概要
主燃焼剤のナフサ(粗製ガソリン)に増粘剤を混合したものをタンクにいれて信管をつけた焼夷弾。
ちなみに「ナパーム」(Napalm)とは増粘剤の成分である、ナフテン酸 (Naphthenic Acid) とパルミチン酸 (Palmitic Acid)のアルミニウム塩 (Aluminum Salts)の略語。
初期のものから改良は続けられているが、基本的な組成はナフサにアルミニウムと脂肪酸の塩を加え、ゲル状にしたものである。
ゲリラ等が自作を行なっているが、組成こそ違ってもゲル状にした燃焼剤という点は同じである。
着弾すると
900℃~1,300℃という極めて高温で燃え、ホームセンターなどで売っているカセットガスバーナーの炎の温度がこれと同じくらい。
しかも親油性があるため、木材や人体に付着すると浸透して落ち難くなり、水をかけても消火が困難となる。
消火する為には、ガソリン用消火器か界面活性剤を含む水が必要だが、周囲では燃焼剤の燃焼に大量の酸素が消費されるため着弾点から離れていても酸欠で窒息死したり、一酸化炭素中毒死することがある。
ベトナム戦争で用いられたものは広範囲に拡散するために粘度を低くしてあることと、燃焼時間が長くなるように作られた「ナパームB」(特殊焼夷弾用燃焼剤)というもの。
そのため、組成がポリスチレン、ベンゼン、ガソリンと他のナパーム弾の焼夷剤と異なる。
ナパームに限らず焼夷兵器には「残酷で非人道的」という批判が付きまとうものであり、国際法上でも民間エリアや人口密集地への使用が禁止されている。特に効果の高いナパーム弾はベトナム戦争時の報道イメージもあって米軍でも保有をやめることになり、公式に廃棄処分されたため書類上は保有していないことになっている。
廃棄を終えた後のアフガニスタン紛争やイラクへの軍事介入でも「ナパーム弾」が使用されていたという証言や批判があるが、これは後継品で似たような効果を持つMk77爆弾だった模様。
「Mk77も焼夷弾だけど化学成分を変えたのでナパーム弾とは言わない」というのが米政府の見解。批判する側も米政府も問題はそこじゃないのでは…。
創作物における「ナパーム」
映画やゲームなどでもたまに「ナパーム」という用語が出る事があるが、「激しい炎で燃やす」というイメージ先行で、焼夷兵器としてのナパームと厳密にリンクした言葉ではない事が多い。
特撮用語の「ナパーム」
焼夷材として燃焼時間や粘度が調整されている兵器の方とはまったくの別物で、一般的なガソリンやプロパンガスに着火して派手な爆炎を上げ、大爆発や壁状の炎を演出する視覚効果技法。
しかし戦争映画「地獄の黙示録」では、フィリピン軍の協力の下で実際にF-5戦闘機がナパーム弾を投下する様子を撮影した。メイン画像はその投下後の余韻に浸っているキルゴア中佐のシーン。予算や環境さえ許すなら特殊効果より本物を使って「リアル」にしてしまおうという一例である。
ゲーム作品など
「燃焼による熱でダメージを与える」「広範囲に燃焼効果を及ぼす」武装を総称して「ナパーム系」と呼ぶ事があるが、言うなれば「バズーカ」や「バルカン砲」と同じ類の誤用である。
ポケモンのパルシェンは、図鑑の説明文で何度か「殻は非常に硬くナパーム弾でも壊せない」と言及されていた。
しかし、ナパーム弾は上記の通り焼殺や放火を目的とした焼夷弾で、ダイナマイトの様に衝撃で破壊する形の爆弾ではないため、ミリオタ兼任のポケモンファンからはしばしば「ナパームに耐えるのは確かに凄いけど、”硬さ”の証明じゃないのでは?」というツッコミが入る。
堅牢な装甲でも高温で融解したり、焼けてしまい強度が落ちたりする事はあるので、そうした熱変化や高熱ダメージもシャットアウトする…という事なのかもしれないが。
関連タグ
坂本浩一:担当回でナパーム演出を多用する監督。
地獄の黙示録…メイン画像。"I love the smell of napalm in the morning."(「朝のナパームの匂いは格別だ。」)の名台詞で有名。