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多分それは一種の精神病ででもあったのでしょう。郷田三郎は、どんな遊びも、どんな職業も、何をやって見ても、一向この世が面白くないのでした。



概要編集

1925(大正14)年、探偵小説雑誌〈新青年〉8月増刊号に初掲載。

明智小五郎が探偵役として事件の謎を解く(?)作品だが、後の「大衆探偵小説における正義のヒーロー」像とは大きく違う、まだ「犯罪探偵に興味の深い一介の遊民」時代のそれ。


内容紹介編集

「何をやって見てもこの世が面白くない」遊民・郷田三郎が素人探偵の明智小五郎と知り合いになったことで犯罪嗜好癖に目覚め、新しく移った下宿屋「東栄館」で屋根裏散歩と他の住民達の生態覗き見趣味を楽しんでいるうちにふとしたきっかけからある人物の殺害を思い立ち、それを実行。だが最後に明智に真相を看破されるというお話。

いわゆる倒叙ミステリであり、「犯人は誰か?」を読者に問う趣向の謎解き小説ではない。


登場人物編集

郷田三郎

この話の主人公。職業や遊びを何をやっても満足できず、仕送りを頼りに生活しながら日々悶々と欲求不満を持て余している25歳の遊民。頻繁に住処を変えたり時には放浪の旅に出たりもする。明智と知り合ったことで「今までいっこう気づかないでいた」犯罪に興味を覚え、自分の住む下宿「東栄館」の屋根裏散歩に始まり、遂にはある犯罪まで犯してしまうが‥‥。


明智小五郎

素人探偵にして在野の犯罪研究家。犯罪に関する豊富な知識と雄弁を持ち、ぶっちゃけた話が最初は何も知らなかった郷田に犯罪のあれこれを吹き込み、実際にそれをやらせてしまうことになったそもそもの元凶


遠藤

歯科医助手で「東栄館」住人の一人。郷田に「いちばん虫が好かぬ」と思われており、その結果‥‥!


北村

遠藤の隣室の住人。職業は会社員。事件解決につながるある証言をする。


余談編集

この作品について作者江戸川乱歩は、「かつて三重県鳥羽造船所へ就職した時に仕事に行きたくないから自分の部屋の押し入れの中に襖を閉めて隠れ潜んでいた」思い出と、「その後居住した大阪守口市の家の天井裏を覗いて、屋根裏の景色を半時間も楽しんだ」ことが小説アイディアになったと語っている。

当時の評論家平林初之輔曰く「自分の家の天井裏を歩き回ってその体験談を小説にした作家など、古今東西に例がない」(但し乱歩自身は「首だけ天井裏にさし入れて中を見廻しただけ」だと書いているが)。


雑誌の原稿〆切が迫る中自らの父親が病気で倒れて話の後半部分が自分の思うように書けなかったり、「屋根裏散歩」や「天井の節穴」という着想を本格トリックに生かしきれなかったりと創作は難航し、完成こそしたものの脱稿直後は乱歩の持病(?)である自己嫌悪に陥り、創作者としての前途を悲観してペシャンコになったりした程だった。

実際、本格畑方面からはそのトリックの厳密性や整合性等を批判されたりしたが、逆にその怪奇性や異常心理等の「変格」性が高く評価され、褒められると一転してまたいい気になる(??)乱歩のその後の作家生活に大きな影響を与えた作品だと言える。「夜の浅草徘徊趣味」や「変装して他人に生まれ変わる」などの、その後の乱歩作風(というよりは個人的願望)の重要なエッセンスもこの作品には登場する。


その一方で明智が謎解決の手段として「犯人のある深層心理」を指摘し活用するなど、乱歩初期の作品によく見られる「本格探偵小説=事件解決の決め手は人間心理」色も濃厚。


今日では「大乱歩」代表作のひとつにあげられ、その異様な世界観が印象的なため後に幾度も映像化されているが、どの作品も大抵の都合なのか何なのか「エログロ」仕立てに脚色されている。

原作には若い妖艶美女など一人も登場しない。


関連リンク編集

青空文庫『屋根裏の散歩者』


関連タグ編集

江戸川乱歩 明智小五郎 探偵小説 犯罪 覗き 心理学

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