概要
アバン流刀殺法最終奥義。無刀陣とは対を成すことから『動』の究極奥義とも。
勇者アバンが魔王ハドラー討伐時代に我流の刀殺法を基に編み出した必殺技が基になっている。
武器を逆手に構え、腰を低く捻る姿勢が最大の特徴である。
アバン流殺法3つの基本形大地を斬り、海を斬り、空を斬る事を身に付けた者が、その全てを用いて切り裂く奥義。
武芸百般を掲げるアバンは剣以外にも槍、弓、鞭、斧、拳(牙)の各殺法を開発していて、それぞれの奥義を修めれば対応する武器でアバンストラッシュを撃てる。闘気の発射が重要な技なので、威力はともかくそのへんの棒切れのようなものでも撃てる、形にとらわれない技とも言える。
遠距離まで闘気の衝撃波が届き発動も早い「アバンストラッシュA(アロー)」と、敵に突進するリスクと引き換えに闘気を込めた高威力の斬撃を直接叩きつける「アバンストラッシュB(ブレイク)」の2パターンを使い分けられる技でもある。
物語の冒頭、「勇者の家庭教師」を名乗って現れたアバンが駆け出し勇者ダイに課したスペシャルハードコースは、このストラッシュ会得に至る過程を凝縮させたもの。
基本フォームの改善と身体の鍛練から始まり、日を追うごとに力の大地斬、技の海波斬を経て、闘気のコントロールや見えない気配を探る心眼が必要な空裂斬を習得。最後に三つの技をひとつに束ねた奥義を習得する。
その最中、復活して現れた魔王ハドラーとの闘いでアバン本人も使用しているが、パワーアップしていたかつての宿敵を倒すには至らず、すぐに回復されてしまった。これによりアバンは今の自分のレベルで勝ち目はないと判断し、ダイ達にアストロンをかけ、ハドラーを道連れに自己犠牲呪文を放つことになる。
地の技と海の技だけの状態でもそれなりの威力を持ったストラッシュを撃つことはできるが、逆に言えば、三つの基本形を完全にマスターするまで、真の力を発揮することは叶わない。
ハドラーの乱入でアバンから空裂斬を教わる前に別れることとなったダイも、当初は不完全なものしか使えなかった。
空の技を会得する前のダイは危機に陥ると無意識に竜の騎士のパワーを上乗せする形で撃っていたためか、不完全版ながらハドラーやクロコダインに大きな傷を負わせている。その状態でもマトリフから必殺技というにふさわしいと評されていた。
ダイは魔王軍との戦いの中で幾つかの応用技を編み出しているが、三つの技による完全版となったのはフレイザードとの決戦の中、手探りでコツをつかむと共にヒュンケルの荒っぽい手助けを受けて空裂斬をモノにしてからである。
序盤最大の強敵とも言えるバランは、完成したダイの一撃を受けて『力、速度、闘気をコントロールし三位一体となることで完成する強力な剣技』と瞬時に分析していた。
ヒュンケルとの戦いの中では魔法剣ライデインストラッシュを咄嗟に発動。父竜騎将バランの技ギガブレイクからアバンストラッシュのフォームに変更して放つ最強剣、ギガストラッシュも存在する。ギガブレイクはギガデインの魔法剣であるため、ライデインまでしか習得していないダイはダイの剣の魔法の鞘で魔力を増幅する必要があるものの、剣と魔法を同時に使える竜の騎士であるダイにしか使うことの出来ない技であり、師アバンでも真似の出来ない芸当である。
ダイの編み出した派生型の中でも、アローを撃ってから突進し、着弾と同時にブレイクも叩きこむアバンストラッシュX(クロス)は、単純な二連撃を超える威力を生み出す超必殺技として重要な局面で活躍した。
理屈は単純明快だが、動く相手に対し射撃を当て、さらにその射撃に追いつく速度で突進するなどという動きを実現できるのは竜の騎士の力を持つダイのみであり、剣技でならダイを上回る兄弟子のヒュンケルですら『俺にも出来ん』と断言するほど。
敵からしてみれば、アローを避けるなり防ぐなり撃ち落とすなりしても次のブレイクが同時に飛んで来ているため、体勢を崩した状態への追い打ちとなるブレイク一発でも確実に通常時より危険性が高いという隙を生じぬ二段構えの厄介な技となる。
単発のストラッシュなら十分に弾いたり防いだりできるハドラーや大魔王バーンでも、不意打ち気味とはいえ真っ向から迎撃してなお防ぎきれずに大ダメージを負った。
2020年版アニメでは、アローを追って飛び出す瞬間にダイの姿が消えるほどのスピードで突進するという映像表現になっている。ここまでの速度であれば、もう突進というより衝撃波と自分の身体を二連続で撃ち出すようなもの。
もともとストラッシュXは一呼吸で大呪文を二連射してくる大魔王バーンへの対策として生み出されたもので、この「1ターン2回行動」に対して、勇者ダイもまた一呼吸で奥義を二発当てる技を用意していたのである。
「速いアローと、強力なブレイク」の利点をどうにか組み合わせようと編み出された必殺技でもあり、修行シーンではX型の斬撃なのをぼかして描きつつ、薙ぎ倒された木々の切り口から少なくとも二つの剣閃が飛んでいることも描写されていたりする。
その試し撃ち相手として選ばれたノヴァはダイが手加減していた事もあって手傷こそ負わなかったが、「危うく死にかけた」「闘気剣の使える自分じゃなきゃ首が飛んでる」と驚愕しながら抗議している。
ヒュンケルも少年時代にアバン流刀殺法を習っていたが、心にわだかまりを抱えていた彼は「空」の技を習得できていなかった。敵として現れた時には、自分と同じく不完全にしか習得していなかったダイに対するあてつけとして『そんな紛い物なら、俺にも撃てるぞ!』と不完全なストラッシュを撃って見せている。
槍殺法の虚空閃習得後は完全に使えるようになった筈だが、かつて大魔王の手先としてアバンやダイたちの命を狙ったことへの悔いと戒めの念もあり、自ら使用を封じている。
この【悔いと戒めの念で封印している】という設定は単行本で判明したのだが、発刊以前に公開されたTBSアニメの劇場版では、敵幹部のブレーガンを倒すためにヒュンケルもストラッシュを撃っているため、ファンの間では「戒めを破らざるを得ないほどの強敵だったから」など、前後の整合性をつけようという解釈も唱えられている。
開祖であるアバン自身は、これを一年以上の歳月をかけて育てていったという。
切っ掛けはカール騎士団時代に国を強襲したハドラーに向けて「光る剣」を放ち撃退したことであり、これに経験と研鑽を積み重ね、研究を続け生み出されたのが現在の「アバンストラッシュ」となっている。
15年前
アバンは魔王討伐の冒険に出発した頃、「同じ技を再現しようとするだけでは、絶対に習得できない」と分析。相棒のロカには「剣術だけではなく、武術、体術、魔術、呪法などの要素を【個々で磨き直して 一つに集約する】必要があります」と説明している。
更に「世界を旅して人々を救いながら、過去の達人たちが残した奥義・呪文などに触れて学ぶ。それを鍵に【自分流の刀殺法】を作る・・・遠回りのようだが、それこそが技の完成への最短の道」であり、魔王討伐の鍵となる技を完成させるためには、冒険に出ることが必要なのだと考えていた。
海底宮殿で遭遇したオトギリ姫との戦闘で海波斬をものにしたアバンは「強烈なる閃光の一撃」という意味合いでストラッシュという言葉を思い浮かべたが、そこにロカが「お前が求め続けるお前の最強剣だから」とアバンの名を付けるように提案して奥義の名前も定まった。アバン本人は少々恥ずかしがっていたのだが、オトギリ姫から送られた「希望と共に語られる名となる」という言葉を思い出したことで、正式に命名することとなった。この時点でもマトリフは「強力な必殺技」と高く評価しているが心の力が足りなかった為、土壇場で最強の必殺剣としてのアバンストラッシュを見たアバンとロカからは未完成と評している。
希望の一閃が、生まれる瞬間は何時か?
1年の時間凍結から目覚めたアバンは、マトリフと共に幽霊騎士団と交戦。一度は退けたが、騎士団の頭目ドルディウスが騎士団を率いて逆襲を挑んできた。
その時に放った第三の必殺剣は既に研ぎ澄まされており、これ以上練度を上げる必要がない事を知ると同時にアバンは【最強の必殺剣】の完成を悟る。
執念に燃えるドルディウスを停めるべく、アバンは剣を構えたのであった。
時を超えて
アローフォームのみだが、ドラゴンクエストⅪのアバン流刀殺法でモーションが使用された。
その他
星のドラゴンクエストではコラボイベ実装と同時に実装されたBランクスキル『アバンストラッシュ』と、それから2年後の2回目の復刻にて実装されたアバン装備・アバンの聖剣のSランクメインスキルである『秘剣アバンストラッシュ』の2種類がある。
どちらも独自のカットインが入るが、後者の方はギガストラッシュ同様全体攻撃であり、一定の確率で敵一体に強力な追撃が発生する。ギガストの方はデイン属性で秘剣は無属性と差別化がされているので属性耐性が多いボスに有効である。
アバンストラッシュの人気順位
オフィシャルファンブックより抜粋。巻数は新装彩録版より。投票数が同じものがあるため27位が2つ、29位が3つとなる。
一部ネタバレを含むため閲覧注意。
順位 | シチェーション | 巻数 | 投票数 |
---|---|---|---|
1位 | 超魔生物ハドラーを倒したギガストラッシュ | 18巻 | 161 |
2位 | 鎧武装フレイザードを倒した完成版アバンストラッシュ | 5巻 | 155 |
3位 | 超魔生物ハドラーにアバンストラッシュX | 18巻 | 137 |
4位 | 真・大魔王バーンの左腕を斬り落としたアバンストラッシュX | 24巻 | 130 |
5位 | 竜魔人バランを撃退した先生&ヒュンケル&ポップの力でアバンストラッシュ | 8巻 | 92 |
6位 | 鬼眼王バーンを倒したアバンストラッシュ | 25巻 | 84 |
7位 | キルバーンのバーニングクリメイションを突破して本家アバンストラッシュ | 22巻 | 75 |
8位 | 魔宮の門を砕いたアバンストラッシュ | 13巻 | 73 |
9位 | 当時の魔王ハドラーを倒したアバンの無刀陣アバンストラッシュ | 13巻 | 61 |
10位 | アバンがダイに初めて見せたアバンストラッシュ | 1巻 | 55 |
11位 | クロコダインを倒したアバンストラッシュ | 2巻 | 41 |
12位 | バランに負傷させた獣王会心撃とのアバンストラッシュ | 6巻 | 39 |
13位 | ハドラーを撃退したダイのアバンストラッシュ | 1巻 | 27 |
14位 | ヒュンケルが使ったまがいものアバンストラッシュ | 3巻 | 27 |
15位 | ヒュンケルを倒したライデインストラッシュ | 3巻 | 23 |
16位 | ノヴァの首を吹っ飛ばしかけたアバンストラッシュX | 16巻 | 20 |
17位 | ハドラーの極大爆烈呪文と激突した本家アバンストラッシュ | 17巻 | 16 |
18位 | 超魔生物ザムザを倒したアバンストラッシュ | 9巻 | 14 |
19位 | フェンブレンを倒したアバンストラッシュ | 13巻 | 12 |
20位 | 超魔生物ハドラーの極大爆烈呪文と激突したアバンストラッシュ | 14巻 | 11 |
21位 | 真・大魔王バーンに防がれたギガストラッシュ | 23巻 | 10 |
22位 | 竜魔人バランに不発したパプニカのナイフ版アバンストラッシュ | 8巻 | 9 |
23位 | 真・大魔王バーンに破られた本家アバンストラッシュ | 23巻 | 7 |
24位 | バランに通用しなかったライデインストラッシュ | 6巻 | 6 |
25位 | バランへのアバンストラッシュ | 6巻 | 5 |
26位 | キルバーンへの本家アバンストラッシュ | 20巻 | 4 |
27位 | 超魔生物ハドラーの腕に防がれたアバンストラッシュ | 11巻 | 3 |
27位 | ヒュンケルにきかないアバンストラッシュ | 3巻 | 3 |
29位 | バーンへ最初のアバンストラッシュ | 15巻 | 1 |
29位 | バーンを黒焦げにしたアバンストラッシュ | 15巻 | 1 |
29位 | ノヴァとの修行でのアバンストラッシュ | 16巻 | 1 |
連載当時にも「技の人気ベスト10」として投票が行われていたが、アバンストラッシュは2位となっている。
総得票数ではアバンストラッシュが堂々の1位だったのだが、使い手別の集計だったため「アバンのストラッシュ」が5位、「ダイのストラッシュ」が2位になり、「ポップのメドローア」に1位を譲る結果に。
ポップはポップで「もともとコイツは俺の技じゃねえか!」ともう一人の使い手からツッこまれていたのはご愛敬。
作中での使用者
技の開祖であり、作中で最初にアバンストラッシュを披露した。本編開始の15年前、勇者として冒険する中で生み出し、ここ一番の場面で使い続けている。その点では最も熟練した使い手で、修行のお手本として適当に拾った木の枝で撃つ、キルバーンの鎌を拾って作ったばかりの初めて手にした即席の槍で撃つなど、あらゆる条件で使いこなせる。
デルムリン島でハドラーに食らわせたのを皮切りに、強敵との戦いでのトドメの一撃として用いるようになる。
『空の技を未収得という不完全版』ではあるが、作中では魔王軍に与していた頃の魔剣戦士時代にダイとの初戦で二度使用。劇場版「ぶちやぶれ!!新生6大将軍」では氷炎将軍ブレーガンに対して使用している。
ダイとの特訓の際、アバンストラッシュと同じ構えで闘気弾を放っている。しかし闘気を狙った位置に飛ばすのも、激突の瞬間に爆発させるのも上手く出来なかった。アニメ版では「アバンストラッシュとは違う闘気弾」と語っており、モーションは同じでも別物と明確にされた。
漫画版クロスブレイドの主人公。覇者の剣を用いたアバンストラッシュを使ったことがあり、以後もユウキの必殺技としてたびたび使われた。ただしアバン流刀殺法は会得しておらず、武器の強さや自身のレベルで威力を引き上げているきらいがある。
余談
「ストラッシュ」の命名は原作者の三条陸氏によるもので、「ストライク」と「フラッシュ」を合わせた「閃光の一撃」という意味合いの造語。
これは2020年版のファンブックで明らかになったもので、連載当時はストライクと「スラッシュ」「クラッシュ」「スマッシュ」など、ファンの間でもいろいろな推測があった。
ジャンプ系バトル漫画必殺技の雄かめはめ波同様、いかにも力を溜めている形の構えはカッコ良く、大きく剣を振る動きの見栄えが良く、特徴もわかりやすいので子供でも簡単に真似できる。
連載時やアニメ放映時に子供時代を過ごした男性諸氏には、傘や箒等で真似をした人も多いのではないだろうか?
これを意識してか、2021年にはアバンの剣をイメージした傘が東映アニメーションから発売されている。
ゼルダの伝説のゲームブック「新・ゼルダの伝説」ではリンクが剣を逆手に持ち、「秘技・岩石割り」というアバンスラッシュBのような技を披露している。名前の通り岩石を容易く斬り裂くので、性質的には大地斬が近い。