概要
大網元の息子である一ヶ瀬鮫男が、金をばらまいて集った若い海兵達による私閥集団。
幹部として双銃の使い手である副官の二ノ宮と、用心棒的役割を担う二刀流の使い手三ッ原がいる。
西南の役で戦功を挙げて凱旋し、吉原で豪遊する。
一ヶ瀬は自分を「西南の役で無傷で勝利した強者」と自惚れ、全身を包帯で覆う志々雄真実を「傷だらけの弱者」と侮蔑する。さらにこれからは自分たち軍人が日本を強くすると豪語し、団の次期戦力として戦艦を購入する交渉を秘密裡に進めていた。
しかしその戦艦の写真を、花魁・華焔(駒形由美)の妹分である華火に見られたために彼女を殺害。その場に居合わせた禿のあかりとかがりも、『生きた日本人形』として交渉相手への手土産にする為に攫っていった。
悲しみ憤る華焔は「自分の命を好きな時に好きなように奪って構わない」という条件を報酬に、志々雄の強さを一晩買う事を申し出る。
志々雄もそれを了承し、初めて全員揃った十本刀と共に、商談に向かう引原海鮫兵団を襲撃した。
幹部3人以外の団員勢は十本刀相手に瞬く間に壊滅。
内どれだけの者が犠牲となった(と言うかどれだけが生き延びられた)のかはわからないが少なくともあかりとかがりを人質にとった二名は、十本刀で唯一独断の生殺与奪を許されている安慈に目の前で1.5メートルはありそうな橋の支柱を二重の極みで粉砕され「その子達を放せば命は見逃す」と言われ恐れをなして降伏していたため生存出来たものと思われる。
二ノ宮は瀬田宗次郎の『縮地』の前になす術無く首を刎ねられ、華火を殺した三ッ原も彼女と心を通わせていた佐渡島方治にたった一発の狙撃で射殺された。
そして一ヶ瀬も『銃剣二天流』なる一刀一挺スタイルで志々雄に挑みかかるも、志々雄の終の秘剣・火産霊神で呆気なく敗北。
「そうかわかった!その強さ!お前が幕末最強の男!人斬り抜刀斎!」
と的外れな事を叫ぶも、志々雄に「違ェよ」と吐き捨てられながら、炎に呑まれていった。
ちなみに一ヶ瀬は、鮫兵団の総員200名を引き連れて売買交渉に臨み、その勢力を見せつけて交渉を有利に進め、分割十年払いで戦艦を購入する腹積もりでいた。
しかし鮫兵団を壊滅させた足で、一ヶ瀬が行くはずだった交渉場所に、方治・宗次郎と共にたった3名で乗り込んだ志々雄は相手に対し、
「言い値で現金一括払い、嫌ならてめぇの命ごと只でいただく」と一言。
商談は成立し、志々雄は甲鉄艦煉獄を手に入れた。
一ヶ瀬も引原海鮫兵団も、何一つ志々雄の敵ではなかったのである。
余談
「炎を統べる」単行本収録のノベライズ作品「その翳、離れがたく繋ぎとめるもの」では、一ヶ瀬は絵師の月岡津南を雇って購入前の煉獄の錦絵を描かせていた。煉獄を目の当たりにした津南は、この巨大兵器を明治政府が所持するものと思い込み、憎き政府に一泡吹かせるべく、海外の文献を取り寄せて煉獄を破壊するための新型の炸裂弾の製造に取り掛かる。
…ここまで言ったらもうわかるだろうが、本編で左之助が投げたアレである。
そういう意味では一ヶ瀬は志々雄に間接的に一矢報いた……のかもしれない。志々雄と縁からすればマジたまったもんじゃないが。
また、描写的に恐らく方治ですらこの件が起こるまで接触出来ていなかった上海マフィアに一ヶ瀬らが先に交渉を取り付けられていたのは、彼が海外勢に関わり易い網元の出だった事を考えれば納得が行く。