概要
スコレックス(σκώληξ/skōlex)とは、紀元前5世紀頃に古代ギリシャの医師・クニドスのクテシアスによって書かれた『インド誌(Indica)』や、紀元前2~3世紀頃の第二次ソフィスト(ローマ在住のギリシャ系知識人)・フィロストラトスの文献などで言及される、インドのインダス川に棲むという巨大な蠕虫。
現代の英語文献ではインダス・ワーム(Indus worm)や恐ろしいインドのワーム(the horrible Indian worm)と紹介されることもある。
この蠕虫はインダス川に棲む唯一の生物であるとされ、見た目はイチジクの実につく芋虫もしくは白いミミズのようだが、体長は7キュビト(10フィート:約3m)もある。
上顎と下顎には1本ずつ1ピゴン(約15㎝)もある四角い歯が生えており、日中は川底の泥に潜っているが、夜になると地上に這い出してきて馬や牛、ロバ、ラクダなどの家畜を貪り食ってしまうという。
この虫は餌でおびき寄せることで狩られ、その身体からは揮発性の油を搾り取ることができる。
インドの王は、その油を壺の中に詰めて密封したものを戦争で用い、敵国の都市を焼き尽くしたのである。
なおアレクサンドロス大王の軍勢が同地で襲われたという有角の幻獣オドントティラヌスとは、この生物のことではないかともいわれる。
一説には、語源的に大型の水棲生物であるガンジスカワイルカやワニのことではないかとされている。