「愛されるよりも恐れられた方がずっと安全である」(マキャヴェリ)
概要
「悪」というものは、一般的には世を惑わす忌むべき存在というイメージが強い。
しかし、時と場合によっては「悪」というものは無くてはならない場合もある。
歴史の実例で言うと、第一次世界大戦ごろのアメリカ合衆国では戦時特有の意識の高まりから「禁酒法」が制定され、アルコール飲料そのものが一律禁止された。しかし平時に戻ればアルコールの一切の禁止というのはあまりにも非現実的であり、そこかしこで密売が横行する有様となった。
こういった「公にできないが確実に需要の存在する品」はギャングの格好の資金源となるもので、禁酒法が出来てからギャングの資金源の増加による組織拡大、それに伴う抗争の激化や警察官との争いでの死者の増大、その他さまざまな犯罪率の増加など、社会が明らかに悪い方に傾いた。
このような経緯から反禁酒法の意識が高まり続け、ルーズベルト大統領が法改正に署名をした事を切っ掛けに、多数の州で飲酒法が撤廃されていく事となった。
このように、「害がある」とされるものでも単純に無くしてしまうとそれ以上の弊害が生まれてしまうがために無くすことができない、というものは多数ある。
今日ではタバコもそういう流れを辿りつつあるが、これも完全に禁止してしまうとアメリカの禁酒法と同じ道を辿ってしまうことが強く予想される。
また、「悪がいるからこそ自分達の正しさが証明できる」という裏返しにもなり、強大な悪の存在によって集団の結束が促される事がある。政治における過激なイデオロギーも、言ってしまえばこういう原理である。
このように、存在しなければより強大な負の要素を招いてしまう場合に必要とされる悪が「必要悪」である。
物語においては、世を正すためにあえて悪者を演じたり、課程や手段を選ばず場合によっては法や人の道から外れてでも大願を成そうとする、はたまたふとした偶然から結果的に周囲に良い影響を与える人物や組織がこれに該当する。
※以下、記事の性質上ネタバレ注意※
代表的な必要悪キャラクター
ヤッターマンが築いた王国ヤッター・キングダムにおいて、圧政に苦しむ人々を救うため、「必要悪」として三悪の後継者となった面々。
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悪役である侵略宇宙人だが、彼らの悪行が結果的に人助けになったり、研や人々との交流を経て、侵略行動に疑惑を抱く者も現れるなどそこまで悪い宇宙人ではない。主な理由としては宿敵であるはずの研に助けられた恩から殺せなかった・妹のキャロンが人質にされたにもかかわらず見捨てようとした研の代わりに彼女を人質にした強盗を成敗・両親が毎日喧嘩という家庭に嫌気を差し放火に手を染めた雄一少年に「これから毎日家を焼こうぜ。」と煽り結果的に彼とその両親を改心させる・小泉ヘレンを虐待していた上報酬目当てでビルのコンサートホールに爆弾を仕掛けた義父を制裁・時代遅れとバカにされたおさむ君の父親の自殺を「手伝ってやろうか」と挑発して結果的に思いとどまらせる・飛行機を乗っ取ったハイジャックを(行きがかりとはいえ)撃退・継母と義姉にいじめられていたルミ子をパーティに招待させたうえ三郎君との素敵な出会いまでさせる、などなど。更にはボスである魔王は宇宙船が爆発しそうな時は自分よりも部下を優先的に逃がし、地球を破壊しかねない巨大隕石アイアン星から地球を守るため研に協力したことも。正義の味方だが人質などを見殺しにするなど容赦なく冷たい泉研とはまるで正反対である。また彼らの故郷であるジュラル星はもともと平和だったが地球人が地球の植物を植えたことにより生態系が崩れ滅びかけてしまったのでその点を考慮すると地球侵略は正当行為ともいえる。もしかしたら上記のドロンボー一味(なお、初代も含む)に次いで気の毒なのかもしれない…。
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本作における主人公で、生きたいと願う者の味方。元はジーザスタウンの支配者であるグルジェフが欠陥品として処理したはずの人造人間だったが、暴力と洗脳によって人民を支配し、表面上では愛と平和を語りながらも、自分の意に沿わない人民や犯罪者を牢に入れて脳改造を施す等、とことん『正義』を権力として振りかざすグルジェフのやり方に怒り、あえて『悪』を名乗ってグルジェフ政権を打倒し、ジーザスタウンを救った。
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北斗四兄弟の長兄。文明の崩壊した世界では「世紀末覇者拳王」を名乗り覇を唱えた。当初は己の野望のために無慈悲な殺戮を繰り返す暴君としてのイメージが強かったが、彼が乱世に君臨せんとしたその真意は、暴力に満ちた世界を正すにはそれを上回る力と恐怖による支配しかないという考え故の行動だった。事実、ラオウが一時期不在だったため荒れた街では小悪党が跳梁跋扈し「拳王がいた頃の方がマシ」と街の人々に嘆かれ、拳王軍壊滅後にはさらなる巨悪が台頭するほど。また、(サウザーへの当て馬に使おうとしたとはいえ)敵対していたケンシロウを助けたり、少年には優しかったり(それ故に厳しく諭す場面も度々見られた)と、良心的な一面も見せている。しかし、力による統治は一時の平和しか生まないとも自覚していたフシがあり(そのために敢えて討たれたとユリアは推測している)、最期は自身も愛を知った末に世紀末の救世主となった義弟ケンシロウに敗北し、愛する女性と未来を託し天に還った。その行動については、ユリアも一定の理解を示す発言をしている。
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本能字学園を武力と恐怖で支配している生徒会長。生命戦維で作られた極制服の圧倒的な力で、最終的に全国の学園を手中に治めた。しかし、その真の目的は生命戦維による人類滅亡を目論む実母・鬼龍院羅暁の野望を打ち砕くため、有能な人材を選別し彼女に挑むことだった。最終的にはかつての敵である纏流子やヌーディスト・ビーチと和解し、共に羅暁討伐に出陣する。ちなみに恐怖による支配で世直しをしようとする点では上記のラオウと共通する。
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カギ爪の男に復讐を誓う男。「復讐」のため、ただそれだけのためにその「カギ爪の男」を追うのは、決して正しい判断ではないが・・・、結果、その「カギ爪の男」は自分自身の理想のためだけに、月を墜落させ人類を滅亡の危機に追いやるという、恐ろしい野望を知ることになる。さらに敵サイドの本拠地についた時には、月がもう目の前にまで迫ってきており、人類滅亡はもう時間の問題という状態であった。そのため、例え復讐心であっても有余は無かったため、やむをえない最終手段とも言える。
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「読むと強くなる」(アニメでは「見ると強くなる」)というコンセプトの元、入場シーンでは某プロレスラーを彷彿とさせる仮面を付けるなど、破天荒で尽く大相撲の伝統を平気で破壊する横綱だが、それは力士としての誇りを持っているためであり、近年の角界に活を入れるためでもある。
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ネタバレになるので余り詳しくは書けないが、大切な人を救う為に自身を忌み嫌われる存在へと貶め、結果的に人類を搾取者から解放した点は剣崎一真と一脈通じるものがある。しかし、その行動にはやや短絡的な一面もあり、「彼女の大切な人やその友人達」が築き上げたものをぶち壊しにしかねない面がある。結果的に「大切な人」と決別する羽目になるなど彼とは違い周囲に理解されているとは言い難い(脚本家自身にも指摘されている)。 | |
『存在しなければより強大な負の要素を招いてしまう』という点においてはまさに代表格。悪事を働く事があるものの、結果として向かい側の店にライバル意識を燃やし、勝つことになると我が子の意見を無視するラーメン屋の主人等が改心するなど、人助けに繋がる事が多い。また、タイガーやグラモといった自分たち以上の悪党や、社会的には真人間とされているが目的の為なら手段を択ばず、どんな悪辣な行為をも辞さないブルル公爵やゴメス署長などと対峙してはしばしば彼らを懲らしめる事にまで至っている。時としては母親や財宝、美女や城が絡んだ時などに無条件で人助けをすることもある。そのためかゾロリと敵対している者達、及びその関係者にはエルゼ姫やイヌタクのような良き理解者もいる。 | |
ONEPIECEの主人公にして海賊・麦わらの一味の船長である。作中での彼の行動原理はいたってシンプルであり彼が敵と見なすのは"冒険の邪魔をした者""仲間や友達を傷つけた、又は大切にしない者""海賊王になる夢の障害となる者""食の恨みを買った者""恩を仇で返す者"である。海賊として一切法には縛られてはおらず、前述した敵に回ったものに対しては容赦がなく、場合によっては世界政府の機関へのテロ行為や世界貴族への暴行すら辞さない。しかし多くの場合においてその町の住民や国家を結果的に救うことが多く、冒険を終えて出航するときには多くの感謝の声に見送られることも多い。また、世界政府への攻撃についても、作中の世界政府にも黒い部分が数多く描写されており一概に悪行とは言いきれない部分が多い。 |
関連タグ
各媒体における必要悪とされるキャラクターの一覧。
諸悪の根源・絶対悪:必要悪とは対照的な純粋悪。ただし、必要悪に該当する者もこうなった原因が判明するまでは同類と非難されている。
杉下右京:必要悪ですら否定的であり「必要な悪などこの世に無い」ポリシーを持つ。