ブルーコスモス
ぶるーこすもす
概要
C.E.世界における、反プラント・反コーディネイターを掲げる人々の諸集団あるいはそれが掲げるイデオロギー。
スローガンは「青き清浄なる世界のために」。
前駆組織はC.E.において地球圏の政財を牛耳ってるゆかいな仲間も輩出してることでお馴染みのアズラエル財団が作った環境圧力保護団体。
つまりかの財団のロビイストという「どこかで聞いたような来歴」がバックボーンになっているのだが、遺伝子操作によって生まれる人類【コーディネイター】が爆誕するとその存在は生命倫理違反として弾圧したり、反対デモを行い始める。
しかし国際法でコーディネイターの出産は禁じられたにもかかわらず違法に生まれ続けるコーディネイターに不満を覚えた一部のブルーコスモスが過激派と化し、コーディネイターやその製造に関与する者たちに対する迫害やテロを行うようになっていった。また、宇宙クジラこと地球外生命体「エヴィデンス01」の発見以降その教義の矛盾から人気の落ちていたカトリックやイスラムなどの宗教関係者達が新たなファン活動の場として合流していき、具体的な団体から集団の面も持つ一大イデオロギーへと変化していった。
またコーディネイターが経済的侵略あるいは彼らが技術や文化を発展させる度にナチュラルの社会的地位が危うくなるのを恐れている背景もあるが、過激という自覚がなく、寧ろ「自身らの行いこそが平和に繋がる」と盲信する輩も少なくない。
ちなみにブルーコスモスに賛同する相手ならコーディネイターでも加入を歓迎するという意外な柔軟性を持つ。ここでの加入者は自らの操作された遺伝子に疑問持って悩んだり、両親の希望に沿った外見や能力を発現しなかったため、捨てられたコーディネイターが多い模様。
ブルーコスモスの思想を持つ人間やそのシンパは非常に多く、経済界の大物や地球連合軍の軍幹部、各国の政治家といった有力者にもブルーコスモスの賛同者がいる上、一般市民にも数多く賛同者が存在し、その殆どはナチュラルとされている。
一方で、小説版『機動戦士ガンダムSEED』等において「コーディネイターの中にも出生に苦悩した末に反コーディネイター思想に生きる道を見出した者も居る」とされ、前掲の通り、極僅かだがブルーコスモスとなるコーディネイターもいる。遂には、ナチュラルとコーディネイターの間に生まれるハーフコーディネイターからも賛同者が現れてしまった。
そもそも、オーブ連合首長国でさえコーディネイターやハーフコーディネイターとしての出生を隠して生きる者が居る以上は、その出生を呪う者が出てくることはむしろ自然な流れであるとすら言えてしまう。ちなみに、忘れられがちだがキラ・ヤマトもSEED中盤までは「コーディネイターとしての出生に苦悩した者」でもあった。つまり、コーディネイターがブルーコスモスになり得る可能性は少なくは無い。
構成員を自称するものを含めて総数は数十万人程度と、規模そのものは地球全域に影響力を持つにしては中小レベルに過ぎないが、心情的にその主義主張に共感する人は世界中に存在するため、人数面の不利は存在しない。しかも、この統計は戦争開始前のC.E.69年の数字であり、戦時中の規模は不明。特に戦争開始後のC.E.70年4月1日にはザフト軍が地球全域にニュートロン・ジャマー発生器を埋め込んだ「エイプリル・フール・クライシス」によりエネルギー不足が深刻化。10億人近いナチュラルが餓死・凍死する凄惨な事件が発生したため、ブルーコスモス賛同者が激増していても不思議ではない。
地球とプラントの戦争の引き金となった「血のバレンタイン」は、ブルーコスモス派の地球連合軍将校が独断で核ミサイルを持ち込み発射させた事で引き起こされたという※1。
ブルーコスモス主義者の内、政治面で特に有力な人物を「盟主」と呼ぶ。代表的なのはムルタ・アズラエル、ロード・ジブリール。
また、本編以外でもブルーコスモスの信奉者は多岐に渡り、その様相はコーディネイターやハーフコーディネイターさえも取り込んだ闇深い組織となっている。
C.E.71では
「盟主」であるアズラエル財団出身のムルタ・アズラエルは軍の行動にも口出し出来るほどの力を持ち、対プラント戦争を強力に推進※2。
しかし、アズラエルは第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦で乗艦していたドミニオンもろとも戦死した。
C.E.73では
「盟主」を継いだロード・ジブリールが前任者によって行われていたブルーコスモスの各施設の研究を引き継ぎ、地球連合軍内部に「ファントムペイン」という直属の独立部隊を配備させている。
これに伴い、地球連合軍はブルーコスモスの私兵集団にほぼ等しくなり、デストロイのベルリン襲撃の際には無関係の一般市民にすら膨大な死者を出す暴挙に及んだ。
なお、プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルの演説により「母体」だとされるロゴスが「戦争を裏から操り、自分達の利益を生み出す死の商人」「人類が戦うべき真の敵」として断罪されたことにより民衆が蜂起、最終的にはジブリールがレクイエム攻防戦で戦死した結果、ロゴス共々壊滅させられた模様である。
ただし、「組織としての」ブルーコスモスが壊滅したとしても、前述のようにその主義主張に共感する人々は世界中に存在し続けるため、「イデオロギーとしての」ブルーコスモスが消滅することは決して無いと思われる。
C.E.75では
やはりロゴス壊滅後も尚も健在で、世界各国で巻き起こっている連合からの独立運動と並んで彼らの武力による地球上におけるコーディネイターの多い地域やプラントおよびザフトの関連施設を標的にしたテロ行為が大きな問題となっている。
現在の指導者はこれまでのような政治的な影響力を持っていた「盟主」ではなく、軍人崩れのミケール大佐が務めているという。
しかし、この頃には最大のパトロン的存在だったロゴスの後ろ盾を失い、それに伴って地球連合軍との繋がりも弱くなったことから、新兵器を開発できるほどの資金面の余裕もなければ、連合軍の正式な軍事作戦としての名目も社会的な正当性すらもない、神出鬼没に現れては無差別な破壊工作を繰り返すパルチザン的活動が主体のゲリラ組織に成り下がっている。
それでも今だにダガーやウィンダム、さらにデストロイの残存機といったMSを数多く保有しているため、その破壊活動によって発生する被害と犠牲の規模は決して無視できるものではない。
それでいて組織全体のやり方もこれまで以上になりふり構わなくなってきており、まだ配備MSの更新が進んでいない防備の弱い地域を真っ先に狙ったり、特攻にも等しいMSだけによる目標地点への突撃を敢行したり、予備パーツの確保ができない未修理状態のデストロイを強引に出撃させたり、場合によっては自分自身を爆弾にした自爆テロすら辞さなかったりと活動の過激化に一層の拍車がかかっている。
最近勃興した新興国家のファウンデーション王国が行っていた裏工作にもいくつか関与していたようだが、そのファウンデーション王国とコンパスの衝突の混乱の中で放たれた核ミサイルによってミケールは拠点ごと破壊される形で命を落とし、ブルーコスモスはまたしても指導者を失うこととなった。
元々はブルーコスモスが反コーディネイターを掲げて乱用してきた核ミサイルが、今度は特に恨みを買った訳でもない第三者によって自分達に向けられて壊滅に追いやられるというのもかなり皮肉が利いた末路といえよう。
しかし、本来BCの掲げていた生命倫理の思想は今となってはもはやただの建前と化しており、実際は両者間の基礎的な能力の格差から来るナチュラル側の将来的な危機感によるものが大きい。
コーディネイターに能力的に互角かあるいは勝っているとされるナチュラルの人間はアニメ本編と外伝作を含めてもさほど多くは無く、それも大抵はあくまで特定の分野に限られているのが現状である。
地球でも上記のファウンデーション王国は両方の平等を謳っておきながら実際にはコーディネイターとそれに類する者達が要職を占め、ナチュラルの方はスラムに追いやられているという極めて歪な国家であったことが露呈しており、かつてデュランダルが提唱したデスティニープランに基づいてコーディネイターのナチュラル社会への介入を許した場合、コーディネイターがナチュラルを(経済、権力から)支配するディストピアに発展していた可能性は確かに存在している。
ブルーコスモスとはそんなナチュラルのコーディネイターに対する恐怖心の象徴であり、それらが解消されない限り、ブルーコスモスもといそれに類する反コーディネイター感情はこれからも生まれ続けるものと考えられる。
事実小説版のエピローグではファウンデーション王国のアコード達の暴挙が全て表沙汰になった結果、指導者のミケール大佐を失ったにも関わらず、ブルーコスモス勢力は息を吹き返してしまった模様。事実上アコード達の行動がプラントの過激派と共謀したナチュラル支配計画だったと解釈されても仕方がないため、当面は支持者が増加やブルーコスモスの暗躍は続いていくものと思われる。
注釈
※1 漫画作品「機動戦士ガンダムSEED Re」ではこの時の将校がアズラエルの腹心ウィリアム・サザーランドだったという扱いになっている。もっともTVシリーズ作中では地球連合軍最高司令部での会議の折に「もう核は一度使ったんだから」というアズラエルの談に連合高官が「いや、あれは君たちが……」という旨の反論を行っているのみに留まる。
※2 その過程において発動したオペレーション・スピットブレイクにおいて、アークエンジェル隊は地球連合軍を出奔し、軍と敵対することになる。
SEEDの外伝作品では
C.E.72
ハーフコーディネイターたちのテロ組織「アンティ・ファクティス」の指導者であったジョエル・ジャンメール・ジローが、ブルーコスモスの信奉者として明かされている。そして、彼自身もハーフコーディネイターである。
彼は、ボスゴロフ級を拠点としながら大西洋連邦に迫害された元・大西洋連邦MS部隊のハーフコーディネイターたちを集め、彼らに「プラントへの受け入れ」と言う希望を与え扇動する事でテロ行為へ加担させ、さらにOSをナチュラル用に調整したザフトのMSやオーブ寄りのナチュラル用OSに改良したダガーを他のテロ組織やゲリラ組織に提供し、世界各地で紛争が起こる切っ掛けを作っていた。また、オーブの暗部組織「ODR」のケン・ノーランド・スセを協力者として取り込み、エクリプス2号機で地球連合軍の軍施設に特攻させて開戦の引き金にしようとしていた。
しかし、エクリプス2号機は奪取し損ねたエクリプス1号機の追撃で阻止されてしまい、拠点としていたボスゴロフ級にてオーブの暗部組織「ODR」の指揮官であるミヤビ・オト・キオウからの「裁きを受けて更生するなら生活を保障する」と言う条件の上でオーブへの受け入れが提示され、心を入れ替えた副官のヴァレンティーナ・ビノンから「他の生き方でやり直そう」と言いかけた所で冷徹に発砲。
ブルーコスモスとしての本性を晒し、証拠の隠滅としてボスゴロフ級に仕掛けた毒ガスでハーフコーディネイターたちを虐殺し、先の発砲で重症を負いながらもエールカラミティで逃亡したヴァレを始末するべく、レイダーの改修機で出撃。ヴァレの「人として扱われたかった」と言う想いを踏みにじりエールカラミティを撃墜、さらにケンのエクリプス2号機から核エンジンを奪うために襲いかかり、自らが地球連合軍の基地へ特攻しようと目論む。
ジョエルの真の目的は「自身を除く世界中に蔓延るコーディネイターやハーフコーディネイターが絶滅する瞬間を見届け、自身が最期のコーディネイターとなった時に自害すること」であり、それらの原動力は彼いわく「ハーフコーディネイターとして生まれた罪深き身を赦せない、生まれ堕ちた罪を贖うべき」と言う歪んだ思想が根底にある。
その目的のためであれば、大西洋連邦の艦隊を壊滅させてみせたり、同国への核動力機での特攻計画も担う。ジョエルがブルーコスモスの工作員であるがために、大西洋連邦の機密情報(ハーフコーディネイターを使った騙し討ち用のMS部隊など)に詳しく、アンティ・ファクティスにはカラミティやレイダーの派生機やそのオプション装備と言った地球連合軍でも希少な物が配備されている。
なお、彼がブルーコスモスへ賛同した経緯や上述の思想に至った生い立ちなどは不明である。劇中で30代前後と推定されているため、ギルバート・デュランダルたちと同じくS2インフルエンザが蔓延して地球が大荒れした頃の生まれの可能性が高い。