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概要編集

北宋の詩人蘇軾が考案したとされ、料理の名前は彼の号である「蘇東坡」に由来する。

一般的には浙江料理の一つで杭州の名物とされ、煮込み料理である焼菜に分類する。


皮付きの豚のばら肉を一度揚げるか茹でるかして余分な油を取り、醤油と酒と砂糖で煮含めた料理で、人数の分だけ用意した壺の中に肉を入れて密閉し、蒸して供する場合もある。

なお、考案者とされる蘇軾は、役人として様々な地方に赴任し、また、時の皇帝の機嫌を損ね、また中央での政治闘争が激しい時代だった事も有り、度々、左遷・流刑された為、中国各地に「蘇軾が考案した豚肉料理」とされるものが伝わっている。


その為、一般的な「東坡肉」以外にも

  • 筍と豚肉の煮込みやスープ(蘇軾の詩に筍と豚肉を一緒に食べる描写が有った為)。
  • 藁に包んだ豚肉の煮込み(蘇軾が詩の添削をしていたのを料理法と聞き間違えた結果生まれた、という伝説が有る)。

など、中国およびその周辺地域の各地に様々な「東坡肉」が有る。


なお、一般的な東坡肉に関しては、


蘇軾が杭州に赴任した際に、治水工事を行ない、現地の人々から礼として豚と紹興酒を献上された。

蘇軾は豚肉を紹興酒で煮た料理を作って工事費用を寄付した人達に返礼として配るように命じ(一説には、豚と紹興酒を配るように命じたが、聞き間違えた部下が、豚肉を紹興酒で煮た料理を作ってしまった)、以後、この料理は杭州の名物料理となった。


という伝説が有る。

※杭州は紹興酒の産地でもある。


日本において、長崎県では卓袱料理の一つである東坡煮、琉球においては泡盛を使うラフテーとしてアレンジされたり、豚の角煮の原点ともいわれている。


余談編集

考案者とされる蘇軾には黄州と云う地域の豚肉を讃える詩が有る。(ちなみに、この詩に書かれている調理法は「少なめの煮汁で、弱火で時間をかけて火を通す」という現代の東坡肉や豚の角煮の調理法を連想させるもの)

なお、蘇軾の時代である北宋の時代には羊肉が高級な肉とされており、豚肉は相対的に下等な肉とされていた。

その詩の中でも肝心の「黄州の好い豚肉」について「金持ちは見向きもせず、貧乏人は料理法を知らない」という記述がある。


また、「東坡肉」と云う名前は「蘇東坡の肉」と云う解釈も可能な為、中国には以下のような笑い話が有る。


ある時、蘇軾の政敵が身分を隠して御史(監察官)として、蘇軾の赴任地を訪れた際、飯屋の菜単(メニュー)にある料理の名前を見付けた。

それを見た蘇軾の政敵は、近隣の飲食店の菜単を集め、都に帰ると、皇帝にこう上奏した。

「蘇軾は任地で悪政を行ない、かの地の民は蘇軾を憎むあまり、奴めを殺してその肉を食わずにはおかぬ、と思っております」

皇帝は「証拠は有るのか?」と聞いたが……証拠として差し出された菜単には、1つ残らず、ある単語が有った。

「(蘇)東坡の肉」と。

時の皇帝は暗君だった為、蘇軾の政敵の讒言を信じて、蘇軾を辺境の地である海南島に追放した。

※ちなみに海南島でも東坡肉は名物料理。


同じく蘇東坡の名を冠した料理としては「衣にを入れた揚げ出し豆腐」の事を「東坡豆腐」と呼ぶ場合も有る。

なお、東坡肉の考案者とされる蘇軾は四川省の出身だが、近代以前の中国では、官僚の汚職を防ぐ為に中央の官僚が地方に赴任する場合、その官僚の出身地は赴任先から外される慣習が有った。

この為、蘇軾は官僚となって以降は、ほぼ故郷である四川に帰らず(僻地に左遷された後、中央に呼び戻されたが、その旅の途中で死亡)、この為、四川料理には、蘇軾にちなんだものは、ほとんど無い。


また、この料理の考案者とされる蘇軾の自称の1つは「天下第一老饕」(天下一の食いしん坊)である。


似た料理編集

紅焼肉編集

東坡肉を含む「豚の角煮」の中国での呼び方の1つ。

(紅焼は中国では「醤油煮込み」の意味)


扣肉編集

同じく東坡肉を含む「豚の角煮」の中国での呼び方の1つ。


毛沢東紅焼肉/毛氏紅焼肉編集

湖南省式の紅焼肉で、毛沢東が好んだとされている。中国の他の地方の紅焼肉とは違い味付けに唐辛子を使う。

ちなみに、湖南省は中国では四川・貴州と並んで俗に「四川人不怕辣、湖南人辣不怕、貴州人怕不辣(四川人と湖南人は辛さを恐れず、貴州人は辛くない事を恐れる)」と言われるほど「辣味(唐辛子の辛さ)」が好まれる地域とされ、毛沢東も大の辛いもの好きだった。

また、実は毛沢東の生家の近辺では、東坡肉などの豚の角煮はあまりポピュラーな料理ではなく、この料理は湖南省立師範学校の学生だった頃に覚えたものと言われる。

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