概要
兵庫県神戸市で行われている艦これのオンリーイベント「神戸かわさき造船これくしょん」。
2020年は新型コロナウイルス感染症の流行によりコミックマーケットを含む大小様々は同人即売会が中止に追い込まれる中、主宰者は「感染防止対策を徹底して開催する」とし、2020年8月16日に神戸国際会議場で「神戸かわさき造船これくしょん7」が開催された。
しかし、そこで予想だにしない、2名のサークル参加者による炎上騒ぎが発生した。
参加者の行動とその後の影響から艦これの運営元であるC2機関が動くことになったことで、外部のニュースサイトでも取り上げられており、下手をすれば艦これのみならず、他のオンリーイベントにも波及しかねない極めて深刻な事態と動揺するものもいた。
問題とされる行動
ここでは、問題のサークルである「川崎組榛名会」をA、「#艦これはみんな仲良く」をBとする。
トレパク合成グッズ
サークルAにて海上自衛隊の制服を着た榛名が描かれたクリアファイルを1枚300円で頒布していたのだが、イベント終了直前になってその榛名のイラストが「公式イラストレーターのコニシが描いた複数の絵からのトレパクではないか?」という疑問が持ち上がり、有志が検証した結果、海自きりしまと2018年末の一番くじが初出のクリスマス榛名の表情をキメラ合成したトレパクであることが確定した。
余談になるが、有志によってAサークル主宰者であるなのとらのpixivアカウントが掘られた結果なんと、過去にガルパンでもトレパクを行なっていたことが発覚した(現在、該当作品は全て削除されている)。
しかもキャラクターのみならず、 ロゴにまで手を出しており、ガルパン公式が同人グッズの作成を禁止している原因なのでは、という嫌疑まで掛けられる始末である。
フェイスマスク他の作成
サークルBが田中謙介氏の顔をプリントしたフェイスマスクを「田中Pのコスプレ」と称して作成。それが田中氏の肖像権を侵害しているのではないかとされた。
サークルB主宰者である小岡賢治は当初は前述の通り「コスプレである」と主張していたが、神戸かわさき造船これくしょんでのコスプレは参加費を払う許可制であり、イベントの規約に違反していることになるという意見もある。
それに加え、頒布した新刊の奥付にスペシャルサンクスとしてC2プレパラートや田中謙介、さらには全く艦これと関係ない人物や団体のX(旧Twitter、以下Twitterと表記)アカウントが当事者に無許可で掲載していたことが発覚し、大きな問題となった。
また同人誌の内容も田中氏やC2機関及び関連する事業に対するほめ殺しのみならず、誹謗中傷及び事実無根のデマを犯罪行為と結びつける内容を掲載しており、人によってはヘイト創作と感じられるものであったこともそれを加速させた。中には「ネット上での艦これアンチのノリを同人即売会というリアルの現場に持ち込んだ」ことを恐怖する参加者すらいたほどである。
原因
即売会主催側の問題と考えられているのは、見本誌のチェック漏れである。
通常は一律で義務付けられている見本誌の提出だが、当日は「新型コロナの感染防止対策」名目で簡略化され、グッズ類に対するイベント主宰者のチェックが甘くなっていたとされており、その脇をすり抜けてしまった、という意見がある。
各所の反応
この件についてC2機関はTwitterにて「残念なことに先日行われた同人誌即売会で、一般的な同人活動の枠を大きく外れた法に抵触する悪質な販売が複数あった報告を受けました。また、それ以前より、関係社/者への業務妨害や誹謗中傷に該当する報告もあります。該当案件は確認を行い、今後必要な警察への通報や法的処置を順次行っていきます」という声明を発表。
後日、本件については民事ではなく刑事事件として対応していることを発表した。
また、サークルBの同人誌の奥付に勝手にTwitterアカウントを載せられた人物が、神戸かわさき準備会に対して回答期限付き公開質問を送付した。
騒動と無関係の人物による礼を失した発言が多くなるに伴い、戦艦大和会から「便乗しての発言は酷い」、また駆逐艦菊月會からも「意図してのものか否かに関わらず、分断を煽るような言動には、界隈内部の自浄作用が働くことを期待します」という声明を出した。
神戸かわさき造船これくしょんの主催者は「【頒布物について】皆様にご心配と御迷惑をおかけしております。 公式運営・関係者様より連絡があり次第、協力を行い厳粛に対応いたします。また、今後の開催については判断保留とし対応を検討させていただきます。」とツイートし、頒布ルールの大幅な見直しを余儀なくされたことから、予定されていた12月27日の開催は2021年8月15日に延期されることが発表され、1年間の開催休止となってしまった。
また、この問題を起こした両サークルはサークルの活動に問題がないことを確認できるまで、当初は一般参加も含めて神戸かわさき造船これくしょんへの出入り禁止処分となっていたが、C2機関から艦これの二次創作を今後一切禁止する処分が下されたことと、一部裁判沙汰へと発展したためか、サークルA・B主宰者の両氏は一般参加も含めて永久出入り禁止処分となった。
裁判、そして判決へ
2021年4月1日、C2機関から「訴訟の準備が整った」として、今春中に裁判の提起をすると公式Twitterで報告。
そして5月13日、サークルB主宰者に対し「東京地方裁判所に訴状を提出し、受理された」ことが報告され、「令和3年(ワ)第11118号損害賠償等請求事件(フェイスマスク事件裁判)」として正式に法廷での戦いが始まることになった。これに伴い、「法的措置が執られた以上、艦これオンリーに参加する資格は無い」と各イベント主催が判断し、サークルB主宰者は「軍令部酒保」「連合艦隊、名古屋へ!」「西海ノ暁」等、複数の艦これオンリーイベントの出入り禁止処分が科せられた。また、サークルA主宰者も、同様の出入り禁止処分が科されている。
2021年8月15日、「神戸かわさき造船これくしょん8」が約1年ぶりに開催されたが、両氏は先述の二次創作の禁止および出禁処分もあり、一般参加も含めて来場することは無かった。なお、サークルA主宰者はこの事件をきっかけに艦これの二次創作から決別した。そして2022年4月にはサークルB主宰者のTwitterのアカウントが、2023年10月にはサークルA主宰者のTwitterのアカウントがそれぞれ凍結されたことが確認されている。
2023年1月26日、東京地方裁判所よりサークルB主宰者は田中謙介氏に対して損害賠償金275万円、C2プレパラートに対して損害賠償金165万円を支払うよう判決が下され、原告、被告ともに控訴を行わなかったため、損害賠償が確定した(下記リンク「知的財産 裁判例集 令和3(ワ)11118号事件の判決」を参考のこと)。同年3月31日、C2機関はTwitterでサークルB主宰者より、損害賠償金440万円、利息分、訴訟費用合わせて475万円強が支払われたことを発表した。
この判決について、神戸かわさき造船これくしょん側はノーコメントとしている。
類似の事例
この節は神戸かわさきとは関係ないが、類似の事例のため掲載する。
砲雷撃戦の終了
2021年9月にはSDF主催の「砲雷撃戦よーい!」(以下、砲雷撃戦と表記)の開催を終了するお知らせのメールをサークル参加者に送付、今後の開催を一切行わないことも発表し、サイトも閉鎖された。
理由は当初、「諸般の事情」としていたが、実際はコロナウイルス感染症拡大の影響により、緊急事態宣言が発令されたことに伴う開催中止の発表後、舞鶴市の舞鶴赤れんがパークで開催された砲雷撃戦が開催を重ねるにつれて規模が大きくなり、最終的には公式イベントと誤解されかねないほど大規模になったことから、角川アーキテクチャが収益目的で非公式イベントを開催していると判断し、その警告書が主催の前川氏に送られたためである。
この影響で、砲雷撃戦のタイトルを使った同人誌即売会が出来なくなったどころか、東京都、むつ市、江田島市など、舞鶴以外の地域で砲雷撃戦の開催も一切できなくなった。
2020年12月の舞鶴砲雷撃戦で盗撮事件が発生、この際に「艦これイベント」と表記していたことから公式が苦言を呈していたが、これが前触れだとされる。
この影響で、北吸に設置されていた同作品のキャラクター看板が著作権者側からの警告で撤去され、東京で行われていた砲雷撃戦と軍令部酒保の共同開催は、SDFの開催撤退を余儀なくされ、高天原が主催する「軍令部酒保」の単独開催に変更された。なお、SDF主催による砲雷撃戦以外の艦これ特定艦オンリーの同人誌即売会は開催を継続する。
これについて、砲雷撃戦の終了から1年経過した2022年9月、艦これ速報の管理人は「規模が大きくなりすぎて権利者から要請があった」と終了理由を推測していた。
舞鎮駆逐隊の中止、終了へ
2022年9月12日には、team-orange-good主催の「舞鎮駆逐隊」が開催中止となったことが発表された。主催は中止の理由について当初は「諸事情」としていたが、ユーザーからの指摘によって以下のトラブルがあった。
- 旅行業法違反にあたる宿泊プランを行う予定だった
- 前述の警告があったにもかかわらず「作品名」を関した痛車の展示及びコスプレイベントを開催した。
- 同上の痛車イベントにてカーショップによる営利的なカスタムグッズ販売を実施していた。
- イベント主催者のサークルが同人グッズを「オリジナルグッズ」と称して通信販売を行っていたことが発覚した
- イベント内でもキャラクターのイラストを使った土産物や食べ物の露店が出展されるなどの行為が横行していた
- 上記に加えて、現地の土産物屋が店頭にキャラクターのスタンディを置いていた。(Googleマップのサムネイルなどに形跡が残っている。)
- 同土産店舗内で同人誌や同人グッズを常設販売していた。
- 「艦これ」以外のIPでも各作品で規定された同人ガイドラインを逸脱したグッズ販売が横行していた。
以上のことが見受けられたため同人活動の域を超えた版権にフリーライドした営利行為が日常的に行われ、現地関係者からも営利行為を擁護する言動が見受けられた。
また、削除はされているが主催側もイベントの中止要請を版権側による悪意の行動と邪推する恨み節の様な発言を行っていた。
これらの行為を鑑み権利者である角川アーキテクチャから翁氏や舞鶴市などに警告書を送り付けた。主催の翁氏は弁護士を介して誓約書を書かされ、以下の事項を決定した。
- 今後、舞鎮駆逐隊実行委員会及び関連団体による舞鶴での「艦これ」の同人イベントを行わない(艦これ以外のジャンルで別の団体によって主催されている同人イベント等は継続して開催されている。)
- 同作品の同人グッズの商用販売を行わない
- 舞鎮駆逐隊実行委員会の解散
我音がの氏から「今回の件は公式様(角川アーキテクチャ)から直接要請があるという他界隈を見ても稀かつ非常に重たい案件です」と中止の理由を仄めかし、舞鎮駆逐隊とも協力関係にあったと目される舞鶴市の商工会関係者と目される森本隆氏が動画で「角川アーキテクチャから警告書が届いていた」と動画で公表していた。
2023年6月24日、京都新聞が「「艦これ」公式コラボイベント、京都・舞鶴で初開催へ」という記事を掲載し、記事内に「しかし収益目的が強まったとして、2021年、2022年には著作権者側からイベント関係者に対して著作権侵害の警告文が出される結果になった。」と、著作権侵害の件が初めて公の場に出た。
まとめ
同人サークルがチェック体制の甘さを突いて好き勝手したせいでイベント運営、界隈全体、権利者、果ては無関係の第三者にまで大迷惑をかけたという深刻な事件である。
今後、同人イベントにおいてこうした問題サークルに対策を立てていくかもイベント運営の大きな課題になっていくだろう。
また、そして二次創作をカサに着て好き放題やり、権利者を本気で怒らせれば、多額の損害賠償金を支払されることとなる前例となった。
関連タグ
大洗町:ガールズアンドパンツァーブームの際は地元商店による版権侵害などが一部見られたが、現地で版権に関する勉強会やガイドラインの遵守などの努力と版権側が現地に窓口を設置し関係者が現地イベントに参加するなど融和的な施策で成功となった例。