宿泊設備を持つことは勿論、レストランやバー、プールなどの設備を備え、
医師・看護師なども乗船しており、長期間の船旅を楽しめるようになっている。
ただし、こうした豪華設備は一等、せいぜい二等までの設備とされることが多く、三等は大した豪華さを持ち合わせていなかったことも多かった。三等といえば小さな洗面所と二段ベッドというみすぼらしい設備が当たり前だったのである。それでも、三等にも専用のロビーはあったし、それなりに楽しむことも可能であった。しかし、当時の三等客はマナーも悪く、狭い船室にぎっしりと詰め込まれ、一等スペースへの立ち入りも制限された。
一等と三等が比較されやすいのに対し、二等に対しては往時の資料も殆ど残っていないことも多い。基本的には二等船室は三等より多少豪華な程度の二段ベッドという中途半端なポジションだったが、レストランやサロンなどの共用スペースは、一等ほどでなくても比較的豪華でゆったりとしたスペースが用意されていた。だが、一等旅客は厳しいマナーに加え乗船名簿を客同士で共有し「高級サロンの一員」であることを船旅中半ば強制されたため、これを嫌う人嫌いの一部の富裕層(たとえば一部の売れっ子小説家など)は一等を避けて二等に乗ることも多かった。そんなことから、二等スイートなる妙なポジションの部屋を備えた船もあった。要は一等並みかそれ以上の豪華な船室だが、ソフトサービスは一等より劣る、というものである。
国際航路を旅客機に席捲された今、狭義の「豪華客船」に当たるのは、オーシャン・ライナーとしての高速性・剛健な船体を有する船舶に限られるとされ、現在はクイーン・メリー2くらいしか残っていない。殆どの場合は、「旅客を目的地に運ぶ」ことより「船旅を楽しんでもらう」ことを目的に運行されるクルーズ客船である。
また、太平洋フェリーや新日本海フェリーと言った公室・客室の豪華さを売りにしているカーフェリーをそう形容することもある(太平洋フェリーなどは、自船の定期外航路としてクルーズ事業も行っている)。