第1巻が刊行されたのは1987年。既刊14巻だが未完となっている。
挿絵は、新書版は天野喜孝、YA!ENTERTAINMENT版は田島昭宇、文庫版はCLAMPがそれぞれ担当している。
概要
四海竜王の子孫であり転生した姿でもある四人兄弟が、人界や天界の悪と戦っていく物語。
作者の現代社会に対する批判が、最もストレートに表現されている作品でもある(ただし執筆期間が巻ごとに長らく空いているため「現代」と言っても発表当時の、である)。
作品の一部を描いた恵広史とCLAMPによるコミカライズがある。
アニメ版はキティ・フィルムと講談社の制作により、1991年~1993年に全12話のOVAとして発売。
その後フジテレビ他一部放送局にて全話が放送された。
原作1~4巻に相当するが、ラストは原作と異なる。
登場人物
声優は(アニメ/CDドラマ1(1995年)/ CDドラマ2(1996年~1997年))の順。
竜堂4兄弟
竜堂始
長男、23歳。頑固で厳しいが、弟思いの大黒柱。本作における語り部。
元世界史教師の“活字中毒者”。
前世は「東海青竜王敖広」で、斥力と重力を操る青竜に変化できる。
竜堂続
次男、19歳。美形だが毒舌家で、敵対する相手には冷徹極まりない。
基本的に長兄の始の決めたことにしか従わない。
前世は「南海紅竜王敖紹」で、熱(基本的には超高温による炎だが、低温による冷気も可能)を操る紅竜に変化できる。
竜堂終
三男、15歳。腕白坊主。身体能力は兄弟随一。
前世は「西海白竜王敖閏」で、風(建物が吹き飛ぶ竜巻や真空刃)を操る白竜に変化できる。
竜堂余
四男、13歳。おとなしい気性だが、時として無邪気に終をヘコませる影の毒舌家。
時間と空間を超越できる「夢」を見る能力がある。
前世は「北海黒竜王敖炎」で、水(軍隊を丸ごと押し流す豪雨レベル。また雷雨も範疇に入るのか雷も吐くことが出来る)を操る黒竜に変化できる。
鳥羽家
鳥羽茉理
四兄弟の父方の従姉妹、18歳。勝気で明るい性格。
竜堂家の家事を一手に引き受けてくれる大恩人。始とは恋仲にある。
前世は「太真王夫人」。
鳥羽冴子
鳥羽茉理の母で共和学院の常任理事にして学院附属幼稚園の園長と女子短期大学の学長を兼任。
「笑顔を見た人がほとんどいない」と言われる程の無表情な人物であり、当初は夫である靖一郎と組んで学院乗っ取りを企てているとされていたが、物語の進展とともにキャラクターが後述の小早川奈津子同様に一人歩きをし始め、(同行こそしないものの)茉理に「自分の信じた道を行け(大意)」とメッセージを送るなど竜堂兄弟及び茉理寄りの思想の持ち主である事を仄めかす描写がある。
(始曰く『彼女もまた竜堂司の娘であり、鳥羽茉理の母であった。』との事。)
鳥羽靖一郎
茉理の父で共和学院の現学院長。
茉理からは「歩くリトマス試験紙」などと揶揄される小人物。
悪人たち
小早川奈津子
後述の船津忠巌の娘で、父が手に入れた「竜種の力」を受け継いだ本作世界における人類最強の女であり、驚異のドラゴンスレイヤー。
当初の構想ではいわゆる「今週の怪人」的な扱いで蹴散らさられるはずであったが、その怪異なキャラクター性が一人歩きをし始めてレギュラーに定着する。
船津忠巌
「鎌倉の御前」の異名で呼ばれる日本の黒幕で、前述の小早川奈津子の父。
竜種の故郷・竜泉郷で竜種の力を入手し、更なる力を求めて竜堂兄弟に宿る竜種の力を狙うも覚醒した余に敗れて死亡する。
備考
田中芳樹作品の中では最も賛否両論が激しい作品でもある。
理由としては、少年漫画さながらのバトルインフレと無軌道に広がり続ける風呂敷、
そして、ともすれば虚構と現実のすり替えが起きかねないレベルで巧妙かつ大胆に行われる登場キャラをアバターとした著者の現代社会や歴史観への持論展開等々、良くも悪くもはっちゃけまくった内容になっているからであろう。
まだ心が純粋だった頃、毒舌かつ美青年・美少年な4兄弟が中華由来のチートでもって首相をはじめとする醜悪な面々を歯牙にもかけず、実力者とわたり合い、天界の悪を快刀乱麻の如くやっつけていく様に大いに燃えるor萌え、その後に色々と現実を学んでからもう一度読み返したら「前提にあるのがヨブ・トリューニヒトばりの社会の腐敗ばかりなんですが…」とツッコミを入れてしまうのが、調教された読者であっても一度は通る道…とは言え、エンタメの悪役は基本そう言うものであるが。
執筆に勢いがあった1990年代まではともかく、お得意の時事ネタが1996年(平成8年)の第10巻をもって実質的に停止して、第11・12巻はほとんど外伝に移行、ようやくストーリーを本筋に戻した2003年(平成15年)発売の第13巻は時事ネタを復活させたいがために年代を前触れなく21世紀に変更し、登場人物にいきなりパソコンを活用させるというフリーダムさを発揮してしまった。
※作品発表当初の1987年は、まだアップル社がMacintosh2でグラフィックに初めてカラーを採用したことを宣伝文句にするレベルのネット環境。13巻までの作品内での時間経過は約半年のみ。
この辺りになるとさすがに社会環境も大幅に変化し、徐々に本作への評価が変化し出した。
端的に言えば、日本の政治等をシニカルに風刺する一方で、仕様ということで見逃されていた
‘日本の90式戦車は乗員用のクーラーまで完備させた、ムダに贅沢な役立たず兵器である’
とか
‘日本のマスコミは、アメリカ軍と日本政府の公式発表を、批判も独自調査もせず、たれ流して恥じもしないだろう’
といった虚偽じみた記述のみがピックアップされ、(ただし、後者のくだりは執筆当時はともかく2010年代後半の時点では創作と現実に差分がなくなりつつある…差分程度ではあるが。)
『ジョークが性質悪くて、事実誤認ってレベルじゃねぇぞ』
『俺たち日本人はそんなクズじゃねーぞ!』といったアンチ層の声が目立ち始めた。
一応、世界設定は『パラレルワールドの現代社会』であり、著者の関係者がフォローするに『単にエラい人をおちょくるのが好きなだけ』とのこと。
この作品を、純粋な娯楽小説として見るか著者なりの壮大なジョークとして捉えるかは文字どうり読み手を選ぶ仕様である…のだが、内容に闇雲に噛み付いてもある種の面倒くさい人々と同レベルになるのがオチであり、肩の力を抜いて楽しむのが一番であろう。
ある意味では、著者のエタる(=創作中のものが永遠の未完・完結しないで終わる)傾向と合わせて数十年後の潮流を先取りした作品でもある。
また、1987年(昭和62年)から30年以上にわたって執筆が継続されてこそいるが、近年では数年に1冊程度しか脱稿がされないのは他の田中芳樹作品と状況は同じである。
結局、第13巻から更に2019年(令和元年)10月発売の最新刊第14巻までのべ16年間の空白を生じさせたうえに一向に伏線を回収し始める気配がないため、さすがに往年のファンからも
といった声が例年強くなっている。
…著者とほぼ同じ路線をたどっていた架空戦記の大家が、2017年に大量の未完の名作を抱えたまま冥界の住人になったばかりであるため、もう笑いごとではない。
先生仕事してください! お願いします!!
最新14巻にて
- 続「作者<おとーさん>がこのごろガラもなく悩んでいるのは、ラストをどうきちんとおさめようか、思案してるからなんですよ。」
約16年間の沈黙を破り、2019年10月7日付けで発売された最新第14巻にて、本作の完結予告がなされた。
最終巻となる第15巻は2020年発売予定とのことである。
…そう、あくまで『予定』である。
終「へー、ラストがあるんだ。おれ、未完になるかと思ってた。」
(14巻より原文ママ)
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