概要
東方Projectに登場する蓬莱山輝夜と綿月豊姫、綿月依姫の三名によるグループ。
グループ名称の「てる」はファンによる輝夜の相性の一つである「てるよ」から、「わた」は豊姫と依姫の姓である「綿月」(わたつき)に由来するものと思われる。
それぞれ『東方永夜抄』(輝夜)、『東方儚月抄』(豊姫・依姫)に初登場した。
三名はいずれも東方Projectに登場する「月」に強く縁する人々であり、月の都に所在、またはかつてその所在があった人々である。
2016年6月現在、豊姫と依姫は同じ立場、同じ目線から共に在る様子が描かれているが、二名と輝夜との交流については外伝的作品を除き接触は見られていない。
しかし「月」に由来する縁やそれぞれの人間関係など、そのバックストーリーにおける強い関連性から二次創作などでは過去から今日に渡る三者の様々な交流の姿が想像されている。
月の姫君と地上の姫君
今日、綿月の両名と輝夜の所在地はそれぞれ隔てられた場所にある。
かつては輝夜もまた今も豊姫・依姫の住まう月の都に所在したが、『永夜抄』より遡ること遥か昔、禁忌のものである「蓬莱の薬」を生み出した罪により地上に落とされた。
さらにその贖罪の期間の後に月への召還となったが輝夜はこれを拒否する。
以後輝夜は地上へと隠れ、長い時間を経て後の『永夜抄』で語られる物語にも繋がるのである。
豊姫・依姫は今では月にあって、かつて輝夜の召還の任を負い地上へと降りながらそれを拒否して月に翻意し輝夜と共に地上へと隠れた八意永琳の追跡も任されていた経緯をもち、豊姫・依姫と輝夜は立場上追うものと追われるものの関係ともいえる。
永琳の追跡自体は現在は打ち切られており、『儚月抄』時点ではすでに打ち切られてから「 数百年 」が経過している。
豊姫・依姫の両名はともに永琳が月の都に所在したころからその智による様々な指導を受け、二人は今でも永琳に敬愛を寄せている。永琳らの追跡の任についてもそれを行う意図はなかった様子である。
月の都の社会には綿月の両名の永琳に対する行動を快く思わない意思もある様子であるが、この両名の姿勢が、今日の輝夜の地上での時間を月の圧力から守っているともとることができる状況にある。
ただし輝夜が月の都に所在したころの綿月の二人の様子やそもそも輝夜と豊姫・依姫との接触の有無やあり方などは先述の現在時点では語られていない。例えば三名が交流していたのか、交流していたとしたらそれはどんな様子であったのか、あるいは直接の交流でなくとも同じ社会に住まう者通しとして互いを知っていた可能性などはあるか、など輝夜と豊姫・依姫の結びつきについてはまだ不明な点も多い。
地上との接触
作中、三者はそれぞれの形で今日の「地上」を体験している。
豊姫や依姫は、地上から月へと向かってきた今日の地上の人間や妖怪等と直に接触した。
その出会いは時には直接的または間接的対立であり、時にはお酒や食事の席を共にするものでもあった。
特に豊姫はレイセンと共にひと時ながら実際に地上へと降りており、地上の有様を月の都の価値観の視点から複数の表現に形容している。
輝夜は先述の通り地上へと隠れ『永夜抄』での一件以後地上へと開かれる道を選んだ。
輝夜は永遠亭の開放と共に地上の穢れに身をあてたことで「 もう二度と月の都に戻ることは出来ない 」であろうことを想像するも、この地での新たな刺激に少しずつ触れ、今では月の都よりも、あらゆるものを(月のものでさえも)受け入れていく今の幻想郷を気に入っている(『儚月抄』)。
例えば地上の民である博麗霊夢を通して触れた地上ならではの死生観には月の都と地上との違いを感じ取り、素直な驚きを得るなどしている。
輝夜と豊姫・依姫は月や地上に対するスタンスは今日では異なるものとなっている様子が語られているが、一方で三者はいずれも月と地上の両方の世界観に実際に触れてもおり、単にステレオタイプ的な観念で他方の世界観を見ている、というだけではない。
これは今では住まう世界が隔てられた両者にあって互いの世界観に再び触れ得る機会が断絶してはいないことを意味するものであもある。
ただし豊姫・依姫の両者は水江浦嶋子などの一件以降地上と月のつながりについて思案し続けており、両者の間には毅然とした境界があるべきだとも考えるようになっている。
例えば依姫は、かつて永琳が下した地上へと帰ろうとする浦嶋子に対する厳しい処置の中に、浦嶋子本人をはじめ月と地上の全てがベターな状況となるような永琳の最大の優しさを見出しつつ、ひと時の情によって浦嶋子を保護してしまった自分たちがそこまでの未来を見通せるか、という問いに対して自らと永琳の差を感じつつ「 思慮の浅い優しさは人間も月の民の不幸にする 」(『儚月抄』)ともしており、今の自分では両方の民を幸福にすることは出来ないと語っている。
周辺の人間関係
三名に共通する人間関係のうち、最も巨大であろうと思われる存在は永琳である。
先述の通り豊姫・依姫はかつて永琳の智慧を授かり、信頼を寄せ、永琳が月の都を去って以後の『儚月抄』においても、数千年ぶりに突如寄せられた言葉を心の底から喜び、その智慧を信頼した。
輝夜もまた月の都所在のころから永琳をよく知っていた様子が語られており、そもそもの発端となった「蓬莱の薬」も永琳との共作であった。その罰から地上へと堕とされ、再度月へ帰るとなった際には迎えとして遣わされた永琳と共に地上へと隠れ、以後の『永夜抄』に至るのである。
このとき永琳は自分以外の月からの使者を「 全員殺害 」しており、『永夜抄』テキストなどではこのときの永琳の心の内も語られている。
『儚月抄』では豊姫・依姫の両者をはじめ輝夜の視点からも物語が語られるが、いずれの視点においてもそれぞれの形で永琳が登場しており、総じて三者はそれぞれの形で永琳に信頼や親愛を寄せている様子が描かれている。
永琳以外では鈴仙・優曇華院・イナバもまた三名に共通する人間関係である。
鈴仙は今日では自他共に「地上の兎」(『東方紺珠伝』)となったことを認めるものであるが、かつては月の都で戦闘に従事する玉兎の一人でもあった。
鈴仙は『永夜抄』に月から脱走して月の羽衣を使用して地上へと降り、永琳らに見出されて永遠亭へと匿われた。
今日では永遠亭の兎たちを統率したり家事をしたり、永琳の元で永琳が生み出す薬を売り歩いたり(『儚月抄』、『東方鈴奈庵』等。鈴奈庵鈴仙も参照)時には異変と思しき事態の調査にも出向いたり(『東方緋想天』、『紺珠伝』他)と、地上での忙しい日々を送っている。
月の兵士時代の能力については豊姫・依姫の両名とも高く評価している。
一方でその精神面の問題については「 矯正は出来なかった 」ともしている(豊姫、『儚月抄』)。
鈴仙の追跡ついても「 時効 」とするほかにない様子で、地上に降りたことによる穢れの影響もあって月へと変えることはできないとされているようである。
輝夜にとって鈴仙は共に永遠亭に住まう者である。
『永夜抄』に至る経緯では鈴仙が察知した月からの情報が永夜異変へと至らせ、結果永遠亭を幻想郷へと現出させる機会へと結ばれる。至る今日の永遠亭の在り方には鈴仙の動向が大きく関係している。
そして永遠亭が地上に開かれたことで永遠亭もまた穢れにのみ込まれることとなる。
輝夜は元々月に戻る意思はなく、永琳もまた同様であるために月への帰還上の制約となる穢れの影響を気にしていないが、輝夜は鈴仙にだけはその影響を気にかけており、想いを傾ける様子も描かれている。
「 可哀想なのは私たちの巻き添えになって帰れなくなる月の兎、鈴仙くらいである 」(輝夜、『儚月抄』)
鈴仙もまた、永琳と共に輝夜や豊姫・依姫の人間関係のつながりの中にいる存在なのである。
「月のイナバと地上の因幡」
輝夜、豊姫、依姫の三者の様子が語られる『儚月抄』にあって、三者が一堂に会する唯一の作品が『月のイナバと地上の因幡』である(ただし先述の現在時点)。
この作品は『儚月抄』における小説版、漫画版、4コマ版の三つの形式のうち4コマ版にあたるもので、小説版、漫画版のメインストーリーに時系列が沿いながらも両作品とはまたテイストの異なる、外伝的なエピソードが語られる作品となっている。
本作ではお忍び(?)で地上へと降りた豊姫・依姫の両名と輝夜との接触の様子が語られており、豊姫・依姫は輝夜も住まう永遠亭に滞在している。
本作においても輝夜と豊姫・依姫の人間関係や互いをどのように捉えているか等について詳細は語られていないが、先の永琳や鈴仙、あるいは永遠亭にも関係する兎である因幡てゐなどとのかかわりも交えながら自然に空間や時間を共にする様子も描かれており、例えば対立のような緊張感のある人間関係ではない様子である。
二次創作では
先述の通り、原作では輝夜と豊姫・依姫については互いにまつわる詳細が語られていないものの周辺を含めそのつながりの深さもあって二次創作においては多様な三者の姿が想像されている。
例えば今日の地上の魅力に開かれた輝夜が地上を訪れた綿月の二人にその魅力を語ったり物品を披露したりする様子や共に関わることとなった『儚月抄』における第二次月面戦争の一件やそこでの出会いの思い出話を楽しんだり、あるいは昨今の同行では『紺珠伝』以後、その月の騒乱に巻き込まれたであろう豊姫や依姫の苦労を、実際に異変へと挑んだ鈴仙の働きも通して実感していた輝夜が労わるなどの様子も想像されている。
より関係が密なものとしては、輝夜本人が自然と放つ魅力に月時代から豊姫や依姫もまた惹かれていたと捉えるものもあり、二人は輝夜にも深い親愛を寄せ、輝夜もまた二人からの想いを嬉しく思うなどの人間関係の見出し方もある。
豊姫や依姫は二次創作においても永琳に対する強い思慕が描かれることがあるが、輝夜に対しても創作ごとの愛情の寄せ方が描かれることもあるのである。
逆に、永琳が地上へと隠れる要因ともなった輝夜に対して綿月の両名がそれぞれの形で複雑な思いを抱いているという想像もある。
特に月の都を守る姫である依姫は、月の都の価値観にとどまらず地上や、月社会が禁忌とするものにまで興味を寄せる輝夜を理解できなかったり快く思わなかったりするといった、非友好的、時には対立的な人間関係の想像もなされているなど三者が経てきた人生や人間関係の経緯とも合わせてその捉え方は多様である。
想像は三者の歴史にも渡っており、例えば輝夜がまだ月にいた頃の三名の様子なども想像されている。
そもそも三者はどのように出会ったのか、どのような交流を経てきたのかなどは創作ごとの三者のパーソナリティの見出し方に合わせてこちらもまた多様である。
例えば三名いずれもが永琳の影響を受け、今も永琳を信頼している様子から、一つの想像として月時代には永琳が開く教室のようなものがあって、三名はいずれもここに在籍したいわばクラスメイトのような関係だったのでは、と想像するものもある。
得てして封鎖的となりがちな閉じた社会にあって、幼少のころからの気の置けない大切な友人・親友同士のような「てるわた」の姿も想像されている。
一方で月の都時代は「 やる事が何も無かった 」(『儚月抄』)という輝夜と実務に就く綿月の二人の立場の違いを見出すものもあり、ここから月の社会における「姫」たちの二種類の在り方を見るものもある。お伽噺のようないかにも「姫」然とした輝夜と実働の「姫」達との対比がそのまま月のソーシャルな話題にも踏み込むことがあるなど、三名を通して月という社会そのものにアプローチするものもある。
加えて「てるわた」の三者にも関わる先の永琳や鈴仙をはじめ、今日の月の都に関わる多様な人々も交えながらの「てるわた」が見出されることもあり、例えば同じく月社会に関係する存在である稀神サグメなどがここにともに加わることもある。
広く月の人々に関連した見出し方である「月都組」を通しても「てるわた」の在り方がともにあることもあり、月の人々との豊かな人間関係の中で語られる「てるわた」というあり方もまたある。
今では地上と月それぞれの場所に住まいそれぞれの生き方を歩む三者にして、輝夜と綿月の二名については互いの想いなどの多くが語られていない間柄であるが、二次創作ではその故に様々な「てるわた」の姿が想像されており、その想像は月の都の歴史と今と未来とも結びながら様々に広がり続けているのである。