表記揺れ→魔法界
概要
『魔法つかいプリキュア!』のもう一人の主人公、リコの生まれ故郷である異世界。その名のとおり、魔法がごく一般的に使用されている。
魔法が存在しない人間界を“ナシマホウ界”と表現しており、住人たちは皆自分専用の魔法の杖を用いて魔法が使用可能。
本作のプリキュアは、この魔法界に語り継がれてきた「伝説の魔法つかい」である。
歴代のプリキュアシリーズの異世界の中でもかなり詳細な設定が作られているが、これは本作が魔法界と人間界を交互に行き交う作風のためである。つまり魔法界は変身前のプリキュアたちが日常を過ごす場所の一つとして存在している。
実際、一年の物語の約半分は魔法界を舞台にしているため、ある意味で本作はプリキュア史上初の異世界モノのアニメである(他のプリキュア作品では、異世界を舞台にした回は全体のほんの一握りしかやっていない)。
自然
広大な海が広がる中に、無数の島や、海中から直接生えた樹木が点在している世界である。
大陸のような大きな陸地は存在していないため、いわゆる海洋世界だと言える。
海中から生えている樹木たちについてはあまりに巨大なためにその上に町ができている。その中でも最大のものが「母なる樹」と呼ばれる大樹であり、そこに魔法学校が存在する。
41話で魔法学校の地学の講義で語られたところによれば、魔法界の全ての陸地は母なる樹の一部であるらしい。つまり、魔法界のあちこちにある「海中から直接生えた樹木」は大樹の枝葉であり、島々はその枝葉に土が降り積もったものということである。
地理的には母なる樹は魔法界の既知領域の中心に存在しているため、魔法界の象徴として住人からは愛されている。
また第22話のリコの発言により、場所によって季節が異なる(魔法学校であれば年中春、ひゃっこい島であれば年中冬)事が明かされている。ただし共通暦はあるため「暦上の夏」では常春の魔法学校でも夏休みになる。
魔法界にはナシマホウ界と同じような生物が生息しているが、目のある貝や巨大な毛虫などナシマホウ界とは違う生態を持つ生き物がおり、人魚やペガサスやドラゴンや妖精などのファンタジックなクリーチャーも普通に生息している。
文化
文化的にはナシマホウ界でいえば昔のヨーロッパに近い。
魔法が発展している代わりに機械工学の発展が産業革命以前のレベルで止まっているため、生活環境はレトロな雰囲気。その為、「電気」という概念が存在しない。
しかしそれはあくまで見た目だけの話であり、この世界で使われるごく一般的な魔法道具はナシマホウ界の最先端の機械類よりも遥かに高度なことを起こせる。我々が自転車に乗るのとほぼ同じ感覚で彼らは魔法のホウキで空を飛べると考えれば、文明レベルはナシマホウ界よりも高いことはわかるだろう。
魔法界にはナシマホウ界へ行く技術が存在するため、ナシマホウ界に関する知識はかなり細かく魔法界に知れ渡っている。その上で、科学よりも魔法の方が利便性が高いというのが魔法界の一般的な認識。なのでこの世界では科学は根付かなかった。
一方、魔法界の情報はナシマホウ界に知られてはならないという掟があり、ナシマホウ界と比べると魔法界の方が所有する知識レベルが明らかに高い。
その為、魔法界ではナシマホウ界の事を「上から目線」で見ている傾向も少しある。(こちらの世界で例えればスマートフォンやパソコンを使えない人間を見るような目線であり、リコもナシマホウ界で生活するまではナシマホウ界の事を少々嘗めている節があった)。
しかし芸術や娯楽などのソフトパワーはナシマホウ界の方が遥かに多様性に溢れているらしく、「ナシマホウ界は生活は不便だけれど楽しいところ」が魔法つかい達の一般認識である。
ナシマホウ界の文化に憧れて移住する人物も存在し、それも一人や二人ではなく相当数がナシマホウ界に紛れ込んでいる様子。
魔法つかいがナシマホウ界に滞在する場合は魔法を隠さないといけないので長期間の滞在はかなり大変だが、ナシマホウ界で何年か文化留学した後、魔法界へ帰ってきてからナシマホウ界の文化を魔法界で紹介することで大成する人もいる。
ナシマホウ界からの文化を取り込むことは遥か昔から行われてきたようで、例えば童話などはナシマホウ界で知られているものが魔法界でも同じものが語られている。しかし、かなりのアレンジが加えられて原型をとどめていないことも。
また魔法界出身のキャラクターは名前でしか呼ばれておらず、名字といった概念が無い模様。ナシマホウ界で過ごす場合は名字だけ仮の名前を名乗り、下の名前は自分のものをそのまま使うといったケースが多いようだ。
使用言語はナシマホウ界の日本語と同じだが、文字は特有の物を使用している(公式サイトにて確認可能)。
デザイン的にも、ナシマホウ界に比べ派手な髪色をしていたりする。
プリキュアシリーズでは珍しいことに、物語開始前の時点では敵組織の大規模侵攻を受けていなかった。
政治形態については王様などがいるわけでなく、それぞれの街で自治が行なわれている様子。魔法学校は魔法界最大の権威とされている機関であるが、支配的権力を持っているわけではない。
善玉の統治者(いわゆる「女王様ポジション」)がいない世界というのもプリキュアシリーズでは珍しい。
「人間が生活し、敵組織の大規模侵攻を受けていない異世界」としてはシリーズ初の要素となる。
魔法
魔法のメカニズム
本作の魔法は、魔法の杖を用いた上で「キュアップ・ラパパ! ●●よ、○○なさい!」と命じることで発動する。
まず「●●よ」で対象を定めてから、「○○なさい」として魔法の効果を定める。
ただし、「〜よ」や「〜なさい」という語尾はその通りでなくてもよく、対象と効果が明確に定義できるならば語尾はなんでも良い。また魔法の杖を対象に接触させれば「●●よ」に相当する部分は省略しても良い様子。
ただし、「キュアップ・ラパパ」の魔法の言葉は基本的には省略できない。
魔法の杖は魔法界で子供が生まれるときに世界そのものから与えられる贈り物であり、魔法界の住人ならば自分専用の杖を必ず持つ。
朝日奈みらいの杖は彼女が初めて魔法界にやってきた時に老木から生み出された。
自分の杖を手に持っていないと魔法はまったく使用できないようだ。
「●●よ、○○なさい」の文章は何を入れても良く制限はない。理論的には「起こりうる可能性のある現象なら何でも起こせる」ようだ。
アニメージュに掲載されたスタッフインタビューによるとこの世界での魔法は「辺りに漂うエネルギーに杖を使ってお願いする」というニュアンスらしい。魔法とは世界と対話するための技術だと言えよう。その性質上、ゲーム世界によくある「MP」のような概念はあまりなく、通常の使用の範囲内で魔法を使うだけなら体力や魔力を消費するということはない。ただし例外も存在する様子。詳細は後述。
魔法で実現させたいことがその場で自然に起こりにくいことであればあるほど、より強く真剣に「お願い」しないと行けない。それには高い集中力と正確なイメージ力が必須である。
自分の中のイメージを豊かにするために多様な分野に興味を持ち、知識と見聞を広めることが魔法つかいに大切なこととされている。「自分にとって未知のものごとを体験すること」は魔法修行の真髄である。
もっとも、リコが苦戦していることからわかるように、魔法を使う時に迷いや焦りなどの雑念が混ざると基本的に魔法は失敗する。立派な魔法つかいを目指すなら知識を貯めるだけでなくメンタルコントロールを磨くことも必須である。
また、自然のありかたを大きく歪めるような「お願い」は世界そのものから拒否されるようだ。作中では「命無き物に命を与える」「無から有を造り出す」の二つが普通の魔法ではできないとされることの代表例とされている。
これはちょうど、科学がどれだけ発展しても物理法則そのものを書き換えることはできないというのと同じだろう。その意味では魔法も完全に万能というわけではない。
魔法つかいの倫理観
本作における魔法の最大の特徴は「自由」である。発想次第で何でもできる。
しかし、魔法界の住人たちの多くは魔法を欲望のままに使うことを自制している。周囲に迷惑をかけるような魔法の使い方は誰もしない。
そして、皆が自制してくれてるおかげで、魔法の使い方について事細かな規制が作られることなく、「自由」に魔法が使える社会が実現している。
後期エンディングテーマの歌詞にある「自由がいいとは言ってもルールはあります、お約束」というフレーズはすべての魔法つかいが持つべき矜持である。
(↑これは良くない例の見本です)
魔法界で明文化された掟として存在することには「ナシマホウ界で魔法つかいであるとバレてはいけない」というものがある。
バレた場合その者の杖は没収されるらしいので、魔法界での生活はとても不便になる。
ただし、「魔法を使うな」ではなく、「バレてはいけない」となっていることに注意。
魔法を使うことまで禁ずるのは魔法つかいとしてのアイデンティティの否定につながるため、そこまでの禁止ルールは作れなかったということだろう。
また、魔法界では長く平和な時代が続いたため、ゲームに出てくる攻撃魔法みたいなものを使う魔法つかいは現在ではほとんど見られなくなっている。
現在の魔法界では「魔法とは日々の生活の利便性を高めるための技術」という考え方が浸透しており、魔法を戦いの道具に使うという発想は身近なものではない。
魔法学校の教師であっても魔法で戦う術は持っておらず、現時点で戦闘用の魔法を使える描写があるのはプリキュアと闇の魔法使いを除けば校長のみである。その校長にしても魔法を長年封印しており、いざというときにしか使わない。
しかもこの校長の攻撃魔法は、校長が使用した後に本来の年齢まで老け込んだように術者のエネルギーを消費する描写があり、「あたりに漂うエネルギーにお願いする」という本作の一般的な魔法の技術体系とは異なる魔法の可能性がある。
朝日奈みらいと花海ことはは魔法界の文化や常識に疎いので、このあたりの倫理観とずれた行動をすることもあったが、話が進むにつれ自然と正しい魔法の使い方も身についていった。
闇の魔法
闇の魔法つかいが使う闇の魔法は歴史上から抹殺された禁断の知識を集めることで作り出された独自の魔法体系であり、一般的な魔法とは大きく異なる様相を持つ。
闇の魔法は世界との対話によって自分の願いを叶える技ではなく、自然の秩序と法則を力づくで歪めるための技である。このため、普通の魔法よりもはるかに強力な効果を発揮できる。
呪文一つで世界間移動ができたりと、普通の魔法つかいではなかなかできないようなことも簡単にやってのける。闇魔法の真髄と言えるのがヨクバールの創造術であり、これは命なきものから命を生み出す禁忌の技である。
ただし、闇魔法は成し遂げたい効果ごとに決まりきった独自の呪文を唱える必要がある。いわば「用意された呪文リストの中からしか魔法が使えない」というゲーム的な魔法体系である。キュアップ・ラパパの魔法の言葉さえあればイメージ次第で様々なことを起こせる一般的な魔法に比べれば自由度は著しく低い。また、魔法の杖を必要とするのは他の魔法つかいと同様である。
後に判明することだが、闇魔法の元になった「禁断の知識」とは太古の混沌の魔人たちが使う力「ムホー」に関することである。このムホーについて研究し、それを再現したのが闇魔法である。自由度が著しく低いのは所詮は現代の者がムホーを再現することはできなかったため。本来のムホーは無限かつ万能の力であり、呪文も魔法の杖も必要とせずにイメージ通りの物事を自在に起こせる。
(ただ、そもそもムホーは先天的な超能力のようなものであるため、激しく劣化したとはいえ「後天的に習得が可能な技術体系」として再現させたのはすごいことではあるのだが……)
リンクルストーンと魔法
闇魔法の対極に位置するのが、魔法つかいプリキュアの使うリンクルストーンを媒介にした魔法である。リンクルストーンの輝きは闇の魔法を打ち砕きヨクバールを浄化できる。
そしてリンクルストーンもまた普通の魔法では不可能とされることを実現できる。
例えばぬいぐるみであるモフルンは始まりのリンクルストーンであるダイヤが覚醒したと同時に、命を持ち動き出した。また、リンクルストーンとつながりが深いリンクルスマホンから生まれた花海ことはは、あらゆる魔法をいとも簡単に使い「無から有を造り出す」事も平然とやってのける。
リンクルストーンがもたらす不思議な現象の数々は、禁忌の力というよりも、魔法を超えた奇跡として扱われている。
魔法の道具
魔法界では人間界と似たような道具が色々あるが、それらのほとんどは魔法技術と関連づいたものとなっている。
魔法界でつくられる道具は、大きく分けると「魔法を使いやすくする道具」と「魔法の効果が込められた道具」に二分することができる。
「魔法を使いやすくするもの」というのでは、分かりやすい例ではヤカンがある。ヤカンは魔法界でも人間界でも「湯を沸かす」ための道具であることは変わりはないが、魔法界のヤカンは直火の熱を中の水に伝えるための器ではない。魔法界のヤカンは「水をお湯にする魔法」の効果が高くなる触媒として存在している。コップの水を直接お湯にするのは難度が高いが、ヤカンに「中の水をお湯を沸かす魔法」をかけると初心者でも簡単に中の水をお湯にできる。
(ちなみに加熱の魔法というものはそもそも難易度が結構高いらしく、リコは冷凍みかんを魔法で解凍することにいつも失敗する。もっとも、魔法界ならば「食材の解凍魔法が成功しやすくなる魔法レンジ」みたいなのもあるのだろうが)
魔法つかいたちは魔法のホウキで空を飛ぶが、これも「物体を浮遊させる」という魔法がかかりやすくなる形状や材質は何かということを研究した結果、「ホウキ」の形になったということである。なお、魔法界の空飛ぶホウキは厳密な魔法理論を学んだ職人の手によって作られるものであり、そこらの掃除用のホウキで代用できるわけではない。
もちろん、本当に実力ある大魔法つかいならば道具に頼らずとも生身で空を飛べる。
これらの「魔法をつかいやすくする道具」はあくまで術者のかけた魔法をブーストさせるものであるが、もう一つのカテゴリである「魔法の効果が込められた道具」は、魔法についての知識や技術が未熟なものでも、決められた魔法の効果を必ず再現できるという代物である。
これは我々の世界でいう自動制御の電化製品の感覚に近い。ボタンひとつで決められた通りのことを機械が勝手にやってくれるというわけだ。そして機械に詳しい人が同じくボタンを押したからといって普通以上の効果を発揮するわけではない
作中でわざわざ魔法の道具と言われた場合は、この「魔法の効果が込められた道具」を意味することが多い。
「魔法の効果が込められた道具」の代表には魔法の絨毯がある、これは絨毯にセットされたハンドルを操作するだけで飛行できる乗り物で、操縦する時にはキュアップ・ラパパの魔法の言葉もいらないし、魔法の杖も必要ない。飛行魔法の発動は絨毯自身がすでにやってくれているからだ。
(ただし、魔法界で絨毯を運転するなら、魔法の知識や技術と無関係に「絨毯免許」を運転手は習得しないといけない。これは我々の世界の自動車と同じだろう)
「魔法の効果が込められた道具」の究極のものが魔法学校の校長が持つ魔法の水晶である。魔法的人工知能であるキャシーによる未来予測は、ナシマホウ界の情報技術の数世紀は上をいっているだろう。
主な用語
世界間の移動に関する用語
- 魔法鉄道(仮)
みらいが住むナシマホウ界とリコが住む魔法界を繋ぐ魔法鉄道で、2つの世界を隔てる「狭間」を潜り抜けることができる唯一の交通機関。(「狭間」については後述)
魔法のICカード「MAHOCA(マホカ)」をナシマホウ界にある任意の駅の改札にスキャンすると、魔法の効果が発動して一瞬にして専用のホームにワープする事が出来る。
そしてカタツムリニアが牽引する客車に乗る事で、「狭間」を通って2つの世界を行き来できる。
客車内ではエスカーゴによる車内販売があり、「氷の火山に住むアイスドラゴンの吐息で凍らせた冷凍ミカン」等が売っている。
- カタツムリニア
巨大なカタツムリの姿をした生体機関車。元は野生の生物だったが、古代の魔法つかいが品種改良して家畜化したらしく、編成としてはカタツムリ機関車+客車と言うスタイル。
因みに客車自体にも車輪があるが、走行中ではカタツムリ機関車の体部分に客車が乗っかる為、次元移動時には客車の台車は使用されない。
カタツムリニアは空中に敷かれたレールの上を走ることができるが、このレールは普段は物質としては存在せず、カタツムリニアの足元の周囲にのみ実体化する。そのため、見た目では「カタツムリニアが自ら光のレールを作り出して走行している」ように見える。もしかすると本当にそうなのかも知れない。ただ、カタツムリニアは自由自在に走りはせず、あくまで決められたルートのみ走行する「鉄道」の挙動をしており、31話ではラブーの仕業で機関車とみらい達が乗車していた客車が分離した為に立ち往生した際には、校長達が救援列車を向かわせるまでみらい達は次元の狭間に取り残されてしまった。
デウスマストとの戦い後に魔法界とナシマホウ界が遠く離れ、本編での時間で6年間不通となっていたが、49話後半に再び魔法界とナシマホウ界の行き来が出来る様になった。尚、この時リコ達が乗車していたカタツムリリニアはエスカーゴが巨大化した機関車に客車が4両連結されていた。
- ヤドネムリンの殻
ヤドカリの殻の形をした寝袋。足から入るとヤドカリみたいな格好で寝られるが、頭から入ると、みらいのようにとんでもないことになる。
カタツムリニアの客車には常備されており、車中泊する時に使われる。
- 狭間の世界
魔法界とナシマホウ界の境界に当たる空間。宇宙空間のような見た目で、カラフルな星々や銀河が周囲を彩る。ただし、星や銀河は遠くに見えるのが瞬いているのではなく、人間大の大きさの光る岩のようなものがプカプカ浮遊している。
魔法界とナシマホウ界を行き来するにはこの空間を超えていかなくてはいけないが、狭間の世界を出入りできるのは魔法界ではカタツムリニアのみである。
万が一生身の人間が狭間の世界に放り出されたとしても、空気はあるので生存に問題はない。無重力なのは宇宙空間と同じ。ただ、この世界は閉じた空間のため、どこまでいっても彷徨うのみで抜け出ることができない。下手に動かずに救助のカタツムリニアが来てくれるのをじっと待つしかないだろう。
なお、闇の魔法つかいは狭間の世界を通らずに自由に2つの世界を転移できる。デウスマストの眷属はそれに加えて狭間の世界そのものを自由に出入り可能。
カタツムリニアで狭間の世界を抜けるのにかかる時間は、急行ならば半日以内でこの狭間の世界を通り抜けることができるが、鈍行ならば車中泊が必要。移動だけで半日が潰れるのだから、みらい達が魔法界とナシマホウ界を行き来する時は基本的に日帰りは不可能。その為、ナシマホウ界の学校が数日以上休みの時をうまくやりくりしてそれぞれの世界を行き来していた。魔法界に移動した後は数話連続で魔法界がずっと舞台になっているのは「どうせ魔法界に行くのなら数日間はそちらで過ごしてやれることはやっておく」というスケジュールで動いているため。
しかし、40話で狭間の世界が急速に縮み始めていることが発覚し、41話では魔法界とナシマホウ界の往来がカタツムリニアで僅か数分という驚くべき事態になっている。これは世界が繋がり始めている兆候のようだが……? 世界間移動の高速化はみらい達の生活を激変させ、「放課後留学」と称してはほぼ毎日気軽に魔法学校に赴くようになった。ここから先は一話の中で魔法界とナシマホウ界を行き来するようなエピソードもある。
地名に関する用語
- 母なる大樹
魔法界の中心に生えている巨大な木であり、この木の上に魔法学校が作られている。頂上部分は雲をついており、常に虹がかかっている。
しかし海面から出ている部分は実は母なる大樹のほんの一部であり、大樹の根は魔法界の海底全土にはられており、そこからいくつもの副幹や枝が生えることで海面に新たな陸地を無数に作り出している。魔法界にある島の多くはそうやって生まれたものである。
- 魔法の森
五葉の花弁のような形をした島であり、島全体が森に覆われているため「魔法の森」と呼ばれる。
魔法界でもなかなかお目にかかれない不思議な植物が生えている。後述する「癒しの花」などはまともな方で、香りを嗅ぐだけで丸一日昏睡する「スヤスヤ花」や、丸一日会話が止められなくなる「ペラペラ花」など、危険なものも多数あるようだ。
この森はペガサスが住んでいることでも知られる。他にも様々な幻獣(三つ首の亀や双頭のアルパカなど)の住処になっているようだ。同地からリンクルストーン・ピンクトルマリンが出現した。
- ひゃっこい島
下記のアイスドラゴンの住処である氷の火山がある島。常に氷に閉ざされた過酷な地である。百の恋が実る島と勘違いしてはいけない。同地の上空に現れたオーロラからリンクルストーン・アクアマリンが出現した。
- ぬっくい島
太陽降り注ぐ常夏の島だが、バカンスに向いたような場所ではなく、炎の火山があり灼熱の熱気に包まれた過酷な地てある。ひゃっこい島とあらゆる意味で正反対の気候。この島でもっとも日光が強く当たる「太陽の丘」で、冷凍みかんの元になるピーカンミカンが栽培されている。
- 最果て島
魔法界における既知領域の境界にある無人島。そこから先に何があるのかは誰も知らない。
魔法学校から空飛ぶホウキの最高速で不眠不休で飛ばして3日ほどの距離にある。島は島でも実は空中にある浮遊島。18話ではここでプリキュアとガメッツとの決戦が行われている。
魔法界の海の底にある人魚族の国。みらい達は補習授業のためここを訪れた。当然であるが水中でも呼吸できる魔法をかけないととてもたどり着くことはできない。同地に祀られている大貝からリンクルストーン・サファイアが出現し、キュアミラクル&キュアマジカル・サファイアスタイルに変身することができた。
妖精族の住む隠れ里として良く知られているが、具体的な場所を他種族に教えることは禁じられているらしく、魔法学校の校長さえ正確な位置はわかっていない。チクルンの故郷であり、女王と呼ばれる存在が統治している。
この世界での妖精は人間の姿に変化することができないとされているが、実際にははーちゃんが変化した例がある。
施設に関する用語
魔法界の中心に存在する大樹「母なる木」の上に作られた魔法教育機関。洋風な建物で一部は宙に浮いている。リコやみらいはここで魔法を学んでいる。
詳細は当該項目参照。
海から突き出た巨大な樹木の上に作られた商店街(魔法学校とは別の木)。なんでも売っていると言われる場所で学生向けの道具類も多く販売している。
招き猫の像がシンボルとして鎮座しており、劇中ではフランソワの服屋、グスタフのほうき屋などが登場している。
詳細は当該項目参照。
生物・植物に関する用語
- つえの木
魔法界の各地に存在している木で魔法界に住む住人達を見守っている。
魔法界に新たな命が生まれると其れに反応して魔法の杖を実らせ、実った魔法の杖はその生まれた子に授けられる。
みらいが出会った魔法学校のつえの木は数百年以上、魔法の杖を生み出していなかったが、みらいのリコの力になりたいと言う強い思いに反応して数百年振りに魔法の杖を実らせ、みらいも魔法の杖を手に入れる事が出来た。
また、リコについては生後間もなくした時、流れ星がとあるつえの木の上を通過した瞬間にリコのための魔法の杖が生まれている。その杖には大きな星型のクリスタルが埋め込まれていたため、「星の祝福を受けた杖」として魔法界でも珍重されるものとなっている。
- ペガサス
魔法の森に住むペガサス。
普段は人に慣れないが、接触したいで懐くようになる。
ある日、子供は母親と逸れてしまい弱ってたところを魔法界の補習のために森を訪れたみらいとリコに発見されて、癒しの花の力で治療してもらい仲良くなる。
母親も子供との再会で、嬉し涙を流してピンクトルマリンの出現のきっかけを作って、感謝の気持ちをこめてそれをみらい達にプレゼントした。
その後、みらいたちと花のパンケーキを食べて、補習に付き合おうとした矢先に、スパルダに捕まって、ヨクバールの素体にされてしまうが、意識はまだ残っていたから『リンクル・ピンクトルマリン』で救助されて、弱体化したヨクバールも浄化された。
事件解決後、親子はみらいたちと仲良く記念撮影を行う。みらいたちもペガサス2体や他の生物と仲良くなったご褒美として合格印だけでなく、その時の記念撮影の写真も1枚ずつもらった。
第18話では、さいはて島に行こうとするみらいたちの手助けをした。第28話で登場したペガサスは、はーちゃんと会話して、パチパチ花によく似た花の情報を教える。
- 癒しの花
魔法の森の奥に咲いている巨大な花。
ケイが仕入れてきた噂ではその花は甘い匂いで森の動物たちを誘い出して食べてしまう人喰い花として、森の外の住人たちに恐れられていた。しかしモフルンはちっとも怖がらず、それどころか名前の通り人間や生物をケガや病を癒す魔法がかかっている。
リコとみらいはその花の中から現れた銀魔法のリンクルストーン・ピンクトルマリンをペガサスにもらった。
- ドンドン花
開花すると同時に花火を打ち上げる花で太陽の光を吸収することで成長する花。
取り扱いが危険なので誰もが育てていいわけではない様子。魔法学校ではこの花を取り扱えるのは花火の魔法の成績が良いものに限られており、担当に選ばれた生徒は夏祭りのクライマックスと同時に魔法で開花させて花火を打ち上げるのが恒例行事。作中では補習メイトの3人が努力の末にその担当に選ばれた。
- パチパチ花
ドンドン花と同じく花火を咲かせる花だが、こちらは影の中でしか育たない。
その年の夏は魔法界の太陽の力が減衰したため(デウスマスト接近の影響?)、ドンドン花の育ちが悪く、代わりにパチパチ花の入手を目指すことになった。
かなりマイナーな花らしくアイザック先生やリズもどこに生えているかを知らなかったため、補習メイトたちの必死の調査により、魔法の森の洞窟の中に咲いていることが判明した。
なお、パチパチ花、スヤスヤ花、ペラペラ花の3種は同じ場所に育成する上、色以外は見た目が全く同じなため、どの色が何の花かが分からないと、区別がつけられない。
- ワームー
ワームーとは輪っかの上に目がついた不思議な生物。戯画化されたミミズが丸まってリング状になったかのような少しキモかわな見た目であり、名前の元ネタもおそらく「ワーム」だろう。これを輪投げのように投げる遊びが「ワームー投げ」。投げられたワームーは自分の意思で空中で方向を変えれるため、聞き分けのいいワームーを使えば命中率は高まる。
ひゃっこい島に住むドラゴンで、成竜で体長はだいたい10mくらい。見た目とは裏腹に性格はとても穏やかで人を襲うことはなく、優しい人間には懐く。
本人たちは暖かい場所に行きたいと思っているが、寒い場所でしか生息できないためそれは叶わない。ドラゴンブレスは当然ながら冷気属性で浴びると凍ってしまう。下述のようにそれを利用して冷凍ミカンが作られている。
秋の特定の日に、何処からともなく魔法商店街にやってくる謎の巨鳥。このカボチャドリを捕まえるためのお祭りが毎年開催されており、ナシマホウ界のハロウィンと酷似している。
詳細は当該記事を参照。
- フレアドラゴン
単独映画において、サーカスバルーンでピエロと共に曲芸をしていた白い毛並みのドラゴン。炎を吐いてハート状にし、それを炸裂させて光にする事ができる。ことはがこの芸に加わったときにはさらに彼女の魔法によって花びらに変換して散らせている。
ちなみに、顔立ちは犬のようであるが、これはイメージモチーフが『ネバーエンディング・ストーリー』のファルコンからきている事による。
食べ物に関する用語
- 氷の火山に住むアイスドラゴンの溜息で凍らせた冷凍ミカン
特殊な製法(前述)で作られた冷凍ミカンで、カタツムリニアの客車内で販売されている。
最初は完全に氷漬けの状態で手渡され、キュアップ・ラパパ!氷よ溶けなさいと魔法の杖で魔法をかける事で解凍される。この冷凍ミカンは魔法商店街でも売ってはいるものの、基本的には「カタツムリニアの屋台販売ならではの名物品」という駅弁のような扱いである。
因みに2話でリコが出した固い冷凍ミカンは解凍魔法の失敗であり、中には校長の様に未解凍状態でその冷凍ミカンを食べる人もいるらしい。
製法は、太陽の光をたくさん浴びて育つピーカンミカンの香りをアイスドラゴンに嗅がせ、アイスドラゴンがその南国の匂いで「自分も暖かいところに行きたいけど、寒いところでしか生きられないからそれが叶わない」と思わせて吐く溜め息で凍らせるというもの。(ちょっと可哀想な気が…)
なお、ミカンの熟れ具合が良くないと溜め息は吐かない。この溜め息はほかにも恋などのポジティブな感情から生まれるものであれば何でもよい。逆に、疲れた時に吐く息で凍らせた場合は氷がウニのようにとがり、味も苦くなる。つまり、ドラゴンの感情によってミカンの味が変化するというわけだ。そんなわけで、単純に冷凍庫で凍らせた冷凍ミカンとは次元が異なる味が実現されることになる。
この冷凍ミカンはみらいが魔法界でリコから初めてもらった「思い出の食べ物」であり、そのため魔法界を舞台にするときはかなりの頻度で登場する。ちなみに、リコがナシマホウ界でみらいから初めてもらった「思い出の食べ物」はいちごメロンパンであり、こちらもナシマホウ界を舞台にするときはかなりの頻度で登場する。
これらの食べ物をみんなで一緒に食べる時間こそが、本作での「日常」を表す象徴になっている。
- ポコポコ焼き
たこ焼きにそっくりの食べ物だが、中に入っているのはタコではなくポコ。ポコが何なのかは不明だがとりあえず美味しいらしい。また、口に含むと中でポコポコ跳ねる。……踊り食い?
- キュアッププリン
単独映画のフードコートバルーンで売られているプリン。見た目はグリコのプッチンプリン(ちなみに公式タイアップとして登場)のままだが、魔法を唱えながらプッチンすると様々なプリンアラモードに変化する。
- ヤナオニの実
単独映画で出てきた果実。果肉の栄養価は高いのだが、中の種をかじると強烈な臭いを発する。食べた者が悶絶するのはもちろん。食べた者の口臭は数時間は破滅的なものとなり周囲に悪臭を撒き散らすことになる。この為普通は種をかじらないように注意して食べるのだが、劇中ではことはがかじってしまったためみらい・リコ共々酷い目に遭ってしまう。しかしこの実が物語の突破口ともなる。
その他の用語
- MAHOCA
我々の世界で言うところのICカード定期券のようなもので、電子マネーならぬ魔法マネー(?)のような仮装通貨もやりとりできる。魔法界でのものの売買は全てMAHOCA経由で行われていて、実体のある貨幣や紙幣は確認できない。魔法界の金融テクノロジーは完全なる情報化が実現しているようだ。
ちなみにこのMAHOCAは玩具化されていたりもする。
魔法界にはクリスマスに子供達にプレゼントを配るサンタクロースが「仕事」として存在している。ソリを引くのはトナカイでなく小型のカタツムリニア。配達員であるサンタはクリスマスにしか活動しないのでやる気のある者たちがバイトの感覚で就任する。また、ナシマホウ界のフィンランドにいる本物のサンタクロースと提携が結ばれているらしく、ナシマホウ界のサンタの手が足りないところは魔法界のサンタが助っ人に訪れる。
- ふたつぼし
魔法界に伝わる古いおとぎ話で、リコが幼い頃に大好きだったというもの。第40話で語られた。
このタイトルは40話で画面に出てきた魔法文字を解読したものであり本編中では日本語では表記されていない。
お話の内容は以下。なんとなくプリキュア達の現状と関わりあるような気もするお話だが……?
『ある所にとてもなかよしな お星様が2つ輝いていました。
ある日、大風が吹いて、お星様は離ればなれに。
ひとりぼっちのお星さま。
気がつくと、頭の上に2人の女の子が住んでいました。
お星様とっても悲しそう。そう思った女の子は、お星さまに寄り添い、
どうかお星さま達がまた出会えますようにと、お空にお願いをしました。
女の子の優しい気持ちは、お星様を再び輝かせ、
お星さまたちは再び出会うことができました。』
余談
モチーフ
最も大きな影響を与えているモチーフはハリー・ポッターシリーズの魔法界だと思われる。
また、第1話で電車の改札口を通して魔法界の駅ターミナルへと行くシーンは同じくハリー・ポッターシリーズの3/4ホームやホグワーツ特急のオマージュだと推測される。(イギリスは改札口がない駅も多いので「普通ではたどり着けないホームが駅のどこかにある」という発想になるが、日本ならばホームの中と外の境界である改札口という結界をくぐればその時点で別世界のホームに変わるという方がわかりやすいだろう)
上北ふたご版コミカライズ
上北ふたご版コミカライズのオリジナルストーリーでは、闇の魔法使い以外のキャラで「人に迷惑をかける魔法」を使ったオリジナルキャラクターが登場している。
その「人に迷惑をかける魔法」は劇中で「呪い」と呼ばれている。
劇中では「条件を満たさなければ男の人魚が泡となって消滅する」というとんでもない呪いがかけられ、人魚族が絶滅寸前まで追い込まれる事態に陥っており、魔法つかいが自己の悪意を自制せずに魔法を使うととんでもないことになる一例が示されていた。
シリーズ本編ではこのような「呪い」を使う魔法つかいは登場していない。
世界の真実
以下、本編に関する重大なネタバレを含みます。
閲覧には十分注意してください。
43話にて、魔法界とナシマホウ界は、もともと一つの世界であることが語られた。
はるか昔、あまねく命の母と呼ばれる「マザー・ラパーパ」が守護していた「花の海」と呼ばれる理想郷において、天よりやってきた終わりなき混沌デウスマストの勢力との戦いが勃発。ラパーパとデウスマストとの熾烈な戦いの結果二人は相打ちとなる。
この結果、命の全てが混沌に飲まれることはかろうじて防ぐことはできたが、世界をたいそう傷ついていしまい、ラパーパが拠り所としていた「大樹」が、それを支えていた「大地」から分離してしまった。そして力を使い果たしたマザー・ラパーパはそのまま解けるように消え去ってしまった。
この戦いのより細かな詳細はマザー・ラパーパの項目を参照。
大樹を失った大地からは魔法の力が消え去り、後にナシマホウ界と呼ばれる世界へと変化していった。
一方、大地から切り離された大樹は時空の狭間をさまようことになる。しかし偉大な魔法の力を秘めた大樹は自らの周辺空間を水と大気を満たし、海と空を作り出す。そして海に自らの枝葉を伸ばし島を作り出した。こうして後に魔法界と呼ばれる世界が生み出されたのである。
上述したように魔法界の全ての陸地は大樹の枝葉なので、本質的には魔法界には大地が存在しない。これは、大樹が本来戻るべき大地はナシマホウ界の大地だからということに他ならない。
ラパーパとデウスマストが戦っているとき、終わりなき混沌の侵略から逃れるために大樹の枝葉の影に隠れていた者達が多数いた。大樹が大地から離れた時、彼らもまた大地から離れることになったが、大樹が魔法界という新たな世界を生み出したため、ここで文明をゼロから作り直すことになった。魔法界では、大樹の枝葉の一部が「つえの木」となり魔法の杖を生み出し続けたため、魔法が完全に失われることはなかった。
だが、これらの出来事はあまりにも昔のことであるため、現在では魔法界とナシマホウ界がもともと一つだったこともマザー・ラパーパの存在も歴史からも人々の記憶からも忘れ去られている。「キュアップ・ラパパ」が偉大なる太母を称える祝詞であったことも現代の魔法つかいは知らずに唱えている。
魔法界の住人が次元を超える方法を見つけ出しナシマホウ界を発見したのはかなり古代のことのようだが、その時点ですでに世界分離の神話は伝えられていなかった。そのため、魔法つかい達はナシマホウ界を失われた故郷の一部ではなく「別世界」としか認識していなかった。
妖精の里のレジェンド女王は世界が一つたった時代の生き証人だが、彼女はその古い歴史をことさら他の種族に伝えることはしていない。
ただ、上述した「ふたつぼし」のおとぎ話などは、二つの世界がかつて一つだった事実から生まれたものなのだろう。歴史からは忘れられても、その残滓は様々なところに残っていたというわけだ。
なお、ラパーパは消え去る直前、「大地と大樹はいつか再び結ばれる。そう魔法をかけた」と残された人々に言い残している。その魔法は、世界を繋げる奇跡を願う人の心が繋がることで形を成すという。
この大魔法につけられた名前こそが「プリキュア」だった。
現在の魔法界では、プリキュアというものは「すごい魔法を使える伝説の魔法つかい」として誰もが子供の頃に聞かされたおとぎ話の主人公のような存在となって伝わっている。だが、プリキュアが世界を繋げる魔法そのものだということは忘れられてしまった。
それでも、ラパーパの名前さえ忘れらた時代に「プリキュア」の名前だけは魔法界ではかろうじて伝えられ続けていることは特筆に値するだろう。
そして長い長い時の果てに、世界を繋ぐ大魔法の担い手となるべき二人の少女が二つの世界から見出され、リンクルストーンの導きで二人は出会うのである。