大門未知子
だいもんみちこ
良く言えばクール。悪く言えば愛想がない。自分が心を開いた名医紹介所の人間などには子供のようなはっちゃけも見せるが、それ以外の人間に対しては冷淡に接し、物言いもかなり鋭い。
特に、雇用契約を結んだ医療機関(主に大学病院)への態度は辛辣を通り越し無礼の域に達しており、契約成立早々に神原より「厳守事項」と称して自身が行わないこと(医師免許を必要としないあらゆる行為の強要)を一方的に通告し、それを飲んだとしても合意の握手すら「医師免許がいらない行為」として手を出さない。
そのため、大学病院の医師の一部からは名字をもじって「デーモン」などとあだ名される。ただし、患者に対しては言葉遣いこそ素っ気ないが治療に全身全霊を注ぎ、助け出すためなら(自身が本当にやれる限りの範囲であるが、)どんな行動を取る事も厭わない。
「三度の飯より手術が好き」な手術バカで、自身の履歴書の趣味や特技の項目には手術と記載している。3日以上メスを持たないと手が震えるとも語っており、もはや趣味・特技を超えた手術ジャンキーである。そのため、手術に対してはかなり積極的だが、病院の利権などが絡むと後述の理由からかその手術への関与を一切拒否する。
手術以外の趣味は麻雀、卓球、銭湯巡り、飲食、ギャンブルなどがあるが、特段強かったり、グルメだったりという訳ではなく、医療以外の才は皆無のようである。そのため、ギャンブルや遊びに興じては金欠になったりする事が度々ある。
日本とキューバで医師免許を持っている。師の神原を除けば作中トップクラスの技量を持ち、未知子の施術を初めて見る医療関係者はその正確性と速度に圧倒される。
知識も非常に広範囲で、基本的な医療知識に加え軍医、船医など特殊な環境下でのみ培われる知識を備える。
また、両国で獣医師免許も持っており、未経験の競走馬の骨折治療をやってのける程に技術力は高い。
なお、未知子は手術に相当な体力を使うようで、術後はガムシロップをコップ一杯分飲み干す(初期ではよく描かれていたが、最近のシリーズではこのくだりが割愛される事が多くなった。第7シーズンの2話で久しぶりに描かれた)という「お約束」がある他、一時期はひとっ風呂浴びるというルーティンにハマっていた事もあった。
「わたし、失敗しないので」の真意
しばしば「本編で『未知子が助けられなかった患者』は確認出来ない」と評される(作中で明確に未知子が「助けられなかった」患者は第1期第6話の六坂元彦と、第7期第8話の八神さつきくらいであり、未知子が手術をする前に「不測の事態で」容態が急変してしまったため、彼女に落ち度は全く無い)ばかりか「適切な方法さえ第三者に託せれば『未知子自身』ですら助けられる」という斜め上の成功率を誇る(その「適切な方法」が記されていたノートには「8255」と書かれていたため、少なくとも8000人以上は彼女の手により助けられた事になる)未知子なのだが、彼女が「失敗しない」と度々言うのは「(医者である自分自身とは違い)患者は一度失敗されたらその時点で終わり」という信念から、己の技量に甘んじる事なく「患者を『必ず』助ける」という決意を込めて自らの退路を断つための行為である。
今でこそ、躊躇なく患者の施術をこなせる未知子だが、昔は全く正反対の性格だった。
小学校でカエルの解剖をした時には、メスを少し入れただけで白目をむいて倒れたり、医学生時代にもご検体にメスを入れただけで白目をむいて倒れるなど、全く外科に向いていなかった。
それでも外科の道に進み、ドクターXの1人になったのは師である神原晶の教えとともに、小学校の解剖の時にカエルを助けて逃がすという優しい心を持っていたからだろう。
父親の大門寛も外科医で、神原や第1シーズンで未知子に立ちはだかった毒島隆之介とは大学病院に勤務していた頃の同期だった。大学病院を退職後は小さな診療所を営んでいたが、病院内での選挙資金提供を拒否した逆恨みから毒島に営業妨害をされ診療所は閉鎖に追い込まれた。寛本人は診療所閉鎖からまもなく病気で他界しており、未知子は診療所が抱えた借金を1人で背負うことになった。神原はこの未知子の借金を肩代わりして支払っており、これがきっかけで未知子は神原に師事することになる。
診療所の閉鎖が毒島の病院内での権力闘争に協力しなかったことが原因であるためか、未知子は病院内での権力闘争や利権が絡むとその手術に対して協力することを拒むことが多い。
第1期
人材流出で人手不足に陥った帝都医科大学附属病院第三分院の第二外科に雇われるが、当時の久保院長の方針に逆らったため第1話で解雇される。だが、直後に久保が脳梗塞の発作を理由に院長を解任され、後任の毒島が改めて未知子と契約した。その後は毒島を中心とする第三分院の医師達と衝突しながら数々の患者を治療する。
第2期
旅行先の北海道で帝都医科大学附属病院本院の馬淵内科統括部長が飼育する競走馬の手術を行ったことからその手腕を買われ同病院に雇われた。しかし、馬淵の意図に反した手術を執刀したため早々に解雇される。だが、執刀した手術で同病院の蛭間外科統括部長が過去に手術ミスをしていたことが判明し、今度は蛭間に口封じもかねて雇われた。それ以降は外科と内科の権力闘争に巻き込まれながら様々な患者の治療を行っていく。
第3期
バカンス中に毒島夫妻とクルーズ船で乗り合わせ、その船で発生した海難事故で毒島が倒れたため救護した。その際、毒島に疾患の兆候を発見したため、後にそれが原因で毒島が国立高度医療センターへ入院すると、先の救護活動を理由に毒島を「私の患者」だと主張してセンターに乗り込み、紆余曲折を経て毒島を治療した。執刀時、腐敗した当時のセンターの総長の後任に内定していた天堂の目に留まり、以後センターに雇われることになる。終盤では蛭間と神原がガンで倒れるが、未知子が手術を執刀し治療した。
スペシャル版
金沢のクロス医療センター病院長である黒須から雇われ、センターに入院したフィギュアスケート選手の氷室を手術することになった。しかし、それは投薬治療を支持する黒須が投薬治療の優位性を見せるための噛ませ犬として雇われただけで、未知子は手術直前に黒須が差し向けた暴漢に襲われ利き腕を負傷した。手術からの長期離脱を余儀なくされた未知子は自暴自棄気味になり、一時は神原達とも連絡を断ち偶然出会った山里の集落で生活していた。しかし、集落の者から発破をかけられて外科医に復帰し、氷室の手術に成功する。
第4期
ニューヨーク滞在中に中華料理店で倒れた妊婦を急性胆道炎と見抜き、手術で救った。この時、現場に居合わせた久保東子(1期に登場した久保院長の妹)の目に留まり、東子が副院長として赴任した東帝大学病院に雇われた。直後に東子とは対立し解雇されるが、執刀医が想定以上の腫瘍範囲を理由に執刀拒否をした難手術を成功させたため、院長の蛭間により病院に再雇用された。終盤では第2期から相棒同然として共に活動していた麻酔科医城之内博美がガンとなり、彼女の手術を執刀し治療した。
第5期
温泉帰りに乗った路線バスの運転手が心臓疾患で意識不明となり、偶然通りかかった志村東帝大学病院院長の車に乗せて近くの病院に搬送して緊急手術を行った。この時の手際の良さが志村の目に留まり、東帝大学病院に雇われることになる。その後、志村は不倫スキャンダルで院長の座を追われるが、後任の蛭間により雇用契約は継続された。その後、終盤で自覚症状が少ない癌にかかっていることが発覚し、自ら余命3ヶ月と診断した。神原の手配でアメリカで手術を受けられることになったが、同日に予定されていた日本医師倶楽部会長の高難易度手術を執刀するため渡米せず、鎮痛剤で痛みを抑えながらギリギリの状態で手術を成功させた。術後、手術室を出てすぐに倒れ絶体絶命かと思われたが、会長の手術に向かう前に自身の手術の手順をノートに書きとめており、その手順通りに東帝大の外科医達が執刀した結果生還を果たした。回復後は神原と共にキューバに渡りフリーランスの外科医を続けている。
第6期
第1話の時点で既に晶と共に(元号が令和となっていた)日本に帰国していたが、山中湖付近の山道を歩いている途中で晶とはぐれてしまい、ほぼ一文無し状態で山道を彷徨い歩く中で一軒家を発見し、その家の住人であったニコラス・丹下に食事を分けてもらい、数日後ニコラスに誘われる形で城之内と共に東帝大学病院で働き始める。
当初は丹下に対し「ニコタン」と渾名で呼んだり、大抵は「致しません」と拒否している握手を求められて素直に応じるなど好意的に接していたが、病院の食堂のスタッフである岩田一子(未知子は親しみを込めて「おばちゃん」と呼んでいる)が体調を崩して倒れてAIに「肺塞栓症」と診断された際に丹下が詳細な検査を行わずに手術を強行させたり、「AIの指示に従うのであれば、手術をしてもよい」と告げるなど一方的かつ強引な態度を表したのを切っ掛けに反抗的な姿勢を示すようになり、一子の手術を終えた翌日に廊下で会った丹下から「昨日のことは水に流して、「友人」として力を尽くして欲しい」と握手を求められても「致しません。無駄なので」と拒否した。
第9話では、患者である九藤がかつて自分が発症したステージⅢの後腹膜肉腫(ただし、未知子の見立てでは「自身の時より状況が悪い」と歯切れが悪い返答をしており、助かる確率は「五分五分もしくはそれ以下」としていた)である事を知ると不安に思い、手術を拒否する九藤に対して「自分も同じ病気だった」と九藤に明かして執刀に臨み、自分で考案したハイブリッド型人工血管を用いた術式で九藤の手術を成功させた(先述した第5期の一件がここで役に立った)。さらに、丹下が修正大血管転位症である事も把握しており、自分の執刀を受けるよう説得するため(自身の身分を「丹下の内縁の妻」だと偽り)何度も面会に訪れていたことが明らかとなった。
最終回では、クビになることを覚悟の上で丹下を説得し、彼から同意を得た後は海老名を始めとする東帝大の医師や看護師たちの協力もあって無事に丹下のオペを成功させた。術後は蛭間から解雇通告をされたことで東帝大を去る。後日、とある離島にて一子の同僚である野村幸子を診察した際に診療料として大量の金塊と石油採掘権利書を貰う。
同じく東帝大から追い出された海老名達が神原名医紹介所に転がり込んだ際に(自分達もそこで働きたいと懇願した)海老名達はギャラの歩合について神原に尋ねるも、そのレートに対し「ぼったくり」だと抗議するも、「未知子からは貴方達よりもハネてる」と付け加え、海老名達を驚愕させた。
第7期
2020年1月にニューヨークに移住し、フリーランスの医者として働いていた。この時期がちょうど(現実世界と同様に)新型コロナウイルスのパンデミックと重なっていた為、未知子もニューヨークのコロナ病棟でその対応に追われていた。仲間の医師や患者が次々と倒れていくという、これまでにない過酷な状況に、未知子も少なからず影響を受けた。
翌年の5月にニュージーランドで副首相のオペをした未知子は、3ヶ月後の8月には一木蛍によって、一橋由華が主催する「次世代のSDGsパーティー」に招かれる。一木の勧めで、胆石症のオペを依頼されたが、そこで一橋が急性胆のう炎で倒れ、東帝大に搬送される。蜂須賀の許可のもと緊急オペを行い、その後、ラッサ熱に感染した一木の心臓のオペも無事成功させるが、自身も感染してしまう(ちなみに晶がたい焼きを差し入れた際に倒れた事から、以降たい焼きが苦手になった…訳ではない模様)。
3ヶ月後、ようやく本調子に戻った未知子だったが、晶が自分たちに何も知らせず原を名医紹介所のメンバーに加えたり王弥六の主治医に指名したりしたことで、彼に不信感を抱き始める。
最終回では蜂須賀隆太郎が自らを隔離する形で感染対策センターに一人閉じこもり、未知子の説得も聞き入れようとせず門前払いしていた(彼としては「研究に専念したい」事に加え「未知子達を巻き込みたくない」という事情もあった)が、とうとう彼が倒れてしまったため見かねた未知子は蜂須賀を手術室へ担ぎ込み、(蛭間の反対を押し切って)合流していた海老名・加地・原(と、一度は断るも「土壇場で翻意した」興梠広)の執刀による手術が始まる。
だが、未知子達の奮闘も虚しく蜂須賀は心肺停止に陥ってしまい、手術室に重い空気が漂い始めるが、未知子は意に返さず鬼の形相で蜂須賀に心臓マッサージを行って蘇生させた(この時の蜂須賀は心肺停止により未知子の視線に表れた「幽体離脱」状態だったが、蘇生により軽く頷きながらフッと消えるという演出がなされた)。
その後完治した蜂須賀は、未知子に「(遠回しに)一緒についてきてほしい」と告白するが、当の彼女からは「一緒に寿司を食べに行く」と勘違いされてしまい、蜂須賀は一人で新天地へと旅立っていった。そしてその(本来なら蜂須賀と一緒に行っていたはずであろう)寿司屋の大将である十兵衛が急に倒れた事により未知子が処置をする場面で第7期は締めくくられた。
未知子のモデルとなった人物は医者…ではなく柔道家の松本薫である。
当初ドラマの脚本家である中園氏が「ヒロイン像」について悩んでいた際に、ちょうど開催されていたロンドンオリンピックで、柔道では日本人唯一の金メダリストとなった松本選手がテレビ番組のインタビューで「私、ミスはしないので」ときっぱり答えていたのを見た事から着想を得て「スーパー外科医」である大門未知子は誕生したのであった。
「医療バサミの独特な受け取り方」「オペ後に患者の肩に手を置く」「ガムシロ一気飲み」など、演者である米倉氏か発案したアイデアが劇中に含まれる事が多い。
「黒革の手帖」の主人公である原口元子にそっくりらしく、一度間違えられたという楽屋ネタもあった。
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