概要
中国の、主に漢民族(回族などの少数民族料理を含むことがある)の伝統的な料理が描かれている絵に付くタグ。
中国由来の日本化した料理については、【中華料理】へ。
中国で育った中国人にとって、日本の中華料理店の料理は、見た目が似ていても香りや味がまるで異なり、「同じ名前の料理でも中国とは別物」と感じられてしまうことが多いようだが、在日中国人の増加に伴い、東京などの大都市圏を中心に本場そのものの味を出す店が現れてきた(ガチ中華)。
全体的な特徴
中国は広大な土地を持つことから地域差が大きく、また長い歴史の間に色々な要素が流入し、時代を追うごとに変化し食文化も多い。
ある意味で、「中国料理」という呼び方はフランス料理,イタリア料理,スペイン料理,北欧料理などを一纏めにして「ヨーロッパ料理」と呼ぶのに近いとも言える。
たとえば、中国では食器として箸を基本に補助的に散蓮華(匙)を用いるが、現代では食べる人に対して縦に置くのに対し、かつては日本同様に横に置くものであったという。
味付けも、油脂を多用するのは比較的新しい時代で、宋の頃は味付けも淡白で、むしろ日本料理に近かったらしい。またその頃までは肉や魚の生食の習慣もあった。
かつては中国全土で見られた犬を食べる習慣など、多くの地域では廃れたが一部では長く続いているものもある(ただし、動物愛護の観点や衛生管理、不法な屠殺などを理由に国内でも批判が強まっており、近年は数が減っているとされる)。
日本料理との違い
- 油脂の使用が多い。
豚食が盛んなことから特にラードを多用し、月餅など甘いお菓子にまで使用している。炒め物も日本の感覚からするとたっぷり油を使う。
- 炒め物、揚げ物が多い
後述のように生食や冷たいものを避ける文化もあって、強火で調理したものが好まれる。また石炭と鉄の生産(特に鋳鉄)において先進国だったため、コークスを使った強火と厚手の鉄鍋が早くから普及した。
- 生食はしない。冷たい料理が少ない
「冷たいものは身体に悪い」と考える思想から。日本でよく食べる生卵や刺身は避けられる傾向にある。
中国は日本に比べ衛生状態や流通が悪かったこともあり、衛生的な観点から熱々の食事をとることが重視された。
上述の犬食についても、中国医学では犬の肉(狗肉)は体を温めるとされることから重用されてきたという歴史がある。(ただし、韓国の犬肉食が「夏などに食べるスタミナ料理」の一面が有るのに対して、中国では「体を温める効果が有るので、冬の食物」「体を温める食物である犬肉を夏に食べると健康に悪い」と見做されている)
飲み水も、基本的には水道水であろうと一度沸騰させるのが普通であり、現代でも年配の人だと茶(中国茶)以外で色の付いた飲み物は「体に悪い」と飲まない人も多い。飲むときも熱いまま、もしくは常温が基本である。
- 保存食品を使った料理が多い。
乾燥させたシイタケ、昆布、アワビ、フカヒレなど。中国は豚や羊、鶏などの肉、乳製品など動物性食品も多く、また具材として用いることが多いのが特徴である。ラード、鶏油も保存食の一種と言える。
古くから北海道産の海産物が中国に盛んに輸出されてきたため、日本の産物とも縁が深い。(ただし、江戸時代には昆布の中国への輸出は、北海道→北前船→薩摩藩→琉球というルートで行なわれていた為、清の時代の記録には「昆布は琉球の名産品である」と記述されているものも有る)
- 魚料理は川魚(淡水魚)が多い
海から遠い地方が多いため。鯉やソウギョなどが人気があり、海の魚も白身魚の方が馴染みがある。ただし、広東料理など、海鮮で知られる地方料理もある。南方では野生動物を食べる機会も少なからずあるが、いわゆる錦鯉のような観賞魚は食べないのが当たり前である。
- 直火調理は原則的にやらない
正確には、炭火焼きや炙り焼きなど「焼いて食べる」事自体は普通に行われているが、家庭料理としてはそれほど浸透しておらず、基本的には鉄板焼き、鍋やフライパンでの調理が主流である。網焼きなども一般的ではない。このため、焼き魚や焼き肉も家庭ではされず、大抵は屋台料理である(串焼きのことも多い)。
- 米飯が主食とは限らない
大きく分けて北方は小麦食、南方は米食であるが、南方であっても日本ほど米飯が重要視されない。
米は日本・韓国のように炊いて食べることもあるが、炒めたり麺にすることも多い。日本では茶粥を常食する一部地方を除いてお粥は病人食のイメージがあるが、華南では米飯の粥または豆浆(豆乳)と油条(中国式揚げパン)は朝食の定番である。
北方では小麦粉から作った麺や「馒头」と呼ばれる蒸しパン、具のないピザのようなパン「餅」、餃子(水餃子)などが主食であり、日本人がラーメンや餃子をおかずに米飯を食べるのは奇異に見えるようだ、
南北を問わず米飯は散蓮華で食べるのが基本だが、箸で食べてもマナー違反とはされない。
もちろん、上記の特徴は現在はその限りではなく、海外からの文化の流入や物流の発達などによって大きく変化している。かつては朝食に米飯の粥や豆乳と油条を食べる風習は南方のものだったが、現在では華北でも一般的となった。
実は一つじゃない中国料理
中国料理と一言に言っても、唐辛子や花椒をたっぷり使った辛い物や、塩味で出汁を利かせたのがメインの物まで、その味付けや調理方法には非常に幅がある。
これは漢民族自体が多様な民族文化を基盤とした混成民族だからであり、地方の気候等によって、好まれる味付けや特産品が変わってくるためである。
ここでは、日本で代表的な4つの分類を紹介する。
北方系代表「北京料理」
主に「北京料理」と呼ばれるタイプ。
小麦粉を用いたパオ(包)系の料理が多く、餃子や肉まん(饅頭:マントウ)はこの地方発祥。
宮廷料理も大部分がこの北方系に含まれる。味付けの特徴としては寒冷な気候を反映し、塩辛く、脂っこい。
西方系代表「四川料理」
麻婆豆腐やエビチリを始めとした、唐辛子、花椒など香辛料をふんだんに使った「麻辣味」が特徴。日本では陳建民のアレンジにより知られるようになり、激辛ブームに伴い人気が高まった。冬は非常に寒く、夏は非常に暑いと両極端な気候のため、その気候に負けない味付けとして唐辛子や山椒(花椒)を多く使うようになった。麻婆豆腐のほか、担々麺もこの地方発祥。ちなみに日本でメジャーな汁あり坦々麺は、陳建民が日本向けにアレンジした物なので、「汁なし担々麺」と言う呼び方は実はあまり正しくない。
南方系代表「広東料理」
高級食材の一つフカヒレや海老餃子はこの南方系に属し、主に「広東料理」と呼ばれる。海鮮が非常に豊かかつ新鮮なため、食材その物の味を活かすための薄めの味付けが特徴。この地域は早くから外国との交流が多く、西洋の料理法が取り入れられ、広東料理は海外でもよく食べられる中華料理である。その一方、ゲテモノ料理の本場でもある。米を使った料理も得意とする地域。そして、中華料理屋では外せない叉焼(焼豚)はこの地方発祥。
東方系代表「上海料理」
「上海料理」が東方系に属する。
江蘇省の「江蘇料理」と浙江省の「浙江料理」が源流。
実は最も日本人的にポピュラーな料理が多く、代表的な物だけでも、八宝菜に小龍包にワンタンと定番とも言えるメニューを数多くそろえている。また江蘇省の揚州炒飯・浙江省の東坡肉など、日本で一般的な料理の原型になっているものもある。
味付けの特徴としては、豚や魚介を甘めの味付けで仕上げる事にある。
なお、上海は江蘇省・浙江省の境に有るが、本場の上海料理は江蘇料理の影響が強いのに対して、日本で「上海料理」を名乗っている飲食店では浙江料理の流れを汲む店が多い(特に戦前から続いている店や、その流れを汲む店などでは)。
それ以外の料理
中国本土では、地域に応じて山東料理(魯菜)、江蘇料理(蘇菜)、浙江料理、安徽料理、福建料理、広東料理(粤菜)、湖南料理、四川料理(川菜)の八つに分類するのがメジャーである。
先に上げた四つのうち、北京料理は山東料理、上海料理は江蘇料理の派生形となる。
日本で「中国料理」もしくは「中華料理」として比較的よく見るのは「台湾料理」と「東北料理」であろう。
台湾料理は福建料理や客家料理から枝分かれした料理だが、日本統治時代に日本特有の食材や調理法が導入され、中華民国政府が大陸から移ってからは大陸各地の料理から影響を受け、近頃では台湾原住民の料理も取り込んでいる。そのため、「台湾料理」を称する店でも、所によってその趣を異にしていることが多い。
東北料理は北京料理の系列に属する料理で、餃子、ジャージャー麺などが名物。中国東北地方(満州)は、日本が影響力を及ぼしていた時代が長い事から、日本における中華料理の成立に大きな影響を与えた。朝鮮半島に接する地域であるため韓国の中華料理はこの系統に属するものが主流。
他にも酸味と甘味が強い「山西料理」や、四川料理の流れと複数の少数民族の文化を汲む「雲南料理」、唐辛子の強烈な辛味と酸味をきかせた風味(酸辣)が特徴の「湖南料理」なども中国では比較的メジャーである。また、近年の中国では回族の料理を指す「清真料理」の人気が高い。清真料理は寧夏や甘粛など回族多数地区の料理が本場とされ、烤羊肉串(ケバブ)や手抓飯(炊き込みピラフ)などが有名であるが、北京や広東など漢民族多数地区に溶け込んでいる場合もある。これらの地域の清真料理は北京料理や広東料理に似ているが、ハラールに合致する食材を使い、豚肉由来食材や一部の魚介類由来食材を使わない、酒で味の下ごしらえをしない点に特色がある。これらは日本ではまだ一般的とは言えないが、本場の味を食べることができる店も増えている。
実は判りやすい中国料理
地名や人名や職業名などに由来する(日本語では「〜風」と訳される)傍目にはわけのわからない料理名が多いフランス料理やイタリア料理などに対し、中国料理のメニューはポイントさえ押さえておけば、たとえ中国語で書かれていても、どんな料理か一発で読み取れる。最も判りやすいものでは炒飯。これを読み解くと、「炒」とは文字通り炒めると言う意味で、「飯」とはご飯を指す物なので、炒めた米料理と言うことになる。
中国料理のメニュー名は、基本的に食材・切り方・調理方法をそれぞれ1文字ないし2文字で表しているので、「焼(煮る)」「湯(澄まし汁、スープ)」といった調理方法の意味さえ理解すれば、とんでもない料理にブチ当たる事は殆どない。
ただし、中国料理でも一部には麻婆豆腐や東坡肉など人名を付けている料理もある。また特に香港などで、縁起担ぎのために傍目には訳の分からない大袈裟な料理名を付けている事があるので、その時は要注意。
特に、中国の経済発展が著しかった20世紀末〜21世紀初めには「中国出身だが、年に1度ぐらいしか中国に帰らない外国在住者」にとっては意味不明な名前の料理が中国本土の飲食店で出されるケースも有った。(特に新しく流行り出した料理など)
素材に無節操な中国料理
中国では、漢民族に限っても、広い範囲に居住しているため、食材のバリエーションが多い、というより多過ぎる。
食の禁忌が社会的にほとんどないため、外国人どころか、別の地域の同国人からしても「ゲテモノ」扱いされる物も多い。
特に広東では「とりあえず生き物は何でも食べてみよう」というのか、先述した犬食のほか、カエル(主に腿肉)を鶏肉感覚で食べて(近隣の地域や東南アジアやフランスでも食べるが)、蛇、猫、コウモリ(果物を常食するオオコウモリ)、センザンコウ、その他諸々をおいしく頂いている。
「高級食材」、珍味も、「海中で岩に張り付く貝の干物」や「鮫のひれの中の軟骨」、「アマツバメの一種が巣を作るために出す分泌物」、「海中のぐにょぐにょした棘皮動物の干物」、「ラクダのこぶ」さらに「森の死亡フラグの掌」その他諸々と、珍品のオンパレードで冒険し過ぎ感が漂う。
しかし無節操さは完璧(?)ではなく、こんにゃくは中国ではごく一部の地域でしか食用にしない「変な食べ物」で、ゴボウは中国から日本へ移入されたはずなのに中国では食用にしなくなった。馬肉も、日本の一部の地域やフランスなどで食べられるが、中国では一部の民族を除いてゲテモノ扱いである。(古来より中国には馬肉、特に馬の肝臓には毒が有るという伝説が有ったのも一因と思われる。ただし馬の肝臓は「猛毒だがものすごい美味」という伝説も有った)
発酵食品もそれなりにあるが、日本の伝統食である梅干しや納豆などは苦手とする中国人が多い。
「広東人は机と椅子以外の四つ足のものは全部食べる。人間以外の歩くものは全部食べる。飛行機以外の飛ぶものは全部食べる」というギャグもあるが、人肉すら、古くは食用とする文化があった(飢饉や戦乱の際やむにやまれず人肉を食したという記録は世界中にあるが、中国は忠義の表現や恨みを晴らすため、ゲテモノ喰いのバリエーションなどとして平時でも人肉を喰っていた点が特異である)。無論、中国においても人肉が通常の食材であったというわけではないが、「水滸伝」など古代中国の文芸作品を読む際にはご用心。
なお、中国の古典文学では「激しい憎しみ」を意味する比喩表現として「あいつの肉を食ってやりたい」というものが有るが、悪名が高い歴史上の人物に見立てた料理も少なくない。
例えば、南宋の英雄だった岳飛の廟の近くでは、岳飛を讒言で失脚させた秦檜を模した油条(あげパン)が名物だったり、孔子廟の総本山が有る曲阜の名物料理にはチョウザメを使ったものが多いが、これは儒教を弾圧した秦の始皇帝を意味する「秦皇」とチョウザメを意味する「鱘鰉」の発音が似ているので、チョウザメを食べる事を「秦の始皇帝の肉を食らう」事に見立てたもの。
ちなみに、孔子の息子の1人の名前が「鯉」だったせいか、曲阜では鯉料理はタブーとなっている。
なお中国当局(中華人民共和国)は環境保護にも力を入れており「中国料理の高級食材」の中には、中国本土で流通させた場合は手が後ろに回るものも少なくない。2023年からは大量の食料廃棄(フードロス)を防ぐため無謀な大食いチャレンジを規制しており、罰則を受けた店も存在する。
また、「特に接待の場合などの場合は大量に注文して食べ残しが出る位が良いと見做される」という慣習も店や地域によってマチマチであり、都市部の高級店などでは中国の経済成長が始まった21世紀初頭の時点で「大量に注文しようとすると、やんわりと断わられる」「食べ切れなかった分は持ち帰るのがマナーとされる」ようなケースも有った。
中華料理に関するタグ
料理
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