解説
火龍は、火を司る龍。
戦闘機の呼称などにも使われ、また火竜の表記揺れとされる場合もある。
ベオウルフと火龍の物語
ヨーロッパの伝承に伝わるファイヤードレイク(ファイアードレイク)などが特に有名で、イギリス最古の英雄譚であるベオウルフの物語では次のような話が伝わっている。
ーある男がゴッデスの国(現在のスウェーデン)の山深い洞窟の奥底で、300年前から財宝を守っていた火龍が眠っている隙に“金の杯”を盗み出した。
眠りから覚めた火龍は宝の1つが無くなっていることに気付くと、塒である洞窟から飛び出して盗まれた宝を探し回り、日か沈み夜を迎えると怒り狂う火龍は口から火炎を吐き出し、それは風に乗って西へ東へと駆け巡って行った。
その勢いは国中を焼き尽さんばかりの勢いで、火龍が毎夜飛び回る為に国は段々と荒れ果てて行った。
かつて魔人グレンデル親子を退治した歴戦の勇者である国王ベオウルフは既に老い、体も衰えていたが、荒れ狂う火龍の為に苦しんでいる民たちの悲惨な状況を見、居ても立ってもいられなくなり、火龍を討伐する為に打って出ることを決意。
ベオウルフは火炎から身を護る盾を用意すると10人の勇士を引き連れ、杯を盗み出した男を道案内役とし、火龍の塒である洞窟を目指して出発。
そして、龍が棲んでいる洞窟が見える断崖までやって来たベオウルフは1人で洞窟へと向かい、洞窟の奥底で待ち構えていた火龍と激しい戦いを始めた。
火龍は人間への強い憎しみの籠った火炎を吐き出し、またその全身は鋼鉄の板のような鱗に覆われていた為、さしものベオウルフの名剣も刃が欠けてしまい、吐き出される凄まじい炎のブレスの為にベオウルフは止む無く後退する羽目になってしまうが、後ろに控えていた10人の兵の内の1人が勇敢にも加勢に駆けつけ、彼の剣が、唯一鱗の覆われていなかった首の部分に刺さり、その隙を逃さず、ベオウルフも素早く短剣でその腹を抉り、ようやく火龍を打倒すことに成功する。
しかし、勇猛果敢に戦ったベオウルフも、火龍との激しい戦いで負った傷が元で命を落としてしまう。
晴れて平和を享受することとなった国民たちは、しかし偉大なる王の死を悲しみ、火龍の宝と共に王を火葬。
それらを埋葬し、王を称える大きな塚を建てたという。ー
日本陸軍のジェット戦闘機
太平洋戦争末期、日本陸軍主導で中島飛行機が開発していたジェット戦闘機。戦前日本の航空史では唯一の設計段階からのジェット戦闘機。戦闘爆撃機運用も前提にされていた。陸軍機の連番ではキ201に相当する。
ドイツで開発された史上初の実用ジェット戦闘機Me262を参考に設計が進められていたが、試作機すら完成しないまま終戦を迎えた。長らく、機体どころか、搭載予定エンジンも間に合わなかったと思われたが、近年、少なくとも、終戦日の段階で搭載予定のエンジンの制作途中段階までは計画が進んでいた(元の中島飛行機の工場の跡に建っている大学の敷地内から、エンジンの外装の一部品が出土した)事が判明した。また、そのエンジンは橘花(航空機)の『ネ20』より数段上の高性能を予定していた代物であり、概算性能はそのエンジンの搭載を前提にしてのものであるとされる。
予定された武装は30ミリ機関砲が四門。戦闘爆撃機運用も予定されたため、少々の爆弾を懸架できるようにされており、原型機と同様の規模が予定されていた。したがって、万一完成していた場合は橘花(航空機)の戦闘機型より活躍できただろう事は想像に難くない。また、航続距離を少しでも確保しようとしたのか、原型機より更に大きい機体規模が予定されていた。
日本海軍がMe262の活躍にショックを受け、場当たり的に橘花(航空機)の戦闘機への転用を決めたのに対し、こちらは当初から戦闘機として洗練された設計を持ち、翼も後退翼の採用が予定されていた。その事から、終戦までに間に合っていれば、航空機としての完成度は遥かにこちらの方が上であったであろうとされる。
概算性能が原型機とほぼ同等のレベルを予定された事、橘花(航空機)と違い、ちゃんと戦闘機として開発が進められた記録がある事が理由か、一時に流行した仮想戦記では、実際に試作機が飛んだはずの橘花(航空機)ではなく、本機が日本軍が間に合わせた唯一のジェット戦闘機として、米国の高性能爆撃機に一矢報いる作品が存在する。
関連タグ
橘花:日本海軍のジェット機。終戦前の初飛行に成功している。