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概要編集

ジュラ紀後期に生息していた小型の肉食恐竜で、大きさ3メートルくらい。重さは100kgほどと推定される。

 

「五色の冠竜」という意味を持つこの名前は目の上から鼻のあたりにかけてのよく目立つトサカにちなんでつけられたもので、中国語由来なので「冠龍」と表記される。

 

頭に1つのトサカがある見た目はネオヴェナトルモノロフォサウルスにも似ているが、彼らと違ってアロサウルスではなくティラノサウルスの親戚にあたる(ティラノサウルス上科プロケラトサウルス科)。

指は3本あったが頭骨の作りはじめティラノサウルスの仲間に共通する特徴を持ち、またティラノサウルスなどと同じく前歯の断面がD字型をしていた。小型で華奢な体格ながら、白亜記の最後を飾った恐竜界の帝王が同じ特徴を持っていたというのだから太古のロマンを感じさせる。


なおトサカは薄く脆弱で武器としては全く無力。なのでもっぱらディスプレイに使われたとされるが、発掘された化石(成体と子供)でトサカの形状・大きさに差異があった事から、年齢によってトサカの形状が変化した可能性も指摘されている。系統からの類推によった場合、グアンロンには原始的な羽毛が生えていた可能性が高い。


系統編集

ティラノサウルス上科ということで一応はティラノサウルスの仲間に分類されているが、実際にはプロケラトサウルス科と呼ばれる傍系に属していた。このグループには本種やプロケラトサウルスや他に、全長8〜9メートル?のユティランヌスがおり、生息期間もジュラ紀中期〜白亜紀前期までと、そこそこ長い血脈を保っていたらしい。


食性編集

子孫筋のティラノサウルスとは異なり、基本的には小動物を獲物にしていた。メニューは一口大のトカゲや哺乳類(を含むキノドン類)などが考えられる。また周辺にはコヨーテ大の陸棲ワニ類や最古の角竜インロンなども生息していたため、後述の発見経緯を考えると、そうした多少なりとも大きめの獲物(全長2m程度?)を狙っていた可能性もある。

そして肉食動物の例に漏れず、運良く見つけた死骸や卵なども食べていただろう。


ディスプレイ編集

成体と亜成体の比較から、頭部の鶏冠は成熟してから本格的に使用された事が分かっている(亜成体の鶏冠は未発達だった)。武器に使うには心もとない強度だったので、もっぱら見せびらかすのに使われた可能性が高い。

ある種の「ハンディキャップ仮説」が鶏冠の進化に作用していた可能性が指摘されている(要は「脆い鶏冠があっても、それを守り抜きながら自分は生き残れますよ!凄いでしょ?」って事)。


発見経緯編集

現在までに見つかっているグアンロンは2体のみで、それらは同じ岩石の中から折り重なるようにして埋もれていた。この岩石はマメンチサウルス類の足跡が化石化したものであり、化石化する前は火山灰混じりの粘ついた泥で満たされて底なし沼状態になっていた。この“落とし穴”とも呼ぶべき窪みには、他にもリムサウルスが2頭(最下層)、謎の小型獣脚類が1頭(中層)埋葬されていた事が判明している(グアンロンは最上層)。

どうやら上記の小型獣脚類の内リムサウルスが真っ先に落とし穴へ嵌ってしまい、そこへ残る2種が現れてミイラ取りがミイラになるよろしく犠牲になってしまったらしい。なお中層に眠っていた謎の獣脚類は、四肢や頭頸部が激しく損壊していたため、グアンロンの餌食になってしまった可能性もあり、さらにグアンロンにしても最上層の成体(3m)と準最上層の亜成体(1.5m)の間で共食いがあったらしい(亜成体の首が不可解な角度に折られていた)。


生息環境編集

森と火山、そして大規模な湿原の織り成す環境に暮らしていた。

植生はシダ裸子植物が支配的で、それらがステゴサウルスの仲間やマメンチサウルスのような巨大な植物食恐竜さえも養っていた。この生態系では大型の肉食恐竜のシンラプトルモノロフォサウルスが最上位に君臨していたため、グアンロンのような小型獣脚類は2次捕食者に甘んじるしかなかった(この力関係が崩れるのは白亜紀後期も序盤を過ぎる頃になってから)。

小動物の化石も豊富で、小型獣脚類のアルヴァレスサウルス類(合計4種)、やリムサウルス、小型角竜のインロンに無名の小型鳥脚類などはもちろん、陸棲ワニ類のジュンガルスクスや2種の翼竜、トカゲやカメ、哺乳類(を含むキノドン類)、が見つかっている(これは間接的に考えると、それらの餌となる植物や無脊椎動物、魚類なども豊富だった事を示唆する)。

もしかするとグアンロンは湿原を狩場にしていたのかもしれない(「肉食恐竜事典」でG・ポールがオルニトレステスの項でそれっぽい事を言ってる)。


参考文献編集

論文編集

・“A basal tyrannosauroid dinosaur from the Late Jurassic of China”

・“DINOSAUR DEATH PITS FROM THE JURASSIC OF CHINA”

・“A Jurassic tyrant is crowned”

・“A high-resolution three-dimensional reconstruction of a fossil forest (Upper Jurassic Shishugou Formation, Junggar Basin, Northwest China)”


ナショナルジオグラフィックHP編集

・「特集 進化の謎を解く恐竜の墓場」

・「巨大恐竜の足跡が“死の落とし穴”に?」


中国のニュースHP編集

・「巨型恐龙的脚印却变成了小恐龙的死亡陷阱」


関連タグ編集

ティラノサウルス上科 ディロング プロケラトサウルス科 ユウティラヌス 諸悪の根元(グアンロンの仲間のせいで白亜紀末に暴君が暴れまわることになった)

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