かつおぶし
かつおぶし
魚類のカツオ等を切り身にし、加熱後に焙乾(ばいかん:燻製による乾燥)、さらにカビ付け等の工程を経て完成される日本の保存食品。漢字で書けば鰹節。
カビの作用により極限まで水分を抜いた枯節(かれぶし)は叩くと金属のような音が立ち、「世界で最も硬い食品」と渾名されている。
部位によって名称が異なり、三枚におろした半身を背と腹に分けて切ったうち、背中部分の身を使用したものを雄節(おぶし)、腹側の身を使用したものを雌節(めぶし)という。
ただしこれは3kg以上の大きなカツオを使用した場合で、3kg以下の小さなカツオを使用する場合は、三枚おろしにした半身をそのままかつおぶしにする。この場合は亀節(かめぶし)と呼ばれる。
なおカツオ以外でも作られるが(後述)、この場合雑節(ざつぶし)という。
関西ではかつぶしということもある。また、関西では昆布にはとことんこだわる割に鰹節に至ってはそこまで拘らない。というのも関西は軟水なので昆布の旨味成分であるグルタミン酸はよく抽出できるものの、鰹節の旨味成分であるイノシン酸はそこまで抽出できないからである。
一方、関東ローム層によって硬水寄りの関東ではイノシン酸をよく抽出できるので、江戸の時代から鰹節へのこだわりは他の追随を許さないものがある。鯖節などのほかの雑節を使い分けたり、高級品の本枯れ節などが編み出されたりしたのも、それが理由である。
カツオ自体は縄文時代から食べられており、飛鳥時代には既にカツオの乾物である「堅魚(かたうお)」の記載が見られる。
現在に通じるかつおぶしの原型ができたのは江戸時代であり、紀伊(現在の和歌山)にて焙乾法が確立、その後焙乾法を伝えられた土佐(現在の高知)においてカビ付けによる枯節の製法が考案される。
長らく土佐藩の秘蔵だった枯節製造法だが、やがて日本各地に広まってしまい、後に土佐節、伊豆節、薩摩節が特に有名な産地となる。
ちなみにカビ付けを4回以上行う本枯節(ほんかれぶし)の製造が始まったのは明治からであり、歴史は意外と浅い。
加工工程の差異によってもそれぞれ名称がある
生利節(なまりぶし)
カツオの魚肉を切り、蒸したり茹でたりした状態のもの。まだ柔らかくそのまま食べられる。
荒節(あらぶし)
生利節に焙乾を繰り返し、硬質化したもの。燻されることによりタールが付着して黒い外観をしているが、そのタールを削り落としたものは裸節(はだかぶし)とよばれる。
普段スーパーなどで一般的に売られている「花かつお」は、断りがない限りほぼすべてこの荒節を削ったもの。
枯節(かれぶし)
荒節からタールを削り落とし(裸節)、カツオブシカビと呼ばれるコウジカビの一種を付着させて熟成、と言う工程を繰り返したもの。
カビの作用により水分は抜けてより硬くなり、またアミノ酸などの旨味成分やビタミンが多くなる。
カビ付けを1~3回まで行うと枯節、4回以上行うと本枯節(ほんかれぶし)となる。本枯節ともなれば最低6ヶ月以上かけての製造となる(荒節だと1ヶ月ほど)ので、手間もかかる分値段も高くなる。
代表的なものは勿論「かつおぶし」だが、その他の魚でも節は作られている。ここでは特に代表的なものを上げる。
宗田節(そうだぶし)
カツオの近縁種であるソウダガツオ(マルソウダ、ヒラソウダ等)で作る節。カツオよりも小さいため必ず亀節になる。
血合いが多くかつおぶしよりもコクのある色濃い出汁が取れるため、上品で繊細な吸い物等には合わないが、蕎麦やうどんなどの出汁には最適。
小さな節のため家庭用の鰹箱(かつおばこ。かつおぶし削り器のこと)では粉々になってしまうため、一般向けにはほぼ削り節の状態で売られている。
鮪節(まぐろぶし)
キハダマグロの幼魚から作られる節。あっさりとして上品な味わい。その他の節とのブレンドでより力を発揮する。
鯖節(さばぶし)
ゴマサバから作られる節。宗田節と同じく濃い味わいの料理に使われる。
これらを削った物は「削り節」(けずりぶし)と呼ばれ、かつてはそれぞれ自宅で節を削っていたものだが、現在は広く市販で削り節が売られており、かつおぶしといえば削り節である。
味わいに関しては削りたてのものには敵わないが、手軽さとコストの高さは一級。
出汁を取るのに用いたりするのは勿論、野菜のおひたしや炊き立てご飯にそのまま振り掛けたりと調味料としても優秀。削り節を醤油で合えたものは特に「おかか」と呼ばれる。
なお、上記に記したように市販の削り節はほぼ荒節を削ったものである。
世界一硬いと喧伝され、ドイツ製のダイヤモンドカッター式の高速ミルミキサーの刃がへし折れるというとんでもないレベル。
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