概要
時間的・空間的に集中して多発する地震のことで、一般的にはその群れのなかに特別大きな地震(本震)がない状態を指す場合が多い。そのため前震・本震・余震といった区別がない。
規模の大小や継続する期間はまちまちで、数週間〜数ヶ月くらいで終わるものもあれば、数年単位で続いた例もある。マグニチュードはM5程度以下である場合が多いが、M6を超えるような群発地震が起こることもある。
規模の大きな地震(おおむねM6以上)の場合、本震の前に前震が発生したり、逆に本震の後に余震が多発したりすることは当たり前であるため、このような活動(前震‐本震‐余震型)を群発地震とはいわない。
群発地震の原因は色々あり、最も一般的なのは火山噴火に伴う群発地震(火山性地震)であるが、2020年以降に起きた能登群発地震(後述)のように、火山がない地域であっても稀に発生することがある。
過去の主な群発地震
松代群発地震
長野県の長野市松代町皆神山付近において、1965年8月3日から3年以上続いた群発地震。松代地震ともいう。
地震の総数は有感地震だけでも6万回を越え、総合的なエネルギーはM6.4の地震1回に相当する。
死者はなかったが、家屋の被害や液状化現象、地割れや地すべり、発光現象や湧水による被害、地鳴りなどが発生した。
松代群発地震は、マグマの冷却時に放出された地下深部の水が上昇し、岩盤の強度を低下させたために発生したと考えられている。
伊豆群発地震
静岡県の伊豆半島東方沖において、1978年頃から繰り返し発生した群発地震。伊豆半島東方沖群発地震ともいう。
地震活動は特に、伊豆半島東部の伊東市の沿岸から沖合にかけての領域(主に川奈崎の沖合を中心とした北西-南東方向の約20kmの範囲)で活発であった。
特に地震活動が活発化した1970年代から1990年代にかけて、伊豆半島とその周辺ではM6以上の地震も多発し、1974年に伊豆半島沖地震(M6.9)、1978年に伊豆大島近海地震(M7.0)、1980年に伊豆半島東方沖地震(M6.7)、1990年に伊豆大島近海地震(M6.5)が発生している。
群発地震の原因については、この地域が火山地帯であることから火山性地震ではないかと考えられたが(伊豆東部火山群)、それを裏付けるかのように、1989年の海底噴火により手石海丘という単成火山が形成されている。その後の調査により、この地域では群発地震の際にたびたび岩脈が貫入(マグマが地殻内を上昇)していたことがわかった。
能登群発地震
石川県の能登半島において、2020年12月から3年以上にわたって発生している活発な群発地震。能登半島群発地震ともいう。
群発地震の本来の定義は「M6未満の小規模な地震が時間的・空間的なまとまりをもって多発し、その群れのなかには本震ともいうべき極めて大きな地震がない状態。」であるが、能登の群発地震ではこの定義に反して規模の大きな地震も多発し、2022年に震度6弱(M5.4)、2023年に震度6強(M6.5)、2024年に震度7(M7.6)の地震が発生、年々地震の規模は増大していった。このうち、2023年5月の大地震については石川県が「令和5年奥能登地震」と命名し、2024年1月の巨大地震については気象庁が「令和6年能登半島地震」と命名した。
2023年12月まで、地震活動は能登半島先端(奥能登)の珠洲市付近に集中していたが、2024年1月以降は活動の範囲が一気に肥大、新潟県の佐渡島付近から能登半島西部までの範囲に急拡大した。
能登地方のように周辺に火山がない地域でこれほど大規模な群発地震が発生するのは極めて珍しいことであり、この群発地震の原因は地殻の中を上昇する流体(水)であることが判明、その量は東京ドーム23杯分にも及ぶことがわかった。