概要
『るろうに剣心』にて、相楽左之助が悠久山安慈より伝授された必殺技。
安慈が10年もの歳月をかけて完成させた「破壊の極意」であり、劍客兵器すら驚愕したり褒め称えるほどの使い勝手を持つ。武器を使わずとも使い様によっては作中でも最強クラスのポテンシャルを秘め、まさに「神の化身」ともいうべき破壊力と使い勝手を体現する。
よく勘違いされるが10年の月日を掛けて会得したわけではない。発想に10年かかり、会得するのにひと月掛かったと述べている。
様々な応用技が存在し、攻撃だけでなく防御や遠距離攻撃としても運用が可能という万能性を持つ。後述の「総身」の登場により、「攻撃は最大の防御」という言葉を別のベクトルで体現しており、いわば「守りの極意」とも言えよう。
その驚異的な威力を物語るエピソードには事欠かない。たとえば、とある場面では水面に二重の極みを打つことで水を跳ね上げ機関砲の弾丸を無力化させており、柳田理科雄による考察では、瞬間的に数十トンの海水を動かしたともされている (参照)。
何の因果か、圧倒的な戦闘力を持つが強大なフィジカルを持たないと自分の身体に負担をかける、一子相伝に近い修行など、飛天御剣流と類似している部分がある。
解説
「全ての物質には抵抗が存在するため、その衝撃は完全には伝わり切らない。
そこに無駄な衝撃が出来てしまう。
まず拳を立てて第一撃を加える。
そしてその第一撃目の衝撃が物質の抵抗とぶつかった瞬間、
拳を折って第二撃を入れる。
すると第二撃目の衝撃は抵抗を受ける事なく完全に伝わり切る。
衝撃というのはとてつもなく早い。(75分の1秒)
その瞬間に第二撃を撃ち込む。」
安慈はこれを両手両足・肘打ちや頭突きはおろか全身で放つこともできる上に、手にした三鈷剣で打つこともできる。
一方で、左之助は基礎しか教わってないので自在に使えるのは右手の正拳突きでのみである(キネマ版だと両拳で打てる)。
安慈は命をかけてこの奥義を生み出したが、その過程は凄まじい難易度だったと思われる。
- 非力だった安慈が己の身体能力と格闘技術によって復讐を成し遂げようと思い立った経緯は不明だが、まず物理の知識を得ようと思い付いたことだけでも並外れた聡明さを持っていると言えよう。
- さらに、明治の時代において物理学を学ぶことは難しいことであり、全てを失い経済的な余裕がまったくなかった状況からも、安慈の復讐と「救世」への執念の強さがうかがえる。
バリエーション
極み外し
現状己の肉体を使った唯一の対二重の極み用の防御策で、二重の極みが自身に打ち込まれた瞬間にその反対から自身に二重の極みを打ち込むことでその威力を相殺する技術。
三重の極み(さんじゅうのきわみ)
安慈戦で左之助が見せた安慈を驚嘆たらしめた技。二撃目の拳を丸めた状態から五指を一気に弾く三撃目を加える技で、安慈の二重の極みを正面から打ち破った。いわば、対二重の極み専用の技。ただし、拳にかかる負担が相当大きく、使用したのはこの一度きり。
簡易版
左之助が右手を二重の極みを満足に打てない程に痛めている時に即興で思いついたもので、右手に左手を添える形で放つ事で技の衝撃を両手に分散させれる。威力は本流より劣る上に連発も利かないが、本来拳にかかるであろう負担を両手に振り分けることで通常の半分以下にまで減らせている。
連ね打ち
キネマ版の左之助の技。両拳の二重の極みを多方向からの連打をかける。戌亥番神の水銀の無敵手甲を強引に剥がした。
旋拳
北海道編で左之助が見せたコークスクリュー版二重の極み。劍客兵器の於野冨鷹の左手を捻り潰しつつそのまま腕に打ち込んで骨を粉砕した。
陸震
安慈の得意技で、三鈷剣を地面に突き刺して衝撃波を飛ばす二重の極みの「遠当て」。攻撃範囲は広いが、直接打ち込むものと比べて威力は低い (それでも石の地蔵をまとめて粉砕したり、劍客兵器の攻撃を止める威力がある)。不安定な状態の地面だと、衝撃が十全に伝わらず威力も範囲も落ちる欠点がある。
- 「陸震」という名前は再筆版において登場した二重の極みのバリエーションの一つとして命名され、その後に北海道編で本編に初登場した。それまでは、前述の通り「遠当て」と呼ばれていた。
空雷
再筆版の応用技。安慈が横隔膜で極みを行い、口から衝撃波を放つという飛び道具。豪火も容易く霧散させる、対志々雄用に開発した奥の手。
海鳴
再筆版の応用技。安慈が羂索で水中に衝撃波を伝播させる遠距離範囲攻撃。原理としては、「陸震」のバリエーションの一つと考えられる。
総身
北海道編で安慈が見せた、全身で放つ二重の極み。見た目は合掌したまま直立しているだけだが、射出された岩飛礫が安慈に触れるだけで次々と霧散していくという常軌を逸した現象を引き起こし、これには劍客兵器の土居潜具羅も「化け物め・・・」と思わずこぼした。
- 安慈が全身で発動できる可能性は京都編で左之助が言及しており、その際は「極めるとはこういう事だ」の名言と共に、裏拳、肘、両足で同時に披露していた。更に、安慈は『明日郎 前科アリ』でも大人しく収監されていたことからも、刑務所内にて新たに二重の極みを修行していたとも考えられないので、京都編の段階で既に習得していた可能性も否定できない。
- 直立不動な上に合掌したままなその発動描写から察するに、恐らく(ボディプレス気味に放つ事等が可能で無い限り)射程距離は完全にゼロな防御専門の二重の極みであるものと思われ、相手の肉弾攻撃部位に対して位にしか直接攻撃能力は見込めなさそうではある。
明王撃
ゲームオリジナルの安慈のコンボ技。両手・両足・頭突きによる五連撃の二重の極み。おそらくは、京都編でのシーンを参考にしていると思われる。
攻略法
二重の極みは一撃必倒と称される通りに、たった一発当たるだけでも致命傷となりうる極意だが、その一方で致命傷を回避する攻略法も編み出されており、作中でも数回に渡って凌がれている。
極み外し
作中で最初に披露された防御法。効果は上述の通りだが、これを行うには自身も二重の極みを扱える技量が必要な為、安慈と左之助以外の者には事実上不可能である。
衝撃の伝導をずらす
キネマ版で剣心が見せた防御法。二重の極みに対して刀と鞘による完全同時攻撃である相龍閃を叩き込み、衝撃が伝わるタイミングをそれぞれにずらす事で単なる二撃に緩和させ、攻略に成功した。
直前に別の物質を破壊させる
北海道編にて土居潜具羅が確立させた突破法。二重の極みは防御不可能だが、命中前に強引に暴発させる事でその威力を失わせる事が可能という点に着目し、作中では岩で出来た棘球状のグローブを手に纏い左之助の二重の極みにぶつけて敢えて破壊させ、効果を失わせた後、その下にある自身の拳で彼を打つという手段を取った。
また、その後も左之助と安慈に同時に二重の極みを叩き込まれるという、打った二人でさえ確実に再起不能だろうと思い込んでいた状況に対しても、総身を岩石で出来た鎧で覆っていた為に破砕が鎧のみに留まり土居潜具羅自身は無傷で済んでいる。
最初の左之助と安慈の決闘でも、懐に潜ませていた位牌があったが為に安慈が無事であった事からも、何かしらの物質を身に纏うという攻略法は二重の極みに対して極めて有効である事が改めて証明された。
ただし、左之助が戌亥番神の無敵手甲を砕いた際には手甲のみならず彼の両腕までも破壊しており、改良版の二重の極みを編み出した際にも大岩の背後に隠れた相手を大岩ごと吹き飛ばしている。この事から、武具を身に着けていたとしてもある程度の破壊力は確実に伝わる事が分かる為、決して油断はできない。
(安慈は肉体が分厚い筋肉であったことからダメージに耐え切り、土居潜具羅はあらかじめ二重の極みを研究した上で挑んでいたので、威力を相殺し切れる様に岩石の形を整えていたのだと思われる。逆に、番神は作中でも「手甲に頼っているから、生身の打たれ強さはそこまでじゃない」と言及されており、手甲で威力を軽減しても尚耐え切れなかったと考えられる)
精神が肉体を凌駕する
精神が肉体を凌駕する事で、左之助と安慈は一撃必倒の二重の極みを撃ち合いながらも倒れる事無く闘い続ける事が出来た。二重の極みに限らず同様の事例が作中でも数度あり、強い精神力を以てすれば如何なる攻撃でも耐えられるという事である。もはや攻略法でもなんでもないが。
安慈の習得の時期について
本編の半年前とされる『炎を統べる』の段階で既に習得しているが、厳密にはいつの時点で安慈が二重の極みを完成させていたのかは不明である。
京都編にて、安慈が志々雄と再会した際に「久しぶりだな」「修行は完成したか?」と質問されていた。
安慈が二重の極みを完成させるのにも十年かかったとしている。
廃仏毀釈事件があった時から換算して、安慈が二重の極みを会得したのは割と最近のことであると思われる。
余談
- 二重の極みの修行の最中に、左之助は相楽隊長の幽霊と思わしい存在を目撃している。これも「御仏の加護」なのだろうか・・・?
- 左之助が志々雄に対して二重の極みを放ったのに効果がなかった理由については明確にされていないが、左之助の拳がすでにイカれていたことは事実であり、物質の抵抗を凌駕するはずの二重の極みによって拳が破壊されたことからも、決して万全の状態ではなく、技が正しく機能しなかったことがうかがえる。
- アニメ海外版でも英訳はされず、そのままの呼称(FUTAE NO KIWAMI)で使用された。だが、掛け声も合わさった結果とんでもないことになった···。
- スペイン語では「¡Doble Impacto!」(ダブルインパクト)、フランス語では"Coup double"(クードゥーブル)と意訳されており、後に北海道編では"Double Extreme"(ダブル・エクストリーム)と表記されている。
- 「陸震」「空雷」「海鳴」という技名は『宇宙大帝ゴッドシグマ』の登場キャラクターに由来する。
- ジャンプ系列のキャラクターでは、振動系の能力を持つ大柄の味方系キャラクターにエドワード・ニューゲートとぷりぷりプリズナーがいる。
最後に
よい子のみんな、説得力あっていかにも現実的な武術っぽいけど実際は全くのウソなので、やったところで通常のパンチより威力も落ちるし拳に変な負担をかけ怪我の元になるので絶対にマネしちゃだめだぞ♪
あの頃の少年たちは、多分みんな1度はやってるから。
だが……
沖縄在住の柔術家の建心氏が創立した〈建心流柔術〉の技術にて『透徹力(=複数の人間を片手→肩に触れさせた状態で数珠繋ぎにした後、所定の位置に就く人間だけを倒れさせる)』と呼ばれる技術がある。
開祖である建心氏自身がこの技術の概要をこう答えた。
「最初の人間に衝撃を与えた瞬間に、所定の対象を倒すだけの衝撃を再び与えるんです(要約)」
これにより二重の極みの理論自体は、全くの出鱈目ではなくなったのである。
外部リンク
関連タグ
釘パンチ:ジャンプ作品の主人公であるトリコが使用する必殺技で
『一秒にも満たない一瞬の間に一ヶ所に複数の打撃を叩き込む』と技の原理が似ており、ある意味で二重の極みの後輩とも言える。
庄田二連撃:原理的には近からずとも遠からずの個性「ツインインパクト」を使う。
アバンストラッシュ:当時の小学生たちが傘や木の棒で真似をした奥義。