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母親の命が惜しかったら、おとなしく投降する事だな。

それとも母親の命を引き換えにしても我々(エグリゴリ)にたてつくつもりか!?


原作の場面編集

小学館週刊少年サンデー』に1997年2002年に連載された皆川亮二作(原案協力:七月鏡一)の漫画『ARMS』の1シーン。


主人公高槻涼と仲間たちの身体に移植された、生体ナノマシン兵器「ARMS」。そのARMSを狙う秘密結社「エグリゴリ」の特殊部隊が涼の自宅を襲撃し、母親の高槻美沙人質に取られてしまった場面である。


まさに絶体絶命の状況。涼はこれ以前に、エグリゴリの攻撃に巻き込まれる形で幼馴染の赤木カツミを失っており、自分のせいでこれ以上大事な人を傷つけ、亡くすことは何としても避けたかった。


涼「…母さんごめん… オレのせいでこんな目に…

 もう誰も巻き込まないつもりだったのに…


涼は強大なARMS”ジャバウォック”の宿った右腕を下げて抵抗をやめ、されるがままに戦闘員に右腕を極められ拘束される。

果たして、ついに敵の手に落ちてしまった涼と、母親の美沙の運命は……!?


惨劇は避けられず……。編集












美沙「………まったく…………しょうがない子ね…

 お父さんは一体この子に何を教えていたのかしら…!?


ド ン


その場にいる戦闘員がみな涼の動きに警戒し、無力な母親などには目もくれていなかったその時。

なんと美沙は隠し持っていた拳銃ベレッタ84)で、自分の首に手を掛けていた戦闘員の脳天を一撃のもとに撃ち抜いたのだ。


予想だにしない出来事にその場の全員が動けずにいる一瞬を突いて、さらに美沙は家庭用の包丁投げナイフ代わりに投擲。涼を背後から拘束していた戦闘員の眉間に見事な腕前で命中させ、涼を救う。


そして美沙は、にこやかな微笑を崩さず、涼に戦いの心得をレッスンする余裕すら見せながら、ベレッタ84の二丁拳銃M60機関銃(一般家庭のどこにそんなものを隠していたのか…)の乱射で、エグリゴリの部隊相手に大立ち回りを演じる。


「あの動き… M84の二丁拳銃……ま、まさか……」


なんと美沙は、

笑う牝豹(ラフィング・パンサー)」

地獄の黒魔女(ヘルズ・ブラック・ウィッチ)」

の異名で恐れられた、伝説の女傭兵であり、かつては夫の「静かなる狼(サイレント・ウルフ)」こと高槻巌とともに、二人一組の傭兵として数多の戦場を震え上がらせた存在だったのだ。


涼は今まで全く知らなかった事実に呆気にとられていたのだが、誌面の前の読者も驚愕の展開であった。何しろ作中ここまで「この母親、何かありそうだぞ」と読者が引っかかるような要素はどこにもなく、主人公の母親はごく普通の専業主婦、読者は皆そうとしか思っていなかったのだ。


強いて言えば、高校生の息子がいるにしては若作りで美しい年齢不詳の母として描かれている(実際、この後で涼の実母ではなく養母だったことが明かされる)点がヒントになるが、「主人公の母ちゃんが子の年齢に見合わず若々しい美人」なんてのは漫画・アニメでは挙げきれないほどある設定であり、それで察しろというのは無理な話であった。


エグリゴリは多数の死傷者を出しつつ、ほうほうの体で撤退するほかなかった。

上の見出しに「惨劇は避けられず」と書いたが、嘘は言っていない。

惨劇に遭うのが、敵側であるだけで…。


パロディ編集

この場面は、読者を完全にだし抜いた驚きの展開であり、エプロン姿のまま笑顔で拳銃や機関銃を撃ちまくる美沙の姿は強いを通り越してギャグにすら見えてくる、非常に印象深いシーンである。


そして、「人質を盾に取り、お前たちはもう詰みだと勝ち誇っていたら、実はその人質は小悪党程度には手に負えない強大な相手だった」というパロディのネタとしても用いられる。

惨劇の予感あまりにも絶望的な光景

変化球パターンとしては、「よりによってその人を人質に取ると、残された連中の逆鱗に触れて、ただ撃退されるだけでは済まないぞ」というパロディもある。

母(?)を人質にとるあの兵士達便利屋68大ピンチ


原案者からの説明編集

「落ちこぼれ(or ごく普通の少年)だったはずの主人公が、いくら修行や戦いを重ねてもここまで人知を超えた強さに成長しちゃうのは不自然だろ」

 ↓

「今まで隠していたが、実はお前の両親は特別な血筋の生まれだったんだ」

……という展開は、長期連載で強さのインフレが進んだバトル漫画にはありがちなものである。


しかし、この場面は『ARMS』単行本全22巻中の4巻。まだまだ話は序盤であり、母親に唐突な後付け設定など必要はない。


後年、原案者の七月鏡一氏がtwitterで明かしたところでは、


お母さんについては、この作品の初期段階から皆川さんとコンセンサスが取れていて、いつぶちかますか見計らって、満を持してのこの場面です。

主人公に与えられた逆境すべてがひっくり返る、そんな場面にしたいと思っていました。


とのことで、最初から母親の設定を練った上であえてそういう気配を描かず、一挙にそれを開放して読者を驚愕させた、狙い通りの展開だった模様である。


関連項目編集

ARMS 高槻涼 人質

母は強し 肝っ玉母さん 女子力(物理)

手の込んだ自殺


外部リンク編集

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