ホラアナグマ
ほらあなぐま
ヒグマやツキノワグマなど多くの現生種の熊と同じクマ属(ウルスス)に分類されており、正式な学名はウルスス・スピラエウス。
当時氷河期と呼ばれた更新世後期のヨーロッパやアジアに生息していた。
外見は近縁種のヒグマに似ていたが、その大きさは最大で体長3メートル・体重1トンに達したとされており、熊の仲間では史上最大級の種でもある。これは氷河期の寒い時代に生きるために体を大きくしたものと考えられる。とは言え全ての個体が大型だった訳ではなく、大型の亜種と小型の亜種が存在した。
近縁種と同様に雑食性だが、大型の亜種は肉食寄りだったのに対して、小型の亜種は草食寄りだったらしく、裂肉歯の退化や臼歯の激しい摩耗が確認されている。そのためか、近縁種よりも短命だった事も判明している。
最大の特徴は名前の由来にもなっているように、化石の多くが洞窟で多く発見されることである。これは洞窟の中で冬眠をする際に雪解け水が洞窟に流れ込んで溺死したといわれている。また当時の洞窟を住居にしていた人類がこのホラアナグマを食料としていたので、その残りの骨が洞窟で化石になったという意見もある。
とは言え前述した小型の亜種は、洞窟よりも当時広大に広がっていたステップに好んで生息していたらしい。
絶滅の理由としては、かつては気候変動の影響と考えられていたが、近年ではむしろ人類の拡散によって洞窟を巡った生存競争や乱獲が大きな打撃となったと考えられ、ケナガマンモスやケサイ、そしてオオツノジカなど共存した他の大型生物よりもかなり早い約2万4千年前に絶滅した。
最近、ホラアナグマのDNAを持つヒグマがヒグマ全体の3%未満存在すると特定されたことにより、異種交配していたと判明した。絶滅種のDNAが現存種から見つかるのは、例えば他にヨーロッパバイソン(オーロックスとステップバイソン)などがある。