概要
東方Projectに登場する稗田阿求と藤原妹紅のカップリング。
妹紅は今では不老不死の蓬莱人であるが、阿求と同じ人間でもある。
妹紅は現在では人間の里との交流もあり、阿求もまた「幻想郷縁起」執筆などに関連して稗田邸以外の場所に足を運ぶ事もある。お祭りやイベントなどがある際には博麗神社や紅魔館などにもそれぞれ顔を出しているなど、その行動範囲は重なる部分もある。
「幻想郷縁起」
「幻想郷縁起」(『東方求聞史紀』)において阿求は妹紅の出自について阿求ならではの想像を展開してるが、これは誤解も多分に含まれる模様。妹紅は阿求に現在に至る経緯も語っていない様子で、阿求もそのあたりについては謎としている。
妹紅の人柄について阿求は「 余り人と接することが得意でない様子 」としつつも、その面倒見の良さや人の話を喜んで聞き続けてくれる点などを挙げて比較的肯定的に捉えている。
「幻想郷縁起」の個別の項目では、妖怪をはじめ「英雄伝」に記載した博麗霊夢や霧雨魔理沙、八意永琳などについても阿求らしい酷評がみられることがあるが、妹紅についてはそういった険のある記述が非常に少ないという特徴がある。気楽に話しかけていけばもっと妹紅の事も話してくれるかもしれないという明るい展望も見出している。
ただし現状では先述のとおり妹紅が自身の事をあまり語っていない様子であるので、単に「 謎 」なだけなのかもしれない。
木花咲耶姫と石長姫
阿求と妹紅に関連して、それぞれの形で木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)と石長姫(イワナガヒメ)に関連している点に共通点がある。主に木花咲耶姫は美、石長姫は永遠(阿求によれば「 不変 」)を司る。ただし木花咲耶姫のそれは限りのあるもの(「 儚さ 」)で、石長姫は永遠をもつかわりに「 無骨 」とされる。
妹紅はかつて蓬莱人となる以前、帝の命をうけて「蓬莱の薬」を放棄すべく今日の富士山を登る岩笠らの後をつけ、その過程で木花咲耶姫本人と対面し、その行いと思しき光景も目にした。そして木花咲耶姫の指示のもとこの山を降りて石長姫の八ッ岳へ向かおうとする岩笠を下山の途中で蹴落とし、「蓬莱の薬」を飲むのである。こうして妹紅は永遠の命を得ることとなったがその過程には木花咲耶姫もまた関係しており、妹紅は木花咲耶姫に強い負の感情を抱いている。
富士山と八ヶ岳を通した姉妹の対立と今日の幻想郷における妖怪の山との関係が妹紅を通して語られ、妹紅は「 不死を司る神様 」のいる妖怪の山(八ヶ岳の謂れを引き継いだ山)への登山を決め、ここで自らの境遇を告げて登頂が遅れた事と岩笠についてのことを詫びようと決意する。
妹紅は今も咲耶姫に対して強い負の想いを持つ一方で、石長姫にはまっすぐな想いを抱いている様子である。
阿求については『東方鈴奈庵』において稗田邸中庭に木花咲耶姫と石長姫が祀られ、阿求もこの両者に祈りをささげる様子が語られる。一般に美麗な木花咲耶姫に信仰が集まる事が多いが、ここでは阿求は特に石長姫に祈っている。
阿求が石長姫に願う御利益は「 長寿 」であり、これは短命である「御阿礼の子」としての要素に由来する。
阿求は「御阿礼の子」として転生する身であるが、阿求自身は『求聞史紀』時点での「幻想郷縁起」の時点からも今の幻想郷を気に入っており、『鈴奈庵』では阿求は今の生を全力で生き、寿命に関わる宿命のようなものにも「 抗ってみせる 」と決意を語る様子が描かれている。原作者ZUNもまた阿求の心のうちについて(今の阿求としての生に)「 しがみつきたい 」だろうとしている。「 楽しいし。 」(『鈴奈庵』第四巻あとがき)。
作中では妹紅と阿求はそれぞれのかたちで木花咲耶姫と石長姫の姉妹に関連をもち、今日では永遠性を帯びる石長姫の要素をもつ妹紅と短命な儚さの中にある木花咲耶姫の要素をもつ阿求という対照的な間柄ではあるが、共に一般に祀られる事の多い木花咲耶姫ではなく石長姫により心を寄せている点にも共通点を持つのである。
上白沢慧音
妹紅にとっての「 理解者 」(『東方儚月抄』)である上白沢慧音は、人里に住み、寺子屋の先生をしている。
両者の関係は『東方永夜抄』EXステージをはじめ『弾幕アマノジャク』では同じ日に鬼人正邪の追跡に当たるなど明に暗にその関わり合いの深さが表れている。
阿求にとっても慧音は関わりがあり、慧音が寺子屋で教鞭をとる歴史の授業のテキストは稗田家がまとめたもので、慧音が操る「歴史」と「幻想郷縁起」をはじめとした稗田家が管理する「歴史」は個別のものとなっている。歴史の編纂を行う慧音は妖怪研究をはじめとした幻想郷にまつわる様々な事柄を記述する阿求と通じるものがある。
二人は慧音を通しても繋がりをもつのである。
二次創作では
二次創作においては阿求と妹紅は様々な要素からストーリーに関連し合うことがある。
二次創作的要素を含む設定背景に由来したアプローチや純粋に今の幻想郷で時間を共にしている間柄として描かれることも多く、「あきゅもこ」のアプローチには様々なあり方がある。
一般に、二人の関係性は比較的良好に描かれることが多い。
永遠亭を通して
二次創作において阿求は病弱または体が弱いと設定されることがあり、その場合には、現在の幻想郷で高度な医療を提供している永遠亭の永琳の元を訪れる様子が描かれることがあり、その際、妹紅が道中を先導するといった関わりもみられる。
一例としては、永遠亭に至る迷いの竹林の道中で、険しい道のりに時折休憩も挟みつつ、今まさにある程度の時間を共有している二人の交流が描かれる、などのアプローチがある。
寿命差
二人を描く際にテーマとなることが多いのが、寿命差である。
阿求は原作において「短命」とされるが、一方の妹紅は先述のとおり「不老不死」である。
二人の間にある時間の「差」は、東方Projectの他のキャラクター間に比べても特に大きなものとなっているのである。
その命の時間差について阿求側の「短さ」からアプローチするものもあれば妹紅側の「永遠」からアプローチするものもあり、その主体の置きどころによってそれぞれ旅立つ側の視点、見送る側の視点から様々な心の動きが語られる。
一方で阿求は転生によって再び幻想郷へと生まれる存在でもある。
「御阿礼の子」の魂は、不死の魂である妹紅に幻想郷で再び出会う可能性もあるのである。
その出逢いと別れと再会とを幸福なものとするか、あるいは別れの後にある「阿求」でありながらも「阿求」ではない存在との再会を悲劇的にとらえるか、はたまたまったく異なるストーリーへと導くかなどがそれぞれの創作の個性となる。
プロセスも様々であり、様々な作品ごとのあきゅもこのあり方が描かれる。
ただしいずれのあり方にしてもその性質上、過程または結末、あるいはその両者ともシリアスなストーリーとなることも多い。
藤原不比等説
この他のテーマとしては、稗田阿求の魂の根源である稗田阿礼とその元ネタに取材した「稗田阿礼=藤原不比等説」に基づくアプローチがある。
これは阿礼(後に阿求に転生)が妹紅の父と目される藤原不比等と同一人物と設定するもので、いわば父と娘の再会である。
一方は転生、一方は不老不死によるものと、それぞれ非常に波乱万丈な経緯をたどる再会といえる。
このテーマによるアプローチの詳細は「藤原不比等」記事における「東方Project」の項及び「稗田阿求」記事における「二次設定」の項も参照。
けねもっきゅん
先述のように原作においても慧音と関わりの深い二人は、慧音も交えた「けねもっきゅん」としてひとつのグループ単位を構成することもある。
いずれも人間あるいは人間に極めて近い視点から幻想郷に関わることが多い。
慧音が物語に加わることで、「あきゅもこ」とはまた違った在り方が見出されている。