演者:イメルダ・スタウントン
CV:小宮和枝
概要
フルネームはドローレス・ジェーン・アンブリッジ。
魔法省の高官であり、地位は「魔法大臣上級次官」(日本でいう「事務次官」に相当するポスト)。
常軌を逸した権威主義者であり、ある意味ヴォルデモートと同類である醜悪な魔女。
シリーズを通しての政治・体制サイドの最大の悪役とも言えるキャラクター。
容姿・性格
肥満体型で、顔は締まりがなくたるんでおり、その姿はガマガエルを思わせる。また、甘ったるく馬鹿にしたような口調で生徒と接する。
少女趣味が特徴で、宝石のついた指輪やネックレスをつけ、ピンクのカーディガンを着ている。部屋も見渡す限りピンク色で、壁には猫が描かれた皿が沢山飾られている。ちなみに守護霊も猫。
一見穏やかな中年女性に見えるが、生徒から秘密を聞き出す為に禁止されている「真実薬」や法律に抵触する「磔の呪い」を使おうとする等、性格は残忍かつ卑劣。
その邪悪な人間性は無意識に分霊箱を所持している際に生じる不快感を相殺するほど。
人間関係・差別
魔法省の人間からの評判はいいが、アルバス・ダンブルドアを支持する側の人間(主にグリフィンドール関係者)からはかなり嫌われている。特にミネルバ・マクゴナガルとは犬猿の仲であり、教育方針や拷問に近い罰則等について激しい言い争いになっている。そのマクゴナガルからはかつて同じく「闇の魔術に対する防衛術」の教鞭を執っていたペテン師のギルデロイ・ロックハートを引き合いにされ「彼の方がよっぽど(教師として)有能」と辛辣な評価を下されている。(なお、ロックハートは忘却術以外にまともに呪文を使えないため、呪文を普通に使えるアンブリッジの方が優秀なのは確かである)
ヴォルデモート復活を主張するハリー・ポッターに対してもクィディッチを生涯禁止にしたり、理由を見付けては半ば拷問同然の体罰を科す等、多くの嫌がらせを行った。また、ダンブルドアやルビウス・ハグリッド、シビル・トレローニーを停職に追い込んでいる。
反面、自身の出身であるスリザリン寮などに対しては露骨な贔屓を行っており、スリザリン生から選抜された高等尋問官親衛隊を設立、その隊長には監督生をも上回る権限を与えたほど。
しかし、スリザリンの生徒の中ですらアンブリッジを嫌う者は多く、スリザリンの良心的存在であるホラス・スラグホーンからは「昔から嫌いだった」と切り捨てられている(映画版ではセブルス・スネイプにも嫌味をついて、彼の癇に障る場面がある)。
狼人間や巨人や水中人等の「半人間」を非常に恐れており、彼らに対して異常なまでの偏見と恐怖心を抱いている。
ルーピンの就職を不可能にしたのも彼女の仕業。まあ、元々人狼差別は深いのだが、それに拍車をかけた一人がアンブリッジである。
そんな「半人間」への恐怖心を逆手にとったハリー達から罠にかけられる事になり、禁じられた森に住むケンタウルス達を侮辱した結果、激怒したケンタウルスによって森の奧に連れ去られ、制裁を受ける羽目に…
劇中での動向
5巻にてホグワーツ魔法魔術学校の教育改革という面目でコーネリウス・ファッジ率いる魔法省から派遣され、「闇の魔術に対する防衛術」の教授になった。しかし、実際は魔法省を乗っ取る為に武装集団を編成している疑いのあるダンブルドアもといホグワーツを監視する為に派遣されていた。
学内では上述の性格で専横を極め、その挙げ句に一時はダンブルドアを追放してホグワーツ“校長”を僭称するまでになるも、マクゴナガル以下教員一同からは誰も認められなかったばかりか、校長として認めた者以外の入室を拒む、校長室からも当然断固入室を拒否され、ハリーと共にクィディッチ生涯禁止を言い渡した事で自主退学を決めたフレッド・ジョージから彼らの開発したイタズラグッズで盛大なお礼参りを喰らう等、グリフィンドール生を中心とした反アンブリッジ派の生徒達から度々反撃を受け、更には前述の性格のため、マクゴナガルをはじめとする他の教職員(フィルチを除く)もアンブリッジに助け船を出すどころか、反アンブリッジ派の生徒達を称賛・応援する始末だった。
最終的に魔法省がヴォルデモート復活を全面的に認める事となったと同時に、アンブリッジもホグワーツから除籍処分を下されるが、その際にはマクゴナガルまでもが加勢する形で、ホグワーツ城に住むポルターガイストのピーブズから歩行杖(マクゴナガルが貸したもの)等でひっぱたかれながら叩き出されるという屈辱的な方法で追い出された。
また、アンブリッジの権威の笠を着てやりたい放題やっていた高等尋問官親衛隊の面々もまた散々虐げられた生徒達から壮絶なお礼参りを受ける羽目になった。
それでもそれ以上の制裁を食らったり、改心したりする様な事もなく、引き続き魔法省における地位は保持し続け、7巻にも死喰い人の協力者として再登場。
ヴォルデモートと死喰い人の一派が魔法省を掌握すると、死喰い人側に与するばかりか、新たに創設された「マグル生まれ登録委員会」の委員長に就任。
ヴォルデモートが嫌うマグル生まれの魔法使い達への弾圧活動を嬉々として先導し、法廷に引き立ててきたマグル生まれに対して無茶苦茶な言い分で無実の罪を擦り付けて有罪判決を下してアズカバン送りにするなど、魔女狩りのような暴挙を平然と行い、既に死亡者まで出していた。
更に分霊箱の一つであった「サラザール・スリザリンのロケット」を不死鳥の騎士団の面汚しのような男から賄賂として受け取っており、それを回収すべく潜入していたハリーの前で、法廷に連行されたマグル生まれの魔法使いへの冷酷且つ横暴極まる裁き、そしてロケットの入手経緯についていけしゃあしゃあと大嘘をついた事で彼の逆鱗に触れ、失神呪文をかけられた上で、ロケットを強奪された。
劇中における出番はそれで終了したが、ヴォルデモート打倒後に、それまでの行いのツケが回って、自らがアズカバンに収監されるという因果応報な顛末を迎えたという。
世代考察
世代的には映画版の外見年齢や原作の描写(ルーピンが就職の際にアンブリッジが起草した半人狼法に阻まれた)からして親世代と爺世代の間だと思われる。
おそらく親世代であった場合、ベラトリックスと近い年齢の最年長組。ちなみにリータ・スキーターはベラトリックスと同学年の可能性が高いため、ベラトリックス・リータ・アンブリッジという作中でも屈指の邪悪な女たちがそれぞれ学友だった...という推測も可能。
原作終了後に判明した過去
映画第5作の未公開シーン(DVD等で収録)では元々は聡明だったが、堕ちて行って現在の様になったと語られていた。
原作でも原作者により彼女の過去が語られている。
アンブリッジはホグワーツの卒業生であり、スリザリン寮出身。
魔法省勤務でありながら野心に乏しく「ビル管理部」所属の父、いい加減で気まぐれなマグルの母、スクイブ(先天的に魔力なし)の弟の家庭は非常に貧しい上に劣悪な家庭環境だった。アンブリッジはそのような環境をバネに、野心に溢れた女性として育つ。
しかしスリザリンでは要職を任されることはなかった。これは当時から寮監のスラグホーンに嫌われていたからであろう(スラグホーン曰く「バカ」)。
学生時代には友人が一人もおらず(仲間意識が強く、団結を売りにしているスリザリン所属にもかかわらず)、監督生や代表生にも就任できなかったため、学生時代を楽しんだことはなかった。
卒業後は無事魔法省に就職。しかし省内のビル管理部というある種ブルーカラー寄りの父のことを邪魔に思っており、他人の振りを貫き、裏では父に早期引退させるべくお金を渡していた。それでも父のことで周囲から馬鹿にされることもあったようである。
アンブリッジは仕事熱心であると同時に媚を売ることに長けており、出世街道を進む。しかし、彼女を深く知った者は皆、彼女の中にある激しい差別思想を恐れた。そのためか、アンブリッジは生涯独身であった。
一定の出世と評価はされたが、腐敗した魔法省でも上級幹部にはなれず、鬱々としていた。
そんな時、被害妄想に憑りつかれたコーネリウス・ファッジの隙をついて籠絡したところから作中の活躍?に繋がるのである。
人物考察
権威的かつ差別的で醜悪な人間。しかし過去の経歴を含めて考えると、彼女にもまた彼女の苦悩があったと思われる。半人間への恐怖も流石に病的である。
また、彼女は死喰い人になったことはなく、死喰い人が出すことのない・出すことのできない守護霊を分霊箱を身に付けたまま出している。ここからはヴォルデモートやその一派とはまた異なる人間性・邪悪性を有していると分かる。
彼女の「幸福な記憶」とは一体何だったのだろうか?