ヤングアクションの決定版、異色の特撮もの
(当時の新聞広告)
概要
宣弘社が、『シルバー仮面』に続いて製作した特撮ヒーロー番組で、実製作は『シルバー〜』と同じく日本現代企画が担当。
些か重い作風だった『シルバー〜』の反動から、登場人物のコミカルなやりとりや活劇性が思考された一方で、敵組織に「歴史から抹消された一族の末裔」が登場したり、権力の非情さを鋭く描く等、その世界観は一際の異彩をはなってる。
また、競合作品との差別化から、独自色も多く打ち出され、
その中で最も代表的なのが「主人公≠番組タイトルのヒーロー」という図式である。
登場人物
国家警備機構
静弦太郎 (しずか げんたろう)
イラスト右の人物。こっちが主人公(重要)
年齢23歳。「密使」のコードネームを持つエージェント。
普段は陽気で、相棒の五郎とはふざけ合いながらも現実から目を背けた綺麗事や非合理的な行為には嫌悪感を示している。
超人的な身体能力の持ち主であり、振るえば鞭や剣として機能する特殊ベルト「アイアンベルト」を駆使し、敵が繰り出すロボットや怪獣に立ち向かう。
詳細は該当項目を参照。
霧島五郎 (きりしま ごろう)
イラスト左の人物。
年齢28歳。弦太郎の相棒で、彼をサポートする為に機構より派遣された、登山家風のナリをした青年。
サングラスと「ターニングハット」と呼ばれる赤い帽子がトレードマーク。
人情味に篤くドジなので弦太郎の冷徹な判断とは対立することがあるものの、その陰で彼の苦悩を理解し、フォローするようになる。そして、ドジな面も控えめに、弦太郎と共に軽口を叩きながら丁々発止で切り結ぶようになる。ちなみに弦太郎の事を「弦の字」と呼んでいる。
実は本編開始前に、登山中の落雷事故で命を落としており、機構の科学者によりアイアンキングへの変身能力を与えられて蘇生されている。
危機が迫るとアイアンキングに変身するが、弦太郎はその事を知らない。
藤森典子 (ふじもり のりこ)
第19話から登場。上の2人がろくに本部に帰還も報告もしないのでお目付け役。優秀だが真面目過ぎて融通の利かない性格で、任務以外ではお調子者の2人に振り回され、「テンコ」というあだ名までつけられた。
キャラクターとしてのアイアンキング
身長: | 45m |
---|---|
体重: | 5万t |
飛行速度: | マッハ3 |
活動限界: | 1分間 |
霧島五郎が、「アイアン・ショック!」の掛け声と一定のポーズをとる事によりターニングハット(帽子)からアンテナが伸び、そこから吹き出した霧状のスチームに包まれて変身する赤い巨人。
水をエネルギー源としているが、燃費が悪く、その活動限界はわずか1分間。(中盤以降は多少燃費が良くなり、活動限界も「アイアンキングから水分が無くなるまで」と、具体的な時間は明言されなくなる。)
エネルギーの消耗具合は星型(✦)の発光器官の発光状況により判別でき、
30秒で胸の「アイアンスター」が、
50秒で首の「キングスター」がそれぞれ消灯し、
1分を過ぎると額の「アイアントップ」が点滅する、そして、光が消えてしまうと強制的に霧島の姿に戻ってしまう。
その短い活動限界時間や、作劇上の展開(敵への止めの多くを弦太郎に譲っていた)等から、ネット上では「ヘタレ」「ポンコツ」「史上最弱のヒーロー」などというありがたくない二つ名をいただいている。(※)
まぼろし兵団までの(18話)敵はロボットなので、その間に生身なのにイジョーに強い主人公静弦太郎が敵の操縦者を探し出し、リモコンを爆破するという戦法を主にとっていた(さすがにまずいと思ったのか、路線変更された後半のアイアンキングは普通にビームとかで怪獣を倒すようになった)。
燃費が悪く、五郎はいつもその辺で水(エネルギー源)をごくごく飲まなくてはならない…さらに終盤では敵に操られたり味方に攻撃されたりと散々な目にあう。
(※)路線変更された後半はともかく、前半も相手のロボットにダメージを与えて撤退に追い込んでおり、弦太郎のバックアップとしては優秀で戦果がないと言う訳ではない。そのため、「弱い」と言う評価自体は内容を表面的にしか知らない者によるもの。但し、巨大変身ヒーローではなく等身大で生身の人間の方が強いのも事実である。
悪の使者
不知火一族
大和朝廷から迫害を受けた日本の先住民族で、二千年間(卑弥呼より前からすでに大和朝廷があるってことは、アイアンキング世界では皇紀と同じくらい天皇家が古いのかもしれない)もの恨みを晴らすべく日本政府に戦いを挑む。
アニメ『からくり剣豪伝ムサシロード』にもほぼ同等の来歴を持つ同名の部族が登場している。
独立幻野党(まぼろし兵団)
国籍不明(中近東風だが)の超過激テロリスト集団。一番悪の組織らしい悪の組織。
鋼鉄の同志と呼ばれる巨大ロボットを操る。
宇虫人タイタニアン
誤字ではない。昆虫型怪獣に変身することができる宇宙人で、地球を植民地にするために特撮のお約束通り日本にやってくる。
各話リスト
※全話の脚本を佐々木守が担当した。
話数 | サブタイトル | 登場怪獣 | 監督 | 放送日 |
---|---|---|---|---|
第一話 | 朝風の密使 | バキュミラー、ジャイロゲス、ダブルサタン、デビルタイガー | 田村正蔵、外山徹、福原博(監督補) | 1972年10月8日 |
第二話 | 廃墟の白鳥 | ジャイロゲス | 田村正蔵、外山徹、福原博(監督補) | 10月15日 |
第三話 | 戦士の微笑 | ダブルサタン | 田村正蔵、外山徹、福原博(監督補) | 10月22日 |
第四話 | 弦太郎孤独旅 | デビルタイガー | 外山徹、福原博(監督補) | 10月29日 |
第五話 | 秋風の中の決斗 | モンスターゾロ | 外山徹、福原博(監督補) | 11月5日 |
第六話 | 戦士の子守唄 | ブラックナイト、ブロンズデーモン、モンスターバード | 田村正蔵、鈴木清 | 11月12日 |
第七話 | 大空を征くもの | モンスターバード | 田村正蔵、鈴木清 | 11月19日 |
第八話 | 影の地帯 | シルバーライダー、ゴールドファイアー | ゆあさのりあき、鈴木清 | 11月26日 |
第九話 | 弦太郎危機一髪! | ゴールドファイアー | 外山徹、高野宏一(特技監督) | 12月3日 |
第十話 | 死者へのくちづけ | ゴールドファイアー、ザイラユニコン | 福原博、鈴木清(特技監督) | 12月10日 |
第十一話 | 東京は燃えている | ザイラユニコン | 外山徹、鈴木清(特技監督) | 12月17日 |
第十二話 | 東京非常事態宣言 | トンガザウルス | 外山徹、鈴木清(特技監督) | 12月24日 |
第十三話 | 地下要塞攻撃命令 | トンガザウルス | 外山徹、鈴木清(特技監督) | 1973年1月7日 |
第十四話 | 脳波ロボットの秘密 | ジュラスドン | 枝川弘、山本正孝(特技監督) | 1月14日 |
第十五話 | マラソン怪獣カプリゴン | カプリゴン | 枝川弘、山本正孝(特技監督) | 1月21日 |
第十六話 | トラギラスを倒せ! | トラギラス | 福原博、鈴木清(特技監督) | 1月28日 |
第十七話 | アイアンキング殺害命令 | ドジラ | 外山徹、鈴木清(特技監督) | 2月4日 |
第十八話 | ロボット怪獣全滅作戦 | クマゴロス | 外山徹、山本正孝(特技監督) | 2月11日 |
第十九話 | 大虫人カブトロン出現 | カブトロン | 福原博、高野宏一(特技監督) | 2月18日 |
第二十話 | 宇虫人タイタニアンの逆襲 | カブトロン | 福原博、高野宏一(特技監督) | 2月25日 |
第二十一話 | カマギュラス殺人ガスを狙う! | カマギュラス | 外山徹、山本正孝(特技監督) | 3月4日 |
第二十二話 | 恐怖のタイタニアン地獄 | キリギロン | 外山徹、山本正孝(特技監督) | 3月11日 |
第二十三話 | 女に化けた虫人 | カンガロール | 田村正蔵、外山徹(特技監督) | 3月18日 |
第二十四話 | 東京攻撃前線基地 | ゴキブラー | 福原博、山本正孝(特技監督) | 3月25日 |
第二十五話 | アイアンキング大ピンチ! | クリケットン | 外山徹、鈴木清(特技監督) | 4月1日 |
最終回 | 東京大戦争 | クリケットン | 外山徹、鈴木清(特技監督) | 4月8日 |
ウルトラマンへの意外な影響
終盤の第25話はアイアンキングが敵に操られて町を破壊するという衝撃の展開になり、続く最終回でアイアンキングが正気を取り戻すのだが、テレビ埼玉で再放送が行われた際、肝心の最終回の放送がされないまま番組終了となってしまった。
この展開が(見た目が似ている事もあって)ウルトラマンと混同された結果、「ウルトラマンが町を破壊して終わる最終回を見た」という都市伝説が広がる事になってしまった(一応ウルトラ戦士にも敵に操られて町を破壊した者はいるが、最終回でやった訳ではない)。
なお原因は、プロデューサーがオリジナルのフィルムを借りたまま返却していなかった為らしい。
当然だが局には非難が殺到し、2014年に『仮面ライダードライブ』の再放送を行うまで特撮番組の放送枠が消滅してしまった。
ウルトラマンに似ているといわれるのはそのはずで、当初は名のとおり鉄の巨人といった姿であったが、クライアントからのウルトラセブンのようにしてもらいたいという依頼から変更されたからである。
そのため、デザイナーの池谷仙克氏は気に入っていた初期デザインをアレンジし、第1話にバキュミラーとして登場させている。
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