以下8章以降のネタバレ注意
「わかっているよ、セリス・ヴォルディゴード。君が本当は亡霊なんかじゃないということは」
「亡霊を演じ、心を殺し、そうして君は他者の理解の届かぬ場所で孤独な戦いに身を投じてきた。数少ない仲間たちとともに。ああ、なんて美しいんだろう?」
「それを踏みにじってやれば、君は本当の顔を見せてくれるのかな?」
「君も僕も滅ぼせない。僕たちはよく似ている」
概要
不適合者グラハムとは第6章《神竜の国ジオルダル》編にて初登場したセリス・ヴォルディゴードの首を持つ人間であり、地底編の出来事のすべての元凶ともいえる人物である。
母胎を使った転生魔法《母胎転生(ギジェリカ)》の研究をし、その魔法を使うことで、首なしの種族であるツェイロンの血族の力を維持ながらも魔族ともいえない別種の生物となった。
人物
その性格は一言で言うならば「虚無」であり、グラハムの語ること全てが、ひどく軽々しく飄々としており、常にうすら笑みを浮かばせている。
セリスの首を奪う前はアゼシオン軍第一七部隊を率いる勇者グラハムを装っており、本人が昔の名を忘れたと語っているので、作中では「不適合者グラハム」と呼ばれている。
アノスが愛と優しさを尊ぶようにグラハムは憎悪と醜さを好いている。
能力
奪った首にある根源は自分のものとなるため、作中ではセリス・ヴォルディゴードの紫電の魔法を多用している。詳しくはリンク先参照
これから先はグラハム固有の能力について解説する。
- 虚無の根源
その名の通り「虚無」の特性を持った根源。
彼の本質は、永遠の無を越えた先の虚無そのもの。
根源が完全に滅び、体が消滅したとしてもその先には無があるという理屈により、幾らでも復活を遂げる。
その根源は世界の理さえ伴わない「無」であるため、物理や魔法によりその根源に干渉しようとしても無効化、消滅させることができ、その力は世界を滅ぼす《極獄界滅灰燼魔砲》を完全に無効化できるほど。
その上、滅びへと近づけば近づくほど本来の「無」へと還る為、完全に滅ぼすのは限りなく不可能に近い。
虚空絶空虚(ヌエリエヌ)
対象を虚無へと変え、消滅させることができる魔法。
おそらくグラハム以外が対象でも虚無に変えることが可能と思われる。
- 乱竄神鎌(らんざんしんれん)ベフェヌグズドグマ
狂乱神アガンゾンを魔法具に変えた姿。
因果を暴走させ、事象を改竄する権能を有する神鎌。
無秩序の権能を持つアガンゾンの権能を武器に変えたものであるため、その大鎌を振れば因果を狂わせ、乱すことができる。即ち、起こらぬはずのことが起き、逆に起こるはずのものが起きない。
振れば最後、どうなるのかは誰にも読めず、使用者たるグラハムさえも結果を知ることが出来ない。
この神鎌をグラハムは冥王イージェスでさえも反応できない速度で扱い、自らは虚無の根源で幾らでも再生できるため肉体の損傷も構わず幾度となく振るう。
作中での動向(加筆予定)
グラハムの出生や細かな行動については原作最新話時点でも多くは語られていないため、以下に示すのは断片的な情報である。
〜二千年前
・魔王誕生
はるか昔、グラハムは人間の国のある由緒正しい賢者の家庭に生また。
また、この時から既に虚無の根源を有しており、魔法の才能は普通の人より秀でていたとされている。
二千年と少し前、グラハムは亡霊を演じるセリスの本性を知りたいがために、ツェイロンの血族の女王の屋敷に訪れ、そこに身重となっていたセリスの妻ルナ・ヴォルディゴードを拘束した。そしてツェイロンの血族を殺し、その母胎を用いることで《母胎転生》の実験をし始めた。
数時間が経ち、グラハムは人間の兵士たちの中にルナを放り投げる。大戦中、勝者のいない争いの中、魔族への憎悪が渦巻いていた人間たちは、一方的に彼女を傷みつける。されどルナは必死に腹を守っていた。
どくん、胎動が鳴り響く ルナが腹に宿していた子———アノスが母を守るように滅びの粒子を撒き散らす。
ルナは意を決してグラハムに突撃し《真闇墓地(ガリアン)》にてグラハムを閉じ込める。だが、構わずグラハムは彼女の腹をえぐった。———瞬間、名もなき亡霊——セリス・ヴォルディゴードがありったけの魔力をこめてグラハムに《滅尽十紫電界雷剣》を撃ち放ち、彼の根源を完全に滅ぼした——だが、グラハムは余裕な面持ちでセリスに別れの挨拶を告げる。《母胎転生》にて再び生を得ることができるためである。
名もなき亡霊との戦い
二千年前、ゴネアル領にある雷雲火山にある《母胎転生》の研究室にてグラハムは幻名騎士団と対峙した。
彼は滅びの根源を宿すヴォルディゴードの一族に興味を覚えていた。自らと同じ、滅ぼそうにも滅びぬ根源。それが本音なのかはわからないが、その中でも生まれたばかりのアノスの力に同族意識を覚えたと後に彼は語っている。
軽々しい口調でグラハムはセリスに対し彼が亡霊となった所以を憶測で語る(上記の台詞)。
闇を切り裂く閃光が走る。
グラハムがベフェヌグズドグマを抜き、戦闘に移行した。幻名騎士は名もなき亡霊、その名の通り彼らは自らの命を厭わず攻撃を仕掛ける。だが、グラハムは気に求めず無秩序の大鎌を振るう。一瞬の死闘だった———わずか一分にも満たず自然結界そのものである雷雲火山の半分が削り取られ、騎士たちとの死闘は終わっていた。
残るはセリスと冥王イージェスのみ。
グラハムは亡霊達がの戦う理由を理解していた。その長であるセリスは特にだ。
彼はは亡霊たるセリスの中に眠っている「優しさ」に目をつけ、それを利用しようとした。
彼は一番弟子であるイージェスを盾に取った。
セリスはグラハムの狙いを理解していた。
しかし、セリスは最弟子であるイージェスを逃し、自らグラハムに突き進んだ。
彼は最後にある魔法を放ち、世界を滅ぼす紫電を放とうとする————だが、数手グラハムが先を取り、セリスの首を刎ねた。
セリスは滅び、首がゴロリと落ちた。
そしてその首を自らの首なしの体につける。
「ああ、ようやく手に入った。君は手強いからね。滅ぼさずに首だけにするのは、骨が折れたよ」
「これで僕が、セリス・ヴォルディゴードだ」
地底
・《全能なる煌輝》エクエス
創造神ミリティアが作り出した地底では秩序を補い、整合を取るための選定審判が行われていた。
当時、グラハムはセリスの名前で地底に潜伏していた。彼はアガハのボルディノスや、ジオルダルの教皇を手駒に置き、とある興味の惹かれた目的を果たすべく行動していた。それは「《全能なる煌輝》エクエス」を作り出すこと。
疑問があった。
神族には心がない、ただ秩序に従い行動するのみ。だがそれは不自然なことである。神族が秩序そのものであるならば、なぜ自らの理に逆らえないのか?なぜ愛と優しさを持つ神が生まれてしまうのか?グラハムはその理由を何者かが神族の中に略奪者の歯車を埋め込み、ある一つの目的のために秩序を支配しているからではないかと結論づけた。
しかし、その歯車はグラハムの魔眼を持ってしても見ることはできなかった。秩序から逸脱しているグラハムの目をもってしても、だ。そこでグラハムは興味を覚え、その秩序の集合体がどのようなものなのかを知りたいがために、世界を巻き込む狂気の実験を始める。
・嘘と裏切りの神
彼女の名はアルカナ。その目は竜人を、地底を、そして何よりも世界を恨んでいた。そんな彼女を創造神ミリティアは選び、二人で選定審判を勝ち抜いた。
グラハムは彼女を秩序の集合体への対抗策としようと、彼女に「背理」の秩序を持たせることにする。彼ははボルディノスを通じ、代行者となればあらゆる感情を消し去れると言い、自らが改竄した万雷剣ガウドゲィモンをアルカナに渡した。
ミリティアは裏で選定審判を終わらせようとしていた。それは間接的にも地底の民を救うことになる。アルカナにはその行動が裏切りに見えた。審判を勝ち抜き、整合神エルロラリエロムがその場に現れた時、彼女はミリティアをその剣にて貫いた。貫かれながらミリティアは言葉を残す。
「あなたは、憎悪に満ちている。だから、あなたを選び、あなたに手を差し伸べた。だけど、その憎しみから、わたしはあなたを救うことができなかった。あなたを止めてあげることができなかった」
「だけど」
「今ではないいつか、ここではないどこかで、あなたの憎悪から、あなたを解放してあげる」
「苦しめればいい、貶めればいい。それであなたが少しでも救われるのなら、わたしは慰みものとなる。だけど、覚えておいて」
「いつかその燃えるような憎悪さえ焼き焦がす、魔王がここにやってくるから」
ミリティアは整合神の半身とともに自らの神体を神代の学府に封じ、そして転生を試みる だが———転生の秩序はグラハムにより歪められ、彼女は望まない形で転生することとなる。そして、アルカナは神の代行者となった。
時が経ち——「覇竜の国ガデイシオラ」の覇王ヴィアフレアという、かつて手駒の一つだったボルディノスの愛人と接触した。グラハムは自らを記憶の失ったボルディノスだと言いはり、恋に恋をしていたヴィアフレアを騙し、自らをボルディノスだと信じ込ませた。覇王ヴィアフレアは《母胎転生》を使用する際の母胎として優れていたためである。後に彼は———実に皮肉な話だが———二千年前の魔族を集め「幻名騎士団」と称し、ガデイシオラに滞在するようになる。
しばらく経った頃、彼の元にある神族が訪れた。それは代行者となったアルカナであった。彼女はボルディノスが言ったように感情が希薄な神となっていた。たったひ一つ憎悪の感情をのぞいては。彼女はその感情に突き動かされ、地底のすべての国を裏切り、背理神と呼ばれるようになっていた。アルカナはグラハムに復讐をするために、自らの記憶を《創造の月》にて封じ、表面的に憎悪に蓋をした。だが、彼女の根幹は常に憎悪に支えられていた————
更に時が経ち、彼女は出会った。神々さえも滅ぼし尽くす一人の魔王と呼ばれる男に。
現代
・地底の崩壊
暴虐の魔王が偽の魔王アヴォス・ディルへヴィアを倒し、自らが転生した魔王であると名乗りをあげた頃。グラハムはいつぞやかセリスに逃がされた冥王イージェスに使者を遣わした。
イージェスは師の仇を討つべく力を磨き、グラハムを探していたが、いくら探してもグラハムは姿をくらましてしまう。そんな彼からの書状だ。見逃さないわけにはいかない。そこに書かれていたのはある条件「自分の幻名騎士団に入り、命令を三度守ればイージェスからの闘いに挑む」というものだった。
少し時間が経ち、地下遺跡リーガランドロル。そこで初めて魔王となったアノスと対峙した。セリスの首を持つグラハムは自らをアノスの父と名乗る。そして、アノスに幻名騎士団へ入らないかと誘い、そして転移した。(この意図は示されてないがおそらくはアノスの強さを図りたかったからだと考えられる。)
グラハムは地底の民の絶望した顔が見たいため、そしてアノスの力量を計りたいがために、アガハに囚われていた枢機卿アヒデを攫い、選定審判そのものである整合神の秩序の半分を有しているアルカナを、ヴィアフレアの覇竜にてその秩序を喰らわせ、地底を支える「天柱支剣ヴィレヴィム」を消滅させることで永久不滅の天蓋を崩壊させ、地底を滅ぼそうと画策した。
その計画は成功し、天蓋は滅びの音を立てて崩壊を始めたが、地底が滅びることはなかった。
アノスにより阻止されたのだ。アノス・ファンユニオンと、地底の民の《聖愛域(テオ・アスク)》と《狂愛域(ガルド・アスク)》により天蓋の落下は止まり、歌により持ち上げられるようになった。そして、アルカナが《想司総愛(ラー・センシア)》により、再び天柱支剣を創造し、天蓋の落下は完全に止まった。
アノスと対峙したグラハムは、魔王の右腕シンや熾死王エールドメードに拘束され、斬首の呪い———《斬首刎滅極刑執行(ギギヌヴェヌエヌズ)》 にて首を斬られ、滅ぼされてしまう————だが、直前にまたもや《母胎転生》を使い、生き延びた。
条件が揃ったのか、この時点からグラハムは秩序の集合体を作り出すための行動が活発になる。
・星に封じられた過去の追憶
天蓋の崩壊が止まった後、それを企んだヴィアフレアはグラハムの首を抱えたまま正気を失い、(彼女は”最愛のボルディノスが死んだ”と勘違いしている)ジオルダルの大聖堂の地下に囚われていた。
それにグラハムは自らの命令権の一つを使い、冥王イージェスと詛王カイヒラムを送り、ヴィアフレアを攫わせた。
その頃、アノス達はミリティアのメッセージを見つけ、彼女により消された記憶を取り戻すため五つ星だと言われている創星エリアルを探していた。その五つ星に封じられているのはセリス・ヴォルディゴードの生き様について。そこにはルナに関する記憶や彼の最期の記憶も封じられていた。
だが、エリアルとミリティアのメッセージさえもグラハムは改竄していた。
グラハムが改竄した部分は大きく二つ。一つはエリアルの数が五つではなく六つであるといこと。
二つ目はルナの腹を貫いたのが、そしてセリスに滅ぼされたのがグラハムではなく破壊神アベルニユーであるということ。
六つ目の星にはアノスとアベルニユーに関する記憶が封じられていた。セリスに関する記憶は見られても構わなかったが、アベルニユーの記憶を見られてしまえば創造神ミリティアの計画が進んでしまうため、なるべく隠そうとする。
グラハムはイージェスへの命令権の三つ目をアノスから創星エリアルを守るために戦い、そして六つ目のエリアルをグラハムの元へ返すようにというものに使った。
歯車の集合神を作り出すのには略奪者の歯車を強制的に一箇所に集める必要がある。グラハムは《母胎転生》と狂乱神アガンゾンにより選定審判———つまり整合神の半分の秩序をもつ神代の学府エーベラストアンゼッタを改竄する。
今回改竄した事象も二つ。
一つは八神選定者の数を増やし、選定神を増やすこと。二つ目は滅びた神の力をヴィアフレアの胎内へと集めること。
選定審判において、滅びた神の権能は本来なら盟珠の指輪に保存され、秩序が乱れることはない。秩序が減るわけではないからだ。故に審判を勝ち進んだ代行者には複数の秩序が宿る。
だが、その宿る先をヴィアフレアの胎内へと集め、選定神の改竄により更に増えた神の権能の数々を胎児に喰らわせればどうなるか。
そう————数多の秩序の集合体《全能なる煌輝》エクエスが生まれる。
神族に埋め込まれているのが歯車なら噛み合わせれば一つの大きな意志として廻り始めるはずだ。
もしかしたらそれは自分の妄想かもしれない。
本当は歯車などないかもしれない。
だがグラハムはその先を知るべくヴィアフレアの胎内にその力を宿らせた————————
・聖座の間にて
キィ
聖座の間の扉が開かれる。そこにいたのは暴虐の魔王アノス・ヴォルディゴード。
先の地底崩壊の時とはどこかが明確に違う。そんな目をしていた。
創世エリアルに封じられていたセリスの過去を見たのだ。
「やあ」
妙に軽々しい声が、その場に響いた。
「役者が揃ったね、と言うべきかな?」
「できれば、もう少し、君と親子ごっこを続けたかったけれどね」
これまで同様、人の良さそうな顔でグラハムが言う。
ひどく醜悪な、おぞましさを感じた。
神代の学府エーベラストアンゼッタ。
その聖座の間にいるのは四人。
不適合者グラハム
覇王ヴィアフレア
冥王イージェス・コード
魔王アノス・ヴォルディゴード
イージェスはグラハムとの《契約》をすでに果たしている。その約束通りグラハムは万雷剣を抜き、戦闘体制を取る。イージェスはアノスに六つ目のエリアルを渡し、アノスの目の前に血の線を書く。
「その線を越えてくれるな、魔王。そなたにも奴を討つ資格はあろう。だが――」
「これは余が、幻名騎士団が二千年前にやり残してきた戦いだ」
「過去の亡霊同士が現うつつを彷徨っているだけのこと。生者が手を出さずとも、やがて消え失せ、過去へと帰る」
彼は自らの身を亡霊とし、その信念の槍を振るわす。
イージェスは自らの紅血魔槍と水葬神アフラシータの権能を使い、それをグラハムは万雷剣やセリス・ヴォルディゴードの紫電の魔法で応戦する。
互いに一歩も譲らない戦いであったが、グラハムはかつてセリスにしたように、イージェスの「優しさ」を利用して罠に嵌める。
胎動が鳴り響いた。
エクエスが生まれようとしているのだ。それを阻止するためイージェスは魔槍にて今まさに誕生しようとしている胎児を次元の果てへと飛ばす。
いくらエクエスでも所詮は赤子、母胎から離れれば死するのみ。
だが、その隙にグラハムははイージェスを万雷剣にて突き刺し、衰弱し切っているヴィアフレアに並び立つ。そして、もう用済みだと言わんばかりに人の良さそうな笑顔のまま彼女を万雷剣にて貫いた。イージェスはそんな彼女を助けようと、近づいて《転生》を使うが、一瞬遅れてグラハムはイージェスを滅ぼした。
あたりを静寂が支配する。
イージェスとの《契約》は終わった。なら次は——
「ろくでもないことのために、ずいぶんと人の想いを踏みにじったものだ」
「おや? 珍しいね。怒っているのかい? だとしたら、嬉しいよ」
腹の底から、暗い笑いがこみ上げる。
「く……くくく」
こんなにもおかしいのは、生まれて初めてのことかもしれぬ。
「くくく、くはははっ。怒る? なにを言っている、グラハム。俺が怒っているだと?」
指を鳴らせば、先程まで俺がいた場所にイージェスの姿が現れる。《根源再生(アグロネムト)》だ。それによって、滅びた根源を再生した。
「我が父、セリス・ヴォルディゴードは、俺の記憶を奪った」
淡々と俺は告げる。
「憎しみを捨てよ。貴様を恨まず、平和のために邁進せよ。それが、父が唯一、俺に遺した想いだ」
守らねばなるまい。決して復讐に目が暗んではならぬ。
だからこそ——
「感謝しているぞ、グラハム。貴様が滅ぼさねばならぬ男で、心の底から喜びが溢れて止まらぬ」
右手をゆるりと前へ突きだし、手の甲を向け、魔力を込める。
平和を胸に抱き、俺は笑った。
いつものように、自然と。
けれどもどこか、いつもと違う想いが、顔の形を勝手に変える。
「その礼だ。今の時代がいかに復讐とは無縁の、平和だということを――」
俺は、今、ちゃんと笑えているか。
「——思い知らせてやる」
暴虐の魔王との戦いが始まった。
余談
グラハムは最終的にアノスに負け、根源の中に漬けられることになるのだが、アノスの根源により滅び続けている今も、意識はあるかどうかは不明だが虚無の根源は存在しており、アノスがこの先出てくる強敵と戦っている際には、根源まで及んだ魔法の減衰に使われている。
考察
読者の間では、希輝星デュエルニーガの〝願望世界の住人は醜い〟という発言から、グラハムは元々深淵世界の住人だったのではないかと考えられている。