東京地方を覆った異常気象は何千何万という吸血蝙蝠の大群だった!
ゲン達の攻撃に大群は壊滅する…
しかし、一匹の蝙蝠が生き残っていたのだ!
夜な夜な現れる吸血蝙蝠!やがて百子にも、トオルにも、カオルにも…
さて、ゲンの活躍は?みんなで見よう「ウルトラマンレオ」!!
放送日
1974年8月9日
登場怪獣
STORY
美しい太陽が海にのぼり、マッキー2号でパトロール中だったゲンと白土がそれに見とれていた。
ゲン「朝日っていいなぁ…」
白土「あぁ、しかしこいつは暑くなりそうだなぁ?」
(場面転換)
しかし、白土の予想に反して異変が起こった。ビル街にはいつもと変わらず大きな太陽が光を放っていたが、噴水のほとりに薄着で座っていた子供が寒がって親の上着を着せてもらうという、真夏の真っ只中にもかかわらず異様な光景が広がっていた。
ナレーション「この日、太陽は突然変異し、気温もまた上がらなかった。東京地方を襲った異常気象の原因は、MACに於いても直ちに追求されていた」
基地にて電話に応対するダンに、白川隊員が取り寄せた資料を渡す。データによると、東京上空にフィルターのようなものができて、太陽光を遮っているのだという。何が原因かと平山は首を傾げ、梶田はダンの指示によりマッキー3号で東京上空へ飛び、2号と合流することに。手の資料を見つめ、ダンは何か不穏なものを感じ取っていた。
(場面転換)
東京上空にて異常気象の調査に向かう2機のマッキー。件のフィルターらしきものに接近すると、ゲンはそれに気付き、驚愕する。
ゲン「あれは…!?コウモリだ…」
東京に突如現れた巨大な黒いフィルター。それは太陽光を覆わんばかりの、何千何万もの吸血コウモリの大群だった。
マッキー2号のモニターには夥しい数の吸血コウモリが蠢いていた。これほどの数の吸血コウモリを地上に降りさせる訳にはいかない。梶田の号令で、マッキー2号と3号は吸血コウモリに総攻撃を開始。凄まじい火砲の猛攻を前に、大量にいた吸血コウモリの群れは見る間に煙を上げて落ちていき、ついに覆い隠されていた太陽の光が街に強く差すのだった。
ひとまずの危機は去ったので、この事件の調査にあたるため3号の梶田は一足先に本部へ帰還。2号は引き続き日没まで東京上空を警戒することに。
ゲン「一匹も逃してないだろうな?」
白土「大丈夫さ!万一一匹ぐらい逃した所で、最悪じゃ何もできやせんよ」
不安げなゲンと違って、楽天的な白土。この時の彼らはまだ知らなかった。この事件が逆の意味で、最悪の事態に進むことに…
(場面転換)
河川敷を散歩中の百子、カオル、トオル。今日のご飯は何かと当てっこをしており、トオルがオムライスだと言い当てて大喜び。すると、近くの草むらから不気味な呻き声が…
トオルは「捨て犬かな?」と考えるが、カオルに「男なんだから見てきてよ」と言われ、百子もそれに頷いたため渋々様子を見に行くトオル。しかしそこにいたのは、紫色の服に身を纏った女性だった。
人が倒れているとカオルと百子を呼び、女性を介抱。幸い女性は意識があり、百子は救急車を呼ぼうとするが女性はそれを止める。なんでも悪い人に追われており、バレたら殺されるというのだ。百子はその話を信じ、家へ連れて行って看病することにするが、トオルはどうも不信感を抱いていた。
(場面転換)
山口家にて女性を布団に寝かせ、カオルが水を絞ったタオルを額に乗せる。トオルは医者を呼びたがらないことを理由に彼女を疑うが、百子に「あまり人を疑うものじゃない」と嗜められる。トオルは女性の火傷の痕から「MACがやっつけ損なったコウモリでは?」と推論を立てるが、百子には「人間のどこに羽が生えてるの?」と笑われてしまう。百子に薬代を渡され、納得のいかない様子でお使いに出るトオル。
その日の夜、苦しそうな様子の女性を看病する百子。水を入れたパイプ型の容器を持ってきて、口に注がせてやるのだった。
(場面転換)
翌朝、マックロディーでパトロール中のゲンと白土。2人ともどうやら一匹も残さず退治したと思い、白土は徹夜の警戒が無駄になって良かったと喜ぶ。
その頃、百子はスポーツセンターに出かける所だった。お腹が空いたら食べるように言ってパンと目玉焼き、ウインナー、サラダ、オレンジジュースを置いていく。しかし、女性は百子が出ていくと笑みを浮かべ、頭の濡れタオルをとって動き出す。百子の用意してくれた朝食を持って窓へと歩いて行き、外で吠え立てる向かい側の犬にむかって捨て、食べさせてしまった。すると、部屋の中でカナリヤが喧しく鳴き出す。
女「うるっさいわね〜…」
そして女がカナリヤに向かって息を吹き付けると、カナリヤは元気を失って籠の底に落ちた。
(場面転換)
屋外で跳び箱練習に励む子供達。ゲンがやってくると子供達は昨日のコウモリとの戦いが聞きたいとたかるが、ゲンはいいよと言ってみんなを喜ばせてから、練習が終わった後と付け加え、子供達はガッカリ。みんな跳び箱の方へ戻って行ったが、トオルは残って女性のことを話そうとする。しかし百子に止められ、ゲンはそれを知ることはなかった。
百子はトオルに「悪者に追われて怯えている人のことを教えては可哀想」「第一おおとりさんは忙しいのに馬鹿な空想で無駄な調査をさせちゃいけない」と諭し、トオルは不服そうにしつつも「わかったよ」と答えるのだった。
(場面転換)
その日の夜、山口家で夕食をとる一同。女性の回復を喜び、この分だと一週間で全快だと話す百子だが、カオルは全く食事に手をつけない女性を不審に思う。女性は「昼に食べた食事が美味しくてつい食べ過ぎてしまった」と言い訳し、百子もそれを信じる。一方トオルは、カナリヤが死んでしまったことから元気を無くしていた。
その夜…皆が寝静まる中、1人動き出す女性。トオルのみカナリヤがいなくなった悪夢から寝付けずにいたが、女性が胸の赤いペンダントを輝かせると、トオルはたちまち眠ってしまった。
ナレーション「その夜から、吸血鬼の噂が街で囁かれる様になった」
女性がマントを腕で広げると、再びペンダントが輝き、女性の口には牙が生え、マントは翼に変わる。そして女は宙を舞い、酔っぱらいの男性を襲う。
続けて近くにいた女性を襲い血を吸う…
(Aパート終了)
ナレーション「吸血鬼に襲われた者は吸血鬼になる…人々は夜出て歩かずに、昼間は吸血鬼と噂された人を襲うようになった。勿論MACは必死になって吸血鬼を探していた。既に吸血鬼になってしまった人々を治すには、本物の吸血鬼の血清を注射するしか方法がなかった」
街では吸血鬼の疑いをかけられた者が暴徒と化した人々に集団リンチされる光景が広がり、大混乱が巻き起こっていた。MACの面々は空を、陸を血眼になって調べていたが、依然として事態は進まなかった。
(場面転換)
女(吸血鬼)「子供の血は不味いわ…」
山口家にて、トオルが生気の抜けた顔で座っていた。彼も吸血鬼の毒牙にかかってしまったのだ。カオルも目の前で血を吸われてしまう。
直後、百子が帰宅。すぐに食事の準備にかかろうとするが、炊飯器の中には大量の白米が。また食べなかったのかと、窓の前で背を向けて立っている女に、食べないとよくならないと言う百子だが、女は傷はもう治ったと返す。女の口元には、牙が剥き出しになっていた。
しかし百子は彼女が吸血鬼だとは露知らず、本当に平気なのかと尋ねる。ここでトオルの言葉を思い出したか、噂の吸血鬼ではと疑うが、その時女は啜り泣きを始める。
気分を害してしまったと思い、女に駆け寄る百子。しかし、それは泣き声ではなく、笑い声だった。本性を曝け出し、百子に襲いかかる吸血鬼。更に既に血を吸われていたトオルとカオルも百子を押さえつけ、身動きが取れなくなった百子の首筋に吸血鬼は噛み付いた。
(場面転換)
夜道を急ぐマックロディー。中に乗っていたのは白土とゲンだった。
ゲン「やっぱり、あの時逃げおおせた奴がいたんだな」
白土「この道は、百子さん達のアパートの近くじゃないか?」
ゲン「あっ、そうだな」
白土「様子見てきてやれよ!心細いだろうからなぁ」
マックロディーをアパートの前で停め、ゲンは部屋へと入って行く。
トオル、カオル、百子はテーブルを囲んで静かに座っていた。
ゲンの「変わりないだろうね?」という呼びかけに百子は笑顔で頷き、ゲンも安心して部屋を出て行こうとするが、トオルとカオルにすがられる。遊んで欲しいのかと思い笑うゲンだったが、そのうち三人の様子がおかしいことに気がつく。そして百子はゲンの首を絞めにかかり、ゲンは全てを察知。
ゲン「君達、吸血鬼に!?」
三人は一度にゲンに打ちかかるが、ゲンは三人とも一撃で制し気絶させる。すると、ソファの裏に怪しい影が。吸血鬼は姿を現すと胸のペンダントの光を目眩しに、ガラスを割って逃亡。ゲンも後を追う。
逃げる吸血鬼の前に白土が立ちはだかり、挟み撃ちにしようとするが、吸血鬼はその場に翼を広げて蹲ると、怪しく光り…
吸血鬼の本当の姿それは女の姿でも、小さなコウモリの姿でもなかった。その真の姿は巨大なる宇宙怪獣・バットンだったのだ!
白土「うわーっ!くそうバケモノ…!!」
相手が怪獣だと分かっても、怯まず果敢に戦いを挑む白土。しかしマックガン攻撃を受けたバットンは、大きく跳躍すると翼を大きく動かし、突風を巻き起こした!物凄い風になす術なく吹っ飛ばされてしまった白土は慌ててゲンに助けを求める。
ゲンも白土を、そして血を吸われた全ての人々を救うべく、レオへと変身!
ゲン「レオーッ!!」
白土が見守る中、両者の対決が始まった。まずはお互い肉弾戦を行うが、レオは巴投げでバットンを投げ飛ばす。
バットンは負けじと第一の武器を抜く。なんとバットンの翼からは鋭利なカッターが現れ、空中を飛行しながらレオへと襲い来る。
レオを切り裂こうと空中より迫るバットン。レオは何度も躱すが、その度にバットンは再アタックを繰り返し、レオが避けた拍子に後ろにあった発電所の鉄塔を破壊。スパークが起こって発電所は大爆発してしまった。
バットンは地上に降り立ち、第二の武器である翼を広げての突風攻撃を開始。先ほど白土を苦しめたこの技はレオにも有効であり、その猛烈な強風にレオは進むことができず徐々に後退し、遂にビルに倒れてしまった。
バットンは倒れたレオの元へとジャンプするが、タイミングを合わせてレオの蹴りを受け倒れてしまう。そして立ち上がったバットンに、レオは必殺・エネルギー光球を放つ。バットンの身体は爆発し、その翼は焼け落ちてしまった。
しかし翼をやられた分バットンはより身軽になり、レオと再び格闘戦を繰り広げる。しかし純粋な対決ではレオに分があり、何度も投げ飛ばされてしまう。
しかし地面をローリングで転がるバットンは、向かってくるレオを前に胸で腕をクロスし、解き放つと同時に両耳から第3の隠し武器であるアロー光線を発射。
まともに光線をくらったレオはその場でバッタリ倒れ、ここぞとばかりにバットンはマウントを取ると、第4の武器であるその長い牙でレオの顔面を突き刺そうと狙う。しかし、そう簡単にやられるレオではない。首を右に左に動かし、攻撃を回避すると、すぐに牙を掴んで体勢をひっくり返す。そしてモンゴリアンチョップを食らわして、そのままバットンの牙を抜き取ってしまった。
奪った2本の牙を構えるレオに、バットンは再び光線発射を図るが、レオはバットンの耳目掛けて2本の牙を投擲。それぞれバットンの耳にクリーンヒットし、バットンは激痛に悶える。これによりバットンは全ての武器を失ってしまった。
ナレーション「しかしレオは、この怪獣をただ倒す訳にはいかない。百子とトオルやカオル、そして大勢の人々を救う為に血清を採らなければならないのだ!」
走ってくるバットンを足払いで倒し、飛び掛かって頭を押さえて何度も地面に叩きつけて無力化。そしてレオはレオブレスレットから光を発し、念力で注射器を作り出す。そしてそれを思い切りバットンの背中に突き刺し、大量の血液を採取。
血を抜くことには成功したレオだったが、バットンはそれを取り返そうとレオを振り払い、転がった注射器を奪おうとするがレオに阻まれる。
激しい攻防の末にレオはバットンの足を掴んで引きずり、注射器から遠ざけることに成功。ボクシングを彷彿とさせる殴り合いでバットンを怯ませ、大きく跳び上がる。そして両足に赤い光を纏い、両足でトドメのレオキックを繰り出す!
バットンは大量のエネルギーを浴びて爆死。残されたペンダントがやがて上がった太陽の光を反射する。悪魔の吸血鬼との戦いに無事勝ったレオは、急いで注射器を回収するのだった。
(場面転換)
ナレーション「レオが怪獣バッドンから採った血で直ちに血清が作られた。吸血鬼になっていた大勢の人々が救われた!」
ゲンは病院から出てきた百子ら三人を迎えに行き、カオルを抱っこして帰路に着く。
そして4人で「海は広いな、大きいな」と歌いながらあの河川敷へと差し掛かるが、ここでまた茂みから何か音が。
百子はトオルに頼もうとするが、トオルは当然ながら断固拒否。
仕方なくカオルに荷物を預け、様子を見に行く百子。暫くして百子が出てきたが、彼女は小さな犬を抱えていた。
カオルはその子犬もまさか…と警戒するが、こんな可愛い子犬が悪いことする怪獣になる訳ないと上機嫌。
トオルはあんな目に遭ったのにてんで変わってなんかいないんだと憎まれ口を叩く。しかし、なんだかんだで犬の元へ駆け寄り、カオルもそれに続く。
そんな様子にゲンも微笑むのだった…
余談
本話にてゲンはMACとしての活動時、終始白土とコンビを組んでおり、仲も良さげだった。第6話の一件は完全に氷解したものだと思われる。尚、白土はその第6話にて恋人を喪った経験からか、ゲンの恋人である百子を気遣っている。
この話の最序盤にて吸血コウモリのフィルターを不思議がる場面を最後に、平山隊員は本作から退場となる。
ナレーションは何故かバッドンと言い間違えている。
最後は百子が犬を拾う場面で終わるが、既に山口家には第10話にてロンがいるはずである。カナリヤが死んだ分費用が浮いたのだろうか?尚、カオルは怪獣ではと危惧していたが、宇宙人の目を持つゲンが見ても何も言っていなかったので普通の犬だろう。
本作による吸血コウモリの撃滅はMAC唯一の戦果と時折ネタにされるが、実際にはこの他にMACの戦果がないわけではない。
何気に前話に引き続いて吸血鬼がテーマの話だが、裏設定では前話のウルフ星人と本話のバットンは犬猿の仲らしい。
本話で披露された両足レオキックはあとは第33話でのみ使用されるレア技である。