曖昧さ回避
- 『イナズマイレブン』の登場人物→不動明王(イナズマイレブン)
- 『妖怪ウォッチ』のキャラクター→不動明王(妖怪ウォッチ)
- 『モンスターストライク』のモンスター→不動明王(モンスト)
概要
「明王」の内では最強の鬼神とされる尊格で、大日如来の化身とされる。
「お不動様」「お不動さん」の名で親しまれ、「大日大聖不動明王(だいにちだいしょうふどうみょうおう)」「不動使者」「無動明王」「無動尊」「不動尊」などとも呼ばれる。
中国ではプートンミンワン(Budong Mingwang)、韓国ではプドンミョンワン(Budong Myeongwang)、ベトナムではバッドンミンヴォン(Bất Động Minh Vương)、チベットではミヨーワ(Miyowa)と呼ぶ。
その起源は釈迦が成道の修業の末、悟りを開くために「我、悟りを開くまではこの場を立たず」と決心して菩提樹の下に座した時、世界中の魔王が釈迦を挫折させようと押し寄せたところ、釈迦は穏やかな表情のまま降魔の印を静かに結び、魔王群をたちまちに超力で降伏したと伝えられるが、不動明王はその際の釈迦の内証を表現した姿であるとも伝えられる。穏やかで慈しみ溢れる釈迦も、心の中は護法の決意を秘めた鬼の覚悟であったというものである。他にも忿怒の相は、我が子を見つめる父親としての慈しみ=外面は厳しくても内心で慈しむ父愛の姿を表現したものであると言われる。
強大な怒りと破壊の力を以て、悪心を破壊・調伏する者とされ、仏法に従わない者を恐ろしげな姿で脅し教え諭し、仏法に敵対する事を力ずくでやめさせる、外道に進もうとする者はしょっ引いて内道に戻す仏法の警察のような存在。
右手に降魔の利剣を、左手に縄(羂索)を持ち
火炎(迦楼羅焔)を背にして巨岩(瑟々座)に乗り、猛々しく怒った顔(忿怒形)をしている。
梵名は「アチャラナータ(Acalanatha)」。
粗雑な長髪を束ねて左側に垂らし、青黒い肌である容姿から、
インド神話の破壊神にして苦行者の守護神シヴァの別名に「アチャラ」があり、不動明王の原型とする説がある。と同時に「底哩三昧耶経」には大自在天(マヘーシュヴァラ、ヒンドゥー教の最高神シヴァ)を不動明王が調伏する説話がある。
従者として八大童子などが知られる。そのうち矜羯羅童子と制多迦童子は不動明王の脇侍として造形・描写されることも多い。
「修験道」では重要視される尊格で、山伏の装束には不動明王を意味するものが多く備わっている。
図像表現
古くから信仰を集める尊格だけに像、絵画のデザインも複数のバリエーションが存在する。折衷型も多い。
もともと既存の仏典やそれを元にした曼荼羅を元にしたという背景もあり、弘法大師様の特徴を持つ像が真言宗以外で、不動十九観の特徴を持つ像が天台宗以外で用いられることもある。
台座は岩石を模した岩座(いわざ)か抽象的な形状の厚板を重ねたような瑟々座(しつしつざ)が用いられる。
台座の形状としての瑟々座は不動明王の像にのみ用いられる。瑟瑟(しつしつ)とは『
成就妙法蓮華経王瑜伽観智儀軌』や『建立曼荼羅護摩儀軌』において「五宝」に数えられる玉石を意味する。なお、五宝のリストにはバリエーションがあり、これらのテキストでは、五宝の他の四つは金・銀・真珠・頗梨(水晶)である。
瑟瑟が意味するものには諸説あり、『秘蔵金宝鈔』や『秘抄問答』では「五色石」であると述べている。このほかトルコ石であるとされたり、そうではなくラピスラズリだともされたりする(石川巌「古代チベットにおける古代ボン教とその変容」10頁)。
弘法大師様
「こうぼうだいしよう」と読む。弘法大師空海が唐の国より持ち帰った曼荼羅におけるデザイン。
両目を開き、噛みしめた口の上あごから左右の牙が下に伸びている。頭頂に蓮華の花が乗っており、これを「頂蓮(ちょうれん)」という。
代表的な作例は醍醐寺の塔頭(小院)三宝院に伝わる快慶作の像。
不動十九観
不動明王の性質と姿をあげたもので「観相(尊格の姿をイメージする修行)」で用いられる。天台宗の僧侶安然(あんねん)がまとめたもの。
多くは一般的な不動明王を踏襲しているが、莎という草の蔓で髪をまとめた莎髻(しゃけい)という髪型が頭頂にあり、左目を閉じ、右目を開けている。噛みしめた口の下顎の右端から牙が上方に、上顎の左端から牙が下方に出るという左右非対称性の強いデザイン。
代表的な作例は青蓮院蔵の仏画「不動明王二童子像(青不動)」。
四臂不動
呼び名の通り、四本腕の不動明王。『仏像図彙』では「鎮宅不動(ちんたくふどう)」の名で図像が収録されている。腕のうち二つは利剣と羂索を持ち、残る二つの手は顔面の口あたりの両側で頬を両側に引っ張るような姿勢をとっている。四臂不動は天部の神々を率いる主尊とされ、「十二天曼荼羅」では十二の神々に囲まれるように中心に描かれる。
四面四臂四足不動明王
京都国立博物館にはさらに足が二本、顔が三つ多い「四面四臂四足不動明王」の図像が収蔵されている。持物をとる手と異なる一対が四臂不動のそれと同じポージングをしている。京都国立博物館所蔵のものの他にも存在しており、それらは平安時代中期の絵仏師・源朝(げんちょう)が描いたものが元になっているという。
浪切不動
空海が唐の国から帰国する際、嵐で船ごと沈みかけた時に船内で自ら削ったと伝わる立像。高野山の別格本山南院にオリジナルと伝わる像が伝わっており、それでは羂索を持った左腕を真下に垂れている。剣を持つ右腕のポージングは一般的な座像と同じ。その剣に向けて首をすこし傾け視線を向けている。
立つのは岩の上だが、後光としての迦楼羅焔はない。
浪切不動明王像として現在に伝わる像においてはポージングは南院蔵のものと異なるもの、カルラ炎があるものもある。
現代の作例では荒波のモチーフを組み込んだものもみられる。
チベットでの描写
チベット仏教の仏画や仏像では、走っている最中の姿でも描かれる。シヴァとガネーシャ、あるいはその両方を踏みつけた構図もある。日本での作例では見られない虎革の腰布は、ヒンドゥー美術におけるシヴァ描写にも見られるもの。実例を見たい場合は「Acala」「Achala」と「tibet」で検索すると良い。
その他
- 鎧不動
武田信玄の弟武田信廉がつくったものとされる、日本風の鎧を着た不動明王の絵像が残っている。立体像も存在し、絵像と同様和風の甲冑姿であることもあり信廉作とみなされるようになった(基本的な文献において信廉作と明記されているのは絵像のほうだけである)。いずれも、信玄生き写しの不動明王座像「武田不動尊」を安置する乾徳山恵林寺が所蔵している。鎧不動のほうも信玄の姿をモデルにしているという。
- 伝宮本武蔵作不動明王本像
剣豪宮本武蔵が造ったとされる不動明王像。羂索を持たず、両手で剣を持ち、剣道にも継承された「八相の構え」をとる。構えた剣に鍔にあたる部分がない点も特徴的。顔は正面から見て横(右斜め前)方向を向いている。現在個人蔵でたまに武蔵や武士をテーマとした展覧会に出展される。
色の名前のついた不動明王
「黄不動」「青不動」「赤不動」と色の名前のついた不動明王像が存在する。
五色不動
五行思想を背景とし、それに割り振られた色の名前を冠した不動明王。
東京における目黒不動、目白不動、目赤不動、目青不動、目黄不動が代表例。五色で表わされる五行やそれに対応する五方角(中央+東西南北)という意味が強く、それぞれの寺院の不動明王像が赤かったり黄色かったり白かったりするわけではない。
日本三大不動
日本三大不動として知られる園城寺(天台宗寺門派)の「黄不動」青蓮院(天台宗山門派)の「青不動」明王院(高野山真言宗)の「赤不動」、こちらは描かれた不動明王の体色による呼称である。
- 黄不動
天台寺門派の祖・円珍が感得した不動明王を本人が画工に描かせたものと伝わる。不動明王が、座禅する円珍の前に金人(黄金色の神人)の姿で出現した様であるという。
筋肉質な腕と脚部が目立つがっしりとした仏画。黒色の背景に、カルラ炎でなく線で描かれた円い後光を背負った黄色い不動明王が立つ、というシンプルな構図。
オリジナルは秘仏の中でも、書籍などでの写真掲載も制限される扱いを受ける。ネット等にあげられているのは後世の模写である。模写の中には一般的な不動明王図のように足台として岩を加えているものがある。
仏像にした作例も残っているが、オリジナルの扱い方の背景もあってか、現存する点数は園城寺所蔵のものをはじめとする6つ程である。
- 青不動
不動十九観に準拠し、岩の上に座す不動明王の左右に二童子を配したオーソドックスなデザインとレイアウト。
元は宮中において天皇家の安泰と繁栄を祈願するために用いられていたが、下賜された。奈良国立博物館への寄託を経て、現在は飛び地の境内に2014年に建てられた大護摩堂「青龍殿」に移されている。
- 赤不動
右手に倶利伽羅龍王が巻き付いた利剣を、左手に透き通るような白い羂索を持つ全員赤色の不動明王。岩の上から右足をおろした、二本腕タイプの如意輪観音めいた座り方をしている。二童子は向かって右下に前後に並ぶ、というこちらも珍しい配置。この仏画での不動明王は赤黄色の体に赤い衣をまとうデザインが記された『不動使者陀羅尼祕密法』や『勝軍不動明王四十八使者祕密成就儀軌』を連想させる。
こちらも黄不動同様、円珍が感得したという伝承がある。
垂迹・化身とされる神
飯綱権現(五体合相している神仏の一)
えびす(『諸社禁忌』の説)
高龗神(貴船神社の祭神)
兵主大明神(三十番神の二十八番目)
熱田大神、八剣大菩薩(熱田神宮の祭神、八剣の一つ「次郎」のみ本地という説もある)
障礙神(三宝荒神の過去譚で言及される三神の一人)
他の神仏との関係
日本では「十三仏」の最初に数えられる。
日本においては毘沙門天とともに観世音菩薩やその変化身の像の脇侍として配置されることが多い。
天台宗系の伝承書『總持抄』や『渓嵐拾葉集』では阿弥陀如来との同体説が説かれている。
御真言
小咒(一字真言)
ノウマク・サンマンダ・バサラダン・カン
大咒(火界真言)
ノウマク・サラバタタギャテイビャク・サラバボッケイビャク・サラバタタラタ・センダマカロシャダ・ケンギャキギャキ・サラバビギナン・ウンタラタ・カンマン
中咒(慈救真言)
ノウマク・サンマンダ・バサラダン・センダンマカロシャダヤ・ソハタヤ・ウンタラタ・カンマン
主な立体物
また、本邦を代表するガレージキットメーカーの一つ・海洋堂よりABS/PVC樹脂製の関節可動立像が2013年6月1日発売。
竹谷隆之氏が原型を手がける「リボルテックタケヤ」シリーズの一つで、ここには他の神仏もラインナップされている。
サイズが大きい「タケヤ式自在置物」版も開発され、後に黄不動と題されたリペイント版も発売された。
通常の仏像も扱う株式会社MORITAのポリストーン仏像フィギュアシリーズ「イsム」にも、浄楽寺所蔵の運慶作の立像を元にした中型フィギュアと、前述の醍醐寺の快慶作の座像を元にした小型フィギュアがある。
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