概要
コウモリ目チスイコウモリ科に属する蝙蝠。吸血蝙蝠の名前通り、鋭い牙で動物の皮膚を切り裂き、そこから血を舐め取る習性を持つ。
哺乳類では珍しい吸血だが、実際は1100種以上存在する蝙蝠の内、血を吸うのはわずか3種類。
南北アメリカ大陸の一部地域(熱帯や亜熱帯域)に生息しており、ヨーロッパ、アジアなど他の大陸にはいない、独自の進化を遂げた動物といえる。ヨーロッパの文化における吸血鬼の化身、あるいは眷属としてのコウモリのイメージは大航海時代以降にヨーロッパに知られるようになったこのコウモリの説話から生まれた比較的新しいものである(それ以前の吸血鬼の代表的シンボルはオオカミなどであった)。
夜行性であり、多くのコウモリ同様エコーロケーションで周囲の状況を探り、鼻にある熱センサーで獲物の血管を探し当て、剃刀のような歯で表皮に傷をつける。チスイコウモリの唾液には血液の凝固を妨げる成分が含まれており、これにより小さな傷からも十分な生血を吸う事が出来る。
体長7-9cm、体重15-50gと小さな身体と哺乳類ゆえの高い代謝を持つため2日の絶食で餓死してしまうが、群れを維持する為に餓えた仲間に満腹の個体(主にメス)が未消化の血を吐き戻して与える習性を持つ。
このとき助けられた個体は助けてくれた相手を忘れず、後にその相手が飢えていれば優先的に血を分け与えることも確認されている。
逆に血を分け与えなかったケチな相手には、こちらからも血を分け与えない。
コウモリの中では歩くのが上手で、獲物に近づくときや吸血の後は地上を這って(後脚は貧弱なため主に翼のある発達した前脚を使う)移動する。こっそりと獲物に近づき、血を採るために大抵は寝ている動物を狙う。野生動物に比べて動きが鈍く、密集して飼われている場合も多いため、家畜や家禽を獲物とすることも多い。コウモリは小さいため獲物となる動物が血を吸われ過ぎて死ぬことはないが後述のように狂犬病などを媒介することもあるため、現地では嫌われる。
なお、チスイコウモリは狂犬病の中間宿主でもあり、チスイコウモリを見かけても触る事は勿論、大気中に舞い上がった糞を吸いこんでも感染するので防護服やマスクなどの特殊な装備なしで巣に入ってはいけない。(野生コウモリは狂犬病に限らず様々な人畜感染症を持っていることが多く、こういった危険性はチスイコウモリに限らない)
主な種類
- ナミチスイコウモリ(メイン画像)
- シロチスイコウモリ
- ケアシチスイコウモリ