🦇概要
コウモリの仲間は手(前足)と胴体の間に皮膜があり、それを翼のように扱って飛行できるため、翼手目ともいう。
顔はネズミっぽいが、遺伝子等の分子生物学的な点から、「ネコ(食肉類)とかウマ(奇蹄類)とかに近い動物」であることが分かった。判明したのは2006年とわりと最近のことである(とはいえ、後の遺伝子の解析では、トガリネズミやモグラなどの「真無盲腸類」に次いで古いグループで、それほど近縁ではない、という説も有力)。飛行する前の祖先や飛行に至る中途の祖先の化石が全く見つかっていないのもコウモリの起源を判別し難くしている。というのも小さな動物なうえ骨格が鳥類の大半と同様に中空で脆いため化石が残り難く、進化の過程の手がかりに乏しかったためである。加えて古い時代から、そもそも形態の変化に乏しく、既知で最古の化石種イカロニクテリスやオニコニクテリスでも、現生のコウモリとあまり変わらない。恐竜や翼竜が滅んだ大絶滅から1500万年間程のうちに飛行動物として完成した姿にまでなっていたことが化石からわかり、短期間で急速に進化・出現したことが窺える。
大半の種(特にヨーロッパに生息する種)が夜行性である故に、吸血鬼・ドラキュラが大コウモリに変身したり、手下として描かれたりする。
虫食性・果実食性が大半であり、性格も臆病で大人しいものが大多数を占める。
虫食の種類は大抵小型で目がつぶら、そしてちょっと豚鼻気味。これは餌を探すために超音波を発しているからである。夕暮れ時、ひらひらと舞いつつ時折クイックターンなどのアクロバティックな飛び方をしている鳥や蛾のような影を見たら、それがコウモリである。
果食性の種類がだいたい大型(シロヘラコウモリなどの例外あり)で犬かキツネのような顔立ちをしており、虫食性の種と違って超音波を出さず視覚に頼るため目が大きくかわいい。なお花の蜜を吸うフィロストミドコウモリは、夜行性でかつ「花が反射する紫外線」を感知する能力を持つ。
また多くの種が群れを作って生活を送っている。フンがかなりまとまっている上にいい感じに発酵しているので、バットグアノは値段は張るもののリン酸を多く含む上質な肥料である。(アマゾンやホームセンターなどで売っている)
飛行すること、小型であることから多様な生態地位を確保できたことで哺乳類のなかでも結構な種数を占める(ネズミやリスなどが属する齧歯類に次ぐ)。飛行することで海洋に妨げられずに生息域を広げられたため、南極を除く、全ての大陸や多くの島々に生息している。また「小回りの利く飛翔能力や超音波レーダーなどを強みに鳥類のニッチに殴り込みをかけて(棲み分けという形ではあるが)繁栄した」という点は驚異的といえる(鳥類は大絶滅でダメージを受けたとはいえ、恐竜の眷属として恐竜時代には既に飛行動物としての地位を確保していた存在である)。なお偶然、「雌の方に精子を貯める器官がある」という、鳥類(ヘビとかサメにもあるんだけど)と同じ生殖器を持つ、温帯性のコウモリが、そこそこいる。
南米を中心に吸血を行う種「チスイコウモリ属」が生息しているが、フィクションとは異なり吸うものはおもに家畜の血である(野生動物に比べて動きが鈍く、野外で密集して飼われているため血を吸う対象として魅力的)。チスイコウモリは小さいため血を吸われた程度で家畜が死ぬことはないが、伝染病の媒介の危険があるということでやはり現地では嫌われている。
少数だが、虫食性から発展したものとして、ハチドリのように花蜜を主食とするもの、モズのように肉食性のものがいる(チスイコウモリも虫食性からの発展と推測されている)。肉食性コウモリの餌は自分より小さい小動物である。魚を食べるもの、カエルを主に食べるもの、大型の昆虫に加え小型の鳥・爬虫類・哺乳類(他のコウモリやネズミ)などまで幅広く食べるものがいる。
コウモリはその身体の大きさに比べて長寿な哺乳類である。小型の哺乳類は代謝が高く(小さな身体は容易に熱が逃げてしまうため体温が高く、呼吸や心臓の鼓動を盛んに行う)、その分、短命の傾向だが、コウモリは例外的存在である。同じ位の大きさの齧歯類では数年で老化して死んでしまう種も多いのに対し、コウモリは不慮の死にあわなければ十年以上生きる事も普通にある。これは飛行という特殊な運動をするために代謝が通常の哺乳類と違う進化を遂げたためと推測され、現在もその詳細な仕組みについては研究がなされている。ちなみに鳥類が哺乳類より全体的に平均寿命が長いのも哺乳類と違う代謝の進化を遂げたためと推測されているが、コウモリの場合と同じく、これも飛行が関係している可能性が指摘されている。
🦇その他
- よく吸血鬼の周りにいるように描かれている。
- 鳥でもないのに飛べるため、どっちつかずの日和見主義者のたとえなどネガティブな描かれ方をされる(卑怯なコウモリ)。
- 蚊食い鳥とか蝙蝠の音読が「偏福(福がかたよる→福が寄ってくる)に似る」と言って、アジア圏では金魚や桃、鶴亀などと同じくめでたい生き物である。
🦇主な種類
虫食性
沖縄周辺の一部地域を除く日本で見られるのはほとんど虫食性である。
魚食性・肉食性
ウオクイコウモリ/カエルクイコウモリ/アラコウモリ/チスイコウモリモドキ
果食・蜜食性の種類
熱帯、亜熱帯に住む大型の種が多い。
オオコウモリ/シタナガコウモリ/テントコウモリ/シロヘラコウモリ
吸血性
チスイコウモリ(ナミチスイコウモリとも呼ぶ)