なんだい? それ
食事に感謝する言葉
私たちは食べながら言うんだ
概要
「ヒンナ」とは、アイヌ語で「感謝」「ありがとう」を表す言葉。
令和前後の世間では主に、野田サトルによる漫画および此れを原作としたアニメ『ゴールデンカムイ』の食事シーンで描写され、注目度や認知度が上がっている。
「ヒンナ」=「美味しい」?
「ヒンナ」などのアイヌ文化を世間へ流布させる一助になった作品『ゴールデンカムイ』では、本稿の冒頭へあるように『食事に感謝する言葉』と主人公のアイヌ少女・アシリパが解説している。これに習い主人公の男性・杉元佐一など、主人公たちと関わる人物も食事場面で「ヒンナ」と言いながら、アイヌの食文化など様々な狩猟飯(ジビエ)や伝統料理を堪能している。
(また癖の強い珍味も登場するが、殆どの食卓では自然の恵みに至福な表情で「ヒンナ」と言いながら食べる様が印象的である)
以上のことから『ゴールデンカムイ』の作品内だけで「ヒンナ」関連の事柄を顧みると、これは「美味しい」という意味と解釈されやすい。
だが、ちょっと違う。
確かに食事時で、アイヌ語の「ヒンナ」を用いるのは間違いではない。ただしこれは料理が「美味しい」から発言しているのではなく、私達(人間やアイヌ)の生きる糧になってくれた『命に感謝』という意味合いで「心からのありがとう」を食材になったカムイ ≒ 自然界の生命(いのち)へ伝えているのである。
因みに、アイヌ語で「美味しい」は「ケラアン」や「ケラピㇼカ」と言う。
※「ケラピㇼカ」の「ㇼ」は、アイヌ語特有の発音を表すために「リ」ではなく小文字で表記される環境依存文字。
つまり「ヒンナ」とは、決して食事時だけに使う言葉ではなく、日常的に用いられる事柄と窺える。
また『ゴールデンカムイ』の作中で、稀に主人公の一人・杉元佐一が「これはヒンナだぜ」という台詞は、翻訳すると「これは神(=カムイ)や食材になった(生物の)命に感謝だぜ」といった意味と推測される。
用例
「ヒンナ」とは、アイヌ語で「感謝」「ありがとう」を表す単語という事で、例えて用いると―
- 日々の料理を美味しく頂けて「ヒンナ」
→作品を生み出している創作者、作品を楽しみにしている人々へ商品を届けてくれる仕事人の働きにヒンナヒンナ。
- 知りたかった事柄を掲載してくれた記事に「ヒンナ」
→記事を作成するための情報収集や編集技術の努め、それを掲載してくれる場所を用意してくれた仕事ぶりにヒンナヒンナ。
のような用法ができるだろう。
関連作品
美味しく頂けることに「ヒンナ」
かけがえのない巡り合わせに「ヒンナ」
〝 これはヒンナだぜ 〟