概要
さだやす圭の漫画『ああ播磨灘』こと『読むと強くなる横綱漫画 ああ播磨灘』は、「モーニング」(講談社)にて連載された。全28巻、文庫版全14巻。
また、「イブニング」(こちらも講談社)において、プレストーリー『ああ播磨灘外伝 ISAO』が連載されている。全6巻。
主人公が横綱に昇進したところから物語が始まり、彼の連勝を止めるべく現れては散っていくライバル達を軸にドラマを描く事で、読者に主人公よりもライバル達に共感・同情を抱かせる(所謂判官贔屓的展開)という、王道のスポ根・成長物語とはかけ離れた構成をとっている。
その為、物語の中心人物である播磨は、常に傍若無人に振舞う事で、観客からは罵詈雑言を浴びせられ、愛宕山を中心とする相撲協会やマスコミの北条からは殊更敵視される等、主人公としてよりも悪役としてのニュアンスが目立つクセの強いキャラクターになっている。
しかし一方で、横綱として一度でも負ける事の許されない過酷な戦いを続けるだけでなく、ひたすら自ら追い込んでいく状況を作りながらも、数多くのライバルを次々と豪快に倒していく展開もまた、読者をハラハラとさせながら注目を浴びている。
問題作・怪作の部類に入りかねない漫画ではあるが、純粋な相撲漫画として見た場合、仮面の土俵入りや播磨灘の大暴言・人間を張り手一発で10m吹き飛ばすなどの一部の取組でのオーバーな演出などを除けば、土俵上での矛盾が非常に少ない作品とされている。
播磨灘
主人公の播磨灘は連載開始時点で15連勝・2場所連続優勝をしているなど実力は文字通りの横綱級だが、人格は誰もが認める最悪を極め、人を人と思わず、傲岸不遜、負けた相手力士を平気で罵倒するなど問題点に事欠かない。女性にも手が早く、彼に比べれば朝青龍が実際に起こした問題行動など可愛く見えるレベルである。しかしここに、また現実の力士でいえば白鵬にも劣らない実力が備わっているので、史上最強にして史上最も始末の悪い横綱であることは間違いないだろう。
とはいえ実のところ、一般市民相手はもちろん、弟子の同門力士や付け人に対して暴力を振るったり過度な暴言で理不尽な目に合わせるということは基本的なく(残念ながら相撲界ではそういう立場が下の人物に対することがしばし行われている)、むしろ老婆に対し「年寄りは国の宝や」と配慮したり、自身が優勝したとき祝いの鯛を持ってきた魚屋に同時に優勝した同門の弟子の分2匹が足りないと発言するなどの一面もあり、一概に悪辣な人柄と言うわけではない。
基本的に播磨灘が怒りを見せるのは自分と切磋琢磨する立場にある力士たちがふがいなさを見せる時であり、相手を極まれにだが称賛まじりに叱咤することもあるなど、「神である横綱である/なろうとするのなら、相撲に対して真摯に命がけで取り組むべきである」という本心を苛烈なぐらい主張しているように見える節もある(もっとも播磨灘自身は本心を口にすることがないのだが)。
また人格面での評価は別として土俵上での取り組みは非常に真っ当であり、それが作中で好悪極端な評価を受ける要因となっている。
作中クライマックスでは、神としての横綱の孤独を吐露した。
ちなみに、初期と後期で風貌が全然違う。
ストーリー
横綱に昇進したばかりの播磨灘。仮面をつけて土俵入りをし、土俵上で「双葉山の69連勝を抜くのはワシや」「どんなこすっからい手を使って負けてもその日限りで引退する」と大暴言を吐いた。それ以降、播磨灘対他全力士・協会・マスコミを巻き込んで、日本中の注目の的になるのであった。
登場人物
播磨灘の周辺人物
相撲協会・ライバル力士
横綱
大関
関脇以下
その他
アニメ
『見ると強くなる 痛快!横綱アニメ ああ播磨灘』というタイトルで、1992年4月23日から1992年10月1日にかけてテレビ東京系列局、岐阜放送、びわ湖放送、奈良テレビにて放送された。また、放送時期はややずれるが、三重テレビとテレビ和歌山に加えて山梨放送(日本テレビ系列局)、岩手放送、南日本放送(これらはTBS系列局)、福島テレビ、長野放送、テレビ大分(いずれもフジテレビ系列局)でも放送されている。
アニメーション製作はイージー・フィルム。全23話。九州場所編の白鳳戦までで終了している。
なお、南日本放送では土曜日のクロージングプログラムとして放送されたそうである。つまり、当時としてはあまりにも異例の深夜アニメというスタイルでの放送だったのだ。
アニメのオリジナル要素として、「りえ」(CV:西原久美子)を中心とした小学生グループが播磨灘のファンとして登場し、狂言回し的な役割を果たしている。
主題歌
オープニングテーマ
「絶対負けない」
作詞、作曲、歌:片山圭司/編曲:池田大介
エンディングテーマ
「死ぬまで離さない」
作詞:長戸大幸/作曲:多々納好夫/編曲: 池田大介/歌:A-TLES
ゲーム
1993年7月から9月にかけて、ゲームギア、ゲームボーイ、メガドライブの、3つのハードで発売された。
そのうちのメガドライブ版に関しては、原作を無視して空中戦や炎を纏った打撃が使用できるという点からクソゲーとして知られるが、実際には割と格闘ゲームとしてちゃんと遊べる出来。
相撲としておかしいと言う一点を除けば、キャラゲーとしてもそれなりに良く出来ている(グラフィックや音楽、播磨灘の破天荒な言動など)。そもそも、「原作では格闘要素などないのに格ゲーにされているゲーム」など少なからず有る訳で、その事に賛否があるのは当然にしても、本作だけが過剰に全否定される理由にはならないだろう。
ただ、キャラゲーとして拘るがあまり、70連勝しないとクリアにならないと言うキツさ(コンティニューやパスワード復帰は可能)、そしてそれに伴う横綱級の難易度はなかなか厳しい所ではある。
そしてその横綱級難易度を乗り越えた先に待っているEDが「播磨体操第一」と言う公式が病気なムービーな事も有名(実際にはパスワード「たいそうしようよ」で見たプレイヤーがほとんどだろうが)。
……有名過ぎて逆に、ゲームをプレイしていない人から「ああ、あの播磨体操のクソゲーね」と思われてしまっている向きもある。
現在は、2022年に発売されたメガドライブミニ2に収録されている物が一番プレイしやすい。クソゲーと言う風聞から(あと五十音順で最初なので)興味本位に手をつけてみたところ、「意外と面白い」と言う評価も多いとか。
なお、メガドライブ版がこのようになったのは当初は本当の意味で相撲ゲームとして開発が始まったのだが、ROM容量の勘違いに始まる紆余曲折あっての事だったという。→外部リンク
余談
2017年、東序二段71枚目の山名(当時21歳、尾上部屋)が『播磨灘』に改名した。(夏場所から使用。)
出身地は兵庫県姫路市だが、こちらの播磨灘は身長170センチ、体重102キロと小兵。
また、2007年に8代八角(元横綱・北勝海)にスカウトされ八角部屋に入門した樋口が、播磨灘のライバルからとった『北道山』に改名した。こちらは2014年に廃業、最高位は幕下。現在はDDTプロレスリングのプロレスラー・樋口和貞(本名)として活動している。
関連タグ
なんと孫六:作者が同じの野球漫画。
のたり松太郎/暴れん坊力士!!松太郎:よく比較される。