CV:堀秀行(石黒版OVA) / 吉野貴宏(Die Neue These)
銀河英雄伝説に登場する、銀河帝国の門閥貴族・カストロプ公爵家の当主。本編中でカストロプ動乱を起こす。
概要
銀河帝国の門閥貴族カストロプ公爵家の当主にして、財務尚書(財務大臣)オイゲン・フォン・カストロプの嫡男として産まれる。
父オイゲンは前述のように帝国の名門貴族・カストロプ公爵家の当主であり、15年にわたって銀河帝国の財務尚書を務めていたが、その職権と貴族としての特権を(同様に貴族特権を乱用する傾向が強かった他の門閥貴族にすら嫌悪されるほど)悪用して莫大な不正蓄財を行っていたが、帝国歴487年に自家用宇宙船の事故により死亡(本作中で登場する財務尚書のゲルラッハは、オイゲンの後任と推定される)。
マクシミリアンは嫡男としてカストロプ公爵家の家督・領地・財産を受け継ぐはずであったが、貴族の特権に対する平民の不満をなだめるガス抜きを兼ねて、不正蓄財した資産の返上を要求されるもそれを拒否。
中央から派遣された調査官に猟犬をけしかけて追い払ったり、帝都への出頭命令を無視したりした挙句、自信を説得しに来た遠戚かつ領地が隣接しているフランツ・フォン・マリーンドルフ伯爵(ヒルダの父親)を拘束し、私兵部隊を動員してカストロプ動乱と呼ばれる反乱を起こす(銀河帝国では、貴族が自領やその周辺宙域の治安維持のために私兵部隊を持つことが認められている)。
社会的には甘やかされて育ったドラ息子であるが、軍事的には一定の能力を持ち合わせていたことと、何より討伐軍の指揮官がカストロプを舐め切って安直な行動を起こしたため、2度にわたって討伐軍が敗北し、司令官のシュムーデ提督が戦死。カストロプは一層付け上がり、マリーンドルフ伯爵領を自領に併合したうえで、帝国の権力が及ばない半独立の地方王国とすることを夢見て、マリーンドルフ伯爵領への侵攻を開始する。
これに目を付けたラインハルトは、宮廷工作によりキルヒアイスを討伐軍司令官に任命させ、この反乱を平定させることで自分のナンバー2であることを周囲に認めさせようとする。
キルヒアイスは、マリーンドルフ伯爵領に攻め込んでいるカストロプ軍を無視してカストロプ本星を強襲。本土が危うくなり帰還を急ぐカストロプ艦隊を待ち伏せ攻撃で壊滅させる。
カストロプ本人は自領に逃げ帰ることに成功はしたものの、保身を図った部下たちの手により殺害された。
各メディア作品にて
カストロプ公爵は作中においては「キルヒアイスをローエングラム元帥府のナンバーツーであると内外に認めさせる」ため、メタ的な意味では「読者・視聴者にキルヒアイスの軍事司令官としての能力と、門閥貴族の特権の凄さと人格的頽廃を見せつける」ためのかませ犬に過ぎない。
しかし、各メディアでは原作中の描写の薄さを逆手に取る形で様々な人物像が提案されており、カストロプ動乱の戦闘経過もかなり変化している。
道原かつみ版コミック
道原かつみ版コミックでは、石黒版OVAと異なり痩身の若々しいイケメンとして描写されているが、(通信スクリーン越しとはいえ)キルヒアイスの眼前で年端もいかぬ少女を弄ぶなど、頽廃的な側面が強調されている。
軍事的には、自領の惑星に設置した反射衛星砲と、(道原版オリジナルキャラである)妹のエリザベート率いる5千隻の私兵艦隊との連携で、シュムーデおよびキルヒアイスの艦隊を迎え撃った。
敗北が決定的になっても自身の敗北を認められず、家臣(おそらく執事・家令クラス)から自害を勧められても拒否(家臣自身は「私もヴァルハラまでお供いたします」と発言している)。錯乱状態になっていたところを、背後から家臣によって射殺されたことが示唆される描写となっている。
石黒版OVA
メインイラストのように小太りの男だが、なぜか(周囲の家臣や愛妾たちも含めて)古代ギリシャ風の装いをしており、街並みも古代ギリシャ風である(銀河帝国の衣服や建物などは、フランス革命~ナポレオン時代当たりの近世ドイツ風なので、かなり異端的な習俗である)。
戦い方も原作と大きく異なり、フェザーン自治領から購入したアルテミスの首飾りを自領惑星の衛星軌道上に設置させての防戦一方であった(この時討伐艦隊殲滅を鑑賞していた際には、先んじてカストロプを説得するために訪れたフランツ・フォン・マリーンドルフも同席していた)。
キルヒアイスは、持ち出した指向性ゼッフル粒子によりアルテミスの首飾りを破壊。カストロプに対して降伏勧告を出す。しかしカストロプ自身はこの期に及んでフェザーン自治領への亡命を言い出し、家臣の一人に「(私の身代わりとして)焼身自殺をしろ」などと家臣たちのことをまるで省ない言動や行動から、保身から周囲の家臣や愛妾たちによって刃物で滅多刺しにされて殺された。
藤崎竜版コミック
こちらも石黒版OVAと同様に古代ギリシャ風の装いをしているが、肥満度がよりひどくなっているうえ、外見も言葉遣いも石黒版OVAより幼稚な印象を受ける物になっている。
また本作限定のオリジナル要素として、マリーンドルフ伯爵の監禁やキルヒアイスの討伐軍司令官任命にも、フレーゲル男爵の息がかかっていたように描写されており、フレーゲル男爵やブラウンシュヴァイク公爵からも、キルヒアイスは『金髪の孺子の付属品・腰巾着』程度にしか認識されていなかったことがうかがえる。
戦闘経過は原作小説に類似しているが、自領に逃げ帰った後は自由惑星同盟への亡命を発案(本作中ではフェザーン自治領は秘密の存在であるため)。
亡命後の生活費として自領の領民たちの財貨を根こそぎ没収していたが、敗北を確信した家臣たちがカストロプの頭上に金貨の詰まった袋を意図的に落として殺害。頭と首が肥満体にめり込むという最期を迎えた。
Die Neue These
ノイエ版では、外見的には痩身で、顔立ちも年相応の中年男性になっているほか、服装も他の門閥貴族と大差は無い(ノイエ版では、銀河帝国の習俗は石黒版OVAよりもやや現代に近い、ヴィクトリア朝時代風になっている)。ただし、周囲の部下たちを何の理由も無く息をするように殴りつけており、人望がかなり薄い。
カストロプ動乱では、キルヒアイス艦隊はカストロプ艦隊を包囲した後、(意図的に)カストロプ艦隊の多数を脱出させるが、カストロプの旗艦のみを包囲網内に封じ込めた※。
さらにキルヒアイスは旗艦バルバロッサをカストロプの旗艦の眼前に位置させたうえでに降伏勧告を送るが、カストロプはあくまでも強行突破を主張。周囲の部下達についに見限られ、ブラスターを向けられるが自身もブラスターを抜くが、そのまま周囲の部下達から集中射撃を受けてハチの巣にされるという最期を遂げた。
※:この時脱出に成功した主力が旗艦救出のために反転して攻撃を仕掛けていれば、カストロプを救出することも十分可能であったはずである。旗艦の艦橋内での行動と合わせて、カストロプ公爵の人望の無さが強調されたエピソードになっている。