概要
バイストン・ウェルの物語を、覚えている者は幸せである。心豊かであろうから。
『聖戦士ダンバイン』は、1983年2月5日から1984年1月21日まで名古屋テレビ系で全49話が放映された。
監督は富野由悠季。先年から発表されていた宮﨑駿の風の谷のナウシカからの影響と富野監督ならではの作風が合わさり「現代日本人が中世ヨーロッパ風の異世界に召喚される」という90年代に大流行したプロットを80年代にして世に問うた非常に先駆的な作品である。また、後年に同様の作品が多数生み出された「中世ヨーロッパ風の世界で巨大人型ロボットが戦う」というプロットも本作が端緒である。
富野監督作品らしく、派手で豪奢なファンタジー世界的な描写は無く実際の中世ヨーロッパ時代を模した木と石造りの地味な城塞や冗長な儀式めいた城攻めや占領宣言が描かれるなど、独特で(放映当時では)斬新な世界観描写が行われている。
富野監督は、この作品で舞台となった異世界「バイストン・ウェル」に対して、善きにせよ悪しきにせよ特別な感情を抱いているらしく、『リーンの翼』など他の作品にもたびたび登場している。
昆虫の意匠を取り入れた有機的なデザインの生体兵器:オーラバトラーや、本格的に作り込まれたファンタジー世界バイストン・ウェルの世界観など、その後のメディア作品に多大な影響を与えた部分も多いが、これらの要素は当時の視聴者層には受け入れがたい物があった。富野監督自身バイストン・ウェルに拘るあまり作劇にそれを活かせず、てこ入れとして物語中盤から舞台を現代社会に移すなどやや中途半端なストーリー展開になった。
これについて富野監督曰く「ショウ・ザマを第一話で一晩寝かせて翌朝からバイストン・ウェルの説明を長々してしまったことが作劇上の失敗で、主人公に確たる動機付けが出来ず状況に振り回されるキャラになってしまった。戦火のただ中に放り込んだ方が物語がもっと弾んだ」とのことで、物語が現代社会に移る「東京上空」のエピソードもかなり前倒ししたとのこと。
このように富野監督にとっても悔いの残る部分は多かったが、ダンバインが切り開いた「ファンタジー世界に召還される現代人が織りなすストーリー」という手法はその後のファンタジー作品に多大な影響を与えた。富野監督による外伝ノベライズも行われ、バイストン・ウェルを舞台にした「リーンの翼」はOVA化も成された。
ストーリー
「バイストン・ウェル」は海と地の接する間にある異世界である。深海を空に、地熱と人の「オーラ力」を源に、妖精フェラリオや闇のカ・オスまでもが共存する世界である。アの国の地方領主ドレイク・ルフトは、戦力増強を図り、優れたオーラ力を持つ地上人を呼び込もうとしていた。 そのひとり、ショウ・ザマは、オーラバトラー・ダンバインを与えられ、聖戦士と遇されることになる。だが、反逆者ニー・ギブンと彼に従う地上人の少女マーベル・フローズンに出会った時、「何も知らずドレイクに手を貸す馬鹿な男」という言葉を投げつけられる。 やがて「バイストン・ウェル」での争いは、地上界をも巻き込む巨大な戦雲となっていく。
登場人物
聖戦士
マーベル・フローズン(CV:土井美加)
トカマク・ロブスキー(CV:戸谷公次)
ギブン家
アの国
ガラリア・ニャムヒー(CV:西城美希、伊倉一恵、安達忍)
ナの国
ラウの国
ミの国
パットフット・ハンム(CV:山岡葉子)
その他のフェラリオ
ガロウ・ラン
その他の地上人
トルストール・チェシレンコ(CV:竹村拓)
チャーリー・カミングス(CV:龍田直樹)
主題歌
オープニングテーマ
「ダンバイン とぶ」
歌:MIO 作詞:井荻麟 作曲:網倉一也 編曲:矢野立美
エンディングテーマ
「みえるだろうバイストン・ウェル」
歌:MIO 作詞:井荻麟 作曲:網倉一也 編曲:矢野立美
商品展開
現在ではバンダイが商品展開しているが、放送当時はプラモデルはバンダイ、玩具関係はクローバーが手掛けていたが、放送途中に倒産した為にビルバインのみトミー(現在のタカラトミー)が発売している。
余談
シリアスの中のお遊び
シリアスなダンバインであるが、時折お遊びの要素もあった
オーラマシン「ドロ」・勇者ライディーンのドローメ
赤い三騎士・機動戦士ガンダムの黒い三連星で、ガイア=カラミティ、オルテガ=ダー、マッシュ=ニエットである。
ヒマラヤ上空でトリプラー(要するにジェットストームアタック)攻撃を仕掛けるが、カラミティはショウに踏み台にされ「踏ん付けてった~!」と悔しがった
地上編・殆ど東宝怪獣のノリ
地上編誕生の原因
地上編が生まれたのは玩具売上不振でスポンサーのクローバーが「もっと派手な戦闘シーンを」との要望で生まれ、「東京上空編3部作」はその伏線だったが、皮肉にもクローバーは倒産してしまった。
ハイパー化のこぼれ話
地上編の重要ファクターと言えるハイパー化を提案したのは今川泰宏であり、オーラバリアとは言え巨大化現象は当時の視聴者を驚かせ、地上編のイメージを決定付けた
全49話終了が意味するもの
これは都市伝説であるが、全49話で完結した本作は当初は全50話の予定だったと言われ、全49話は「スポンサー倒産で1話減った」と言われている。
冒険王→アニメマガジンの漫画版の結末
冒険王→アニメマガジンで連載された漫画版の最終回はドレイクはビショットに暗殺→ショウは激戦の末全ての仲間を失う→ビショットがウィル・ウィプスで祝勝会を挙げる→ハイパー化したショウのビルバインがウィル・ウィプスに特攻相討ち→バーン・バニングスがショウの行為を称え息絶える
だった。なお、アニメマガジンはその直後に廃刊となった。