水嶋清衣
みずしまきよい
アニメ『selector infected WIXOSS』の外伝漫画『-peeping analyze-』(集英社・ウルトラジャンプ連載)及び第2シリーズ『Lostorage』の第2期『Lostorage conflated WIXOSS』の主人公。
アニメ全シリーズでただ一人皆勤賞を果たしているキャラクターであり、最初に主人公を務めた漫画版にて明かされた悲壮なバックボーンも相まって非常に人気が高い。
『selector』シリーズと『Lostorage』シリーズを繋ぐ唯一の人物。当初はアニメの1サブキャラクターだった彼女がコミカライズの主人公としてキャラとしての掘り下げを受け続編アニメにも出演。
そして遂にアニメシリーズ本編、しかもオールスター集結となる最終章の主人公にまで上り詰めるという、類を見ないシンデレラストーリーを辿った異端のヒロインである。
クールで寡黙、人を寄せ付けない雰囲気を醸し出す。
斜めに構えていてどこか世を拗ねる冷めた物言いが特徴。
これは小学生時代にいじめを受け続け、ただ一人自分に優しく接してくれた友人こそが首謀者だったという残酷な真実を突きつけられた結果、極度の人間不信に陥ったことに起因している。
それ以降は心に壁を作り、他者との触れ合いを拒絶するようになっていった。
もっとも、心の奥底で常に哀しさと寂しさを抱えており、同級生の坂口歩美から話しかけられた際は表面上は鬱陶しがりながらも、本当に嬉しく思っていた。
トラウマによってそうした態度が形成されているが、根本的には感情豊かで心優しい少女であり、良くも悪くも自己犠牲精神が強い。
二人の『友達』によって上述の心の傷が多少癒されていたというのもあるが、騙されても恨み言の一つも漏らさず、騙した相手の事情にも理解を示すなど、一度心を許した存在はとことん信じ抜く。
結果として最悪の裏切りにより決意と信念は完全にへし折られ、魔道に堕ちてしまう羽目になるが、その本質が完全に変貌してしまう事だけは決してなかった。
心が凍てついた時期でさえ『自分自身の為』に戦ったことは一度も無く、最終的に選んだ選択も…。
そんな彼女もシリーズが進むごとに次第に心の殻を破っていき、重い十字架を背負いつつも未来に向かって歩き出し、自分自身の罪に正面から向き合おうとする強い意志を発揮していく。
生来の明るさを少しづつ取り戻していったようで、無表情で多くを語らないのは相変わらずながら雰囲気は柔和になり、赤の他人に対しても面倒見が良い。
なおconflatedにて判明したが、割と食い意地が張っていて図々しかったりする。
セレクターとしての腕前は非常に高く、Lostorge時点で作中屈指の強豪。
人間の闇を見続けてきた背景にピーピングアナライズを駆使してきた歴戦のキャリアが加わり、たとえ能力抜きにしても相手の心理分析が得意で『迷い』を見抜き的確な助言ができる。
ただし、そうしたアドバイスは大抵の場合無視されるか悪い方向に解釈されてしまいがち。
また、相手の精神がドス黒すぎて逆に自分のメンタルが揺さぶられてしまうという、心理戦が裏目に出てしまったケースも。
バトルスタイルは知識と経験に裏打ちされた立ち回りを行い、未来予知攻撃に「自分でも何が起こるか予測不可能な技」で対処、限界を超えた強さを誇る敵のレベルを上昇させて自壊させるなど、青使いらしいテクニカルな技巧派。
基本的に同じ手は二度と通用せず、一度把握した相手の能力に対しては対策をすぐに用意できる。
もっとも、バトルに関してはある意味登場時点で既に完成されてしまっており、新ルールに合わせて多少のカスタマイズはできるが成長度自体は低い。
主人公として比較すると、るう子ほどの才能や爆発力、すず子ほどの思い切りの良さや柔軟な発想力も持ち合わせていない。
彼女の特筆すべき持ち味は「ルールを逆手に取った裏技が滅法得意」という点である。
ルールの範囲内で、誰も思いつかない反則スレスレの手段で目的を遂げる機転と応用力こそが最大の強みと言えるだろう。
コーチング力もそれなりに高く、シリーズ随一のアホの子どころか小学生にすら劣る実力だった橋本アミカを短期間である程度の腕前にまで上達させている。
素の笑い声は「キシシ」という奇妙な笑い方。
しかし、一見クールな彼女の口からそんなコミカルな笑い声が出てくるのは思い通りに事が運んでいる証であり、ある種の逆転フラグである。
小学生の頃からいじめに遭っていたが、中学へ進学した際にTCG『WIXOSS』のノベライズ(アニメ第1期7話でちよりが持っていた物と同じシリーズと思われる)を読んでいたことをきっかけに同級生の坂口歩美からTCGの方もやってみないかと薦められる。
最初は坂口の誘いを煙たがっていた清衣であったが、次第に心を開き始めた矢先に坂口が交通事故に遭い昏睡状態となってしまう。病院で坂口の母親から清衣に渡すように言われていたと託されたWIXOSSのスターターからは意思を持ったルリグ・リメンバが現れる。こうしてセレクターとなった清衣はリメンバと共に次々と挑戦者を打ち破り、夢限少女へ近付いて行くのだが……。
要は、ピルルク(初代のコード・ピルルク)のセレクター時代である。映画『selector destructed WIXOSS』ではルリグだった頃に関係が上手く行っていなかったアキラッキーこと蒼井晶と再会し、連れ立って歩いている場面が挿入されている。ブルーレイ/DVD初回盤特典のCDドラマ「晶さんとおかしな二人のセレクターgirly☆talk」によれば清衣の方から晶に連絡を取って再会したとのことで、同じく晶の元ルリグだったるん(ミルルン)とも対面している。
本編中ではお世辞にも仲が良いとは言えず、最も荒んでいた時期だったことも相まって敗退による別れ際には晶を「役立たず」呼ばわりしていたが、意外にも晶の人格面に対する評価はそこまで悪くなかった模様。
確かに晶は裏表があり猫を被るが、殺人行為に対しては流石に良心の呵責をほんの少しでも感じており、何だかんだで嘘を貫けない素直な性格をしているので、かつてのパートナーよりは幾分かマシだったのだろう。
再びルリグを引き当ててしまい、『selector』のメインキャラクターでは唯一の再登場。
復讐鬼と化して数えきれない少女たちを使い捨て続け、絶望のどん底に叩き込んだ贖罪や、そうした自身の行動が新たな闇のゲームの誕生に一役買ってしまった真実を突き止め、今度こそ全てを終わらせる為に奔走する。
第2話では森川千夏の求めに応じ「貴方が望むなら」と最初の対戦相手として登場したが、バトル描写すら無く千夏に勝利。
第8話では御影はんなと対戦し、深入りしないよう忠告しながら圧勝。ここで初めて彼女のバトルが描写された。
青デッキでルリグは「ピルルク」、コインベット能力はピーピングとselector incited WIXOSS時代と同様の能力だが、2代目のアロス・ピルルクは初代のコードとはデザインやデッキ内容に変化が見られる。ピルルクは坂口やアミカに似たデザインになっているという説も……
第9話で千夏と再戦しながら前作でのセレクターバトルについて(視聴者への説明も兼ねて)語ったが回想シーン内でpeeping analyzeのエピソードもアニメで描かれた。
このバトル開始時点ではあと1勝で勝ち抜けられる状況だったが、セレクターバトルでしなければならない事があるとして態と負ける。なお、同話でははんなが勝ち抜けたが、前話の清衣の忠告を無視する形で戦い続けたはんなの末路は……
第10話では、ブックメーカーとしてセレクターバトルを煽る黒幕・里見紅についに辿り着き対戦。善戦するもピーピングで里見の思考を読んだのが災いして惜敗する。
ピルルクとして誰もよりも多く少女達の願いと破滅を見続けてきた清衣だが、生まれついてのルリグである里見の闇は清衣をして吐き気を催すほど深いものだった。また、かつて復讐のために自分もセレクターを利用した過去が災いしたのかも知れない。
シリーズ最終章の主人公に抜擢。
里見に敗北した後もセレクターバトルを終わらせようと必死に行動していたが、里見はすず子とのバトルにおいてコインを全て失い消滅。
この頃には清衣も90日の制限日数を過ぎたことでバトルからは抜けることが出来た。しかし、里見とのバトルで失った分の記憶の宿っていたコインを取り戻せないままにバトルを抜けた結果、坂口の存在について思い出せなくなってしまうという重い代償を支払う羽目になってしまった。
それでも、かつて犯した消えない罪の償いを果たそうとする意志は揺らがなかった。
ルリグ『カーニバル』や半年ほど前に戦ったルリグ『レイラ』の不穏な動向によって「ルリグが悪意を持ってこの世界を喰いつくす危険な存在へと進化しているのではないか」という危機感を抱き、同時に失った大切な誰かの記憶を取り戻す為に戦うことを諦めてはおらず、セレクターバトルに終止符を打つべく動き出す。
事態が既に自分一人だけの力では手に負えないほど深刻な状況に陥っていることを理解し、実力のあるセレクターたちに協力を呼びかけ、その為にすず子、そして小湊るう子に接触するのだった。
だが、そんな彼女の前に忌まわしい過去の象徴であるかつてのパートナーたちが再び姿を現す…。
連載開始前に「ピルルクのセレクター時代」を想像して描かれたイラストなので制服のデザインが若干異なっている。が、だいたいあってる。
【以下ネタバレ注意】
闇は誰の心にもある…私の中にも
でも、人はそれを乗り越え強くなる
闇の先に光を見出す事が出来る
心から信じられる友達
私を信じてくれる仲間
こんな私を信じてくれた大切な人…
一人では抱えきれない闇も、誰かと一緒なら乗り越えられる
それが人間よ…人間の強さよ!!
アミカの体を張った必死の訴えと友情で自己犠牲精神をようやく悔い改め、迷いを捨て去り真の意味で宿敵との因縁を清算した。
やがてカーニバルの策略で危うく潰し合いをされそうになったるう子とすず子の激突を食い止め、遂にセレクターたちは団結。
先に立ち向かったすず子が敗北と引き換えに手の内を暴いたことで里見(カーニバル)への雪辱を果たし、これまで絶望を終わらせようと奔走してきた行動力からチームの代表者として皆から願いと想いを託され、バトルロイヤルの勝者になり白窓の部屋へと突入する。
出迎えたのは、清衣を新たな主として迎え入れ、闇のセレクターバトルを永遠に続けようとする白窓の部屋そのもの……”夢限”。
だったら私はあなたに勝って、新しい理を作る!
バトルを終結させようとする清衣の意志に反してバトルの永続を目論む夢限に精神を支配されそうになるも、自らを呼ぶ”大切な誰か”の声によって洗脳を振り払い、夢限との最終決戦を繰り広げる。
己の半身であるアロス・ピルルク。
善良なルリグであるドーナ、リル、メル。
ルリグ化したセレクターであるユヅキ、花代、翠子、ミルルン。
意外な援軍となったあーや、グズ子。
無限に増殖する敵にルリグたちの援護を受けながら対抗し、乱戦の中で夢限の心を見抜き彼女すらも救おうと試みる。
その手段こそ、自分自身の本心に向き合うことが本質なピーピングアナライズだった。
激闘の果てに心を闇から解き放たれた夢限は自ら消えることを選択し、正真正銘新たな白窓の部屋の主となった清衣は、部屋に封じ込められていた全てのセレクターの記憶を解放して今度こそ本当にセレクターバトルを終わらせる。
最後に、消滅していく白窓の部屋の中に残されていた”大切な誰か”……坂口歩美の記憶を取り戻して。
こうして怨嗟と欲望に塗れた闇のゲームは真の終焉を迎え、セレクターたちはそれぞれの日常に帰還していった。
だが、親友であるアミカだけではなく、過酷な戦いの中で”合流”した仲間たちとの交流も途絶えることなく続いている。
心に深い傷を負い、他人を拒絶する孤独な少女だった頃の清衣はもういない。
罪は決して消えなくても、その重さを分かち合える大勢の友達に囲まれている。
彼女はもう一人ではなかった。
そして、いつか新たな友達とも巡り会うだろう…。
それがどんなに悲しい記憶だとしても、捨てようとは思わない
私の一部だから
全ての選択を、全ての願いを、嘘にしたくないから
そして、これから先の選択も…
胸を張って選びたいから
セレクターの物語は晴れやかな清衣の微笑みと、光射す未来への扉を開く「オープン!」という合言葉でグランドフィナーレを迎えるのだった。