概要
東方Projectに登場する藤原妹紅と宇佐見菫子の二人によるカップリングである「もこすみ」に関連したカップリングフレーズの一つ。
カップリングの詳細やメンバーの関連事項などについては「もこすみ」を参照。
妹紅と菫子には本人たちの要素を含めそのキャラクター性に「結界」の語をはじめ「秘」や「蓬」の語にまつわる要素があり、それらが組み込まれたものが本派生タグであると思われる。
「結界を越える秘蓬」
「結界を越える」ということともこすみ
もこすみの二人が初めて出会ったのは、『東方深秘録』である。
同作では菫子が「外の世界」から「結界」で隔てられた幻想郷へと介入し、この世界の秘密を曝く事を求めた。その目的には「結界を越える」というもの以外の事も含まれていたようである。
『深秘録』作中において、菫子はオカルトボールを介しつつ「外の世界」から幻想郷の住民の一部を「外の世界」へとおびき出してゆく。そしてその過程で妹紅とも出会うのである。
二人はその出会いこそ正面からぶつかり合うものであったが、言葉によらない弾幕を交わした後は互いの人間性を認め、関係も良いものとなっている。
その後菫子は結界を越えて幻想郷に来る事の出来る方法を確立したかに見えたが、これは幻想郷側の人物による罠であり、幻想郷へ入り込んだ直後に再度結界を越えて元の世界へと戻る方法を失った菫子は夜の幻想郷を逃げ惑うこととなる。
様々な恐怖の現れである妖怪や都市伝説に追われた菫子であったが、その逃亡の末に、この地で妹紅と再会を果たした。そしてこの再会を通して、菫子は再び元の世界へと戻るための足掛かりを得る。
結界を越える術を失い幻想郷に釘づけにされた菫子に、再び結界の向こう側に帰る為の最初の道筋を示したのは迷い人の案内人でもある妹紅であったのである。
妹紅の導きの末に菫子は結界の外への道筋を得たがその帰還は一時的なもので、菫子はしばしの後には再び幻想郷と対峙しなければならない状況にあった。この状況に、菫子はある決意をするのである。
一方、同じ頃に幻想郷の「結界の巫女」である博麗霊夢がオカルトボールの真の性質に気付き、菫子を保護すべく追跡を行う。
これが、『深秘録』の最後の霊夢ルートのエピソードとなるのである。
なお菫子を追って結界の外へと向かった霊夢であるが、この再出発の際最初に出会ったのが菫子の落し物を届けるために博麗神社を訪ねた妹紅であり、霊夢が同ストーリーで幻想郷側の結界内部で対峙する唯一のキャラクターである。
後半の霊夢ストーリーは妹紅に始まり菫子に終わるものであるが、それぞれの舞台となったのも、それぞれが住まう結界を越えた二つの世界である。
『深秘録』の騒動以後、結界を越えて菫子が幻想郷を訪れることはもうないだろうと思われた。
しかし菫子は「 どういう訳か 」眠りの間夢を通して結界を越えるという能力を身につけており、今度は穏やかな笑顔とともに結界を越えて霊夢を訪ねている。
そしてその際には妹紅の事も話題に上り、再会を願っているという妹紅に菫子も再会を想うのであった。
妹紅と菫子は住まう世界こそ結界に隔てられているものの互いに結界の向こう側のそれぞれの世界を体験しており、菫子は惹かれる美しい世界を、妹紅は遠い昔に過ぎ去った「外の世界」を、「結界を越える」ことで体験している。
同時に互いに今まさにそこに住まう人間と触れ合うことも「結界を越えた」体験といえるだろう。
さらに妹紅と菫子に特徴的なこととして菫子が幻想郷で使用したESPカードを妹紅が回収し、それが再び菫子に手渡されるという、本人たち以外にも二つの世界を渡って互いを結びつけるアイテムが登場している事がある。これはもう一方の菫子の紛失物が『深秘録』時点ではその取得者によって地底にまで持ち帰られてしまっていることと対比的である。
ただしいかに菫子と妹紅の結びつきがあろうとも互いに異なる世界にその所在があることに変わりは無く、もこすみの二人は、「結界を越える」事によってはじめて出会う事が出来る二人でもあり、「結界を越えなければ」出会う事の出来ない二人でもあるのである。
「秘蓬」ともこすみ
「秘蓬」とは、その読みはおそらく「ひほう」であろうと想像される。
秘封倶楽部初代会長にして秘密を求めて幻想郷へと臨んだ菫子と、蓬莱の薬を服用した蓬莱の人の形である妹紅の両者に関連した要素が織り込まれている。
さらに先述のように菫子が憧れを抱いた幻想郷について、妹紅は今の幻想郷をかつての自らの体験と比較して「 蓬莱の国に違いない 」とも感じているなど、幻想郷の捉え方を通しても「蓬」の語と縁を持つ。
「秘蓬」とは、まだ人々に曝かれていない、全てを受け入れる仙境の地としての幻想郷を表したものであるのかもしれない。
さらに「ひほう」の読み方は菫子の登場時点では正式な読み方が提示されていなかった「秘封(倶楽部)」の読み方の一つの可能性としても想像されており、この可能性にみる「秘」の語と「ひほう」の読み方とを通して菫子側からも繋がりを持つ。
また「ひほう」と読む場合は世界が隠す「秘宝」である幻想郷に対して、菫子が結界を越える「秘法」を用いて本来の結界の越え方でない「非法」で臨んだ過程が『深秘録』であると捉える事も出来る。
そして「もこすみ」の創作のあり方の一つの視点を通す時、『深秘録』の過程で菫子と妹紅とが出会ったが、一方で不老不死である妹紅が菫子を深く愛おしむ故にその永遠の別れを恐れ苦悶する過程で、妹紅の脳裏に蓬莱の薬の「秘方」(秘密の薬の調合方法)を求めることがひと時ながらも過るといったストーリーとも重なるなど、「ひほう」の読みと言葉とによっても「もこすみ」の物語が形作られる様子は、二次創作において生み出されている多様なアプローチとも結びつくものでもある。
なお、「蓬」を「ヨモギ」と読む場合は植物のヨモギを意味する。ヨモギはキク科の多年草で夏から秋にかけて茎が生長し、秋に小さな花を咲かせる。菫子の名前にもある「菫」(スミレ科)が菫色の花などを咲かせるのとは対比的に、ヨモギは若葉が特徴的である。
菫子は「菫」、妹紅は姓の「藤」に共に植物名を見る事ができるが、本フレーズに示された妹紅に関連する「蓬」の語を通しても二人の関連性を見る事が出来る。
また植物という観点からは各々の花言葉を見る事も出来る。
それぞれの主な花言葉にはいずれも恋愛や愛情にまつわるものが重ねられており、例えば「菫」には「小さな愛」や「誠実」、「藤」には「恋に酔う」や「優しさ」、「歓迎」といった花言葉がある。また「紫色の菫」には「愛」そのものの花言葉もある。
更に「藤」と「蓬」の両者には「決して離れない」という花言葉があるが、「紫の菫」には「貞節」という花言葉もある。これに加えて「蓬」には「夫婦愛」の花言葉もあるなど、二人にまつわる花言葉を通しては両者が互いだけを見つめあうように結びあう様を想像させる一致も見られる。
もこすみとは、東方Projectの秘封と蓬莱が結界を越えて出会う「深秘」なのである。
その他の関連
「もこすみ」の二人と直接関連するものではないが、二人と「秘」と「蓬」とに合わせて語られている要素に重なりあうものが他にもある。
菫子が関連する「秘封倶楽部」について、上海アリス幻樂団作品にはもうひとつ「秘封倶楽部」が登場しており、それが主に語られるのが音楽CDのシリーズである「ZUN's Music Collection」である。
同作シリーズ中にはファンをして妹紅ではないかとされる人物が登場しており、「もこすみ」においてもこのストーリーが関連して想像される事がある。
さらに「蓬」と関連して同音楽シリーズの第一作のタイトルは「蓬莱人形」であり、「蓬莱人形」は妹紅が初登場した『東方永夜抄』Extraステージのタイトルにして妹紅のスペルカードの一つ(「蓬莱人形」)でもある。
音楽CDとしての「蓬莱人形」のプレス版では『深秘録』で菫子が体験したような人間と妖怪の関係性について作中の登場人物(誰であるかは不明)の言葉を通して語られている。
作中の視点は初期の菫子にみる妖怪を侮ったようなものもあれば、妹紅のように妖怪と対峙または共存する視点から語られたものもあるなど、今日の「もこすみ」にも重なる視点を、本人たちとは異なる視座から彷彿することもできるものとなっている。
「秘」と「蓬」の語は、広く上海アリス幻樂団作品を通しても関連性を以て描かれているのである。
ただし「蓬莱人形」に添えられた英語のタイトルは「Dolls in Pseudo Paradaise」と、こちらは「偽りの、まがいものの」(Pseudo)「楽園」となっており、菫子が体験した「怖い幻想郷の夜」のような幻想郷のもう一つの側面である妖怪の楽園という、人間の恐怖の象徴が集う場所という視点も並行させるものとなっている。
ただし、そのような恐怖と喧騒の場所であったとしても妹紅と菫子とが出会い、ともにそれぞれなりの愛着を抱いた場所であることに変わりは無く、何より二人がそれぞれ結界の向こう側とこちら側とからその結界をも越えて互いを想いあうという姿が「もこすみ」のあり方の一つであり、それを象徴的に示したものが、「もこすみは結界を越える秘蓬」なのだろう。
関連タグ
全般
蓬莱人形(音楽CD他)