概要
ただし、その「愛」や「保護」の指すところは非常に広く、さまざまな認識があるため、ここでは「動物を人間と同じく尊い命であると考え、対等に見ること」、「罪のない動物の命を守り、共存していくこと」とする。
近い考えとして「動物福祉」があるが、定義が異なるのでリンク先参照のこと。
現代では特に「アニマルライツ」(動物の権利)を強調・尊重し、「動物に苦痛を与えることや、命を奪うことをよしとしない」思想や、それに基づく活動を指すことが多い。
反捕鯨や毛皮使用反対などの活動、ベジタリアンやヴィーガンによる肉食否定の主張を見たことのある人は多いと思われる。
これらの活動は基本的に動物愛護、その中でもアニマルライツ尊重の思想に基づくものであり、人間の贅沢や嗜好で消費される動物の命を守ろうという考えで行動しているといえる。
一口に「動物愛護」といってもその範囲や度合いは様々であり、次のような立場がある。
- 人間の生活や健康に支障を来たさない範囲で動物を保護する(ペットや経済動物を虐待しない、殺処分を減らしゼロを目指す等)というもの
- 動物をペットとすること自体が搾取であるとする立場のもの(「ペット」では無く「コンパニオンアニマル(伴侶動物)」という言葉を好んで使い飼育を必ずしも否定しない立場もある)
- 医療用や化粧品試験の動物実験に反対する、または苦しみを与えないよう必要最小限にするよう求めるもの
「動物の権利は人間と同等である」とする立場の動物愛護論者の場合、ユダヤ教やイスラム教の食料規定にしたがった、頚動脈などを切ることで失血死させる屠畜法(一気に失血死させる方法は、古代においては動物に最も苦痛を与えない手段であり、ユダヤ教やイスラム教が動物に苦痛を与えることに積極的なわけではない)も動物虐待であるとして否定し、政治に働きかけることで一部の国では禁止させることに成功したケースもある。
日本における歴史
生きものにむごい扱いをしたり、むやみに殺したりするのは罪深いことという考えは仏教思想などの影響で古くから存在したが、昔の日本人は、動物虐待に当たる行為が不当なものという意識は非常に低かった(そもそも日本では生類憐れみの令以前は人命すら尊重されておらず、捨て子や子殺し、辻斬りなどの行為が横行していた有様だったので...)。
近代になっても、街角で子供たちが犬(野良犬飼い犬問わず。昔の日本では犬の放し飼いが許されていたため、飼い犬も普通に街中を歩いていた)をいじめたり、馬車や馬車鉄道を引く馬を酷く鞭打ったりする冷酷な振る舞いが戦前の日本を訪れた外国人に記録されている。忠犬ハチ公が有名になったきっかけも、子供にいたずらされたり通行人に殴られたりしていたありさまに心を痛めた日本犬保存会関係者による、新聞紙上のキャンペーンであった。
今日の日本では公道で動物をいじめるような振る舞いは見られなくなった(とはいえ猫虐待動画などが時折炎上する)が、不心得な飼い主による虐待をはじめ、悪徳ブリーダーによる残酷な繁殖、生産効率のみを重視した家畜の劣悪な飼育環境、無計画な飼育の結果過剰繁殖させる多頭飼育崩壊などがしばしば問題視される。
日本の動物愛護法は犬猫などの「愛玩動物」のみを対象とする傾向が強い。経済動物や実験動物に対しても「動物福祉」の理念が浸透していく事が求められる。
現代日本では医薬品開発や化粧品試験の動物実験にもガイドラインがあり、なるべく動物福祉に則った適正な実施が推奨されている。→一般社団法人日本生理学会の動物実験についての見解(2009年時点)はこちら
環境保護と動物愛護
どのような生物も増え過ぎれば生態系の破壊者となりかねないため、環境保護を目的とする団体や個人は環境を守るためには特定外来生物など生態系を破壊しかねない動物や植物は駆除するのもやむなしと考える。
一方、動物愛護団体は「外来種とはいえ、人間の都合で持ち込んだ生き物を人間の都合で殺すのは良くない」と考え、環境保護団体と対立する事もある。
経済動物と動物愛護
牛や豚、鶏や馬などの家畜、経済動物にも動物愛護(動物福祉)の視点から彼らを搾取しないよう働きかける動物愛護団体がある。ただ、注意しなくてはならないのは人間の都合で改良された経済動物から彼らの『仕事』を奪えば処分するしかないという点である。
「ばんえい競馬のような輓馬競技は虐待だからやめよう」などと主張する団体もいるが、ペルシュロンのような重種馬はもはや輓馬競技以外に活躍の場をなくしており(昔は軍馬や馬車用、農用などに使われた)、乗馬用としては体が大き過ぎて使いにくい。輓馬競技が廃止されれば絶滅するか、肉用種として細々と命脈をつなぐのがせいぜいであろう。
といっても、「競走馬のような経済動物は人間のために作られたのだから、人間の好きに扱っていいんだ」という訳ではない。皐月賞馬でありながら引退後過労死した(正確には過労の末日射病に倒れた)ハードバージ(1974年産)の悲惨な末路は新聞記事に取り上げられ、名馬の余世を考えるきっかけとなり、やがては競走馬の養老施設や助成制度(功労馬繋養展示事業)が作られる契機となった。人間の行いによって悲劇的な最期を迎えた競走馬は他にもハマノパレード(1969年産)、サンエイサンキュー(1989年産)等がいる。
また、これらの馬はGI級競走で戦っていた名馬たちだからこそ取り上げられた話題であり、仮にサンエイサンキューが未勝利のまま善戦マンとして使い潰されていたら大して話題にはなっていなかっただろう。その壮絶な最期から悲劇の英雄として神格化に近い扱いを受けているライスシャワー(1995年没)とサイレンススズカ(1998年没)の間には、名も知られないまま、話題にすらならずに消えていった数百数千の命があり、現実問題としてその間には明確な「命の価値」の差がある。
経済動物とどのように付き合うかは人間が彼らと共に生きる以上考え続けなくてはならない命題である。
関連タグ
動物福祉(アニマルウェルフェア)…人間が動物に対して与える痛みやストレスといった苦痛を最小限に抑えるなどの活動により動物の心理学的幸福を実現する考えのことをいう。やむを得ず動物を殺さなければならない場合は、可能な限り苦痛のない手法を用いること(安楽死)が求められる。
動物虐待…ダメ、ゼッタイ。
にゃんぱく宣言…ACジャパンの猫の適正飼育を呼びかける広告。
菜食主義 ベジタリアン ヴィーガン…動物愛護の観点から菜食を行う人は多い。また、ベジタリアンと近似するヴィーガンは動物愛護の観点から動物性製品を避けるという人が大多数である。
クルエルティフリー…クルエルティフリーまたはクルーエルティーフリー(英語: cruelty-free)とは、動物の権利運動における、商品や活動が動物を傷付けたり殺したりしていない事を示すラベルである。
3月20日…日本で「動物愛護デー」に指定されている。上野動物園の開園日に因む。
関連人物(フィクション):クルエラ…言わずと知れた毛皮マニアのディズニーヴィランズ。動物愛護団体からは彼女は人類悪の象徴として扱われている。
関連団体(ピクシブ百科事典内に記事があるもの):グリーンピース PETA シーシェパード