「あなたは……誰………?」
概要
チュンソフトとセガの合同「セガ×チュンソフトプロジェクト」から発売されたゲームであり2007年にPS3で発売されたが新シナリオを追加して「忌火起草 解明編」が2008年にWii、2012年にiOSで発売された。
チュンソフトのサウンドノベルシリーズの一つで第一作「弟切草」と名前が似ているが直接の接点はなく関連はない独立した作品で名前が似たのは偶然とのこと。
忌火起草のモデルはヘンルーダという植物。花言葉は「悔恨」。
システムは従来のサウンドノベル同様に選択肢を選びつつテキストを読み進めていくオーソドックスな仕様でストーリーの分岐やそれまでに選んだ選択肢へ行けるフローチャートもある。
本作の特徴として主人公含む登場人物の台詞がフルボイスでしかも字幕もない、文章は主人公のモノローグのみ、(スピーカーを適切に配置すれば)背後から声が聞こえる演出、また登場人物は影絵ではなく実写になっていたり(但し全体的に暗く影とかで隠れており顔ははっきりとしない)と臨場感が強く没入感が高い。
お約束ともいえる「ピンクのシナリオ」や「金のしおり」も存在する。
ストーリー
「ビジョンって薬知ってる? すげー盛り上がるぜ」
若者の間で流行する危険ドラッグ―――「ビジョン」。
それを服用した者は爪が黒く染まっていき、黒い女が現れ、そして謎の焼死を遂げているという。
その禍に巻き込まれてしまった主人公:弘樹とヒロイン:愛美は呪いから逃れるために、全ての根源だとされているある朽ち果てた屋敷へと向かうがそこにあったのは、謎の花「忌火起草」に囲まれた、幾世代にも渡り祟りの因果が渦巻く禍禍しい場所だった。
(公式サイトより引用、一部編集)
登場人物
牧村弘樹 演:神楽清仁 CV:林勇
本作の主人公。大学3年生で野草研究サークルに所属。愛美が好きなのだがその想いは胸にしまいこんだままで中々口に出せないでいる。野草研究サークルに入った理由も愛美がいたから。
早瀬愛美 演:小松愛 CV:本名陽子
本作のヒロイン。サークルのメンバーでスレンダーな体型で肩まである髪が特徴の可憐で成績は優秀で優しく非の打ち所がないが1年前に恋人と死別しており、そのためかどことなく陰がある。
皆川香織 演:山田悠香 CV:大前茜
サークルのメンバー。ぽっちゃりとした体型をしており普段からゴスロリファッションをしている。マイペースな性格なのだが弘樹に対しては積極的で執拗にアタックし好意を隠さないが、弘樹からは少々迷惑している。
渡辺正人 演:山崎武史 CV:櫛田泰道
サークルのメンバー。貧乏学生だが弘樹とは最も親しい友人。大柄な肥満体型でやや気が弱く神経質な面がある。作中では初めての死亡者となる。
中森健吾 演:佐々木優一郎 CV:杉山大
サークルのトラブルメーカー。二年浪人しており大のオカルトマニアでもある。
和泉飛鳥 演:藤堂瞬 CV:四宮豪
サークルのメンバー。冷静で理知的な性格から皆のリーダー的存在で容姿端麗で成績も優秀な完璧なイケメン。和子とは高校時代からの付き合い。
松下和子 演:茂呂真紀子 CV:佐藤あかり
サークルのメンバー。美人でスタイルが良く気が強い性格だが飛鳥に対しては一途。
間宮京介 演:安田龍二
1年前に交通事故で亡くなった愛美の恋人。大手製薬会社に勤めておりサークルのOBでもある。
関連タグ
風来のシレン:忌火起草がアイテムとして登場。飲むとアイテムが呪われたり、封印されたりするがノロージョ種やワラドール種に投げるとレベルアップする。
外部リンク
これから先は解明編によるネタバレがあります。 |
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物語の真相
通称:「車内編」
本編では「弘樹は2年前の大学1年生の時に行われたサークルの合宿を欠席した」と語られるのだが実は弘樹も合宿に参加していた。その事を思い出したのがきっかけとなって回想が始まる。
合宿から帰路の途中で運転中だった弘樹が愛美と京介のデート現場を目撃。
そのショックから目を逸らしてしまうがその時、信号は赤だった。友人の声で我に返ると信号無視で交差点に突入してしまい車はガソリンを積んだトラックと衝突、そして愛美と京介を牽いてしまう。気が付くとフロントガラスの前には愛美の姿があり、車と壁に挟まれている愛美を急いで助けようとする弘樹に対し彼女は呟くように
「あなたは……誰………?」
次の瞬間に車は爆発炎上。弘樹はそのまま吹き飛ばされるが愛美の身体は燃えて消し飛び、車内では友人たちが生きたまま焼かれていく。その後、弘樹が見た事故現場では友人たちは「焼死」し、愛美がいた所には「人型の黒い焦げ跡」が残り、焦げ跡を指先で引っ掻くと「爪の色は真っ黒」になる。
エピローグにて病院に収監された弘樹がいた。
彼は1人だけ生き残った罪の意識、罪悪感により「忌火起草」にまつわる物語を頭の中で作り出し、存在しない薬「ビジョン」の呪いで友人たちが死んでいく中、愛美を守ろうと奮闘する。という妄想に逃避する事で精神を保とうとしている……と精神病院の医者によって語れる。
現実と妄想が曖昧になった状態で「愛美を助けなければならない、退院させて欲しい」と訴えるが医者は立ち去ってしまう。残された弘樹は黒い女の呪いから愛美を助けようとし、再び本編の冒頭……妄想の中………醒めない夢の世界へ……………。
シナリオを読むと作中ではホラー要素だった「焼死」、「黒い爪」、「黒い女」全ての要素に合理的な説明がつき、「大学3年生にもかかわらずのんびりしている」や「時系列が確定した情報は弘樹が大学1年生の時が最新で大学2年生以降のはない」等、1つ1つに伏線も貼られている。
また「シナリオが全体的に暗い」、「主人公なのに幸せなルートが無い(しかし見方によっては幸せなルートもある)」、「明るく前向きな形で終わらない」という欠点も弘樹自身が「妄想の中でさえ幸せになる事は許されない」という自責の念や「妄想の中に完全に逃げ込んでしまう事を無意識に拒絶している」等が窺える。そして唯一ハッピーエンドと言える物語も他人…しかも死者の力を借りてたどり着いた結末なのでハッピーエンドとは言い難い。
これらを見て「実は全て弘樹の妄想だった」と言うことに説得力がある形になっている。
妄想の中で「自分の不注意で死んでいった友人達は薬や呪いで死んでいき、逆に自分や愛美は薬を盛られた被害者として物語が進行しそして2人だけは都合よく生き残る。」まさに事故の責任から逃れたい人間の思い描く展望だが、それでも不条理な形で物語が進み弘樹が心安らげる終わり方が皆無に等しい事から現実で起こしてしまった事故の悔恨がいかに大きな傷になっているかが分かる。
またこの妄想は「逃避」だけでなく「心の整理」という解釈もある。
これが物語の真相なのだがPS3版の『忌火起草』は「車内編」が含まれておらずWii版、ios版でしか真相が分からない。という事は『忌火起草』は完全版商法だったという事になる…のかも知れない。
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