そんなことができるのか疑問に思わないように意識を誘導されていた)。さらにはブラックホールを中継点に数万光年の移動を行ったり、光量子コンピュータの中に潜り込んだりすることすら可能で、完全に人間を止めている。ただし、重力の塊みたいな存在なので、不意の重力振には弱い。
生前の記憶は朧気であり、〈重力思考体〉によって植え付けられたボラーへの復讐心のみで行動している。しかしガイデルによると本来ダゴンにはボラーへの憎悪などは無く、あるのは勝利への渇望、そしてデスラー総統への強い忠誠心だけであったとされ、ガイデルはボラーへの復讐を叫ぶダゴンの声を聞いて「(黒幕は)ダゴンという男を全く理解していない」と大笑いしていた。
物語中で彼を知る者達との邂逅により時折記憶を取り戻しかけることもあったが、〈重力思考体〉が彼の思考に介入することで防がれ続ける。
ダゴンは銀河交叉時に放棄されたガルマン・ガミラスの基地に残された兵器を利用してボラー連邦への攻撃を開始。段階的に攻勢を強めることでボラー側が一か所に戦力を集中させるよう仕向け、そこを一網打尽にしようとした。この計画はある程度成功し、集結したボラーの戦力の約3割を損失させるが、古代達「銀河難民救助隊」の活躍によって完遂はできずに終わる。
終盤、ダゴンの本当の憎悪の対象であるヤマトの元乗組員たる古代が彼に対して直接名乗りを上げたことで記憶を完全に取り戻し、〈重力思考体〉の操りの糸も引き千切り、復讐心の矛先をボラーから本来の相手であるヤマトへと変更。古代に重傷を負わせて自分と同じくブラックホールに墜ちるように誘導した後、太陽系へ赴き再建中のヤマトに侵入する。しかし、ヤマトのコンピュータより読み取ったデータからデスラーがヤマトと和解した事実を知りショックを受け、その瞬間に波動エンジンから放たれた重力振を受けて消滅した。
…と思いきや完全には消えておらず、事件が終結した後、デスラーの下を密かに訪れる。自分が敵として戦った者と手を取り合う真意をデスラーに問うと、彼は一国の君主としての自ら矜持を語った。その姿にかつて自分が忠誠を誓った頃と何も変わらぬ偉大な人物であると認識したダゴンは、満足して今度こそ完全に消滅した。
黒幕に利用される哀れな存在ではあったが、最後に心だけは救われることとなった。